あとがき
まずは本作を読み切っていただき、ありがとうございました。
自分が考えているジークリンデというキャラの印象を某所で語ってみたところ、意外と需要があるっぽいことがわかったんで、どの辺で書こうかと思っていると、百日帝の時代とかいう、銀河帝国史上一番腐敗が色濃かったとされる時代で書いてみるかと考え、作った短編でしたがいかがでしたでしょうか。
え? 肝心のジークリンデがメインで描かれてるシーンが最後くらいしかないじゃないかって? 知りませんな……。
原作本編時代の帝国もなかなかではあるんですが「この手のノリのSFやファンタジー国家としてはマシなほうだな?」という印象があったので、一番酷かったとされる時代の帝国の混迷具合を表現しようと背景事情を色々と書いたのですが、弊害で文字数が短編にしては膨れ上がり過ぎてしまったかと少し思っております(汗)
さて、投稿から結構日数が経過しているのにあとがきなんか投下した理由ですが、毎回短編で恒例になってる登場キャラ解説みたいなの、今回入れるの忘れてたなと気づいたので前置きとして少し書いておくかと思った次第です。
以下メインの登場キャラ解説になります。
登場人物
+皇帝グスタフ
第二二代皇帝。通称“百日帝”
在位期間わずか三ヶ月強と黄金樹の歴史の中でもトップクラスに短い治世を終えた。
ヘルベルト大公の手の者に毒を盛られて死にかけるが、何を考えたのか、病床でマクシミリアン・ヨーゼフ大公に冠をかぶせる。
元より皇太子として立てられていたが、皇帝になれるか、なれたとして治世は長くないと噂されるほどの虚弱体質であったこともあり、元々帝位に興味がなかったマクシミリアン・ヨーゼフのみならず、帝位を望むヘルベルトやリヒャルトといった弟たちからも大きな脅威とはみなされず、兄として慕われていた。
+フリードリヒ三世
第二〇代皇帝。通称“敗軍帝”
ダゴン会戦の敗戦により全国的な動揺が起きたのをみて「自分の息子たちが自分の帝位を脅かすかもしれない」と猜疑心を爆発させ、三男のヘルベルトを精神病の療養の為と称して遠方の離宮に隔離し、残った自分の息子三人全員地方の騒擾を鎮定という名目で辺境管区の総督に任じて帝都から遠ざけ、さらに秘密警察の長であった異母兄を重用し、自己の安寧を求めて宮廷と政府の大粛清を敢行した。
しかしながら決して無能な君主であったわけではなく、宰相のエーペンシュタインを信任して異母兄と対峙させ、恐怖からの保身欲と専制君主との義務感の板挟みになりながらも崩御するまで国政の主導権を握り続けていた。
またダゴン会戦の大敗によって自由惑星同盟という“外敵”の脅威も相応に認識していたため、軍部に対する粛清は最小限に控え、軍事力の再建にもそれなりに力を尽くしていた。
概ね、時代が違えばやや猜疑心が強い凡庸な君主ですんだであろう御方である。
+皇太后ツィタ
フリードリヒ三世の正室。グスタフの生母。
病弱な体で生まれた息子のグスタフのことを深く愛しており、皇帝の命でグスタフが辺境に飛ばされた時は息子を帝都に呼び戻すべく運動していたが、夫たるフリードリヒ三世に入れられることはなかった。
+ウィルヘルム・フォン・リッテンハイム伯爵
北苑竜騎兵旅団長。グスタフの信頼厚き軍人。
たぶんウィルヘルム・フォン・リッテンハイム三世のご先祖様という想定のオリキャラ。一世か二世かは謎。何気に皇帝でもないのに「○世」って公式についている原作のキャラあいつだけよね。
+リヒテンラーデ子爵
宮廷警備の調整役たる衛尉。グスタフの信頼厚き官僚。
たぶんクラウス・フォン・リヒテンラーデのご先祖様という想定のオリキャラ。
衛尉という役職は「ここまでグチャグチャだったらどうやって宮廷警備の調整してたんだ」と筆者が考えてたらぼんやり浮かんできたものである。
