ガールズ&パンツァー  これが三代目の戦車道です(女神達のメッセージ改)   作:熊さん

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今回も長いお話になりました。(泣)
二話に分けようかとも思いましたが、何とか一万字以内に入りましたので、このまま投稿します。
会話文が中心ですので、読みにくければごめんなさい。

それでは、続きをどうぞ。



三代目あんこうチームの誕生です(後編)

 

「翔子ちゃんのお爺さんが戦車を持っていたんだよね。それを貸して貰っていたの」

「ああ、元々エンジンが壊れて動かない戦車だったんだけどな。修理して動かせるようにしたんだよ」

 

 祐子と翔子は、亜希子の質問にそれぞれ答える。

 すると、アイスを美味しそうに食べていた恵がスプーンを動かすのを止め、二人に尋ねた。

 

「ねぇねぇ、どんな戦車に乗ってたのぉ?」

 

 すると、二人は「えっ」と言うと、お互いの顔を見て考え出した。

 

「翔子ちゃん、名前なんだっけ?」

「最初、聞き間違えて健介兄ぃに怒られたんだよな。ええっと……」

 

 翔子はブツブツと変な事を言い始めた。

 

「マヨネーズ、ビネガー、オイスター、違うなぁ……。シュガー、ソルト……」

「ソルト? ソルト、ソルト……、ソルトァ、ソルティ……、トルディ!」

 

 祐子は思い出したのか、少し大きな声で言う。

 翔子も「うん、トルディだ」と言った後、恵の方を向く。

 

「恵、トルディⅠ軽戦車だ」

 

 しかし、恵はポカンとしておりかなえも亜希子も頭にはてなマークを浮かべていた。

 亜希子が翔子に尋ねる。

 

「『トルディⅠ軽戦車』って聞いた事ないんだけど、どこの国の戦車なの?」

 

 すると、翔子は堂々と答えた。

 

「いや、知らね」

「何よ、自分が乗っていた戦車がどこの国の戦車かも知らないの?」

「あぁ、でもな、エンジンは詳しいぞ」

 

 翔子はそう言うと、ペラペラと話し出す。

 

「エンジンはな、ビューシンクNAG L8V/36TR 4ストロークV型8気筒液冷ガソリンでな、馬力は155馬力で、最高速度は時速50kmだ。結構速いんだぞ。それにな……」

「待って、翔子さん、ちょっと待って」

 

 亜希子が右手の掌を突き出して、尚も語ろうとする翔子を止めた。

 

「翔子さんは自分が乗っていた戦車を知らないのに、どうしてそのエンジンはそんなに詳しいのよ」

「それは、健介兄ぃと一緒にエンジンを直したからな」

「健介兄ぃって誰よ?」

「私のお兄ちゃん」

「えっ、隊長のお兄さん?」

「うん」

 

 翔子と亜希子の会話に、祐子が割り込んだ。

 そして彼女は、自分の昔話を始める。

 

「私の家族はお父さんとお母さん、お兄ちゃんと私の四人家族なの。それで、お父さんは転勤族でね、毎年っていうくらい転校していたんだ。単身赴任とかもあったんだけど、お母さんが『お父さんを一人にすると絶対に体を壊すから』と言って、家族全員でいつも引っ越ししていたの」

 

 そこまで祐子が話すと、今度は翔子が話を続ける。

 

「俺は、岡山県の三次市が地元でさ、実家が借家を経営していているんだよ。そこに祐子の家族が引っ越してきたんだ。あれは中学三年生になったばかりだったか? なあ、祐子?」

「うん、中三の春だったよ。始業式の時、翔子ちゃんに学校まで案内してもらったからね……」

 

 二人は顔を見合わせて、頷いている。

 恵、かなえはアイスを食べながら、亜希子も時々アイスを口にしながら二人の話を聞いている。

 

「それでね、翔子ちゃんと家で遊んでいる時、時々お兄ちゃんとも一緒に遊んでいたの」

「健介兄ぃは凄い体してるんだぜ。筋肉ダルマって言うのかな、こんなんだぜ」

 

 翔子は身振り手振りで、体が大きい人の表現をした。

 祐子もニコニコと笑いながら、頷いている。

 

