足のマフラーを吹かせ、キングジャマトへと接敵したテイルは腕に装着されていたシールドで思い切り叩きつける
「!? 」
意識から外していた存在による攻撃を受けたキングジャマトはよろめき、後方へと下がる
「みんな、大丈夫!?」
「あ、あぁ」
「俺も、問題ないよ」
「私も……それよりアンタ、そのバックルどうしたのよ?」
彼女が言っているのは自分の使っているブーストバックルの事だとわかっていたテイルはマスクの内側で少し困った表情を浮かべる
「それが、俺にもわかんないんだ」
「わからないって、どういう事よ」
「勇気を出さななきゃ、俺も動かなきゃって思ったら……鐘の音が聞こえて、落ちてきたミッションボックスの中に、このバックルが」
「なにそれ……」
「よくわかんねぇけど、もしかしたら神様が奇跡を起こしてくれたのかもな」
テイルたち3人がそんな話をしている横で、クウガは後退したまま動かなくなったキングジャマトの事を真っすぐ見据えているとジャマトは再び動き出す
「動いた」
ゆっくりとした足取りでこちらに向かってくる。全員が臨戦態勢を取った瞬間、キングジャマトは急に動きを止めたかと思うと徐々に身体が崩壊を始め、数分しなううちに完全に崩れ終わり、ジャマトの立っていた場所には木片だけが残された
「倒した、のか」
「……で、いいんじゃねぇか?」
「って事は、今回のお手柄は……エイト?」
「俺が、倒した?」
本当に倒したのか実感が持てないままエイトが変身を解くと同じく変身を解いたウィンが思い切り彼の背中を叩く
「いっ!?」
「やったじゃねぇか! エイト!」
「ほ、本当に、俺が倒したの?」
「多分ね、現にさっきの奴は木片になってる訳だし」
「……そっか、俺が、倒したんだ」
最初は持てなかった実感が徐々に沸き上がり、小さくだがガッツポーズを取る
「けど、忘れちゃ駄目よ。今回勝てたのはあくまでもブーストバックルのお陰、それとビギナーズラックね」
「わかってるよ」
「まぁまぁ、ひとまず勝ったわけだし細かい事はいいじゃなねぇか。とりあえず祝勝会でもするか?」
「俺は一旦船に戻るよ、さっきの事も────」
ユウスケが船に戻る事を3人に伝えようとした瞬間、ウィンがポケットからスパイダーフォンを取り出す
「どうかしたの?」
「あぁ、いや、なんか連絡きたっぽい」
そう言ってスパイダーフォンの画面を確認すると、怪訝な表情を浮かべるとユウスケの方に視線を向けた
「どうかしたのか?」
「あぁ、いや。なんかデザグラの運営がお前と会いたいから連れてきてくれだとさ」
「運営が……俺に?」
なんで急にと言った表情を浮かべるユウスケだが栄エイトたち3人もなんで運営が彼を呼んだのかわかっていないらしく怪訝な表情を浮かべていた
「それで、どうする?」
「……とりあえず、会ってみるよ。いつまでこの世界に留まるかわからない以上、あんまり不和を起こすわけにはいかないし」
「わかった、エイトたちも別にいいよな?」
「う、うん。俺は別にいいと思うよ」
「私もここで会わないなら無理矢理連れて来いとか言われても面倒だし」
「それもそうだな、そんじゃ行くか」
デザイアグランプリの運営、この世界で一大ムーブメントを引き起こしたイベントを牛耳っている場所。もしかしたら何かしら異常の手がかりを掴むことが出来るかも知れないと考えたユウスケは気合いを入れてから、運営の元まで向かった
現代において、ユウスケたちがキングジャマトとの戦闘を終えたのと丁度同じ頃、時空の通路を通りディケイドの操縦するタイムマジーンは世界の過去へ到着した
「よっと」
コクピットからディケイドが降り、変身を解除するのと同時に、タイムマジーンもその場から消失する
「ここが過去の世界……特に変わった所はないのが、逆に不気味だな」