後にこの衛尉の職にジークリンデが就任して大暴れするなんてイメージもあるけど、やり出したら文字数がとんでもないことになりそうなので割愛した。
+マクシミリアン・ヨーゼフ・フォン・ルーエシュタント仙帝大公
第二〇代皇帝。フリードリヒ三世の異母兄。先代ファルストロング侯爵。
かつて内務省の高官として社会秩序維持局を統括しており、ダゴン会戦後に猜疑心をさらに強めたフリードリヒ三世に献身的に仕えて信頼を勝ち取り、皇帝の特別検察官として、また処刑人として絶大な権勢を掌中におさめていた。
フリードリヒ三世の死後、「玉座が空位というのはまずかろう」と宣い、混乱収拾の暫定的措置などと嘯いて第二一代皇帝マクシミリアン・ヨーゼフ一世となったが、心ある廷臣の多くから嫌われており、エーペンシュタイン派の尽力によって地方から戻って来たグスタフを始めとする先帝の息子三人全員から反発されたことにより、妥協してグスタフへの譲位で妥協し、ルーエシュタント仙帝大公となる。既に公職から退いているが、内務省を筆頭に中央官衙への影響力は絶大であり、エーペンシュタイン派と帝国官界を二分する官僚勢力の領袖である。
既に人類統一政体としての銀河帝国を見限っており、群雄割拠状態を公認することによって、銀河帝国を「複数国家が並列する新しいタイプの国家」へと変貌させようと目論んでいる。
しかし後の歴史から明らかなように、時代が流れても銀河帝国は「人類統一政体」と標榜することを捨てずに存在し続けていることから、彼の構想は晴眼帝によって潰されたようである。
原作で「帝位争いが激しくなったために一時的に帝位についた」と言われてたが、正式な皇太子としてグスタフがいるのにそうならなきゃなくなった理由ってなんだと色々と考えてたら、いつのまにやら当時の帝国の末期ぶりを象徴するような邪悪な存在になった。
+アンドレアス・フォン・ファルストロング侯爵
上級大将。近衛兵総監。ルーエシュタント仙帝大公の息子。肥満体な男である。
父親のコネで現在の地位を得た側面があるが、それだけに止まらない知性の持ち主でもある。
ぶっちゃけ、この男が軍人にあるまじき肥満体なのは「見栄えからして酷い高級軍人とかいたら面白そうだな」という筆者の思いつきで、よく考えずにやったところがある。
父親のルーエシュタント仙帝大公は高齢で政争の決着がつく前にヴァルハラからお迎えがくる可能性があるので、晴眼帝に直接引導を渡されるのはこっちかもしれない。
+ケファルニス・フォン・エーペンシュタイン
帝国宰相。フリードリヒ三世の信頼を勝ち取り、ルーエシュタント仙帝大公と対峙しながら国政を支えていた苦労人。その経験からやがて事実上国政をちゃんと指導しているのは自分であると自負するに至り、帝位簒奪の野心を抱くようになる。
フリードリヒ三世の猜疑心からくる粛清を、皇帝の機嫌を損なわないように立ち回りながら多くの官僚を守ったことから官僚たちから絶大な支持を得ており、現在ではルーエシュタント仙帝大公派と中央官界を二分する官僚勢力の領袖となっているが、あくまで“ゴールデンバウム王朝の重臣”としてのものであって、彼の野心を明らかにした時に従ってくれる者がどれほどいるかは未知数なところがあり、本人もそれを自覚している。フリードリヒ三世の崩御後にするりと帝位に座ったマクシミリアン・ヨーゼフ一世に対抗するために辺境から先帝の子らを呼び戻したのもその為である。
後の歴史から明らかなようにエーペシュタイン朝銀河帝国もエーペンシュタイン独裁体制も成立していないため、彼の野望は晴眼帝によって挫かれ、歴史の舞台からの退場を余儀なくされたようである。
余談だが、主なモデルはアルスラーン戦記のギスカールとFFTのダイスダーグ。
