イオナからこの世界はクウガの世界と言われた士は仮面ライダークウガの姿を確認するため懐からカードを取り出し、怪訝な表情を浮かべる
「どうしたの?」
「いや、ディケイドとこのジオウってライダー以外のカードが全部褪せてるんだが」
「少し見せて」
士にそう言われたイオナが自分の目でカードを確認するとディケイドとジオウを除く全てのカードから色彩が失われていた。彼女はそれを確認するとカードを士へと返す
「多分、世界の均衡が崩れた影響だと思う」
「この褪せたカードがか?」
「うん、元のバランスに戻ればカードも元に戻ると思うよ」
「そうか……でも、それならどうしてジオウってライダーのカードは無事なんだ」
「仮面ライダージオウは少し特殊なライダーなの」
そう言ったイオナは席に座って士の方を見る
「仮面ライダージオウは、一つの歴史の終着点でもあるの。今までの歴史を収束させ、新しい未来を開拓する仮面ライダー。彼の力は世界じゃなくて歴史に刻み込まれているから、力が不安定になることがないんだと思う」
「成る程」
ジオウという仮面ライダーの力の説明を受けた士は、殆ど理解できていないモノの適当に言葉を返すとイオナはジトっとした視線を彼に向ける
「本当にわかってる?」
「ああ、大体わかってる……それより、この世界で起こってる異変を探すんだろ?」
「あっ、そうだね。それじゃあ士くん。早速だけど地上に降りよっか」
「……そう言えば、この船ってどこに止まってるんだ?」
「空だけど」
何を当たり前の事をと言わんばかりの様子を見て、士は軽く頭を抑えた後に考えるのを辞めた。そうして彼女と共に地上へと降りると広がっていたのは自分が居た世界と何一つ変わらない世界の景色
「なんか、別の世界に来たって感じしないな」
「別の世界って言っても滅多なことがない限り文明の進歩は均一だからね、そう思っちゃうのも仕方ないかも」
「そう言うもんか。それで、クウガの世界って言ってたが具体的にはどんな世界なんだ?」
士はイオナと共に見慣れた街並みを歩きながら改めてこの世界について質問をする
「基本的には士くんたちの居た世界と変わらないよ。けどこの世界には未確認生命体って呼ばれる怪物が存在してて、それと戦っている仮面ライダーも居るの。それがクウガだよ」
「成る程な、それならこの世界でやることはその未確認ってのを倒せばいいのか?」
「たぶん違うと思う。あそこ見て」
イオナが指を差したのはビルに設置された大型モニターより流れているニュースの映像。そこでは既に未確認生命体は駆逐され、それに伴い未確認に関する特例法を見直すか否かの議論が行われていた
「未確認が、倒されてる?」
「そうみたい。最初に確認された未確認生命体第1号から最後に確認された第46号までが警察とクウガの協力で倒されたみたい」
「じゃあ、この世界の脅威ってのはもう取り除かれてるのか?」
「うーん。さっき見せて貰ったカードの色が褪せてるから何か異変が起こってる筈なんだけど……」
「地道に足で探すしかないか」
「あっ、それなら日用品の買い出しをしてもいい? 士くんも船に住み込む訳だし、色々と必要でしょ」
「……それもそうだが、別の世界でも金は使えるのか?」
「問題ないと思うよ、士くんの世界でも私の持ってるお金使えたし」
それなら問題ないかと考えた士が街を歩いていると、後方からサイレンの音が鳴り響き、数台のパトカーが士たちの隣を走っていった。事件でもあったのかと考えていた士だったがその光景を見た周囲の人達が怯えを含んだ表情でパトカーの向かった先を見ている事に気付き、イオナの方を見る
「イオナ」
「……うん、行ってみよう」
そう言った彼女と共に、士はパトカーの向かった方に駆け出した
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パトカーが事件現場に到着し、警官が臨戦態勢を取ると地面から湧き上がるように2体の未確認生命体──ズ・グムン・バとメ・ガドラ・ダが姿を現す。その2体はまるで理性のない獣のような挙動で警官隊へと遅いかかる
「総員、射撃開始ッ!」
「「「「「了解!」」」」」
