HACKNET-BLUEARCHIVE- 作:ARCHANGE
やあ。
こいつは…思ったよりもずっとずっと奇妙だな。
これは…未来形を使って書くべきなんだと思う。多分だけどね。何しろまたこうして思考が巡るというのは生きている証でもあるからだ。
私の名前はBit。
ハッカー…というかプログラマーだ。
真実を言えば私は一度死んでいる。確実に常識では考えられない事が自分の身に起きているのはわかっている。
とりあえずは………状況を…整理………………
フェイルセーフ作動
boot complete...
「……私のミスでした。」
「私の選択、それによって招かれたこの全ての状況」
「結局、この結果に辿り着いて初めて、あなたの方が正しかったことを悟るだなんて」
「……今更図々しいですが、お願いします。」
「bitwise先生。」
「きっと私の話は忘れてしまうでしょうが、それでも構いません。」
「何も思い出せなくても、おそらくあなたは同じ状況で、同じ選択をされるでしょうから……」
「ですから……大事なのは経験ではなく、選択。」
「あなたにしかできない選択の数々。」
「責任を負う者について、話したことがありましたね。」
「あの時の私には分かりませんでしたが……。今なら理解できます。」
「大人としての、責任と義務。そして、その延長線上にあった、あなたの選択。」
「それが意味する心延えも。」
「……。」
「ですから、先生。」
「私が信じられる大人である、あなたになら、」
「この捻じれて歪んだ先の終着点とは、また別の結果を……。」
「そこへ繋がる選択肢は……きっと見つかるはずです。」
「だから先生、どうか……。」
Reboot...3...2...1
さっきのは一体何だったんだろうか。記憶が急に頭に流れ込んで来た。というよりも脳に直接侵入して情報を残していったようだ。
「……い。」
「先生、起きてください。」
鼓膜が情報を脳に送る。
「bit先生!!」
目を開けて情報の取得を開始する。
「少々待っていてくださいと言いましたのに、お疲れだったのですね。」
「なかなか起きないほど熟睡されるとは…」
「すまない…言い訳をするわけじゃ無いが…死ぬほど疲れてたんだ。」
「死ぬほどね。」
「……。」
「夢でも見られていたようですね。ちゃんと目を覚まして集中してください。」
「もう一度、あらためて状況をお伝えします。」
「私は七神リン、学園都市『キヴォトス』の連邦生徒会所属の幹部です。」
「そして貴方はおそらく…わたしたちがここに呼び出した先生の…ようですが。」
「……ああ。推測形でお話したのは、私も先生がここに来た経緯を詳しく知らないからです。」
「それで…私は何をすればいいんだ?」
「話が早くて助かります。とりあえず、学園都市の命運をかけた大事なこと…ということにしておきましょう。ついて来てください。」
窓際についていった。
シャッターが上がる。
「『キヴォトス』へようこそ。先生。」
「キヴォトスは数千の学校が集まってできている巨大な都市です。これから先生が働く所でもあります。」
「ここが私の職場…か。」
建ち並ぶ高層ビル。
「きっと先生がいらっしゃったところとは色々な事が違っていて、最初は慣れるのに苦労するかもしれませんが……。」
「でも先生ならそれほど心配しなくてもいいでしょう。」
「あの連邦生徒会長が、お選びになられた方ですからね。」
「…それは後でゆっくり説明するとして。」
チャイム…というか電子音がした。
「ちょっと待って!代行!見つけた、待っていたわよ!連邦生徒会長を呼んできて!」
「……うん?隣の大人の方は?」
「首席行政官。お待ちしておりました。」
「連邦生徒会長に会いに来ました。風紀委員長が今の状況について納得のいく回答を要求されています。」
「ああ…面倒な人たちに捕まってしまいましたね。」
言葉にトゲがあるね…最近の若い娘は………そういう私もまだ二十前半か…。
「こんにちは、各学園からわざわざここまで訪問してくださった生徒会、風紀委員会、その他時間を持て余している皆さん。」
「こんな暇そ……大事な方々がここを訪ねた理由は、よく分かっています。」
「今、学園都市に起きている混乱の責任を問うために……でしょう?」
「そこまで分かってるなら何とかしなさいよ!連邦生徒会なんでしょ!」
「数千もの学園自治区が混乱に陥っているのよ!この前なんかうちの学校の風力発電所がシャットダウンしたんだから!」
「連邦矯正局で停学中の生徒たちについて、一部が脱出したという情報もありました。」
「スケバンのような不良たちが、登校中のうちの生徒たちを襲う頻度も、急激に高くなりました。治安の維持が難しくなっています。」
「戦車やヘリコプターなどの、出所のわからない武器の不法流通も2000%以上も増加しました。これでは正常な学園生活に支障が生じてしまいます。」
……戦車やヘリコプター…など?
よく見たら銃を持っているじゃないか。
「こんな状況で連邦生徒会長は何をしているの?どうして何週間も姿を見せないの?今すぐ会わせて!」
「…はぁ…。」
「連邦生徒会長は今、席におりません。正直に言いますと、行方不明になりました。」
……行方不明?
「……え!?」
「……っ!?」
「やはりあの噂は……。」
「結論から言うと『サンクトゥムタワー』の最終管理者がいなくなったため、今の連邦生徒会は行政制御権を失った状態です。」
制御権を失った?最終管理者?
サンクトゥムタワー?
「少しいいかい?」
「どうしました?」
「そういや…そのサンクトゥムタワーって…どこまでシステム的に侵入できるんだ?」
「表面層だけです。ファイヤーウォールすら突破できません。」
「プロキシはある?」
「いえ…プロキシはありませんが…何をする気ですか?」
「リン、この周辺で一番性能の高いPCを用意してくれる?」
「えっと…何をする気ですか?」
「サンクトゥムタワーのadmin権限を強奪できるかも。」