+リヒャルト大公
フリードリヒ三世の四男。帝国元帥。E軍管区鎮定軍司令官。
兄のヘルベルトと性格も容姿もよく似ている貴公子であり、自分こそが皇帝に相応しいと考えている。順境な時は楽観的に、逆境な時は感情的に物事を判断したがる悪癖もヘルベルトとよく似通っている。
しかし父帝フリードリヒ三世が後継者としてヘルベルトのほうを選んで叛徒討伐の遠征軍司令官に任じたこと。そしてそのヘルベルトがダゴン会戦で惨敗して帰ってきたことから当然自分が父帝から後継者としての扱いを受けると確信していたのに辺境の総督に任命されたことによって、二度ほど強烈な挫折を経験しているため、この悪癖は多少改善傾向にある。
自身の実績づくりと現実的な要請から、帝国は総力をあげて同盟軍との戦線を最低でもイゼルローンあたりまで早急に押し戻す必要があると主張し、帝国元帥の称号と鎮定軍司令官の役職を得るなど、奇しくもダゴン会戦時のヘルベルトとよく似た肩書を持つに至っている。また軍高官を軽視して敗北した兄の失敗から学んだのか逆張りなのか、軍部とは良好な関係を築こうと腐心している。
信頼していた長兄の皇帝グスタフが今際の際に、自分ではなく次兄マクシミリアン・ヨーゼフを次期皇帝に選んだことを『兄たちの裏切り』と認識して激しい怒りを燃やしているが、現在の宮廷の勢力図と帝国の現状とを鑑み、「自分は帝国の皇帝になりたいのあって亡国の支配者になりたいわけではない」と帝国の再建に尽力することを優先し、暫くは耐え難きを耐え、忍び難きを忍びながら雌伏することを選んだ。
後の歴史から明らかなように彼が皇帝になれていないため、帝位を奪わんとして晴眼帝と争って敗北したか、はたまた皇帝になる野心を捨てて兄帝マクシミリアン・ヨーゼフ二世の治世を臣下として支えたかのどちらかの道を辿ったと思われる。
+テレーゼ
リヒャルト大公の細君。伯爵家の令嬢でもある。
父である伯爵は厳格な気質の持ち主で、娘を政略の道具とあまり人格を尊重されることなく育ったため、非常に内気で言葉数が少ない。
その境遇のためか、ある意味では夫のリヒャルトのことを皇帝有力候補の皇族というよりは、自分の夫、一人の人間といった視点で見ており、内心リヒャルトのことを周囲からの重すぎる期待を背負わされて苦しんでいると思っている。
にもかかわらず正妻だからとあれこれと気を使ってくる夫のリヒャルトには実のところかなり心を開いているのだが、それをうまいこと言葉にできずにいる。夫が少なくない愛人を持っていることについて多少思うところはないでもないが、それで夫の苦しみが少しでも紛れるならという気持ちの方が強い。
なお、既にリヒャルトとの子を一度産んでいるため、一児の母でもある。
+ヘルベルト大公
フリードリヒ三世の三男。“ダゴン星域会戦の敗者”
表向きは精神病の治療という名目で、ダゴン会戦の大敗の責任を取らされて遠方の離宮に幽閉されている。最初は本編にも登場させようかと思ったが、直接描写する機会がなくて名前だけの登場になった。
フリードリヒ三世の没後、近寄ってきたかつて自分の派閥に属していた廷臣たちを「自分を見捨てて父帝に阿り保身をはかった連中」と内心苦々しく思っているが、さしあたっては有益にして貴重な手駒であり、彼らを利用して陰謀を巡らせている。
弟のリヒャルトと大変よく似た思考回路の持ち主で、兄帝グスタフの毒殺をはかったのも、宮廷に混乱をもたらすためという目的があったが、自分の信頼を裏切って皇帝に到底ふさわしくない虚弱体質の兄グスタフが分不相応にも自分の玉座を奪ったという報復感情を満たすためという側面も存在した。