遅いかかる2体の未確認に対し、警官隊は神経断裂弾を撃ち込んでいく。弾丸をもろに受けた未確認はその場に崩れ落ちるが程なくしてメキメキと壊れた人形のような挙動で立ち上がると身体を修復し周囲にいた警官たちに襲いかかる
「くっ!」
「うわぁ!?」
怪物に襲われ、恐怖と混乱を混ぜたような警官たちだったがなんとか犠牲を出すことなく未確認と交戦を続けていると、警官隊の乗ってきたパトカーを乗り越える形で一つの影がグムンへと蹴りを入れる。
突如として攻撃を受けたグムンはその箇所に紋章が浮かび上がり、腰のベルトに繋がるようなヒビ入っていく、それがベルトまで到達した瞬間、グムンの身体はドロドロに溶けて消滅した
「大丈夫ですか?」
「あ、あぁ……助かったよ」
「後は俺に任せて、皆さんは退避を」
「任せてしまって、大丈夫なのか。我々も支援を──」
「大丈夫です、怪我をしてる人も多いみたいなので、そっちはお願いします」
1体の未確認を倒し、近くに居た警官にその言葉をかけたのは白い装甲を身に着け、オレンジがかった赤の複眼を持つ戦士──仮面ライダークウガ グローイングフォーム。クウガは残ったメ・ガドラ・ダに対して構えを取ると、地面を蹴り駆け出した
「はぁッ!」
『ァァ!?』
「おりゃあ!」
『ゥッ!?』
クウガは自身に対して攻撃を仕掛けようとしたガドラの拳を弾くと拳を腹に叩き込み、パンチとキックのラッシュを加えてダメージを与えていく。ガドラは次第にダメージが蓄積したのか先ほどまでいた場所から大きく弾き飛ばされ、地面に転がる
「これでッ!」
相手が怯んだのを確認したクウガは構えを取ると右足に封印エネルギーが集中していく。完全にエネルギーが溜まるとクウガは助走をつけた後大きく跳躍し、ガドラに飛び蹴り──グローイングキックを放った
『!?!?』
蓄積したダメ―ジの影響で避けることのできなかったガドラはキックを直に受けると、紋章が身体に浮かびあがりグムンと同様にヒビがベルトに到達した瞬間、身体がドロドロに溶けて消滅する
「はぁ……はぁ……はぁ……ッ!」
2体の未確認が完全に消滅したのを確認したクウガは、肩で呼吸をしたのち、その場に膝をつく。それから少し経った後、クウガと未確認が交戦していた場所に一人の刑事がやって来る、彼は膝を突いた状態のクウガを確認した途端血相を変えた様子でクウガへと近づいた
「大丈夫か!?」
「は、はい……なんとか……」
直後、クウガの変身が解け中から大学生くらいの青年が姿を見せる。彼は刑事に向けて弱々しい笑みを浮かべると、刑事は彼の頭を雑に撫でた後、肩を貸してその場から立ちあがる
「ユウスケ、わかってると思うが今は休め。第37号との戦い以降、お前は無茶をし過ぎだ」
「佐城さん……けど、俺がやらないと、もっと犠牲が……」
「……あまり警察を甘く見るな、確かに未確認対策班の規模縮小の話は出ているが急にと言う訳じゃない。今は俺たちに任せてお前は休養を一番に考えろ」
佐城と呼ばれた刑事はクウガに変身していた青年──
それを聞いた佐城刑事は、この場ではそれ以上追及せずユウスケに肩を貸したまま自身の車がある方へと歩いて行った
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少し離れた場所に身をひそめ一部始終を見ていた士とイオナ、完全に人が居なくなったのを確認すると二人も立ち上がりそそくさとその場を離れる
「あれが、この世界の仮面ライダーか」
「うん、仮面ライダークウガ……だけど、どうして白い姿だったんだろう」
その場から離れながら、士がイオナに問いかけると彼女は言葉を肯定した上で疑問を言葉にする
「どうしてって、アレがクウガの……いや、違う」
あの白い姿のクウガが彼の本来の姿なのだろうと口に出す途中で、士は自身の夢に出てきた仮面ライダークウガの姿を思い出す。夢の中で見たクウガは赤い姿で戦い、戦況に合わせて青の姿、緑の姿、紫の姿を使い分けていたが、白い姿で戦ってはいなかった
「あの白い姿は、なんなんだ?」
「……あの白い姿はクウガの不完全形態だった筈、グロンギとの戦いが終わった後なら基本形態の赤の筈なのにどうして……?」
「もしかしたら、本来の姿からあの白い姿になった何かがあったのかもな」
