続・ポケモン廃人、知らん地方に転移した。【完結】 作:タク@DMP
「──おお、おお、シャワーズ……こんな事に付き合わせて、すまんかったのう……」
「ぷるるるるるー……」
倒れ込んだシャワーズに歩み寄るリュウグウ。
その声色は──生前の優しかった彼そのもの。
メグルは駆け寄って止めようとしたが──アルカに肩を掴まれる。
「ッ……」
「……メグル。リュウグウさんはきっと……最初っから全部、分かってたんだよ」
「だけど──ッ」
「オヌシ達にも……苦しい役目を背負わせたな」
シャワーズを抱きかかえるリュウグウは──メグルとアルカに目を向けた。
「……リュウグウさん。教えてくれよ。サイゴクは一体、どうなってんだよ……!! オトロシアスって……何なんだよッ!!」
「……オトロシアス……ひいては霊脈とは、死者の魂を閉じ込める牢獄じゃよ」
「牢獄……ッ!?」
「ワシも死んでから気付いたことだ。サイゴクで死んだ命は、死後も意識をそのままに霊脈に閉じ込められるのだ」
「何ソレ……命ってことは、ポケモンも人間も全部……死んだら霊脈に……」
「うむ」
それが意味するのは──サイゴクで死んだ命に、安寧など無いということ。
魂は霊脈に囚われ、永遠に死んだときの意識を残して彷徨い、そして苦しみ続ける。
「元々、オトロシアスとは、魂を喰らう一介のゴーストポケモンに過ぎなかった」
「ポケモンなんだ、やっぱり」
「あくまでも元々、じゃよ。今ではベニ大学の僅かな文献に名前が残っておるのみ。ワシも、生前はあやつの名前しか知らんかった」
「絶滅したゴーストポケモン……?」
「ゴーストポケモンが絶滅って意味分からねえな……」
「そうじゃろう。現に、口伝えを書き写した書物じゃったからの。当時は気にも留めなかった」
しかし──オトロシアスは実在している。今もこうして、サイゴクの地下に巣食う霊脈と化して。
「……オトロシアスというポケモンは、元々魂を喰らっていた、と言ったな。あやつらが絶滅した理由は唯一つ、共食いじゃよ」
「共食い!?」
「そうか。魂を喰らってより強力になるオトロシアスが、より強い力を求めて同族に牙を剥いた……!」
「そして、やがてオトロシアスは強大な一つの個となった。だが代償に、その強大になり過ぎた身体を自分でも制御できなくなった。生身の生き物で言えば、身体が重すぎて動けなくなったんじゃよ」
「ウソだろ、カビゴンじゃあるまいし……」
「しかし……たった1匹になったオトロシアスはより効率的なエサの補充の仕方を実行した」
「それが──霊脈か」
リュウグウは頷く。
サイゴクという地は──オトロシアスというポケモンの強大な餌場だったのである。
より広く、より深くオトロシアスはサイゴクの地脈に沿って根付いていく。
そこで死せる命の魂を取り込み、餌を補給し続ける。何百年も、否──何千年も。
「……そうしてオトロシアスはやがて”霊脈”と呼ばれる程になるまでに成長した。そして今ッ!! ……溜めに溜め込んだ力を暴走させつつある」
「要するに俺達ゃ、大食いポケモンの癇癪に付き合わされたワケか……!」
「それだけではない。あやつは、自身の縄張りに入り込んだ別世界の存在に怒り心頭じゃ」
「もうテング団もマイミュも居ないのに!?」
「……流石何千年も存在してるポケモンだ。時間のスケールが違ェな……ヤドンよりも反応が鈍いってワケだ」
「ふぃるふぃー……」
「さて。元々おやしろとは、霊脈を封じ込めるための栓としての役目を果たしていた。そしてワシらは……その栓を抜く役目としてオトロシアスに遣わされた」
「栓を抜く……?」
「ああ。おやしろを起点に、オトロシアスは自らを現世に顕現させようとしていたようじゃの。しかし、どうやら蘇ったキャプテン達は皆、倒されたようじゃ。ワシもまた……君らに敗れた今、いつ消えてもおかしくはない」
メグルとアルカは顔を見合わせた。
ノオト達が──キャプテン達が、やってくれたのだ、と。
「しかしそうなればどうなるか。5つのおやしろの栓が抜けぬまま、オトロシアスの力が暴走する」
