ガールズ&パンツァー  これが三代目の戦車道です(女神達のメッセージ改)   作:熊さん

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試合の場面になります。
戦車戦の描写は、相変わらず苦手の熊です。
分かりやすく、スピーディーな印象が出せたか不安ではありますが、其辺はご容赦を。
それでは、続きをどうぞ。


決着がつきました。

 一方、コアラの森学園戦車隊の待機所では、横一列で並ぶメンバー達の前で、亜彫がコアラの口元に耳を寄せていた。

 コアラは、彼女の耳に向かって、モグモグとゆっくり口を動かしている。はたから見れば、コアラが亜彫の耳を舐めようとしているように見えるが……。

 しばらく、耳を寄せていた亜彫は、顔をコアラの方に向き直ると、嬉しそうな表情になり「解りました」と言う。そして、今度はメンバー達の方に体全体を向けた。

 コアラも彼女の左腕にしがみつき、抱っこされたまま、顔だけをメンバーの方に向けた。

 その表情は、変らず無表情のままである。

 

「親愛なる我らが『コアラ隊長』はこう言っておられる……」

 

 一呼吸おいてタメを作った亜彫は、注目しているメンバーにゆっくりと、噛みしめるように言葉をつなげた。

 

「『君達は、コアラの森学園戦車隊をずっと見続け、隊長として指揮してきた歴代の戦車チームの中でも、群を抜いて才能を持っている。自信を持ちなさい。相手は大洗女子学園だが、恐れる必要はない。彼女達も新チームになったばかり。これからのチームなのだ……』と」

 

 亜彫の話を神妙な顔をし、微動だにせず聞いていたメンバー達は、全員が嬉しそうな表情に変わる。

 そこまで話した亜彫の腕を、またコアラが強く握り、顔を彼女の方に近づける。それに気づいた彼女は、またコアラの方に顔を向け、左耳を近づけた。

 小さく「はい。……はい」と返事をする彼女は、今度は表情を引き締めてメンバーを見た。

 

「コアラ隊長はこうも言っておられる。『地の利を生かし、作戦通りに相手を誘い込めれば勝機はある。皆の健闘を期待する。全員戦車に搭乗せよ。開始地点まで全速で移動。到着後、そのまま待機、仕合開始と同時に、それぞれ作戦行動を開始しなさい……』と」

「「はい!」」

 

 メンバー全員の気合の入った返事と素早い行動で、戦車に乗り込んでいく様子をクリクリの瞳でコアラ隊長は見ている。

 表情は無表情のままだが……。

 全員が乗り込むのを見て亜彫が「隊長、参りましょう」と告げると。コアラを胸の前に持ってきて、抱っこし直し、赤のフラッグが立つ『マチルダⅡ』へと歩き始めた……。

 

 

 双方の戦車隊が、試合開始前の所定のスタート地点までの移動を完了して、再び整列をし直し、試合開始の花火を待っている。

 大洗女子側の方は、祐子が乗る『M3Lee』を中心にして、先ほどの待機場所と同じ位置に整列し直されていた。各車の戦車長全員がクルッペから身を出して、正面を見ている。

 一方の『コアラの森』側は、一両も身を乗りだす戦車長はいない。静かに不気味にエンジン音だけが、整列する戦車から聞こえていた。

 そして、試合前の挨拶をした地点から上空に一発の花火が打ち上げられ、練習試合が開始された。

 発砲禁止場所にあたる『山湯山の道標(みちしるべ)』駐車場には、超大型マルチビジョンが設置され、戦車道ファンや福部町の市民が両高校の試合の様子を、熱心に観戦していた。

 

 開始の合図とともに、双方の戦車隊が一斉に動き出す。

『大洗女子学園』側は横一列から『M3』を中心とした楔形形態、いわゆる『パンツァーカイル』へ移行し、前進を続ける。

 一方の『コアラの森』の方は横一列のままで前進を続けていた。

 双方、5kmほど前進したところで、どちら側にも動きがあった。

 大洗側から、一両の戦車が速度を上げ、戦列から離脱していく。

 その戦車は『89式』のようだ。

『89式』はそのまま『多鯰が池』の南側へ進路をとる。

 一両が離脱した直後の『大洗女子』は布陣をフラッグ車である『ルノー』を中心に、三角形に周囲を囲み、フラッグ車を守る陣形へと変えて『多鯰が池』の北側になる県道265号線の方へ向かっていった。