「それでね、お兄ちゃん、大の戦車好きで、今、自衛隊の戦車整備隊にいるの。それに変わった戦車好きでね。戦車は戦車でもね『戦車のエンジン』が大好きだったのよ」

「戦車のエンジンが大好き? それって、マニアってレベルじゃないと思うのですが」

 

 亜希子が言うと、祐子本人はケラケラと笑い出した。

 

「ホント、私だって引いちゃうもん『ティーガーのエンジンの素晴らしい所はな』なんて真面目な顔で言ってくるんだよ。ただの中学生だった私に。ねっ、翔子ちゃん」

「ああ。俺も何度健介兄ぃに熱く語られた事か数えきれないぞ」

 

 祐子と翔子は何かを思い出したのか、お互いの顔を見て笑い出す。

 亜希子が「それがタンカスロンと、どう繋がるの?」と二人に聞くと、翔子が答えた。

 

「祐子と健介兄ぃと俺の三人で、祐子の家で戦車の対戦ゲームをやってた時にエンジンの改造っていうウィンドウがあったんだよ。そうしたら健介兄ぃが『本物のエンジンを見たいなぁ』って言ったんだ。その時、爺ちゃんの家の蔵に動かない戦車があった事を思い出したんだ」

「あっ、まさか……、それをお兄さんが?」

 

 亜希子が言うと、祐子と翔子が同時に頷いた。

 

「俺が『爺ちゃんの家に動かない戦車がある』と言った時、健介兄ぃの食いつきっぷりはすごかったな!」

「うん、そうだね『翔子ちゃん、僕にその戦車を見せてくれ』って、翔子ちゃんに言い寄ってる顔が怖かったもん」

「ああ。その時初めて男というのが怖い生き物だって、俺は思ったよ」

「お兄ちゃんが翔子ちゃんにあまりに迫るから、私、お兄ちゃんの背中にキックしたもん『お兄ちゃん、やめろ』ってね」

 

 笑いながら二人は実に自然に祐子の兄の事をディスっている。

 ひとしきり二人で笑いあうと、祐子が話を続ける。

 

「その日にお爺さんの家に行って戦車を見せてもらったんだったね」

「そうだったな。爺ちゃんも加わって、健介兄ぃと『どうしたら動かせるようになるか』って相談したな」

 

 二人の話は、まだまだ続く。

 

「それでね、お兄ちゃんと翔子ちゃんがエンジンの修理を学校から帰ってからずっと続けてね『トルディ』が動けるようになったのは七月始め頃だったかな? 翔子ちゃん」

「いや、六月終わりぐらいだったと思う。試運転しようと決めていた日が土砂降りになって、健介兄ぃの目が死んだから」

 

 亜希子は二人の話を聞きながらスマホを取り出すと『トルディ軽戦車』でググって見た。

 そこには、三種類の『トルディ』が表示される。

 その中に表示された『トルディⅠ軽戦車』を見て亜希子は思った。

 

(こんな戦車全然知らない。ハ、ハンガリーの戦車って……。日本の何処の学校にもこんな戦車置いていないわ)

 

 そこで、亜希子が二人に尋ねた。

 

「二人にいくつか質問があるのですけど……」

「ああ、いいぜ。亜希子、質問ってなんだ?」

 

 翔子が答えると、亜希子は、二人に尋ねる。

 

「修理の費用は、誰が出したの?」

「ああ、それは爺ちゃんだよ。爺ちゃんは山を一杯持ってたからな」

「そうなのね。そうしたら、戦車の操縦とかは、教本なんか見て覚えたの?」

「それは、婆ちゃんからだな。動かせるようになってからマンツーマンで教えてもらった」

「翔子さんのお婆さん、戦車道やっていたの?」

 

 亜希子の問いに、翔子はコクンと頷いた。

 

「『トルディ』は、昔、婆ちゃんが乗っていた戦車らしくってな。俺の婆ちゃん、操縦手だったんだよ」

「そうだったね。戦車が直って動くようになったと聞いて、お婆さんが一番最初に乗るって楽しみにしていたもんね」

 

 祐子も懐かしそうに言った。 

 すると、今度は祐子に亜希子は尋ねる。

 

「じゃあ、翔子さんが操縦練習している時、隊長は何をしていたんですか?」

「うん、一緒に戦車に乗ってくれる仲間探しをしていたの。『トルディ』は三人乗りだったからね。そうしたら一人協力してくれる子を学校で見つけて、三人で練習っていうのかな。お爺さんの家の裏山を走り回ってた」

