士、タケルと別れてからユウスケと共に病院へ向かって歩いていたイオナは慣れない街の景色を観察しながら歩いていると同じく隣を歩いていたユウスケが彼女に声をかける
「なぁ、イオナちゃん」
「どうしたの?」
「いやさ、そう言えば普段は船の中で何をしてるのかなって」
「あぁ、やっぱり気になる?」
「そりゃまぁ、仲間だからって何でも話せるわけじゃないってのはわかってるけど……やっぱりさ」
「仲間……か」
ユウスケから仲間と言う言葉を聞いたイオナは僅かに頬を綻ばせた後、彼の一歩前に出てそのまま話を始める
「別に変な事はしてないよ、船のメンテナンスとかセキュリティシステムの強化とか……そんな感じ」
「セキュリティの強化……やっぱり別の世界の技術が他の世界に盗られるとマズいって事?」
「うん、それぞれの世界にはそれぞれ発展した技術があるから、変に混ざっちゃうと今とは違う形で異変が起きるかも知れないし……それに、あの船の動力は少し特殊だから」
「……それもそっか」
異なる世界へ渡る事の出来る船、そんな船の動力に使われているものだから特殊なものに違いはないかと一人で納得しているユウスケを見て、イオナは軽く息を吐く
「それより早く病院に行こ、異変について少しでも情報を仕入れないと」
「そうだな」
そう言った二人は、病院へと向かう足取りを少しだけはやめた
ユウスケとイオナが話をしているのと同時刻、怪物探しを始めた士はスマホに表示したSNSで情報を集めながら歩いていると横を漂っていたタケルが声をかけてきた
『あっ、士さん。前から人来てます』
「おっと、すまん。助かった」
声をかけてくれたお陰で前から歩いていくる人とぶつからずに済んだ士は彼に軽く礼を言うと、タケルは柔和な笑みを浮かべて言葉を返す
『気にしないでください、今の俺にはこれくらいしかできませんから』
「……その状態じゃ、やっぱり戦えないのか?」
『はい、こっちからの攻撃はすり抜けちゃって』
「それもそうか……だが、それ以上に厄介なのはお前が受けた肉体と魂を分離する攻撃か、どんな感じだったか覚えてるか?」
『確か……ぱっと見は光弾みたいな感じで、特別感はなかったです。俺もその時は普通の攻撃だと思って防御したら……そのまま』
「成る程な……そうなると件の怪物の攻撃は防御じゃなくて基本避けた方が良さそうだな」
タケルから聞ける範囲で情報を聞きながら士はまだ見ぬ怪物への対策を立てていく。幸いな事にギーツの世界を巡りその力を使えるようになった影響で戦闘中にとれる選択肢も大幅に増えた
そんな士に少し目を向けたタケルは彼が他の人とぶつからないように再び周囲へ気を配ろうとしたところで、背中に悪寒のようなものが走る
「どうした?」
『……なんか、少し嫌な感じがして』
足を止めた士がタケルからその言葉を聞くと顎に手を当てて少し考える素振りを見せ、改めて近くを漂う彼に声をかける
「その感じがしたの、どっちかわかるか?」
『詳しくはわかんないですけど、大雑把になら』
「わかった、案内頼む」
そう言った士はイオナに一言だけメッセージを送り、タケルの感じたという気配の方へと向かう。目の前を進むタケルを追う形で走っていると周りに居た人が少しずつ少なくなり、辿り着いたのは人通りの少ないトンネルの中
「ここか?」
『……はい、嫌な感じもかなり強くなってます』
「そうか、それなら────ッ!」
当たりかもな、と言葉を続けるよりも先に背後に悪寒を感じ咄嗟に回避行動を取ると、士の上空を針のような光弾が通り過ぎ背後の壁へ激突、炸裂音と共に火花を散した
不意の一撃を避けた士は立ち上がりながらその一撃を加えたモノの方へ視線を向けるとそこに居たのはタケルの変身するゴーストを禍々しくしたような怪物──アナザーゴースト
