続・ポケモン廃人、知らん地方に転移した。【完結】   作:タク@DMP

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第13話:常夏の神

 ※※※

 

 

 

「降下します。此処から先は正体不明の磁気嵐が発生しており、近付けません。ヴォルカニドは間違いなく火口内部に居るかと」

「ご苦労」

 

 

 

 飛行艇が着陸した。

 大穴からは煙が立ち上っているのが此方からでも見える。

 ハッチから降りるのは──四つの影。

 ワームホール公団が誇る最強のトレーナー集団”四天王”だ。

 

「喜ばしいことです。いよいよ、常夏の神の姿を拝むことができるのですから」

「……哀しいわ。幾百年近く秘匿された自然の神秘が暴かれる。哀しくて涙が出てきそう」

「未知を既知にする。その過程にこそ愉しみというものがあるの。ああ楽しみだ!」

「ぺちゃくちゃ喋んじゃねえ、テメェらァ!! 俺様を怒らせてェのかァ!?」

「もう怒ってるじゃないか……」

「文句あんのかゴルァ!!」

 

 双子の銀髪少女。

 やせ形の男。

 そして、センターを歩く、額に無数の青筋を浮かべた大柄な金髪男。

 彼らは防護服も纏わずにつかつかと火口へと迫っていく。

 しかし──その前を、激しい炎が焼き払い、行く手を阻む。

 

「……ンだァ?」

 

 金髪の巨漢は青筋を幾つも浮かべながら空を見上げた。

 漆黒の龍の背に見慣れぬ少女が跨っている。

 

「テメェッ!! 此処は関係者以外立ち入り禁止だァ!! しかも、マーニャに居ねえリザードン連れて、どういう了見だコラァ!!」

 

 怒号にも怯まず、ミアは全員の顔を改めて眺める。そして得心が行ったように呟いた。

 

「……やはり、クローン人間ですね、貴方達」

 

 ミアの眼も翠色に一瞬だけ光った。

 この場に居る全員が、全く同じ方法で作られたクローンであることが証明される。

 

「……ああ!? 何だァテメェ、ある事ねえ事言ってるとォ、潰すぞオルァ!!」

「そう怒るな、楽しくなってきたじゃないか」

「喜ばしいことです。……まさか、同胞がマーニャに居ただなんて」

「哀しいかな……彼女には全てお見通しのようだわ」

「ああ!? もしかして、俺様だけかァ!? 状況分かってねえのはァ!!」

「……もっと力を有効的に使いたまえ。目の前の彼女は……我々の同型だ」

 

 最早隠すつもりも無いのか、眼鏡の黒髪男が言った。

 ミアは身構える。今度は銀髪の双子の片割れが、にこやかな笑みを浮かべながら近付いてきた。

 

「初めまして。貴女の事は知っています。試作品492号……カルミア。こうして会えて、とても喜ばしいです」

「……貴女は」

「ワームホール四天王……そのリーダー、ユリと申します。今日この日を記念日として、覚えておきますね♪」

 

 

 

【”ワームホール四天王・リーダー”ユリ】

 

 

 

 銀髪の少女・ユリは短いスカートを摘み、恭しく礼をする。 

 一方、その片割れと思しき少女は、その陰にずっと隠れて陰鬱そうに「哀しいわ……」と呟くのだった。

 

「それで私たちに何か御用でしょうか? 持ち込み禁止のリザードンを連れている。此方には、貴女を捕える正当な理由があります♪」

「……見て分かりませんか。これは、リザードンではありません」

()()()()()()()()?」

 

 くすくす、とユリは笑うと──他の四天王たちに目配せする。

 

「分かっていますとも……猶更、みすみす逃がす理由など、ありませんよね?」

「ゼノを知ってるんですね……! やはり貴方達は……!」

「オイオイ、ふざけんじゃねえぞユリ!! この間にヴォルカニドが逃げ出したら大事だぜ!! キレるぞ!!」

「もうキレてるじゃないか……」

「哀しい……一日に何回もブランカの怒鳴り声を聞かされる……とてもうるさくて、涙が出てくるわ」

「そうですね。任務の達成が一番大事。それこそが──私たちの存在意義ですから。なので、こうしましょう」

 

 パチン、と両の手を合わせた彼女は言った。

 

