アナザーゴーストが姿を消したのを確認したディケイドはドライバーを外して士の姿に戻ると、ユウスケの方へ向かっていく
「ユウスケ、どういうつもりだ? なんで止めた」
「それは────」
「それは私が説明するよ」
ユウスケが士の問いかけに答えるよりも前にやってきたイオナが彼の言葉を遮った
「士くん、まずはこれを見て」
「なんだこれ?」
「入院中のタケルくんの身体データだよ」
病院でイオナが取ったタケルの身体データを見せられた士だったが、そもそも医学的な知識がない士は頭をひねるだけだったがイオナは身体データの画面を縮小すると、横に先ほどの戦闘映像を表示する
「さっきの映像、撮ってたのか?」
「タケルくんに教えられてからドローン飛ばしたから、少ししか撮れなかったけどね……それで士くんの戦ってた怪物────アナザーゴーストのデータから奇妙なデータが取れたから、ユウスケに頼んで士くんを止めて貰ったの」
「さっきから訳の分からない情報ばっかなんだが……まぁいいか。それで、奇妙なデータって一体何なんだ?」
士がイオナにそう問いかけると、彼女は戦闘映像を一度停止しアナザーゴーストをタップすると、様々な情報が表示される
「アナザーゴーストの中にね、凄い数の生体情報が入ってたの。その中にはタケルくんと全く同じ生体情報もあった」
「タケルと同じ生体情報?」
「そう、まだ確定って訳じゃないけど万が一の事が無いようにユウスケに士くんを止めに行ってもらったんだ」
「……あのバケモノ──アナザーゴーストを倒しても被害者が目を覚まさなかったらって事か?」
「うん、私たちの目的はこの世界で起こってる異変を解決する事だけど、それでも救える人を見捨てていい理由にはならないから」
イオナの言葉を聞き士は納得の表情を浮かべた後、改めてイオナに問いかける
「それで、倒さないにしてもこれ以上の犠牲者は出ないようにしたいだろ? そこら辺はどうする気だ」
「ここから先は船で話すよ、情報を出すにも大画面の方が見やすいだろうし」
「わかった、俺も話しておきたい事があるしな」
「話しておきたい事?」
「あぁ、けどそれも船に戻ったら話す」
それだけ言うと、士は一足先に船へ向けて歩き出した。イオナもまた彼の後を付いていく形で船に戻ろうとしたが、その前にビートチェイサーにまたがったまま二人の話を聞いていたユウスケの方へ向かう
「ユウスケもありがとう、お陰で間に合ったよ」
「気にしなくていいよ……実際ギリギリ間に合った感じだったし」
「それでもだよ、わざわざバイクまで引っ張り出して貰っちゃって」
「まぁ、これに関しては最近動かしてなかったしな」
そうして二人で話をしていると、先に船へ向けて歩き出していた士が振り向いて二人へ声をかける
「早く船戻った方がいいんじゃないのか?」
「うん、今行く! それじゃ私も良くね」
「おう、と言っても俺はバイクだから多分追い越しちゃうけどな」
そう言うと、ユウスケはビートチェイサーで、士とイオナの二人は徒歩で船へと戻っていった
一足先に戻ったユウスケが船の中にビートチェイサーを格納しているのを横目に見つつ、士とイオナが船の中に入ると、中で待っていたタケルが二人の事を出迎える
『あっ、二人ともお帰りなさい』
「ただいま、タケルくん」
「おう、ただいま。船で待ってたんだな」
『はい』
「お待たせ、一番早く帰って来てたのに俺が最後になっちまったな」
「駐輪って案外時間かかるから仕方ないだろ」
「そうか?」
「そうだろ……それよりイオナ、あのバケモノ──アナザーゴースト? だっけか、アイツに関してわかった情報を教えてもらえるか?」
「そうだね、ちょっと準備するから待ってて」
士の言葉に頷いたイオナは手に持っていた端末を操作するとブリッジ内に備え付けられた液晶の画面が点灯し、アナザーゴースト関係の情報が表示される
