アリスと言う新たな仲間を加えてからゴーストの世界を旅だってから数日、船内で各々自由な時間を過ごしていた士たちは、館内放送でイオナからの呼び出しを受けメインブリッジに集合していた
「珍しいな、館内放送で呼び出しなんて」
「もしかして、そろそろキバの世界に到着するとか?」
「うん、機能解放の作業も終わったから今日中には到着できると思う……けど、今回は別件」
そう言うとイオナは懐からガラケー型のアイテムを取り出し、テーブルの上に並べていく
「携帯?」
「しかもガラケー……随分とレトロ嗜好だな」
「でもタッチパネルっぽくないかこれ」
「マジか? あっ、マジだわ」
「あっ、ファイズフォン
旧世代なのか次世代なのか判断に困る携帯をマジマジとみていた士とユウスケを他所に、アリスは目の前に置かれているガラケ────―ファイズフォンXを珍しいものを見る目で見ていた
「知ってるのか?」
「うん、私たちの世界で少し前に流行してた携帯電話……色々多機能で便利なんだよねぇ」
「成る程……それで、これわざわざ作ったのか?」
「自衛用の武器としても使えるし、これなら電波関係なく通信できるから……それじゃ士くん、はい」
「ん、おう」
士にマゼンタのラインが入ったファイズフォンXを渡したイオナは、続いてユウスケに赤のラインが入ったものを、アリスにはシアンのラインが入ったものを渡すと自分の懐から自分用のファイズフォンXを取り出す
「全員分の連絡先は入ってるから、これからは何かあったらコレで連絡しあおう」
「おう」
「了解」
「はいはーい」
話が一区切りついた四人は到着するまで再び解散しようとしたところで、士はふと前にイオナが言っていた事を思い出す
「そういやイオナ、すんごい前に次に向かう世界を完全に決めるのは無理とか、次の世界は着く直前にならないとわからないとか言ってなかったか?」
「……あっ」
「「あっ?」」
「……ごめん、アップデートして次の世界をある程度指定できるようになったの伝え忘れてた」
「あぁ…………」
「……よし、この話終わり。解散」
彼女が自分に隠し事があるのを理解してはいたが、それはそれとして今回の件は完全にイオナの伝え忘れという事を察した二人はそれ以上何を言うでもなく、一旦解散の流れになった
そんなことがあってから数時間後、そろそろキバの世界に到着すると再びの館内放送で連絡を受けた三人はメインブリッジに集まり、自分たちの席に座る
「準備完了……それじゃみんな、キバの世界に入るよ」
「おう」
「よっしゃ」
「オッケー」
全員がシートベルトを着用した事を確認したイオナは艦長席に座り備え付けの端末を操作する、エンジンの音が鳴り響き徐々に身体にGがかかり始める
時間にして数分の出来事だが、視界が激しく揺られる感覚に襲われるが船全体の振動と共に徐々に収まっていく
「……うへぇ、これが船で世界を移動する感覚かぁ」
「少しだけ……慣れてきた……」
キバの世界への移動が完了し、シートベルトを外した士とイオナの二人は自分の席に座ったまま項垂れているユウスケとアリスに目を向ける
「やっぱ世界移動の時の振動は早急にアップデートした方がよさそうだな」
「……だね」
ユウスケとアリスの体調が落ち着くのを待ち数分、二人がしっかりと回復したのを確認してから四人でブリッジのテーブルを囲む
「そういえば、アクティブにして船の機能ってどんな感じのやつなんだ?」
「うーん、説明するよりも世界に出てみた方が早いかも」
「よしっ、それじゃ早速行ってみましょ」
「……だな、習うより慣れろだ」
士とアリスの二人が一足先に出口まで向かって歩き出し、その後を追う形でユウスケとイオナも出口へと向かう
船の出入り口を開き外へ出ると、目の前に広がっていたのはファンタジー小説や漫画などでよく描写されるタイプの中世的な街並み
「今まで以上に別の世界に来た感強いな」
「なんかワクワクしてきたかも」
「だなぁ……って士、アリスちゃん。どしたのその服」
「「へっ?」」
ユウスケにそう言われた士とアリスの二人は自分の恰好を確認するとさっきまで自分たちの着ていた服装ではなく士は旅人のような服装に、アリスはRPGの盗賊職のような服装に変化していた
