スラムで一緒に暮らしていた彼女が勇者になってしまった   作:秋刀魚寿司

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文字数って1話何文字が良いんでしょうかね


第2話

30分ほど経っただろうか、いい加減泣き疲れてきたので俺はこれからのことを考えることにした。

リリィのことは諦めよう、今は難しいだろうが時間が解決してくれる。そうするべき、いやそうするしかないんだ。俺には

場所も変えよう、ここは思い出が詰まり過ぎている、ここに居てはリリィのことを忘れるなんて出来るわけない。

 

俺は必要最低限のものだけ持ちリリィと一緒に過ごしてきた秘密基地を後にした。

 

長く泣いたせいかスッキリした気持ちで歩くことができた、ただやけっぱちになってるだけかもしれないが暗い気持ちよりはいいだろう。

でも長くあてもなく歩いているとリリィのことが頭に浮かんでくる。必死に考えるな、もう忘れろと自分の脳に言い聞かせるが余計に考えてしまう。

俺がリリィと過ごしたのは2年にも満たない期間だ、だが密度はとても濃い。

俺たちは共に傷を慰め合い手を汚した、そんな暮らしだったが少なくとも俺にとっては楽しかった。

報われたと感じた。

俺たちはお互いを愛していた、俺は愛を知らないしリリィは最初こそ愛されたもののすぐに失った。

だからこそお互い愛し合ってくれる存在に依存した。

俺はやはりリリィなしでは生きられないのだろうか、リリィも俺なしで生きることが出来るのだろうか。

そんな考えが浮かんでくる

俺は後ろ髪引かれる思いで歩いて行った

 

 

「おい!何しやがる!」

突然の大声に意識を取り戻して辺りを見ると、右隣に座り込んでいる男がこっちを睨みつけていた。

「てめえ!なんとか言いやがれ!」

どうやらボーっととしていたせいで、座って酒を飲んでいる男の酒瓶を倒してしまったらしい、酒が流れ、瓶は空になっている

 

普段ならこういうことにはならない、もしなったとしても先手必勝とばかりに小型の刃物で斬りつけるかして逃げ出すだろう。

 

男は立ち上がり俺の胸ぐらを掴み顔を殴りつけた。男は地面に倒れ伏した俺の腹や顔を蹴り付ける。

何発か蹴った後、抵抗しないとわかると俺の身体をまさぐり物色し始めた

「おっ!金持ってんじゃねぇか、弁償代として持ってくからな」そう言い男は去った。

 

俺は痛めつけられてる間もリリィのことを考えていた、やはり無理だリリィのことを忘れられない、忘れたまま生きていきたくない。

身体を引きずるようにして俺は秘密基地へ戻り始めた。

 

秘密基地の入り口付近に着くと見慣れない格好をした人間が見えた。

この付近には殆ど人は来ないはず、俺は訝しげに観察した。

よく見るとそいつは見覚えがあった、俺が新聞を買いに行く途中でぶつかった女だ、フードが一緒で金色の髪がチラチラ見えている

 

まさかここまで俺を追ってきたのか!こいつ…まさかスラムのガキが自分とぶつかったのに謝らなかったからってそこまでするか……?

スラムなんて危険な場所に自分から来るなんて、どう考えても誘拐されるだけだろ…

それとも俺以外でスラムに用があって…?

 

俺がそう考えながら観察していたら女は、秘密基地に入って行った

 

俺もそのあとを追いそっと中に入った。

 

秘密基地は複数の部屋がある、女はリビングに入ると物珍しそうにキョロキョロと見回していた。

俺は息を殺し、女が別の部屋に入ろうとしたところで後ろから近づき女の両腕を掴み、後ろ手で縛ったあと首を掴み壁に押し付けた。

 

「おい、お前さっき俺とぶつかった女だな?何が目的でここまできたんだ」

「わ、私は謝罪のために…ここに……」

「謝罪?謝罪させるために一人でここまできたのか?」

「ち、ちがいます…私が謝罪するために……あの…苦しいので手を離してくれませんか……?」

俺は手を離し話を聞くことにした

 

どうやら彼女はなんと聖女様らしい、名前は知らなかったがソフリエ・クーラと自己紹介してくれた。

 

勇者様を連れてくる時に近くにいた少年が抵抗したため衛兵と騎士が暴力を振るったことと、勇者様を無理矢理連れて来たと報告を受け謝罪に行こうとしたが反対されたため、一人で抜け出して謝罪に来たらしい。

 

「衛兵と騎士があなたに暴行を働いたこと、お二人を無理やり引き裂いてしまったこと、本当に申し訳ありませんでした」

 

そう言い頭を下げた聖女に問いかける

「お前がここに騎士たちを向かわせたのか?」

 

「私が教会でお祈りを捧げていた時、突然勇者が目覚めたと感じたのです。聖女は勇者様の存在を感知できますから

そして私はすぐに騎士達に勇者様の居場所を伝え、騎士達は衛兵に連絡をとり急いでスラムに向かっていきました」

「私が騎士達に、勇者様そして親しい方々にはしっかり説明をして納得してから連れてくるようにと言い含んで置くべきでした

本当に申し訳ありません」

 

俺はこの聖女にどう対応すべきかわからなくなった。

さっきまではリリィが連れ去られる原因になった聖女に怒りをぶつけようとしたが、わざわざ抜け出してスラムなんていう危険な場所に謝罪のためだけに来たソフリエに怒りをぶつけて良いのか迷った。

 

お前が謝ってなんになる!リリィを返せ!会わせてくれ!という激情の気持ちと、いまさらどうでも良い、もう元に戻ることはできないという諦めの気持ち。そして自分より数歳上に見えるこの少女の勇気に絆されたのか、尊敬の気持ちも僅かにだが湧いて来ていた。

 

俺はどうすれば良いのか自分の感情も、何をすべきかもわからなくなり頭を抱え地面にうずくまった。

ソフリエは、もうわかった!謝罪は受け取った、だから帰ってくれ!と叫ぶ俺の目の前に座り抱きしめて頭を撫でて来た。

 

「すみませんイドさん、貴方をこんなに追い詰めてしまって。

私がリリィさんを勇者だと伝えてしまったせいでこんなことに…償いをさせてください」

 

「イドさん……私が貴方を育てます、一緒に暮らしませんか?」

 

 

 

 

 

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