 

 祐子はその時の事を思い出したのか、クスッと笑う。

 亜希子の質問は続いていく。

 

「砲手の練習はどうしていたんですか?」

「うん、友達と交代でやっていたよ。でも、砲弾は無かったから、口でやってたの。声に出して『バンバン』ってね」

「そ、そうなんですか……。まるで子供の遊びみたいですね」

「うん、ただの遊びだったね。ねぇ、翔子ちゃん」

「ああ、俺は戦車を走らせるのが楽しくってな。祐子達も、隣で『目標発見しました、砲撃します』「撃て」『バアン、バアン』『撃破しました』なんてやってたもんな」

「うん。そうしたら、その時の友達が夏休みに入る前にチラシを持ってきたんだよね」

「ああ、それが……」

 

 翔子が話そうとする前に、亜希子がさえぎって話した。

 

「それが、タンカスロンのチラシだったのね」

 

 亜希子の話に、二人は同時に頷いた。

 

「タンカスロンに参加したのは、一緒にやっていた子が『一度でいいから、本当に機関砲を打ちたい』って言ってきてね。夏休み以降は受験勉強しなくちゃいけなかったし、思い出作りもあって出てみようかってなったの。どうせ一回戦で負けるから、ケガもしないだろうって」

「そうそう。それでさ、爺ちゃんに相談したらどこからか砲弾を調達してきたんだよ。どこから持ってきたのかは教えてくれなかったんだけどな。それで、夏休みに入って最初の日曜日だったよな。試合があったのは」

「うん、お爺さんの知り合いっていう人に『トルディ』を運んでもらって、一泊したんだよね。楽しかったな」

「ああ、あいつも楽しんでたしな。俺も、小旅行みたいで楽しかった」

 

 祐子と亜希子は同時にコーラとオレンジジュースを口に運び、喉を潤す。

 そして、翔子が話を続ける。

 

「実際、タンカスロンの試合って、基本、何でもありの無法ルールなんだけどさ、俺らが参加した試合はちゃんとルールがあったんだよな」

「うん、10トン未満の戦車道に使える戦車で、一対一のタイマンバトルがルールだったね。そして、試合の場所がつぶれたゴルフ場跡地だったから、めちゃくちゃ広かったよね」

「ああ。それでな、その試合一回戦で負けて帰るつもりが、あれよあれよで優勝しちまってな。その時に祐子の特技に気づいたんだよ。その特技で勝ち上がっていったからな」

「へえ、そうなんだぁ。初出場で優勝は凄いねぇ」

 

 翔子と祐子の話を聞いている恵が、感心したように相槌を打つ。

 

「ねえ、昨日も聞いたけど試合に勝てるほどの特技、私持ってないよ」

「うん、祐子はそれでいいから」

「もう!」

 

 翔子の返事に、祐子が、またぶんむくれる。

 

「それで、優勝して家に帰ったら爺ちゃんと婆ちゃんが喜んでな。賞状やら、トロフィーを仏前に飾ったんだぜ。それから、爺ちゃんが『夏休み中に出れるだけ試合に出ろ』って言ってきてな『資金は任せろ』って大張り切りで、結局何回出たんだっけ?」

「四回だった思う。土曜日に遠征して、日曜日ごとに試合して、月曜日に帰るパターンだったから」

 

 そう祐子が話すと、そこで恵が尋ねてきた。

 

「ええとねぇ、関係ないんだけどぉ、宿題とかどうしてたのぉ?」

 

 すると、翔子と祐子が交互に答えた。

 

「ああ、それな、ここでまた健介兄ぃがフル回転したんだよ」

「うん、お爺さんから『三人の宿題の面倒を見たら、アルバイト代をやる』って言われてね。一人五万だったかな。三人で十五万。宿題は一人分やればあとは写せるんだけど、夏休みの自由研究が三人分やらなきゃいけなかったから、大変そうだったけど」

「それは、大変そうね」

 

 亜希子が言う。すると、祐子が話を続けた。

 

「そういう訳で夏休み中、タンカスロンをやって二学期になったの。進路を本格的に決めなきゃいけなくなって、私と翔子ちゃんが大洗を希望したの。友達は地元の高校に進学したけどね」