周囲を見回した士が抱いた感想は、何の変哲もない普通の世界……と言う印象。かつて自分たちの過ごしていた世界と変わった所等何処にもない、過去の世界はついさっきまでいた現代はネオン輝く世界とは正反対の、平凡な世界のように見える
「……俺の考えは、間違ってなさそうだな」
過去の世界の様相を見て、現代で開催されているデザイアグランプリそのものが異常であるという可能性の信憑性の高まりを感じた士は、過去に来た理由を思い出し、目的地に向けて歩きだす
人目につかない場所を選んでタイムマジーンを降りた士は降り立った場所から市街地へ出てから、ギーツたちが最後に戦った工業地帯へ向けて歩みを進める
「にしても、ホントに何も変わんないな」
士の視界に映っているのは当たり前の日常を過ごしている人達の姿、ある人は親子で買い物に出かけ、ある人は動画の撮影らしき事をしている。ふと街に出かければ見ることの出来る普通の生活をこの世界の人達は送っている。そんな街を歩いていると士の視界の隅に白い影が映る
「ん?」
視界の隅に映った白い影が何なのかを確認するためにそちらの方向を向くと、そこに居たのは1匹の白い狐。未知の真ん中に座りこっちを見ている筈なのに通行人は気にする様子もない、そんな奇妙な光景をまじまじと見ていると狐は一鳴きした後、士についてこいと目で訴えかけてくる
「……なんなんだ?」
現在進行形で狐に化かされているような感覚の士だったが、白い狐と言う存在がこの世界の仮面ライダーに関係があるのではないかと考え狐の後を追う。狐は迷いのない足取りで道を進み、少しずつ市街地から離れ林道へと入っていく
「この街に、こんな所が……」
林道を進んでいく士の目の前に現れたのは石造りの階段。士の前を歩いていた白狐は慣れた足取りで階段を上っていくのを見て、彼もゆっくりと階段を上り始める
そこそこ長い階段を上りきった先に広がっていたのは立派な三重塔と、その隅にポツンと建てられた祠と様々な願いの書かれた絵馬。それを視界に収めてから自分をここまで案内した白い狐を探す士だったが、どこを見ても狐の姿を捉えることが出来なかった
「マジで狐に化かされたか? 神社に祀られてんのもお稲荷さんだし」
祠に祀られた狐様を見た士は、ここに来た以上なにかしら祈っておいた方が良いかと思い、とりあえず今自分の抱えている異常を解決できること、そして自分たちの旅が無事に終われることを願うと、改めて周囲を見ていると、コツコツと階段を上って来る足音が聞こえてきた
「あれ、珍しいね。お客さんかな?」
階段を上がってきたのは黒いコートに青いメッシュが特徴的な青年。彼は最初に少しだけ意外そうな表情を浮かべた後、笑顔を浮かべて士の元まで近づいてくる
「ここのご利益は折り紙付きだよ、なんたって、誰もが幸せになれる世界を願ってる神様だからね」
「……そうなのか?」
「あぁ、俺が保証する」
やけに自信ありげな表情の青年を見た士は、改めて目の前にある狐様へと目を向け、青年に問いかける
「アンタ、ここにはよく来るのか?」
「あぁ、ほぼ欠かさずね」
「そいつは、随分と信心深いんだな」
「別に信心深いわけじゃないよ、ただここで祀られてる神様が俺の推しってだけ」
「神さまが推しとは、また随分と」
珍しい人もいるものだ、そう考えた士だったが冷静に考えると幅広いモノに様々な可能性を見出すのがこの国に住んでいる人だという事を思い出し、納得する
「そう言えば、自己紹介がまだだったね、俺はジーン、よろしく」
「写野士だ」
ジーンの差しだしてきた手を握り返して握手をすると、ジーンは士に対して言葉をかける
「それで、士はどうしてここに?」
「あぁ、実は探し物をしてたら白い狐に化かされてここに」
「白い狐……それは随分と────」
ジーンが言葉を続けようとした瞬間、周辺の空気が変わる。それに気づいたらしいジーンは懐から白い銃のようなアイテム──レーザーレイズライザーを取り出して警戒をする
「あんた、それ────」
