『先日、行方不明になっていた佐崎浩二さんが港区の工業地域にて不審死体で発見されました。今年に入り、これまで以上に不審死体の数が急増しており、政府も至急の対応を────』
物騒なニュースが流れている2024年、友人と大学の食堂で話をしていた青年、
「最近物騒だなぁ」
「……そうだな」
「なんか噂だと怪物が出てきて人を襲ってるとかなんとか」
「怪物……ねぇ」
目の前に居る友人に対してそう言葉を返した士は退屈そうに欠伸をすると、座っていた椅子に身体を預ける
「寝不足か?」
「……あぁ、最近は夢見が悪くてな」
「夢見がって、病院とか言った方がいいんじゃないか?」
「大丈夫だろ、そのうち治る」
友人に言葉を返し、閉じた瞳で最近よく見る夢の事を考える。無数の地中が衝突し、消滅していく光景。消滅していく地球は自分たちの生きている世界と限りなく近い世界である場合もあるし、今の地球には存在しない文化が根付いていたりもする。
バラバラの歴史を歩み、それぞれ異なる景色を映す地球……唯一共通しているのは、その世界に仮面ライダーと呼ばれる仮面の戦士たちが存在すること
「仮面ライダー……か」
「仮面? 何て言った?」
「何でもない」
先程なんて言ったのか、執拗に聞こうとしてくる友人を無視した士は意識を落とし、眠りについた
『────お願い』
いつの間にかあたり一面が霧で覆われた場所に居た士の耳に聞こえてきたのは誰かの声
『──お願い、誰か──―』
「……誰だ?」
『! ──聞こえ──、お願い────を──』
靄がかかった景色の先、確かにそこに居るであろう人物は士の声を聞き、語り掛けてきた。しかし、それが誰なのか、何を言っているのか、今の士には聞き取ることが出来なかった
「誰だ? 何を伝えてるんだ」
『駄目──、せめてこれ────』
誰なのかわからない人物の声を聞いていた士の手元には、一枚のカードが握られていた。絵柄は書かれておらず、本来文字が書かれているであろう場所は文字化けしてしまっている不思議なカード
「なんだ、これ」
見たこともないそのカードが何なのか、それを確認しているうちに意識は薄らいでいった
士が目を覚まし、真っ先に視界に映ったのは食堂の天井。入口から外を見ると既に日は暮れ、食堂に居る人の姿もかなり少なくなっていた
「あの野郎、置いて帰りやがったな」
スマホを確認するとしっかりメッセージは入れられているあたりぐっすりと寝ていたから起こさなかったのだろうと士は推測し、帰宅するために荷物をまとめるため立ち上がると、1枚のカードが地面へと落ちる
「これは……夢で見たカード?」
どうして夢の中にあったカードが今、この場にあるのか疑問に感じた士であったがひとまずカードをポケットの中に放り込んで大学を出る。士の住んでいる家は大学から徒歩で10分程の所にあるアパート、そこに繋がる人通りの少ない道を歩いていると背後に嫌な気配を感じ取る
「……なんだ?」
背後に視線を向けた士だったが、そちらに誰かがいたといったわけでもなかったため再び帰り道を歩き出そうとした瞬間────目の前に現れた怪物が、士へと襲い掛かった
「ッ!?」
突然目の前に現れた怪物に殴られた士は壁に叩きつけられ、あまりの痛みに悶絶する
「いっつ……なんだよ、さっきの」
痛みに悶えながら、士が周囲に視線を向けるが、先ほど自分を襲った怪物の姿は何処にもない
「いない……とにかく、逃げないと」
腕を抑えて何とか立ち上がった士はその場から逃げようとするが、彼が動いた瞬間鏡の中から先ほどの怪物が現れ、再び襲い掛かって来る。人並外れた力で抑えられた腕がミシミシと音を立てる中、なんとかそれを振りほどき、その場から逃げようとする────
「嘘、だろ……?」
──しかし、先ほどと同一の怪物が新たに鏡から2体現れ、士の事を取り囲んだ。未知の化け物たちに取り囲まれ、絶体絶命の状況をどうにか切り抜けなければと士が考えていると光の弾丸が怪物たちに命中し、吹き飛ばす
「大丈夫ですか?」
「……あ、あぁ」
「よかった、貴方が無事で」
「無事って、どういう────」
「詳しい事は後ほど、それよりもこれを」
士の目の前に現れたのは灰色の銃を持った少女。一体何が起こっているのかを把握するよりも先に、彼女は手に持っていたアタッシュケースを士へと渡してくる
「鍵は開いています。使ってください」