「大洗にした理由とか聞いていい?」

 

 亜希子が聞くと翔子が答える。

 

「ああ、大洗は各国の戦車があるだろう。一つの国に特化していないのが理由かな。俺達、いろいろな戦車に乗ってみたかったんだ」

「うん、翔子ちゃんの言う通りなの。先生は『将来を見据えて進路を考えろ』って怒ったけどね」

 

 そこで、また二人は笑う。

 そこで祐子と翔子の飲み物が無くなった。祐子は立ち上がると四人に「飲み物を買ってくるけど、何か買って来ようか?」と聞く。

 それぞれアイスを食べ終わった後なので温かい飲み物をそれぞれが祐子に頼み、祐子は店内に入り順番待ちの列に並んだ。

 そこで亜希子が翔子に尋ねる。

 

「祐子さんの特技で勝ち上がったってさっき言ったけど、いつそれに気づいたの?」

 

 自然と声が小さくなるが、翔子はその時を説明を始めた。

 亜希子と恵、かなえは自然に身を乗り出し、お互いの顔を近づける。

 

「ああ、一回戦の時に漠然とだけどな。とりあえず作戦みたいなやつを考えたんだよ『履帯を壊して動けなくしてから、近距離まで近づいてズドン』って、おおざっぱな作戦だけどな。それで、いざ試合が始まったら、相手の戦車の動きが速いのなんのって、履帯を狙うどころか、追いかけ回されてな、ゴルフ場の草むらに隠れたわけよ。するとな、正面から相手戦車がくるのが見えて、ここから逃げるのか飛び出すのか、祐子に聞いたんだよ。すると祐子がな『まだ、飛び出しちゃだめだよ。必ず左を向くから、その時に飛び出そう』って言ったのさ」

「そうしたら、そうなっちゃった訳?」

「ああ。見事に左向いてな、履帯が丸見えなんだよ。それで、作戦通りに勝った訳なんだけど、祐子にどうして左を向くのが分かったのか聞いたら堂々と『分かんない! 運がよかったね』と言いやがってさ。それから二回戦、準決勝、決勝と勝ち進んでいくうちに何度か二者択一の場面があってな、その度に祐子に聞いて、その特技が間違いないって分かったのさ」

 

 そこで恵が思い出したのか、翔子に尋ねる。

 

「確か祐子ちゃんって、最初は通信手で入ってきたんだよねぇ」

「ああ、祐子自身は戦車に乗れるだけで満足してたからな。亜希子が戦車長のチームに俺と祐子が紅白戦の時入って、その試合で無双したんだよな」

 

 翔子は、恵に答えながら、亜希子に聞く。

 尋ねられた亜希子は、大きく頷いた。

 

「ええ、試合の時、判断がつかない事が何回かあったの。その度に翔子さんが、隊長に聞きまくって、それがことごとくその通りになるのよ。私もびっくりして、隊長に『どうしてわかるの』って聞いたら、翔子さんがいった通り『分かんないの。私、運がいいのかも!』って笑って言った事覚えてる。そして翔子さんから隊長の特技をコッソリ聞かされて、それを澤隊長に伝えたら通信手から戦車長にコンバートしたのよね」

「そうだったな、祐子のやつ頭抱えたけどな」

 

 亜希子と翔子の会話がちょうど終わったころ、祐子が五人分の飲み物をトレーに乗せて運んできた。

 

「何々? 何の話をしてたの?」

「ああ、祐子が通信手から戦車長にコンバートされて、頭を抱えていたって話をしてたんだよ」

「そうなのよ。もう、どうしようって本気で困ったんだよ」

 

 祐子がそう言って四人に飲み物を配り、自分も元居た席に座った。

 

「分かりました。隊長と翔子ちゃんが戦車道を学びたいという理由がね。私もわかりやすく教えられるよう努力します」

「ありがとう、亜希子さん。よろしくお願いします」

「亜希子、ありがとな。俺も頑張るからな」

 

 亜希子の返事に、祐子と翔子が礼を言う。

 

「遠藤隊長、改めて隊長のチームの通信手として、私を入れてください。私、隊長の一番のパートナーになれると思います」

 

 亜希子のお願いに、翔子が素早く反応する。

 