どうしてクウガが白の姿で戦っているのか、それに関する疑問は残ったまま二人は拠点にしている船まで戻ろうとしたところで士は足を止める
「士くん? どうしたの?」
「……何かが、いる」
足を止めた士が感じたのは、ゲルニュートに襲われた時と同様の嫌な気配。それも自分を狙っているのではないが、明確な悪意を持った気配
「イオナ、悪いが先に戻っててくれ。少し行ってくる!」
「えっ!? ちょっと────」
困惑するイオナを置いて悪意を感じた場所まで向かった士が目にしたのは、地面に横たわり既に正気のない人々とその中心に立っている一体の怪人。ライオンのような風貌をした怪人の腰には先ほどみた未確認生命体と同じベルトが巻かれていた
『リント、ザガグボギヂガグ。バビロボザ』
「無学なもんでお前らの言葉はわからん……だが、さっき見たのと違うからお前はここでどうにかしといた方が良さそうだ」
目の前に居る未確認は先ほどの存在とは異なる、明確な目的と悪意を持っている。直感的にそう感じた士はディケイドライバーを腰に巻きカードを取り出す
『ビガラ、クウガバ』
「クウガではないな……変身!」
〘 KAMEN RIDE 〙
〘 DECADE 〙
カードを装填し、バックルを回転させると24の鏡像が重なった後、マスクに複数の板が装着され灰色の姿に鮮やかな色がつく。ディケイドへと変身した士はライドブッカーをガンモードに変形させると目の前の未確認へ向けて引き金を引く
「ふっ!」
『!』
いかにも獣と言った挙動で銃撃を避けた未確認は、そのままの勢いでディケイドへ接敵しその身体を引き裂かんと爪を振るう
「ッ! この──」
『ボギャブバ』
なんとか爪の一撃を避けたディケイドは脇腹に蹴りを叩き込もうとするが足を掴まれると、身体を大きく振り回された後、地面へと叩きつけられる
「ガッ────!」
身体を鎧で守られているとは言っても衝撃は直に身体を襲う、地面に叩きつけられた肺が圧迫されたことで口から空気が吐き出される
『ジョパギバ、ビガラ』
「……何言ってるかわかんねぇよ」
よろよろと立ち上がったディケイドはカードを一枚取り出して、バックルに装填した後、回転させる
〘 ATTACK RIDE 〙
〘 BLAST 〙
電子音が周囲に鳴り響いた瞬間、ディケイドは眼前の未確認に向けて引き金を引く。先程までの銃撃とは異なりマゼンタの残像を発生させながら放たれた光弾は不規則な軌道を描き、直撃する
『ボンデギゾッ!』
「まだだ」
ガンモードのライドブッカーを握りしめたままディケイドは新たにカードを装填し一気に接敵する
〘 ATTACK RIDE 〙
『バビゾギジョグド、ビガラゼパパガビパバデバギ!』
「だから何言ってるかわかんねぇけど……どうせ俺じゃ勝てないとかだろう、けどな、俺にとっちゃ────」
〘 SLASH 〙
「お前に一撃でも深手を与えれば勝ちなんだよ!」
目の前の未確認の爪による斬撃がディケイドの装甲を深々と抉るが、それの直前。懐に滑り込ませていたライドブッカーがカードを読み込むと同時にガンモードからソードモードへと変形し──
「食らいやがれッ!」
──未確認の胸を逆袈裟の斬撃を加えた
『ゴボセェ!』
「……これで、暫くは人を襲えないだろ」
ディケイドの与えた斬撃は目の前の未確認に痛手を与えた、それでも攻撃を続けディケイドを殺そうとしたが傷口が一瞬ノイズのようになりバチバチと音を立てる
『ボンビズゼパ、ボセギジョグパビベンバ』
その言葉を呟いた後、目の前の未確認はディケイドの前から姿を消した。ダメージが蓄積し倒れそうになるがライドブッカーを支え代わりに使いなんとかその場で踏みとどまる
「死体が、消えた?」
そこでディケイドは、周囲にあった筈の死体が消失している事に気付く。確かにあの未確認との戦闘中にはあった筈なのに今の自分の周りからは消えている、その奇妙な現象に違和感を覚えながらも変身を解いて、その場から立ち去り、イオナと合流しようと歩き出した────
「……しまった、船への戻り方、聞いて……ない……」
──ところで、どうやって戻ればいいのかを聞き忘れていた事に気付き、近くのベンチに座るとその場で瞳を閉じた