もはや帝位が自分の遥か彼方にあるという絶望もあって、もはや帝国そのものがぶっ壊れてもいいから自分は皇帝になるのだという破滅的で矛盾した思考さえ抱くようになっている。
その癖、証拠を残さず慎重に陰謀を巡らせていたが、後の歴史から考えるに晴眼帝の治世で陰謀が白日の下に晒され、その命運を完全に断たれることになるのだと思われる。
+マクシミリアン・ヨーゼフ大公
フリードリヒ三世の次男。第二三代皇帝になる男。後の世にいう“晴眼帝”
下級貴族の母を持ち、また帝位に対する野心を一切持たず、分を弁えて行動していたことから、皇帝になることを熱望していた弟たちから競争相手とみなされず、純粋に兄として慕われていた。
本人としては辺境領主としてそこそこ裕福で無難な一生を過ごそうと考えており、愛しのジークリンデと関係を持ってからは、イチャラブスローライフを送りたいのでより一層その傾向が強くなっていた。
しかしダゴン会戦の大敗によって帝国そのものが本格的にガタガタになってきたため、仕方なく再建のために尽力していたら、兄帝グスタフが死の間際に自分の頭上に帝冠を被せられてしまい、彼の人生計画は木っ端微塵に崩壊し、ジークリンデからの脅迫まじりの説得もあって皇帝になる決意を固める。
+ジークリンデ
平民出身の侍女。マクシミリアン・ヨーゼフ大公の愛人。後に正式に婚儀をあげて皇后となる。
原作読んだ時からなんでか筆者の中で「色々な意味でぶっ飛んでるなコイツ」というイメージがある。
闘争心と自己願望の強い女で、そのため当然のように権力への意志も強い。宮廷侍女になったのも銀河帝国において平民の女が権力に近づく手段として選んだだけであり、帝室を筆頭に特権階級への敬意など一切持ち合わせていないが、表面的には優秀で忠君愛国精神のある女を装うことによって、狭い門を潜り抜けて採用された。
その後は地位のある男に接近し、いい気にさせて自分の望む方向に誘導する形で、隠然とした影響力を築く行為に勤しんでいた。
マクシミリアン・ヨーゼフ大公に近付いたのも、最初は利用するつもりだったのだが、接している内になんだか独占欲が湧いてきて、権力なんかよりも彼が欲しいと考えるようになり、いつしか他の男には許したことがなかった自分の体も彼に預けてしまうくらいに惚れてしまっていた。本人も不思議に思っている。
マクシミリアン・ヨーゼフ大公が辺境領主スローライフ生活を望んでいたので、それにあわせるつもりであったのだが、数奇な運命からマクシミリアン・ヨーゼフ大公が皇帝になる道を歩み始めたことによって、公然と国政で大暴れできるポジションが自分のところに転がり込んできたのでテンションがあがっている。
なお、リヒャルト大公がジークリンデと一緒にいると時折寒気を感じているのは、ジークリンデが「自分に手を出そうとしやがったヘルベルトのカスに似ている」という理由で時々我慢できずに殺気を飛ばしているからです。ちょっとリヒャルトが可哀想だが、奴とてジークリンデに好色な視線を向けたりしているのでな。
余談だが、マクシミリアン・ヨーゼフ二世の即位後、リヒテンラーデ子爵がついている衛尉の役職について、やがて軍籍があるわけでもないのに近衛部隊を事実上牛耳って『衛尉将軍』『宮廷の女将軍』とか周囲から呼ばれるようになるとかいう脳内設定があったりする()
+フリードリヒ一世
第一六代皇帝。ゴールデンバウム朝史上、最初に譲位を行った皇帝。“徹底狂君”の異名を持つ。
理由は自分の能力に衰えを感じてきたからであり、譲位した相手は自身の長男であり皇太子として冊立していたレオンハルトと極めて無難な譲位劇であった。
ルーエシュタント仙帝大公の称号は、退位後に彼が用いた称号である。
原作では名前しかない皇帝であるが、いつかこいつのことも書くかもしれないので筆者の中の詳細設定は割愛する。