「あの、大丈夫ですか?」
「んぁ?」
ベンチに座り意識を飛ばしていた士は、不意にかけられた声で目を覚ます。
目の前に立っていたのは食材の入った手提げカバンを持った女性、自分よりも1、2歳年上の彼女は士に対して心配そうな視線を向けていた
「あ、あぁ……大丈夫、です」
「そうですか? 怪我をされているようだったので」
「少し転んだだけなんで……大丈夫です」
流石にさっきまで未確認と戦ってましたと言うことの出来ない士は目の前の女性にそう言うと、彼女は疑念の混ざった視線を士の方に送ってくる
「本当ですか?」
「え、えぇ……とにかく大丈夫なんで、それじゃこれ──ッ!」
士はさっさと立ち上がってその場から瞬間、肩に激痛が走りその場に膝をついてしまう。その様子を見た女性はすぐに士の元に駆け寄ってくる
「肩を貸しますから、掴まってください」
「い、いや、本当に大丈夫なんで──」
「少し顔色も悪いのに大丈夫な訳ないでしょう、簡単な治療くらいなら出来るので、ほら」
そう言われた士は、言われた通りに彼女の肩を借りて立ち上がると、公園から移動する。一体どこに連れて行かれるのかと思っていた士だったが彼女が向かったのは公園から少し歩いた場所にある喫茶店。
彼女はポケットから鍵を取り出すと裏口の扉を開けると士を伴い中へと入る
「ここは?」
「おじいちゃんから継いだ喫茶店、救急箱取ってくるから座って待ってて」
カウンター席に士を座らせると裏手へと入ってしまった。1人残された士は特に何をするでもなくボーっと座っていると唐突に喫茶店の入口が開き、青年が店内に入って来る
「ただいまー……って、お客さん?」
「お前は……」
「えっ? どっかで会ったことあったっけ?」
「あぁ、いや、知り合いに似てたからビックリしただけだ……それと、俺は客じゃない」
「へぇ、そんじゃアンタ誰、もしかして強盗だったり……」
喫茶店の入口の前に立った男──ユウスケは士に対して鋭い視線を向けた直後。奥から救急箱を持った女性が戻って来る
「お待たせしましたー、あらユウスケ。お帰りなさい」
「あ、ただいま姉ちゃん。それよりコイツ誰?」
「怪我してるみたいだから連れてきたの。ほら、とりあえず上脱いで」
ユウスケが姉ちゃんと呼んだ女性から急かされる形で士が上に着ていた服を脱ぐと、さきの未確認との戦いで負った傷が露わになる。ディケイドの装甲により守られていたお陰でそこまで酷い傷ではなかったが、肩には大きな打撲痕が出来ていた。
彼女は手慣れた手つきで、打撲痕やそれ以外にも所々出来ていた擦り傷を消毒すると、絆創膏を貼ったり包帯を巻いたりと処置をしていく
「ひっでぇ傷だな、何があったんだ?」
「少し高めの階段から落ちただけだ……そこまでいう程じゃないのに」
「目の前で膝をついてたのに、それは通じません……これで良し」
一通りの応急処置を終えた女性は、柔らかい笑みを士に見せる。それを見て少しバツが悪くなった士はそそくさと脱いだ服を着直し、頭を下げる
「……ありがとうございます」
「うん、素直にお礼が言えるのはいいことだ。あっ、そう言えば自己紹介をしてなかった。私は代永ハルカ、それでこっちは弟のユウスケ」
「……ども」
「君は?」
「えっと、写野士です」
「士くんか、ここで会ったのも何かの縁だし、少し休んでいって。お茶くらいはごちそうするから」
ハルカはそう言うと士が同意をするよりも早くお茶の準備を始めてしまった。彼女に終始ペースを握られっぱなしの士は軽く息を吐いた後ユウスケの方に視線を向ける
「凄い人だな、アンタの姉さん」
「まぁな、それが良いところでもあるんだけどいつか変な事件に首を突っ込むんじゃないかってヒヤヒヤしてるよ」
「それはアンタも同じでしょ、ユウスケ。少し前なんて佐城さんがアンタの事背負って帰ってきたからどうしたのかとビックリしたわよ」
「あれは……その……そう、捜査協力中にね! 少しドジっちゃって」
「アンタ、専攻してる考古学の知識を貸してるだけって言ってなかったっけ? ただの大学生がなんでそんなことになんのよ」
「それは……えーっと、その……」