「というか、ユウスケも変わってるぞ」
「えっ、あっ、ホントだ」
「うん、全員上手くいったみたいだね」
士に指摘されたユウスケも自分の服装を確認すると彼の服もまた、普段着ているものから村人のような服装に変わっている。自分たちの服装の変化に各々が困惑していると宿屋の看板娘風の服装をしたイオナが三人の後ろから現れる
「イオナ、もしかしてこれがアクティブにした船の機能か?」
「うん、もちろんこれだけじゃないけどね……ほら」
そう言ったイオナが自分たちの出てきた船の方を指さすと、そこにあったのは船ではなく鏡月丸という看板が掛けられた宿屋があった
「これがアクティブにした船の機能。その名もワールドイミテーションシステム……鏡月丸をその世界にあっても違和感がないように再構築、それと一緒に私たちの服装も世界に合わせた形で変身させる機能だよ」
「……とんでも機能だな」
「けど、これでどんな世界でも動きやすくなるって事でしょ?」
「うん、この機能はその世界に私たちが溶け込むためのモノだからね」
「よっしゃ、それじゃ早速街に繰り出して、異変がないかの調査に────」
ユウスケがそう言ったタイミングで、彼らの今いる場所よりも向かって左側────町の中心側とも言える場所から悲鳴が聞こえてくる
「早速厄介事か、行くぞユウスケ!」
「おう!」
「あっ、ちょっと待ちなさいよ! アタシも行く!」
「み、みんな!?」
士とユウスケの二人は悲鳴が聞こえた場所へ向かって駆け出していく、そんな二人から少し遅れる形でアリス、イオナの二人も走りだした
逃げるように中心から離れようとする人達と反対側に進んでいくとステンドグラスの意匠を持った怪人────ファンガイアが宙に吸命牙を出現させ、住民を襲おうとしていた
士とユウスケの後ろに居たアリスは先ほど受け取ったファイズフォンXをガンモードへ変形させると宙にある吸命牙を狙い撃つ。意識の外からの攻撃を受けたファンガイアが怯んでいる隙に士が体当たりを仕掛けて住民からファンガイアを引き剝がす
「大丈夫ですか!?」
「は、はい……ありがとうございます……」
士がファンガイアを引き剥がした隙にユウスケは住民に声をかけてその場から逃がした
自分の狙っていた獲物を捕食することのできなかったファンガイアはしがみ付いていた士の事を投げ飛ばすと、忌々しそうに言葉を発した
『貴様らァ、よくも崇高な俺の食事を邪魔したな』
「はっ、何が崇高な食事だ。ただの襲い掛かってただけだろうが」
『黙れ、我らファンガイアにとって貴様ら人間は家畜、平和に暮らし肥えた命を我らに捧げることこそ至高の喜びだとなぜわからぬ!?』
「あんたの価値観を俺たちに押し付けるな」
自分勝手なことを言っているファンガイアと対峙した士は住民を逃がし終え隣までやってきたユウスケと頷き合うと、揃ってベルトを装着し変身の構えを────取ろうとしたタイミングで、銀色のナニカがファンガイアと衝突しその態勢を崩す
「なんだ?」
「……?」
突如として起こった出来事に士とユウスケ、そして彼らの後方で状況を見守っていたイオナとアリスの二人は困惑の表情を浮かべる……しかしそれ以外の住民たちは、ファンガイアと衝突した銀色の存在が何なのかを理解し、先ほどまでと一転して安堵の表情を浮かべている
「そこまでだ、我が同胞よ。それ以上無辜の民を傷つけることは許さない」
そんな声と共に現れたのは、物語の王子が着用するような白い貴族服を身にまとった金髪の青年。腰に差した鞘から引き抜いたであろうサーベルの切っ先をファンガイアへと向ける
『我が同胞だと? 笑わせるな! 他種族との融和へと逃げ、ファンガイアの誇りを捨てた裏切り者がッ!』
「君が私をなんと言おうが構わない……だが、一つ聞かせて欲しい。なぜ民へと襲い掛かった」
『襲いかかる? 違うな、我はただ食事をしようとしただけだ……他者の命を啜り、すべての種族の頂点に立つのが我らファンガイアだ……貴様の言う民とやらも、我らが種族にとってはただの家畜! 家畜を食らおうとして何が悪い!』
