続・ポケモン廃人、知らん地方に転移した。【完結】   作:タク@DMP

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第17話:最後の賭け

 ──崩れ落ちていく部屋。

 罅割れ砕け、中からエネルギーが吹きあがる水晶の部屋。

 その中で──オトロシアスの声が響く。

 

「……愚かだ。直に、この場所は消し飛ぶ。オマエはともかく、そこのヌシポケモンも一緒に」

「ぷるるるるるるー」

「……覚悟の上じゃよ。これでオヌシはもう、霊脈から力を供給出来ん」

「それに無駄骨だ。霊脈の補給源を絶ったところで……あの小さき命たちが我に敵うものか。それに、いずれ再生する──また元通りだ」

「やってみなければわからんよ。……後は今を生きる若き命に託す」

「ぷるるー♪」

 

 決壊したエネルギーが爆轟する。

 リュウグウも、そしてシャワーズも──跡形もなく消し飛ばす。

 それは儚き──泡沫の夢の如く。

 されど確かに刻んだ、爪の痕のように──

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「おとろ──ゴギャガガガガガガギャギャギャーッッッ!?」

「ふぃッ!?」

 

 

 

 ニンフィア目掛けて手を振り上げていたオトロシアスが──動きを止めた。

 そして、暴れ狂ったかと思えば、その巨体を揺らし、ニンフィアに倒れ込む──

 

 

 

「ニンフィアーッッッ!!」

 

 

 

 響く声。

 迷わずニンフィアはその方へリボンを伸ばした。 

 まるで掬い取るようにして、リボンを掴む手。

 ブリザベオに乗ったメグルだ。

 

「ふぃるふぃー……」

「ニンフィア、悪い……もうひと頑張り、出来るか? 皆を助けねえと」

「ふぃッ!」

 

 ”かいふくのくすり”をニンフィアに打ち込むメグル。

 すっかり元気を取り戻した彼女は、準備は万端だと言わんばかりにメグルの背中によじ登った。

 ヴォルカニドに跨ったアルカが、身もだえしているオトロシアスの方を指差して言った。

 

「あいつすっごく苦しんでる! もしかして、リュウグウさんの”策”が発動したのかも!!」

「チャンスは今しかねえ……ブリザベオ!!」

「トブルルルルルルルルッ!!」

「ヴォルカニド、力を貸して!!」

「ガラララララララララッ!!」

 

 苦しむようにのたうち回るオトロシアス。

 しかし、その両腕を地面に翳すと、紫色の罅が現れる。

 そして──地面が割れ、隆起する。地中から現れたのは──あろうことか、あの巨大ハチドリの如き岩の化身達だった。

 

 

 

「ケ レ ス」

 

【ヨイノマガン<ネームレス> みょうじょうポケモン タイプ:岩/飛行】

 

 

 

 それも1匹や2匹ではない。

 同時に4匹。

 スリング島での激闘を彷彿とさせる悍ましい光景に、メグルは開いた口が塞がらなかった。

 そして、どのようにしてサイゴク最強のヌシポケモンにして砂漠の支配者が生まれたのかを嫌でも理解させられた。

 オトロシアスの周囲に舞うアンノーン。そして、そのアンノーンのような象形文字が体中に刻まれたヨイノマガン。

 何より──ヨイノマガンをただの尖兵のように召喚するオトロシアス。

 ヌシポケモンの力の根源は霊脈にあると言えど──限度がある、とメグルは憤りが隠せない。

 

「冗談だろ、コイツら!!」

「ふぃーるふぃー……」

「歴史的瞬間だよ! ヨイノマガンって、オトロシアスの力で生まれてたんだ!!」

「はは、最高だぜ……面白くなってきやがった」

 

 うんざりした様子で言ったメグル。

 しかし、嘆いていても結果は変わらない。

 行く手を阻むヨイノマガン達を強行突破するべく、メグルは叫ぶ。

 

「──こうなりゃ出た所勝負だッ!! アルカ、振り落とされるなよ!!」

「分かってるよッ!! ヴォルカニド……”イノセントハザード”!!」

「ブリザベオ、”イノセントハザード”だッ!!」

 

 闘神たちが緑色の風に包み込まれる。

 ヨイノマガンの群れが次々に岩の刃を、砂の竜巻を放つが──それを掻い潜り、闘神たちは力を爆発させる。

 速度特化の巡航形態──ハザードフォルム。

 四倍弱点の岩技だろうが、当たらなければ意味は無い。

 文字通り、サイゴクの山脈を駆ける風となり、魔岩の化身達を翻弄する。

 そして──

 

「──ブリザベオ、”コキュートスホーン”!!」

 

 ヨイノマガンの一匹を、ブリザベオの凍てつく角が貫いた。

 更にその勢いで、突き刺した一匹をもう一匹に向かって叩きつけ、地面へと堕とす。

 敢え無く、二匹のヨイノマガンは砕け散り、紫色の靄となって消えるのだった。

 