「使ってって言われても、俺は使い方なんてわからないぞ!」
「大丈夫です、それは貴方のベルトですから」
困惑しながらもアタッシュケースの中を開けた士の目に映ったのは、24のライダーズクレストが書かれていた白いベルトと本のような形状の武器。初めて見る筈のものなのに、不思議と身に覚えがある、そんな感覚に襲われた彼はポケットから先ほどのカードを取り出す。
無地だった筈のカードは士が取り出すと同時に、絵柄が浮かびあがりそれと共に文字化けが修復され、本来の名前が浮かび上がる
「ディケイド……ッ!」
絵柄が浮かび上がった瞬間、士の脳内に流れ込んできたのはベルトや武器の使い方。それを理解すると同時に身体の痛みが引いていく
「なぁ、アンタ。俺がこの力を使えば……この状況を打開できるのか?」
「はい……それだけじゃなくて、この世界を取り巻く状況も、打開出来る筈です」
「……わかった」
彼女の言った、世界を取り巻く状況を打開できる。本来であれば眉唾なモノでも、今は不思議と信じることが出来た
アタッシュケースからベルトと武器を取り出し、士は立ち上がると脳裏に浮かんだ使い方の通りにベルトを腰に装着し、サイドレバーを引いてバックルを回転させると、手前にカードを掲げた
「……変身」
頭に浮かんだその掛け声と共にバックルにカードを装填し、サイドレバーを押し込みバックルを元に戻す
〘 KAMEN RIDE 〙
〘 DECADE 〙
独特な電子音がディケイドの名を呼んだ瞬間、周囲に25の影が出現し、円を描くように士に重なり灰色の姿へ変わると、ベルトから出現した板が頭部の仮面に装着され、灰色のボディがマゼンダに色付いた
「これが、ディケイド」
ディケイドへと変身した士は軽く手を握ると、これは自分が変身した姿なのだと確信する。そして次に見据えたのは眼前に存在する3体の怪物──ゲルニュートへと視線を向ける
『──ッ!? ギャギャッ!』
こちらを警戒していたゲルニュート達だったが自身の獲物だった士がディケイドを見ると、襲い掛かって来る
「はぁッ!」
とびかかってきたゲルニュートに拳を叩き込み後退させると、ディケイドはライドブッカーをガンモードへと変形させ、残りの2体に銃撃をする
『ギャ!?』
『ギャァッ』
目の前に居る3体のゲルニュートを真っすぐ見据えていると、頭の中に目の前の怪物と騎士のような見た目の戦士が戦っている映像が流れ込んでくる。ゲルニュートを銃撃しながらディケイドはライドブッカーを開き、1枚のカードを取り出す
「このカードか、よし」
〘 KAMEN RIDE 〙
片手でレバーを引き、バックルを回転させると取り出したカードを装填し、バックルを元に戻す
〘 RYUKI 〙
カードに宿った力を解放した瞬間、ディケイドに別の姿の鏡像が重なりその姿をディケイドとは異なる戦士──仮面ライダー龍騎へと変えた。そのまま銃撃を続けていたディケイドだったが龍騎への多重変身を完了させると同時にライドブッカーをソードモードへと変形、ゲルニュート達に接敵すると次々と切り裂いていく
「はっ」
『ギャッ』
「せやぁッ!」
『グギャッ!?』
「はぁッ!」
『ググギャァ!』
3体を切り裂いたディケイド龍騎はそのままの勢いで新しいカードを1枚取り出して、ベルトに装填しその力を解放する
〘 ATTACK RIDE 〙
〘 STRIKE VENT 〙
「はぁぁ────」
力を解放し、ドラグクローを呼び出すと腕を引きながらドラグクローにエネルギーを集中させ
「──せりゃあぁぁぁッ!!」
最大までエネルギーを集中した瞬間、ドラグクローを装着した拳を前に突き出すとドラグクローから炎が噴出し眼前のゲルニュート達を焼き尽くした。
目の前の敵を倒した瞬間、ディケイド龍騎の身体にノイズが走るとベルトからカードが強制的に排出されカードから色が失われていった
「これは……?」
突然のことでディケイドが困惑していると、ディケイドの色彩を帯びた身体が灰色に変わり虚像と共にその姿は士の姿に戻る。何が起こったのかと困惑していると士の事を助け、ディケイドの戦いを見ていた少女が近づいていくる
「大丈夫?」
「あぁ……まぁ」
「よかった、それなら付いてきて。貴方に伝えたいことがあるの」
「伝えたいことって、さっき言ってた世界の情勢がどうのって奴か?」
「うん、詳しい話は後でするから……こっち」