「……そうか」
ファンガイアの言葉を聞いた青年は、手に持っていた剣────ザンバットソードを地面に突き立てると厳しい目つきで眼前の同族を睨む
「私は、君にも何か事情があるのではないかと……僅かに期待していた。だが、君は────貴様は自分本位な我欲に身を任せ、我ら一族の敬愛する民に手を出した────サガークッ!」
【
先ほど飛来した銀色の物体────サガークは解読のできない文字の羅列とベルトとして青年の腰に装着される。笛のような待機音が町中に鳴り響くなか、青年はじゃコーダーを取り出すとサガークのジャコーダーるロットへと装填する
【
機械的な言葉と共に、青年の身体を鉄色へと変わり。その身に運命の鎧────サガを身に纏った
「その罪、死という罰をもって贖うがいい」
『……ふざけるなァ!』
サガの姿を見たファンガイアは少しの間竦み、足を一歩下がらせるが自分を鼓舞するようにサガへ向けて吠えると彼へ向かって走り出す。破れかぶれの特攻ともいえるその行動を見たサガは、少し視線を下に向けた後────地面に突き刺していたザンバットソードを引き抜くと、ファンガイアの胴に斬撃を加える
『ぐぅッ!?』
「はぁッ!」
先ほど放った一撃に連鎖されるように、サガは左手に持ったザンバットソードと右手のジャコーダーでファンガイアへの斬撃を加える
『……ぐっ……うぅ……ッ』
斬撃によるダメージを受け、膝をついたファンガイアを眼前に見据えたサガは、再びザンバットソードを地面へと突き刺し。ウェイクアップフエッスルを取り出し、サガークへと読み込ませる
【
サガークからウェイクアップコールが鳴り響くと同時に、皇帝の紋章が上空へと出現────世界が、蒼白い夜へと変わる
「これが私から貴様ヘ送る────
目の前のファンガイアをジャコーダービュートで貫き、皇帝の紋章へ向けてジャンプすると内部でジャコーダービュートを絡め捕りながら再び姿を現す
『アッ……アァ……』
「せめて安らかに……眠れ」
その言葉を最後に、サガは宙吊りになったファンガイアへと魔皇力を流し込む……瞬間、ファンガイアの全身がステンドグラスのように変化し粉々に砕け散った。その後、サガは変身を解除し青年の姿へ戻る
【
「あぁ、サガークもお疲れ様」
サガークが去っていくと同時に、先ほどまでの戦いの様子を見守っていたであろう住民たちは青年たちへと集まっていく
「王子!」
「王子! ありがとうございます!」
「いや、私は私のすべき事をしただけだ……みんなも、無事でよかった」
「王子のお陰です、ありがとうございます!」
「これ、よかったら持って行ってください」
「あぁ、ありがたく受け取らせてもらうよ」
住民たちからの感謝の言葉を受け取っていた青年は、少し離れた場所へと移動して様子を眺めていた士たち四人を見つけると。住民たちにどいてもらいながら近くまでやってきた
「君たち、先ほどのファンガイアから民を守ってくれたね……ありがとう」
「おう、どういたしまして」
「さして苦労したわけでもないし、ほとんどは王子様がやってくれたしね」
「お、おい二人とも、相手は王子様だぞ?」
「そうだよ、もっと丁寧にないと」
「いや、気にしなくていい……それより、もしかして君たちは旅の者かい?」
「……な、なんでそう思うんですか?」
「これでも、記憶力にだけは自信があってね……住民簿に君たちの写真はなかったようだから」
「そ、そうです! 最近この町を訪れて……ね!」
「あ、あぁ、実はそうなんだ」
少し挙動不審気味になっているアリスと士の二人に視線を向けたイオナは少しだけ呆れたような視線を向けると、三人よりも一歩前に出る
「えっと……王子様、お聞きしたいことがあります」
「私に答えられる事なら答えよう……と言いたいところだが、少々ここでは人の目が多い。場所を移しても構わないかな?」
「はい、士くんたちもいいよね?」
イオナの言葉に士たち三人が頷いた事を確認すると、王子は柔和な笑みを浮かべ
「それでは行こうか、この国────ヴァルセリアの中心、ヴァイスファング城へ」
中央に鎮座する白亜の城を手で示した