「これが士くんが戦ってた時に取れたアナザーゴーストの情報だよ……と言っても、能力とかは使わなかったからタケルくんを今の状態にした力が何なのかはわからなかったけどね」
「そこに面目ない、戦いながら相手の情報を抜き出すみたいな器用な真似は少し苦手でな」
『あの、そう言えばイオナさんはどうしてあのバケモノの事をアナザーゴーストって呼んでるんですか?』
タケルの漏らした言葉を聞き、士とユウスケもそう言えばと言った表情でイオナの方を見る
「あぁ、それはね、データにあるアナザーゴーストって怪人と見た目が一緒だからだよ」
「そうなのか?」
「うん……と言っても詳細は残ってないし、記録媒体に名前と見た目が載ってただけだから私も詳しくはわからないけど。それじゃあ話を続けるね」
そう言ったイオナは話を再びタブレットを操作すると次に表示したのはアナザーゴーストの中に存在する無数の生体情報と、病院でタケルの身体を解析して得た生体情報。異なる場所で取得した全く同じ二つの情報を並べるとイオナは自分の中に生まれた可能性を話し始めた
「アナザーゴーストに襲われた人はみんな意識が戻らない、それは間違いないよね?」
『はい、間違いないと思います』
「だよね……情報が少なくて断定できないから、ここからの話は私の仮説になるけど、アナザーゴーストは襲った人の魂を奪ってるんじゃないかな」
「魂を……ってどういう事だ?」
「人間って基本的に魂と肉体の二つに分けられるでしょ」
「肉体と……」
「魂……」
「うん、それでアナザーゴーストの被害者は肉体と魂を無理やり分断された状態になってるんだと思う」
イオナは端末を操作すると先ほど表示した情報の上に人間の形のピクトグラムを表示すると、それを二つに分けてそれぞれに肉体、魂の文字をピクトグラムの上にのせた
「そうやって分断した魂を方をアナザーゴーストが奪って、自分の中に吸収してるって言うのが私の仮説だよ」
「成る程……」
「けど、肉体と魂を分断するなんてこと出来るのか?」
『……出来ると思います、眼魔世界には魂を肉体から分離して別の器に移す技術があるし』
「眼魔……世界?」
『あぁ、えっと、簡単に言うと俺たちの世界とは別の世界って感じです』
「って事は、アナザーゴーストはその眼魔世界から来た?」
「…………いや、そうじゃない」
「士くん?」
イオナから視線を向けられた士は先ほど戦ったデュークの事を考えながら、口を開く
「実は、あのアナザーゴーストを作った奴に遭った」
「ホントなのか!?」
「あぁ、逃げられたけどな……そいつが言ってたんだ。この世界を使って色々実験をしているってな」
「実験……士くん、他にその元凶の特徴はなかった?」
「ある……と言うか俺もアイツの話をするつもりだったしな」
そこから士は先ほどあったこと──シンゲツと言う男と遭遇した時の事を三人へ話始める。具体的な目的は不明だがこの世界で何かしらの実験を行っていたこと、自身と戦った時にライダーの力を道具として使用していたこと
『ライダーの力を、道具みたいに……』
「それで士、そのシンゲツって奴はどうしたんだ?」
「逃げた、灰色のオーロラみたいなのを使ってな」
「じゃあ何処に行ったかわからないって事だ」
「あぁ。色々問い詰める為に捕まえられるが良かったんだが」
『でも、アナザーゴーストを追えば自然とそのシンゲツって人にも行きつくんじゃないですか?』
「確かに、その可能性は高いかも。それにアナザーゴーストの犠牲者がこれ以上出るのも防ぎたいよな」
「じゃあ、やっぱり最優先すべきはアナザーゴーストの対処か……それでイオナ、具体的な対象法はあるのか?」
「どうなの、イオナちゃん……イオナちゃん?」
「えっ、あっ……ごめん、聞いてなかった」
ボーっとした様子のイオナを見た三人は顔を見合わせた後でユウスケはパンと手を叩いてから口を開く
「よし、一旦休憩するか。流石に話ばっかりで疲れたしな」
「……そうだな、そうするか」