姉からの追及にしどろもどろになり始めたユウスケを見て、士は軽く息を吐くと助け船を出すために口を開く
「専攻してる分野の知識を貸すにしても、写真で見るのと実際に見るので発見できるものが違うとかじゃないですか?」
「そうなの?」
「そ、そうなんだよ! 写真だと小さいところの文字とかが潰れちゃってる時もあるからさ、実際に見た方が判別つくって言うか……とにかく、俺にはそっちの方が性にあってるの!」
「それなら、そう言うことにしといて上げるわ。はい、士くん。お待たせしました」
話を無理やり切り上げたユウスケの事を見ると、ハルカはひとまず納得しといてやると言わんばかりの表情を作ったのち、コーヒーを士の前に出してくる。それに返す形でハルカに軽く頭を下げるとコーヒーに口をつける
「! 美味しい」
「でしょ、おじいちゃんから受け継いだ特性ブレンドなんだ」
「そうなんですか」
「うん。私たちのおじいちゃんって若い頃凄い旅好きだったみたいでね、このブレンドも旅の途中で知り合った人から教わったんだって」
旅好き、と言う言葉を聞いた士は彼女たち姉弟のおじいさんに僅かながらシンパシーを感じてしまった。最も士の場合はディケイドの力を得た事による成り行きといった側面が強いため、好きで旅をしていたという言葉に羨ましさすら感じる
「そう言えば、さっき専攻云々言ってたけど士も大学生なのか?」
「ん、あぁ……訳あって少し前から休学中? だけどな」
「なんで疑問形なんだよ……」
世界の均衡を守るために大学そっちのけで旅にでたので休学届けを出せなかったなどと言えるわけもなくコーヒーに口をつけて誤魔化すと何かを思い出したらしいハルカがユウスケに話しかける
「そう言えばユウスケ、未確認も出なくなったんだしそろそろ警察の手伝いも終わるんでしょ?」
「あ、えーっと、まぁ」
「それなら、本格的にどうするか考えないとね。アンタのやりたいこと」
「その話はまた今度でもいいだろ──! あっ、佐城さんかた呼び出しだ、行ってきます!」
そそくさと喫茶店から出て行ってしまったユウスケを見たハルカは、ため息を吐いたあと士の方を見る
「バタバタしちゃってごめんね」
「いえ、それより……なんか訳アリみたいですね」
「そう言う訳じゃないの、あの子、昔っから何となくで動くことが多かったから……未確認生命体が出て、ユウスケが警察に協力するようになって、これが俺のやりたかった事なんだって言ってたけど」
そこまで言うとハルカは少し心配そうな表情を見せる
「こうやって、未確認が居なくなって。ユウスケも警察に協力をする必要がなくなって……そうしたら、ふと心配になっちゃったんだ。あの子ももう、子供じゃないんだけどね」
「家族を心配するのは、別に変な事じゃない……と思います」
「ふふっ、そうだね」
「ごちそうさまでした。俺もそろそろ失礼します、いくらですか?」
そう言った後、士が財布を取り出すがハルカは手を振ってそれを拒否する
「言ったでしょ、ご馳走するって」
「けど──」
「どうしてもって言うなら、今度またうちに来て、しっかりお客さんとして」
「……わかりました」
それだけ言うと士も喫茶店から出ると、少し離れた場所からこちらに走って来るイオナの姿が見えた
「イオナ?」
「はぁ……はぁ……やっと見つけた」
「すまん、心配かけた」
「ううん、連絡先交換してなかったこっちのミスだし……それより、また出たよ」
「! 場所は?」
「案内する」
また出た、と言う言葉を聞いた士はそれが未確認の事を示しているのだとすぐに気付くと、イオナの案内で現場まで向かう
二人が現場までやって来ると、この前と同様に避難誘導をしている警官隊にバレないよう通り抜けて、未確認とクウガが交戦している方へ向かうと、少し先から鈍い打撃の音が聞こえてくる
「このっ!」
『ッ!』
辿り着いた視線の先に映ったのは白いクウガが3体の未確認生命体──ゴ・ジイノ・ダ、メ・ギャリド・ギ、ズ・ザイン・ダを相手取っている光景だった。クウガはザインとギャリドの打撃を避け、ジイノの振るった槍を蹴りで弾いた後、拳をその身体に叩き込む。