「──ヴォルカニド、”プロミネンスフレア”ッ!!」

 

 相性など、最早関係は無い。

 高圧縮した熱を以てして蒸発させればいいだけの事。

 太陽の如き炉心を活性化させた炎の塊が、残るヨイノマガン達を消し飛ばす。

 しかし。

 それでも、オトロシアスにとっては尖兵が居なくなっただけに過ぎない。

 むしろ、今の間に時間を稼いだからだろうか──

 

 

 

「ゴギャガガガガガガガギャーッッッ!!」

 

 

 

 ──悍ましい咆哮を上げながら、空へと吼えるのだった。

 耳を劈くような、悲鳴の如き号砲。

 空は割れ、裂け目が開き──どんどん広がっていく。

 

 

 

【オトロシアスの アポカリプス】

 

 

 

 やがて、裂け目は──空一面に波及した。

 サイゴク山脈の付近だけではない。

 辺り一面が、裂けた空間の先の世界──何もない暗闇に覆われていた。

 いうなれば、時空の大穴。それは直にサイゴクだけではなく、列島──更に全世界へと広がっていく。

 

「あ、あいつの咆哮で空間が割れた!!」

「サイゴク中……いや、この世界全部、崩壊させるつもりか!?」

 

 そうなれば──どうなるかは言うまでもない。

 メグルの出身となった世界のように、異界からの脅威が無尽蔵に降り注ぎ、間もなくこの世界は破綻し、滅亡する。

 それをオトロシアスは理解しているのだ。

 己の縄張りから敵を排除することができないならば、この世界諸共に心中する──否、実際はもっとタチが悪い。

 この世界が崩壊したところで、オトロシアスはまた次の縄張りを探しに行くことが出来るだけの強さを持っている。

 霊脈の力も今すぐに尽きるわけではないからだ。

 まさに「自分さえ良ければいい」の極み。

 どうして、このオトロシアスという種族が1つの個体を残して滅んだのかを如実に表していた。

 

「させねぇ……ッ!」

 

 しかし。

 今、この地で必死に生きるメグルとアルカは決してそれを良しとしない。

 

「この世界は……俺の大好きなポケモンの世界は、俺達で守るッ!!」

「そうだッ!! 今を生きているボク達の力で……守り切るッ!!」

「ふぃーッ!!」

 

 ヴォルカニドとブリザベオが同時に吼え、極限まで高めた太陽の光を、そして相手をすり潰す強大な氷河を顕現させる。

 

 

 

【ヴォルカニドの プライマルボルケーノ!!】

 

【ブリザベオの アイスエイジブレイク!!】

 

 

 

 しかし。

 

「おとろし……おとろしッッッ!!」

 

 オトロシアスはあろうことか、咆哮で時空の裂け目を新たに生み出し、放たれた二つのオオワザを吸い込み消してしまうのだった。

 そして──全身から黒い帯のようなものを伸ばし、ヴォルカニドとブリザベオをぐるぐるに巻いて拘束する。

 

「お と ろ し」

「ッ……ヴォ、ヴォルカニド!! 焼き切って!!」

「これくらい引き千切れるだろ、ブリザベオ……ッ!!」

 

 しかし。

 二匹に巻き付いた黒い帯は、徐々にその力を吸い上げていく。 

 無理もない話であった。

 元々概念的な存在であるヴォルカニドとブリザベオにとって、霊や魂を糧とするオトロシアスは文字通りの天敵。

 オトロシアスにとって、この行動は只の摂食行為でしかない。

 メグルの脳裏に過ったのは、以前ヴォルカニドの力を吸収して、更にパワーアップした星狩の王・ガルヴァチスだった。

 

(不味い、このままじゃあの時と同じだ……!!)

 

「ふぃーッ!!」

 

 しかし。

 そんな中、背中にしがみついたニンフィアが叫ぶ。

 

「……ニンフィア?」

「ふぃーッ! フィッキュルルルィィィィ!!」

 

 怒ったような声を出し、彼女はぺしぺし、とメグルの肩をリボンで叩く。

 

 ──あたしはまだ戦える! そして──みんなだって!

 

「ッ……」

 

 ギガオーライズしていないのに、そんな声が聴こえたような気がした。

 

「ダ、ダメだ、メグル! ヴォルカニドの熱がどんどん冷めていく……! しかもこいつの帯、オトシドリの攻撃じゃびくともしないよ!」

「……今しかねえな。やるなら」

「どうするの!?」

「俺達の手持ち、全部の力をもう一度合わせるッ!!」

 

 メグルは──賭けに出る。

 オトロシアスが闘神たちに執心している今しかチャンスがない。

 

 

 

「ニンフィア、行くぞ──ギガオーライズ、フェーズ2だッ!!」

「ふぃーッ!!」 

作者の作風に期待するものは?(良ければ感想欄でも教えて下さい)

  • ラブコメ、純愛
  • 戦闘シーン
  • シリアス、曇らせ
  • ギャグ、コメディ
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