ユウスケの言葉に同意する形で士も立ち上がってから身体を軽く伸ばす
「少し飲み物でも取りに行ってくる」
「あぁ、それなら俺が行くよ。士も動きっぱなしで疲れてるだろ?」
「そうか? それなら言葉に甘えさせてもらうとするか」
「あっ、それとタケルくん。少し話したいことがあるから一緒に来てもらってもいい?」
『はい、わかりました』
そう言うとユウスケは士の肩に軽く手を置いてからタケルと一緒に部屋から出て行った。立ち上がっていた士は席に座り直し少し浮かない表情をしているイオナの方へ視線を向ける
「あはは、気を遣わせちゃったみたいだね」
「あそこまでボーっとしてるとな……何かあったのか?」
「あぁ、ううん、本当に大したことじゃないの……少しだけ、昔の事を思い出しちゃっただけ」
「昔のことか……ならあえて聞かない、いずれ話してくれるんだろ?」
「うん、もう少し整理出来たら……絶対に話すよ」
イオナのその言葉を聞いた後、士はそれ以上深く聞くことはせず、ユウスケたちが戻ってくるのを待ち始めた
休憩を始めてから数十分後、ある程度休むことの出来た四人は改めてブリッジに集まると、イオナが話を始める
「みんな、さっきはごめんね。それでどこまで話をしたっけ」
「確か、アナザーゴーストの対処法をどうするかって話だったよな?」
「あぁ、あのシンゲツとか言う男はアナザーゴーストに対処してれば自然と行きつくって判断でな」
「なるほど、確かに今はそれが一番だね」
『それで、あのアナザーゴーストの対処法ってなにかあるんですか?』
「探すだけなら異常な生体情報を探知すれば見つけられはすると思う……けど、アナザーゴーストから生体情報を分離する方法はこれから作らないとかな」
「分離する方法は思いついてるのか?」
「うん、こことは違う世界の技術だけどね」
そう言ったイオナがブリッジの大画面に表示したのは生物のレリーフが刻まれた十種類のスタンプと、それに関連する情報の数々
「なに、このスタンプ」
「バイスタンプ、リバイスってライダーの居る世界で使われてるアイテムだよ。このスタンプには悪魔……人間の中にある力の塊? を人間から分離して実体化させる力があるの」
「成る程、その分離機能を使うってわけか」
「うん、分離して実体化させる機能を応用してアナザーゴーストから被害者の生体情報を分離、解放するアイテムを作る。タケルくん、眼魂も解析したいから実物を借りたいんだけど」
『やってみます』
タケルはそう言うと目を閉じて胸の前で印を結ぶ。すると彼の胸の中心が淡いオレンジに輝き始め目の前にオレゴースト眼魂が出現する。そして光が収まるとタケルはゆっくりと目を開き眼魂を掴むとイオナへと差し出した
『はい、どうぞ』
「ありがとう。それじゃあ早速作り始めちゃうね」
「了解……っと、イオナ。出来ればアナザーゴーストを探せる探知機能みたいなのも作ってもらえるとありがたいんだが」
「うん。それは完成次第二人の携帯に送るね」
「あぁ、頼んだ」
ブリッジを出て行ったイオナの事を見送ると士とユウスケ、タケルの三人は顔を見合わせる
「それじゃ士、俺たちはアナザーゴースト探しだな」
「闇雲に探しても仕方ない……が、こういう時はSNS頼りか。目撃情報があるかも知れないしイオナの探知機能が完成するまではそれを頼りに、だな」
「了解」
『あの、俺も一緒に────』
「いや、タケルくんは眼魂の事もあるし船で待機して欲しい」
『……わかりました』
タケルにそう告げてから士とユウスケの二人は拳を突き合わせると、船の格納庫まで向かいバイクのエンジンを起動する
「それじゃ、士。あんま無茶すんなよ」
「そっちもな」
バイクにまたがりエンジンを吹かせると、それに呼応するようにゆっくりと船のハッチが開かれる。そうして完全に出発の準備が完了すると士とユウスケは一度拳を突き合わせた後、アナザーゴーストを捜索のため街へ繰り出した