一見するとクウガ優勢で進んでいる戦闘だったが、よく見るとクウガは既に肩で呼吸しており、かなりの疲労が蓄積しているように見える
「士くん」
「わかってる、イオナは──」
「大丈夫、しっかり隠れてるよ」
「了解、それじゃあ行ってくる」
イオナにそう言った士ディケイドライバーを腰に巻いた後、物陰からバッと飛び出てクウガと3体の未確認が戦闘をしている方に向かいながらガンモードにしたライドブッカーの引き金を引く
『『『ッ!?』』』
「! アンタは──」
突然の銃撃を受けた未確認たちは怯み、クウガは士の方を見て仮面越しに驚きの表情を浮かべる。それは少し離れた場所でクウガの様子を見ていた佐城刑事も同じ
「おい君! 一体そこでなにを────」
「助太刀に来たんだよ、この世界の仮面ライダーを」
佐城刑事が近寄ってくるよりも早く、士はライドブッカーからカードを取り出しバックルに装填する
〘 KAMEN RIDE 〙
「変身!」
その言葉と共に、レバーを押し込むとバックルは回転する
〘 DECADE 〙
電子音が鳴り響くと同時に、士はその場から走り出すと周囲に出現した鏡像もそれに合わせる形で動き出しながら重なっていく、灰色のディケイドに変化した瞬間、ベルトから出現した板が仮面へと装着され、灰色の身体に鮮やかな色がついた
「アンタは一体……」
「俺はディケイド、野暮用でこの世界に来た通りすがりだ……それよりお前、本調子じゃないんだろ。手を貸す」
「必要ない……って言いたいところだけど今回ばっかりは助かる」
起き上がった3体の未確認に対して、並び立ったディケイドと白のクウガはそれぞれ構えを取った。
最初に突進攻撃をしてきたザインを2人で捌いた後、クウガはギャリドを、ディケイドはジイノを相手にする。クウガはギャリドが両手のカッターを使い仕掛けてくる攻撃を捌きながら、確実にダメージを与え、ディケイドもガンモードのライドブッカーを盾替わりしながらジイノの槍を防いだ後、ジイノに向けてライドブッカーの引き金を引く
『アァ!?』
「はっ!」
そうしてジイノとの距離を離した後、ソードモードに変形させたライドブッカーを振るいザインへとダメージを与える
「ふっ!」
ギャリドと戦闘を続けながらディケイドとグロンギたちの戦闘に視線を向けたクウガは、戦闘を優勢に進めている事を確認したのち、重い拳をギャリドへと叩き込んだ。瞬間──腕のアンクルに付いていた白の石が僅かに赤く輝いた
それを感じ取り僅かながら身体に力のみなぎったクウガは構えを取り、エネルギーを右足に集中させる
「はぁぁぁぁぁぁ────!」
完全にエネルギーが溜まったと認識した瞬間、クウガは助走をつけた後ジャンプ、グローイングキックをギャリドへと叩きこむ。その一撃を受け、ギャリドの身体に紋章が浮かびあがると腰のベルトにエネルギーが到達、その身体はドロドロに溶けて消滅した
「こっちも決める!」
ディケイドはライドブッカーからカードを取り出すと、バックルに装填しレバーを押し込む
〘 FINAL ATTACK RIDE 〙
〘 DE・DE・DE・DECADE 〙
カードのエネルギーを解放した瞬間、ディケイドの前方にデータ化された10枚のカードが出現する。ライドブッカーを構えたディケイドはそのカードをくぐり刀身にエネルギーを集中させた後、ジイノとザインの2体を切り裂いた
『ァ、ァァァァァァ──―!?』
『ギャ、ァァァァァ──―!?』
斬撃を受けた2体は絶叫を上げながら全身にノイズが走り、ギャリドと同様にドロドロに溶けて消滅する。唯一異なったのは未だ溶けた痕跡の残っているギャリドとは異なりジイノとザインの2体は痕跡を残すことなく蒸発したということ
「ふぅ……」
戦闘を終えたディケイドは軽く息を吐くと、少し離れた場所に居るクウガへと視線を向ける。視線を向けられたクウガもまた、突如と現れた未知の存在──―ディケイドへと視線を向けていた
【期間 クウガの世界終了まで】Next⇒
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