「亜希子、祐子の一番のパートナーはこの俺だぞ。なんて言ったって、付き合いが一番長い。祐子の事は一番わかっているつもりだからな、二番目で我慢しろ」

 

 翔子の横槍に、亜希子はフフンと鼻を鳴らす。

 

「へぇ、付き合いの長さねぇ…そんなもの、パートナーの順番には何も関係ないわよ。どれだけ隊長の役に立てるかが重要だと思うし、翔子さんの方こそ二号さんで我慢すれば?」

「二、二号さんだと!? 亜希子、てめえが二号さんだろうが!」

「いいえ。パートナーというのは、お互いを高めあう事ができる二人の事なのよ。隊長の特技と、私の知識が合わされば、怖いものなし。どお? 何か反論できる?」

「馬鹿か、知識だけで祐子の助けになるか。とにかく、大切なのは祐子がどれだけ信頼しているかだ。祐子の正妻は、この俺だ。亜希子は二号さんが精一杯だろうよ」

「今、バカって言ったわね。脳筋の翔子さんに言われたくないわよ。翔子さん、私のクラスの友達があなたの事なんて言っているか知ってるの? 『スカートをはいた男の娘』とか『お〇ん〇んをお母さんのおなかに忘れてきた人』って言っているのよ」

「な、なんだと! こう見えても女子力は高いんだぞ!」

「でたわね、女子力をアピールする人。どんな女子力を持っているのよ」

「俺はなぁ、こう見えて料理が好きなんだぞ」

「料理が好きって……。料理が好きと得意は違うんだけど、試しに聞いてやるわよ。どんな料理ができるの?」

「俺はな、まずな『御飯が炊ける』だろう。そしてな……」

 

 翔子がドヤ顔で言った瞬間、恵とかなえが飲んでいた飲み物を噴出した。亜希子は(マジで言っているのか)という呆れた顔になり祐子は頭を抱えた。

 

「『おむすび』だろう。『炊き込みご飯』だろう。あと……」

「もうよか! 真面目に聞いとったうちがバカやった。全部ご飯がらみの料理じゃなかね。御飯が炊けるなんて料理以前の問題じゃなかね。よくそんなんで女子力高いって言えたもんね」

「そう言う亜希子、お前はどうなんだよ! 女子力なんてあるのかぁ? この頭でっかちのツンツン女子がよぉ」

「女子力とか今は関係なか! とにかく祐子さんの第一夫人はうちしかおらんとよ」

「まだ言うかぁ!!」

「何べんも言うちゃるよ」

 

 翔子と亜希子は女の子同士なのでさすがに手を出すことはないが、それでもリング上で試合前ににらみ合う格闘家のように額がくっつきそうになるまで近づけて、思わず「ガルルル」というオノマトペが聞こえそうなくらいお互いを威嚇して「ギャイ、ギャイ」と言い争いを続ける。

 

「あ、あのね、二人とも……、ここ、お店の前だから……。ね、落ち着いて」

「ねえ、祐子ちゃん」

「は、はい?」

「このアイスの食べ比べセット、おいしそうだよねぇ。食べてもいいかなぁ?」

「う、うん、いいと思うよ」

「やったぁ! かなえちゃんも一緒に食べるぅ?」

「……お姉ちゃんが食べるから私も食べる……」

 

 威嚇しあう二人の横で、恵とかなえはマイペースにアイスのメニューを見ていたのである。

 そして、翔子が吼えた。

 

「亜希子が同じクラスじゃなくてよかったぜ。クラスメイトだったら『隣になりたくない友達ナンバー1』のステッカーをその無駄に広いおでこのど真ん中に貼ってやるよ」

「それはこっちのセリフばい! うちやったら、ステッカーじゃなくそこの看板ぐらいの大きさのやつば、その短い髪が乗ってる頭の上にのせちゃるよ!」

 

 道沿いに置かれたアイス屋の店名が入った小型の看板を指差し、亜希子も負けじと言い返す。

 しかし、残念な事にほとんど戦車では『操縦手』と『通信手』の席は隣同士になっている。

 そしてその時、祐子の目が静かに光を失っていった……。

 

「ねえ、祐子ちゃんもぉ、一緒に食べない? ねえ、祐子ちゃんって……。あれぇ」

 