「……お前が戦ったの、アイツか?」
『間違いない……はずです』
「はずって、どういう事だ?」
『俺が戦った怪物の要素はあるけど、なんというか……ナニカに上書きされてる感じがして』
「上書き……か、そこら辺の話は後だな」
直後、痺れを切らしたように襲い掛かって来たアナザーゴーストをいなした士は右足を軸にくるりと一回転しながらディケイドライバーを装着、ディケイドのカードを取り出す
「変身」
〘 KAMEN RIDE 〙
〘 DECADE 〙
電子音と共に出現した複数の虚像が士の身体に重なりディケイドの素体へと変化すると、前面に出現した複数の板がアナザーゴーストの方へと激突、ダメージを与えながらマスクに装填され灰色だった姿が鮮やかに色付く
「とりあえず戦ってみる」
『はい、気をつけて』
「了解」
ディケイドへと変身した士はタケルに言葉を返しながらライドブッカーをガンモードへと変形させ、アナザーゴーストへ向けて引き金を引いた。銃撃音と共に放たれた複数の光弾はまっすぐアナザーゴーストへと命中、火花と共にダメージを与える
「攻撃は、効くみたいだな」
『────ァッ!?』
ディケイドは銃撃を続けながら一気に接近し、アナザーゴーストの脇腹に蹴りを叩き込む。もろにその一撃を受けたアナザーゴーストは道路を挟んだ反対側の通路まで吹き飛ばされ、壁に叩きつけられる
一方のディケイドは、吹き飛んだアナザーゴーストを警戒しながら攻撃を加えた方の足で軽く地面をトントンと叩いた
『どうかしたんですか?』
「……いや、何か分からんけど少し違和感が、な」
『違和感?』
「あぁ……っと、言ってる場合じゃないな」
言葉を続けようとしたが、フラフラと立ち上がるアナザーゴーストに気付いたディケイドは頭の片隅に出現した違和感を振り払いながら再び銃口を向けた……が、瞬間、アナザーゴーストの姿が煙のように消える
「な────ッ!?」
直後、ディケイドの背後に衝撃を受け膝をつく。続けて感じる悪寒に対して咄嗟にライドブッカーをソードモードへと変形させ、背後に向けて切り払う
「──手ごたえが、ない」
確かに攻撃は加えた……が、切っ先に触れた瞬間アナザーゴーストは霧のように消える。先程までとは違う本物の幽霊を相手にしているような感覚に陥ったディケイドは出来る限り死角を減らす為にトンネルの壁に背中を預け、息を吐こうとした瞬間戦いを見ていたタケルがディケイドへ向けて叫ぶ
『士さん! 後ろですッ!』
「──ッ」
言葉を聞き、その場から離れると壁をすり抜ける形でアナザーゴーストが現れその場に降り立つ
『────寄越せ』
先程まで明確に発さなかったアナザーゴーストが発した言葉の意味を理解するまでの一瞬、その一瞬でアナザーゴーストはディケイドとの距離を詰める
「やばっ」
『寄越せェ!』
アナザーゴーストがディケイドの身体を掴んだ瞬間、士が感じたのは身体から力が抜け、代わりに得体の知れない何かが自分の中へと入ろうとしている感覚
「くっそ……力が、入んねぇ……」
少しずつ朦朧とした意識を何とか保ちつつ、身体を動かそうとするが先ほど以上に力が抜け、意識を手放そうとした瞬間アナザーゴーストが弾き飛ばされた
『士さん、大丈夫ですか!?』
「あ、あぁ……すまん、助かった」
肩で息をしながらぼやけた意識を元に戻しながら何が起こったのかを少しずつ整理していく
「……なんだったんだ、あの感じ」
『何があったんですか?』
「さぁな、わかったのは掴まれた瞬間、何かが俺の中に入ってこようとした位だ」
『何かが……身体の中に?』
「あぁ、嫌な感覚だった」