彼女の後を付いていくと辿り着いたのは住宅街の袋小路に当たる場所、その袋小路の壁の前に立った彼女は懐から一本のUSBメモリを取り出し、ボタンを押す
【 KEY 】
メモリの起動に呼応するように、ガチャリと鍵の開く音が周囲に響くと半透明の扉が出現する
「どうなってんだ、これ……?」
「どこでもドア、みたいなものかな。入って」
「あ、あぁ……」
彼女に促される形で扉の中に入った士は、眩い光に少しだけ目を閉じたがゆっくりと光に慣れていき、目を開く
「なんっだ、これ……」
呆然とする彼の瞳に映ったのは近未来的な機器が搭載されている宇宙船の艦橋のような場所、天井付近に設置された大きなモニターには街の地図やレーダーが表示されている
「改めて、写野士くん。ようこそ私の鏡月丸へ」
「鏡月丸?」
「この船の名前だよ、私が付けたの……っと、それと自己紹介しなきゃだね。私はイオナ、よろしくね」
「あぁ……ってそれより、何だったんだよさっきの」
士がそう答えるとイオナは、電子端末を操作するとモニターの画面が地図から記録映像に変わる。そこに映し出されたのは夜の工業地域、ニュースで報道されていた男性が自分を襲ったのとは異なる怪物に襲われている様子が映しだされていた
「これが、貴方の世界に起こっている異変……あの人も、助けられなかった」
「さっきも言ってたけど、何なんだ? 異変とか世界の情勢とか……それにこのベルトの事も」
「……とりあえず、座って」
神妙そうな顔をしたイオナに促される形で席に着くと、彼女は再び端末を操作すると複数の地球が表示される
「これは?」
「並行世界の地球、今私と士くんの居る地球とはまた違う地球だよ。今、この地球同士が干渉を始めてるの」
「地球同士が干渉って……どういう事だ?」
「本来、並行世界に存在する地球同士は均衡を保ってるから干渉することはないの……けど、何故かその均衡が崩れて世界同士が干渉を始めた。さっき見せた映像の怪物や士くんの戦った怪物も、本来ならこの世界に存在しないモノが流れ込んできちゃったの」
イオナの説明に対し、士はあまりピンときた様子ではなかったが自分が夢で見た色々な世界、色々な姿の戦士が怪物戦っている夢、そして自分が戦った怪物たちの姿を思い出し、それが絵空事ではない現実なのだと思い知らされる
「そっちはわかった、けど……このベルトとカードは何なんだ?」
「それは貴方が持つべきもの、私の声に応えてくれた、貴方のベルト」
「声に応えたって、それじゃあの夢で俺にカードを渡したのは」
「私だよ、私が貴方にカードを渡したの。世界を救ってもらうために」
「世界を……救う?」
突然言われた世界を救うという言葉、それを聞いた士は疑問符を浮かべる
「うん、士くんには私と一緒にそれぞれの世界を巡って、その世界で均衡を崩してる原因を排除してほしいの」
「それが世界を救うって事になるのか?」
「間違いなく、原因を排除して均衡を取り戻せば、世界の干渉はなくなって本来あるべき姿に戻る……だからお願い、私と一緒に世界を救って」
その言葉を聞いた士は、少しの間思考を巡らせた後に言葉を返す
「わかった、それは……この力を受け取った俺がやらないといけないことなら、手を貸す」
「ありがとう、それじゃあ早速だけど、行こう」
士の了承を得ると、イオナは電子端末を操作する。モニターに表示されていた地球の中の一つが拡大表示される
「それじゃあ、向かうからシートベルト。しっかりね」
「あ、あぁ」
どうやって移動するのかを聞くよりも早く、イオナは端末を操作して近くにあったレバーを押し出す。エンジンが駆動する音が聞こえた直後、身体に急激なGがかかったかと思うとグワンと視界が歪む、今までに感じた事のない感覚を受け気持ちの悪さが込み上がってくると徐々にその感覚は収まっていく
「大丈夫?」
「き、気持ち悪い……」
「あはは、最初は慣れないよね。それよりも到着したよ」
「別の地球ってやつにか?」
「うん、その証拠に……ほら」
イオナが士にモニターの方を指さすとニュースの映像が映しだされる
『──未確認生命体の脅威が去ってから数年、政府は未確認特例法の改正を推し進める方針の用です、それに伴い警視庁に設立された未確認生命体対策班の規模縮小を──』
「未確認……生命体」
「うん、ここは──―クウガの世界だよ」
表示されるニュース映像を見ながら、イオナはそう言葉を紡いだ