 恵が祐子を誘うも祐子の返事がない。

 それに気づいた翔子が威嚇しあっていた亜希子から視線を外し、祐子の方を見ると目が死んでいる祐子を見つけた。

 そして、尚も祐子に話しかけようとしている恵を手で止める。

 

「恵、今は話しかけても無駄だ。あっ、そうだな、クラスが違うからみんな知らないんだったな。いい機会だから教えてやるけどよ。祐子の目を見てみろよ」

 

 そこで亜希子と恵、かなえは大きな祐子の目をのぞき込み、光が無くなっている瞳をみてびっくりする。

 

「ちょっと、隊長は大丈夫なの? あの目は普通じゃないわよ」

「ああ。祐子が死んだ目をしている時はな、何か考え事してるんだよ。自分の世界に行っちゃってて、声を掛けても返事もしないんだ。しばらく見ててみな。瞳に光が戻ってくるから、そうしたら話しかけても大丈夫だよ」

 

 翔子に言われて亜希子と恵、かなえは身を乗りだして祐子の顔をじっと見ている。

 すると……。

 

「「あっ……」」

「もうすぐ、こっちに戻ってくるぞ」

 

 そして光が戻ってきた祐子が、目の前で自分を見つめている四人に向かって話し出した。

 

「私、今、考えたんだけど……」

「「うん、知ってる」」

 

 祐子の言葉に四人が声をそろえて返事する。それを聞いた祐子は不思議そうな顔になる。

 

「って、あれ、何で知ってるの?」

「ああ、いいから、何を考えたんだ?」

 

 祐子はポツリポツリ話し始める。

 

「亜希子さんを通信手にしたら絵里さんが外れちゃうんだけど、絵里さんには副隊長になる一年生のチームに入ってもらおうと考えたんだけど。皆、どう思う?」

 

 祐子の問い掛けに、亜希子が直ぐに答える。

 

「私も隊長の考えと同じ事を考えていました。一年生を副隊長に据えるからには上級生が一人、同じチームにいるべきです。それに、絵里さんは面倒見がいい人ですし、連絡ミス、通信ミスも絶対に起こしませんから、一年生も安心できると思います」

 

 亜希子の答えに翔子と恵、かなえも納得したのだろう、それぞれが頷いた。

 

「じゃあ、この五人でチームを組まない?」

「「えっ?」」

 

 祐子の提案に、四人が四人ともびっくりした表情になる。祐子はそれに構わずに「ねえ、ねえ、どうかな」と言うが、亜希子と翔子、恵とかなえがお互いの顔を見て、そのあと祐子の方を見る。

 

「えっと……、今日はそういう話じゃなかったのか?」

「私ぃ、てっきり、祐子ちゃんのチームに入ってるものだと思ったんだけどぉ」

「……うん、私もお姉ちゃんと一緒に入っているものだと思っていた……」

「「それで、最後のメンバーに亜希子(ちゃん)を入れるかどうかの話し合いだと思ってた(ぞ)」」

 

 翔子と恵、かなえが最後に口を揃えて、祐子にそう言うと、不思議な顔をした。

 祐子はキョトンとした顔になるが、みるみる笑顔になる。

 

「それじゃあ、皆、私のチームに入ってくれるんだね」

 

 再確認する祐子に、四人は大きく頷いた。

 それを見た祐子は、本当に嬉しくなり立ち上がると小さくガッツポーズを取る。

 そして祐子は自分を見つめる四人を見渡し、ペコリと頭を下げた。

 

「不束者ですが、宜しくお願いします」

「「それ、意味が違うから」」

 

 四人が声を合わせて、祐子に突っ込んだのである。

 こうして……。

 

 性別は女性だが行動、言動全てが男性と変わらない『操縦手』

 頭は切れるが堪忍袋の尾もすぐ切れる『通信手』

 周りは気にしない、我が道を行く『砲手』

 お姉ちゃんとどこまでも一緒、絶対に離れない『装填手』

 すごい特技を持つがあっちの世界とこっちの世界を行き来する『隊長兼戦車長』

 

 なんとも癖のある……失礼、個性的な隊長車チーム『三代目あんこうチーム』がここに結成されたのである。

 

 





長文を読んでいただきありがとうございます。
誤字、脱字がありましたら、宜しくご連絡お願いします。

次回は、仮題「戦車が欲しいです」です。
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