 

『コアラの森』側は、フラッグ車の『マチルダⅡ』『センチネル巡航戦車』の二両が、北へ進路を変える。

 こちらの方は鳥取砂丘を目指しているようで、残りの三両は『89式』が向かっている『多鯰が池』の南側へと進路を取っていた。

 大洗女子の四両と一両、そして、コアラの森の三両と二両は、お互いにそのまま前進を続ける。

 しばらくして、大洗の『89式』とコアラの森の『センチネル巡航戦車』、『M3軽戦車』二両の計三両が、「多鯰が池」の南東部分で接敵した。

 クルッペから上半身を出して、進行方向を双眼鏡で見ていた戦車長が咽喉マイクで、祐子へ通信を飛ばす。

 

「こちらアヒルチーム。現在M532地点にて、前方500mより進軍してくる敵戦車発見!! 台数は三両です。隊長、このまま進軍を続けますか? 指示をお願いします!」

「こちら遠藤です、アヒルさんチームは進軍を中止して下さい。進路を180度変更して、敵三両を誘うようにしながら、池を回り込むようにして逃げて下さい。本隊が応援に向かいます」

「こちらアヒル。了解しました。進路を変更して本隊と合流します!」

 

『89式』は即座に進路を変え『多鯰が池』を中心に左回りになるよう逃げていく。

 それを、追撃していく三両。

『大洗女子』の残り四両は、進路を逆方向に向けて、逃げてくる『89式』に向かって進軍していった。

 

 その頃『マチルダⅡ』と『センチネル巡航戦車』は、砂丘につくと海岸際まで進出して、波打ち際に沿って東へ移動していく。

 そして、日本海からの風に海岸間際の砂が岸の方へと吹き寄せられ、砂が一番盛り上がり、小山のような形を作った場所に着くと、二両は停車した。

 しばらくして停車した場所から、数発の榴弾の爆発音が聞こえた……。

 マルチビジョンの映像では、砂丘にいた二両のうち、フラッグ車が右へ、左へと不可解な動きをしばらくしていたが、その動きも変化し、南へ動き出した。

 もう一両はその場にいて、動きがない。

 

 そうこうしている内に『89式』は三両の追撃を受けながら、県道265号線に出てきて、西へと進む。

 片側一車線の道幅一杯使い、蛇行しながら、三両の追撃を躱す。

 追いかける三両の外した徹甲弾は、コンクリートの県道に大きな穴を至るところに作っていた。

 そして……。

 

「前方約800m、アヒルさんチーム確認! その後方、目視約300mに敵戦車三両、アヒルさんを追撃中です。前方の交差点内で横一列隊形に移動! 移動後、アヒルさん以外、全車両停車して下さい」

 

 三角形の布陣で県道を東へ進軍していた、大洗本隊。

 その先頭を走る『M3』のクルッペから前方を見ていた祐子が、咽喉マイクを使って全車両に指示を出す。

 進軍中の大洗の四両は、進行方向60m先に現れた四差路の交差点に入ると、即座に布陣を変え、一番左から『38t』『ルノー』『M3』『Ⅲ突』の順に並び直すと、急停車して止まった。

 停車後直ぐに、亜希子から祐子へ通信が入る。

 

「隊長、ここは各個照準ですか? それとも、一点照準ですか?」

「一点照準でアヒルさんの直後にいる『センチネル』を狙います。発砲10秒前! 残り3秒になったら、アヒルさんは全速力で射線から逃げて下さい。秒読み始め!」

 

 祐子が亜希子の通信に対して、即座に指示を返す。

 その時、祐子以外の大洗戦車隊のメンバー全員が、一斉に同じ事を思った。

 

(隊長が一点照準を選んだ。これで『センチネル』は撃破できる!)