少し離れた場所でゆっくりと起き上がるアナザーゴーストに目を向け、ディケイドも立ち上がろうとするが身体に力が入らない。どうするべきか考えようとしたディケイドは、先ほどアナザーゴーストが吹き飛ばされた瞬間の事を思い出す
「そう言えば、さっきアイツを吹き飛ばしたの……タケルが何かしたのか?」
『はい、この姿でも何かできないかと思って印を結んで念を飛ばしたら、それが効いたみたいです』
「……突拍子なさすぎんだろ、寺育ち」
あまりにも突拍子のない答えに頭を痛めたディケイドだったが、続けてタケルに言葉をかける
「タケル、お前が戦ってきたのって大体あんな感じの奴か?」
『えっ、まぁ……似てるような、違うような?』
「はっきりしないな……けど、今の状態になる前は真っ向から戦えてたんだな?」
『はい』
少しの問答をした後、眼前に迫っていたアナザーゴーストの一撃をなんとか避けタケルとの会話を続ける
「タケル、一つだけ突拍子もない提案をさせてもらう」
『提案?』
「あぁ、正直俺よりもお前の方が多分あんな感じの相手は慣れてる……だから、タケルが俺の身体を使え」
『俺が、士さんの身体を?』
「あぁ、今のお前は魂だけの存在……言っちまえば幽霊だ、だからお前が俺に憑いて、俺の身体を使え」
『で、でも……』
「我ながら突拍子もないと思ってるよ……けど、正直俺も限界が近い、身体じゃなくて精神の方がな」
会話をしながらアナザーゴーストの攻撃を避け、出来る限りダメージを最小限に済ませようとするディケイドだったが自分でも実感できるほどに限界が見え始めていた。傍目に見てもそれが理解できたタケルは少しの沈黙の後、言葉を紡ぐ
『わかりました、やってみます』
そう言ったタケルはディケイドの近くまで行くと、その身体に触れる。目を閉じて出来る限り意識を集中させていると、今まで軽かったはずの身体にずっしりとした重みを感じた。それと同時にゆっくりと目を開くと視界に映ったのは自分へ向けて攻撃を仕掛けようとするアナザーゴーストの姿、タケルはその一撃に対して回避行動を取った後、自分の眼で自分の状態を確認する
「……入れた?」
『みたいだな』
自分が士の身体に入り、それを動かしてると認識したのと同じタイミングでどこかから士の声が聞こえてきた
「士さん? 一体どこに?」
『さぁな、よくわからんが成功したみたいで良かった……そんじゃ、後は任せても大丈夫か?』
「はい、大丈夫です」
『そうか、無責任だが……後は頼んだ』
その言葉を最後に士の声は聞こえなくなり、同じタイミングでディケイドへの変身も解除され、ドライバーの装着も解除される。どうして変身が解除されたのか、そんなことを考えるよりも前にタケルにとって慣れ親しんだベルト──ゴーストドライバーが腰に出現し、目の前にオレゴースト眼魂が現れる
「何がどうなってんのかわからないけど……よしっ!」
何が起こっているのかを考えるよりも先にこの状況をどうにかするのが先決だと判断したタケルは目の前に浮くオレ眼魂を掴んで起動スイッチを押すと、ゴーストドライバーへとセットする
【アーイ】
【バッチリミナー・バッチリミナー・バッチリミナー・バッチリミナー】
『「変身ッ!」』
流れるような所作でドライバーを操作したタケルはその言葉と共にゴーストドライバーのレバーを押し込むと。セットしたアイコンの模様が変化、同時にタケルの周囲に光の粒子とオレンジのラインが入ったパーカーゴーストが出現する
【カイガン! オレ】【レッツゴー! 覚悟! ゴ・ゴ・ゴ・ゴースト! 】
陽気な音声と共に周囲に出現した光の粒子が身体を包み込みゴーストの素体を形成するとパーカーゴーストに身を包み仮面ライダーゴーストへの変身が完了すると、タケルはパーカーのフードを脱ぎ、アナザーゴーストへと視線を向けた