「なあ、もうイヤな予感しかしねーんだけど……そうしたら、どうなるんだ?」
「簡単な事じゃよ」
リュウグウは──背後を振り向いた。
「──このサイゴク山脈……つまり
次の瞬間だった。
──サイゴク山脈を起点にして血管の如く霊脈の光が浮かび上がる。
地鳴り。そして、地響き。
アルカは足を取られ転びそうになったところをメグルに抱きかかえられ、ニンフィアは足のもつれた主人をリボンで無理矢理支えた。
「わ、わりっ、ニンフィア……!! てか、どうなってんだ!?」
「……サイゴク全土に奴の力が放出されるという最悪の事態は避けられた。だが……来たるは別の最悪よ」
「な、なに、すっごくイヤな空気がする……!!」
「ふぃーッ!!」
ニンフィアが全身の毛を逆立てて威嚇した。
霊脈の光が──大きく波打ち、隆起した。
グラグラと音を立てて、山が──崩れ始めた。
「いけないッ!! アヤシシ!!」
「ブルトゥ!!」
メグルはアヤシシを繰り出し、アルカを後ろに乗せる。
ついでにニンフィアもメグルの頭に抱き着いた。
そしてメグルは思わずリュウグウとシャワーズの方を見遣るが──
「ワシらもすぐに行くッ!! 構わずに行けいッ!!」
「でも──ッ」
ビシッ、と音を立てて地面が罅割れた。
そこから紫色の光が割れる。
危険を感じ取ったアヤシシはすぐさま鬼火を爆発させて、山を駆け下りたのだった。
「メグルッ!! シャワーズが──ッ!!」
「リュウグウさんを、信じるしかねえ……ッ!!」
アヤシシに振り落とされないように必死に手綱を握り締める。
崩れ落ちていく山。
そこから紫色の光と共に、巨大な何かが現れる。
メグルは言葉を失った。山を割るようにして誕生したソレを──とてもではないが「ポケモン」などという言葉で表したくはなかった。
全長は、最早100メートル以上は下らない。頭の頂を見ることなど出来はしない。
それでも、その何かを「人型」と評することができたのは、はっきりと人の指の形をした手。
はっきりと人の頭の形をした頭部。そこについた、感情を感じさせない巨大な単眼。
だが、それはハッキリとこちらに聞こえる声で──なにかを呟いたのである。
「おとろし あな おとろし」
【オトロシアス れいみゃくポケモン タイプ:地面/ゴースト】
山から現れた山のように巨大なナニカ。
これこそが、千年単位でサイゴクという地に寄生し続けた霊脈の正体。
メグルは──悍ましさで吐き気すら込み上げてきた。
キャプテンは、このような存在を神のように崇め奉ってきたのか、と信じられない思いだった。
ヌシポケモンも、そしてサイゴクに住まうリージョンフォームのポケモン達も皆、この怪物の掌の上で踊っていたに過ぎない。
「バケモノ……ッ」
そうつぶやくメグルの声は震えていた。
「あんなの、どうすりゃいいんだよ……ッ!! デカ過ぎるだろ!?」
「おとろし」
オトロシアスが何かを呟く。
次の瞬間──恐ろしい事に、当たり前のように空間が硝子のように罅割れた。
そこから、雨霰のように何かが零れ落ち、サイゴクの地に降っていく。
ゴーグルで確認し、メグルは──叫んだ。
「ポ、ポケモンだッ!! ポケモンが裂け目から次々に出てきてやがるッ!!」
「え!? あれ、全部がポケモン!?」
ただし。
それらは全て、只のポケモンではない。
目は真っ赤に染まり、紫色の靄に全身を包み、空を駆け回る──いわば死霊の大群。
幾千年もかけて、オトロシアスが取り込み続けた魂が今、放出され始めたのである。
いうなればそれは防衛反応。
自らの縄張りを侵されたオトロシアスが、全力で外敵を排除するべく吐き出した白血球のような尖兵。
だがすでに、倒すべき存在は居ない。
故に──死霊の大群は、縄張りの中にいるサイゴクに住まう命総てを標的にして暴れ始めるのだった。
作者の作風に期待するものは?(良ければ感想欄でも教えて下さい)
-
ラブコメ、純愛
-
戦闘シーン
-
シリアス、曇らせ
-
ギャグ、コメディ