 

 指示の直後、四両の砲身が動き出した。

 同じく、祐子の「秒読み始め」の命令に合わせて、隊長車の通信手が持っていたストップウォッチのボタンを押し,通信用マイクを口元に近づけて、秒読みを全車両へ告げる。

 

「……五、四、三、」

 

 ここで蛇行を続けていた『89式』が速度を一気に上げ、大きく左へ展開する。

 不運な事に、曲がり始めた直後『89式』の後部に付いているソリに『センチネル』の徹甲弾が命中。

 そのまま『89式』は横向きの状態で、ゴロゴロと二回転して横倒しで止まった。

 しかし、『センチネル』の正面がガラ空きとなっている!

 

「……二、一、零!」

「「撃てぇ!!」」

 

 大洗の残り四両に搭乗する全戦車長の、激に似た号令が、同じく搭乗する全砲手へと飛んだ。

 四両から同時に発射された計六発の徹甲弾が、真っ直ぐに『センチネル』に向かって飛んでいく。

 対して『センチネル』は急停車で徹甲弾を躱そうとするが、六発中四発の徹甲弾を、正面から受け、そのまま白煙とともに白旗を上げる。

 同時に、横倒しの状態にある『89式』に、コアラの森の『M3軽戦車』二両から発射された徹甲弾が命中。

 同じく『89式』からも白旗が上がった。

 祐子は、表情で『89式』の搭乗員の無事を心配しているのがわかるが、直ぐに次の命令を全車両に出す。

 

「二手に別れて、各個撃破を目指します。左右に展開! 全車、パンツァーフォー!」

 

 祐子の戦車前進の号令と共に、大洗の四両が急発進で前進を始めた……。

 

 四対二の数的有利を得た『大洗女子』は、その後『38t』を撃破されるも『コアラの森』の二両を殲滅させる事に成功した。

 殲滅直後『ルノー』を中心に集合しようとしていた大洗の戦車三両。

 そこへ、集合場所の北側になる砂丘の方から南下してきた、コアラの森のフラッグ車の『マチルダⅡ』が現れたのである……。

 

 

 フラッグ車の出現により『大洗女子』の三両は、一斉に進路を北へ向け、横一列の隊形でフラッグ車へ攻撃をしながら迫る。

 その砲撃の隙間をかいくぐりながら『マチルダⅡ』は再び北へ転進し、さっきまでいた砂丘へと向かう。

 それを追う三両の戦車。

 そして、一両と三両は砂丘へと突っ込んでいく……。

 

 

 「よっしゃー! 祐子。『マチルダⅡ』を追い詰めたぞ!」

 

『M3』の操縦席から、翔子が叫ぶ。

 それに反応するように、祐子は車長席の上のクルッペから身をのり出して、逃げる『マチルダⅡ』の動きを、双眼鏡で確認する。

 現在、大洗は布陣を横一列から『Ⅲ突』と『M3』が前に並び『ルノー』が二両の後方の位置になる、逆三角形の布陣に変えて『マチルダⅡ』を追っている。

 

「『マチルダⅡ』の先、前方300mに、大きな砂丘が見えるよ。きっとフラッグ車はそれを乗り越えるつもりだから! 」

 

 祐子は、そう叫んだあと、次の指示を出そうと、咽喉マイクに手を伸ばす。

 すると、砂丘を登り始めた『マチルダⅡ』の砲塔が後ろを向いて、徹甲弾を一発発射した。

 砲弾は、二両の後ろを追走していた『ルノー』の砲塔をかすめて「カーン」という甲高い金属音を残し、その後方に着弾する。

 直後、車内通信から咽喉マイクを使った、亜希子の声が聞こえてきた。

 

「ここから、三方に分かれて退路を塞ぎます。右手に『M3』左手に『Ⅲ突』。『ルノー』はこのまま直進しなさい」

 

 亜希子の命令に『M3』の車内が一瞬、静まり返り、前進を続ける『M3』のエンジン音だけが響く。

 一番早く我に返った翔子が、逃げる『マチルダⅡ』の後部を睨みながら怒鳴り返す。

 

「亜希子、勝手な命令を出すな! 隊長は祐子だ!」

「うるさい! せからしか! 祐子の命令が遅かと! ここは撃破のチャンスやっけん、ウチの命令ば聞きんしゃい!」

 