士がジーンに言葉をかけようとした瞬間、上空にゲートのようなものが開き白いローブを身に纏い、その顔を仮面で覆い隠した人物が降りてくる。その人物は目の前に居る2人を一瞥した後、背後にある祠に目を向ける
「成る程、アレか」
士とジーンには興味を持っていないであろうローブの人物が祠に近づこうとした瞬間、ジーンは手に持ったレイズライザーの引き金を引きローブの男を撃ち抜いた
「! おい、アンタ────」
「大丈夫、あの程度じゃ死なないよ……アイツらは」
ジーンのその言葉を裏付けるように目の前の人物は弾丸に貫かれたにも関わらず、出血などもなく傷口は自然に修復されていく
「…………」
「アンタ、デザグラの元関係者だろ? この世界から撤退したはずなのに……今更なんで姿を見せたわけ?」
ジーンの発したデザグラと言う単語を聞いた士も、目の前に居るローブの人物を改めて警戒する
「……デザグラ? あんな低俗な番組の関係者と俺を一緒にしないで貰いたい」
「低俗って、一応未来じゃ人気番組じゃなかったっけ?」
「そうだな、人気だったのは認めよう……だが、奴らのやり方は甘い。人々が求めるのは圧倒的な絶望だ。そして俺は、この時代で、その絶望を生み出す為にやってきた」
ローブの人物がそう言うと、ジーンはレイズライザーのグリップを強く握ると言葉を紡ぐ
「そんなことさせないよ、この世界は彼の……英寿の願った世界だ、その世界をまた無茶苦茶にはさせない」
「英寿、浮世英寿……創世の力を持ちながら奴は力の使い方を誤った。神の力とは他者を圧倒し、自らの望む世界を作りだすためのもの」
目の前の人物はそう言うと上空に手を掲げると、その手中に黄金のベルトが現れた
【ZILLION DRIVER】
「見せてやる、神の力の使い方を」
ローブの人物はそう言うとジリオンドライバーを腰に装着し、サイドホルダーのスイッチを押す
【GEATS TRIAL】
流れるような手さばきでシリウスカードを取り出したローブの人物はそれをカードリーダーにスキャンする
「変身」
【IMITATION】
【GOD Is Absolute Power VANITY GEATS】
荘厳な音楽と共にローブの人物の姿は徐々に記録にあった仮面ライダーリガドへと変化し、それを上書きするようにギーツの意匠が追加され、リガドの仮面がギーツの仮面へ変化──そして複眼が赤く輝き、ローブの人物は仮面ライダーヴァニティギーツへの変身を完了した
「これが、神の力だ」
ヴァニティギーツが手を前にかざすとジーンと士の立っていた地面が赤く輝き、2人へ向けて土が槍のように隆起する
その一撃を回避するとジーンはレーザーレイズライザーにレイズライザーカードを装填、士は自身の腰にディケイドライバーを装着するとライドブッカーからディケイドのカードを取り出す
「! 士、君のそれは────」
「詳しい話は後だろ、今はアイツを」
「──うん、そうだね」
『ZIIN SET』
〘 KAMEN RIDE 〙
「「変身!」」
その掛け声と同時にジーンはトリガーを引き、士はバックルを回転させる
『LASER ON』
『ZIIN LOADING』
〘 DECADE 〙
二種類の電子的な音が鳴ると、2人の姿が人間のそれからそれぞれの仮面ライダーへ変身する。そして変身が完了すると同時にディケイドはライドブッカーをガンモードへと変形させ、ジーンと共にヴァニティギーツへ向けて銃撃をする
「無駄だ」
放たれた光弾を防いだヴァニティギーツは先ほどと同じように自身の近くの地面を隆起させるとその中に手を突き刺す。瞬間、隆起した土は砕け散り中から黒と金のギーツバスターQB9が出現する
そうして、3人の間に僅かな沈黙が流れ────枯れ葉が一枚地面に落ちると、共に3人のライダーは銃の引き金を引いた
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