 翔子の怒鳴りに、亜希子も怒鳴り声で返す。

 

「やばいぞ。亜希子がキレた! 九州弁になったぞ」

 

 翔子は細かく操縦桿を動かし、地面が一定していない砂の上で『M3』の姿勢を制御しながら驚いて叫んだ。

 亜希子からの通信を聞いた祐子は、自分の咽喉マイクを右手で挟むようにして返信を行う。

 

「こちら『M3』了解! 右30度に転進し、砂丘の右手側から回り込みます。『三突』は左30度に転進して、左手から回り込んで下さい。布陣が整い次第、一斉に『マチルダⅡ』の前に飛び出します!」

 

 祐子の思いもかけない指示に翔子は右手の操縦レバーを引きながら『M3』を指示された方向へと転進させる。そして、直ぐにアクセルを踏みこむと『M3』の速度を上げた。

 

「祐子! いいのかよ。亜希子のやつ、勝手すぎるぞ!」

「いいのよ。翔子ちゃん! 確かにチャンスだと思うの。三両がタイミングを合わせて、一斉に包囲できればフラッグ車は海に進路を阻まれるから、左右どちらかにしか行けない。その側面を『ルノー』が叩いて、動けなくなったところを前と後ろから挟撃で仕留めれば……。ただ、フラッグ車を守るはずの残りの『センチネル」が、どこにもいないの……』

「くそったれがあ!」

 

 女の子が、およそ使わない単語を叫ぶ翔子。

 小山のような砂丘を回り込もうと、全速力で迂回していく『M3』と『Ⅲ突』。

 確かに祐子がいった通りにすれば、勝ちがあっただろうが……。

 

 亜希子は『ルノー』の副砲にあるクルッペから正面に見えている『マチルダⅡ』の後ろ姿を睨みながら、ドスが効いた声で主砲にいる恵に命令する。

 

「もう逃げられんばい。撃破もできんくせ、うちの戦車に一発噛ますって、なめちょっとか! 恵、一発できめんしゃい!」

「うん、わかったぁ。まかせてぇ!」

 

『ルノー』は砂丘の頂上を越え、下ろうとしている『マチルダⅡ』を追って、全力で砂丘を登っていく。

 回り込もうとしている二両よりも、直線で進む『ルノー』が一段早い。

 その様子を見ていた祐子が、すぐに亜希子へと通信を入れる。

 

「亜希子さん、まだ早いです。二両は回り込んでいません。タイミングが合っていません!」

 

 祐子の連絡に亜希子からの返信はなく、そのまま『ルノー』は頂上を越え、下り始めたその時、榴弾の爆発が起こったのである。

 

 その榴弾は、砂丘を乗り越え下っていた『マチルダⅡ』の砲塔から発射されたもので、同じように乗り越え下り始めようとしていた『ルノー』の車底部の砂丘に着弾した。

 発射された榴弾は、勢いのまま砂山に潜り込むと、すぐに爆発し『ルノー』の車底にある砂を、ごっそりとえぐり取ってしまった。

 それに加えて車底部に、榴弾の爆発による下から圧力がかかり『ルノー』は、つんのめるようにして、ひっくり返ってしまう。

 ひっくり返ったまま、砂丘を滑り降りてくる『ルノー』を、下りきったところで『マチルダⅡ』が車体全体を使って受け止める。

 そのタイミングで、その榴弾が爆発した場所に隠れていた「センチネル」が、砂丘から飛び出してきたのである。

 

 砂丘を下りながら『センチネル』は、ひっくり返り止まっている『ルノー』の車底めがけて、徹甲弾を打ち込んだ。

 そして『ルノー』の車底から白旗が「バシュッ」という音とともに現れる。

 その白旗が上がった直後に、両側に回り込んでいた『M3』と『Ⅲ突』が、それぞれ姿を現した。

 

 こうして、大洗女子学園三代目戦車チームの初試合は、黒星で終わったのである……。




ガルパンの二次を書く者にとって、戦車戦は逃げられない部分です。
同作家さん達の努力に、敬意を払っている熊です。
誤字、脱字がありましたら、遠慮なく報告お願いします。
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