「──彼女の相手は、責任をもってリーダーであるこの私が務めます♪ 皆様はヴォルカニドの捕獲に向かってください♪」

「ヘッ、そう言ってくれて助かるぜ」

「おいおい、こんな少女、4人がかりで押さえつければ良いだけじゃないか」

「それでは私が喜べません」

「……行かせると思ってるんですか」

「あはっ、私たちを前にして戦意を喪わない。何と喜ばしいのでしょう!」

 

 これ以上の会話は無用、とばかりにゼノが火を噴き出す。

 だが──それに対して何かが炎を真っ向から受け止めた。

 ユリの前に現れたのは三つ首の凶暴な面構えのドラゴンだった。

 

【サザンドラ きょうぼうポケモン タイプ:悪/ドラゴン】

 

 全身は黒い毛皮に包まれており、左右の首を手のように構えたそれは、激しい敵意を剥き出しにした咆哮を放つ。

 

「行くぞテメェら。これ以上時間を使ってられねえ。イライラするぜ」

「ええ、お楽しみを味わいに行かなければ」

「哀しい……姉さんと離れ離れ」

「ふふっ、ごめんなさいね? でも──貴方達の邪魔はさせませんので♪」

 

 つかつか、とミアの傍を素通りしていく四天王たち。

 彼らを止める手段は彼女には無い。ゼノは既に、三つ首の龍と取っ組み合っていた。

 

 

 

「さぁ、サザンドラと私を喜ばせて下さいね、存分に!!」

 

 

 

【ワームホール四天王の ユリが勝負を仕掛けてきた!!】

 

 

 

 タイプ:ゼノとサザンドラが同時に熱線を吐く。

 両者の勢いは互角。しかし──サザンドラは左右の首からもブレスを吐き出し、ゼノを押していく。

 

「そんな、押されてる……!?」

「あはははははっ。良いです、良いですねえ。さあサザンドラ、もっと、私を喜ばせて下さい!!」

 

【サザンドラの あくのはどう!!】

 

 じりじり、と押されていくゼノ。

 そのままブレスは押し込まれ──爆発が巻き起こり、ゼノは吹き飛ばされてしまう。

 ブレス勝負で敗北すると思っていなかったミアは驚愕した。

 目の前のサザンドラは、相当鍛え上げられている。そもそも進化するのがとても遅いポケモンの為、サザンドラはもれなく強力なポケモンではあるのだが。

 すぐさまゼノに駆け寄ったミアは、手に持っていたパッチをゼノに当てる。

 すると、その姿はゲル状に変化し、今度はピクシーの如き姿となるのだった。

 

「おや、聞いていたよりも随分と不便な変身ですねえ。わざわざパッチを当てないとフォルムチェンジ出来ないのですか?」

「これは完成形です。ゼノの身体に出来るだけ負荷を掛けたくはないので」

「ふぅむ。でも、貴方達が弱くなってくれる分には、全く問題ありません! むしろ大歓迎!」

 

 巨大な腕を振り回し、ゼノはサザンドラに肉薄する。

 ”インファイト”の構えだ。しかし、それをふわりと浮遊して避けてみせると、サザンドラは背後からブレスを浴びせてみせる。

 動きを完全に先読みされてしまっているのだ。そしてサザンドラの目が不気味に光ると、ゼノの身体が浮かび上がってしまい、そして地面に激しく叩きつけられてしまうのだった。

 

(明らかにスペックが高い……!! やはりこのサザンドラもクローン……!? いや、あるいは……何らかの技術でポケモンの力を増幅させている……!?)

 

 どのようにしてフィジカルなどをブーストさせているか、今のミアには見当もつかない。

 だが、ゼノはタイプ相性で有利な相手に後れを取るほど弱くはない。

 にも拘わらず、攻撃を全ていなされて、反撃を受けてしまっている。

 その一方的な戦いを見て、ユリは喜悦に浸った表情でうっとりするのだった。

 

「あはっ……♪ 喜ばしい、なんて喜ばしいのでしょう! あれだけ粋がっていたのに、弱くて、弱くて、弱くて、健気ッ!! なんと儚く、狂おしく喜ばしい!!」

「まだ勝負は始まったばかりです……!」

「ああ、喜ばしい!! 弱いだけでも喜ばしいのに、更に足掻いてまでくれる!! まだ私を喜ばせて下さるのですね!!」

 

 ゼノとサザンドラの撃ち合いが続く。

 三つ首の龍のブレスを突っ切りながら腕を回転させ、殴りつける。

 だが、左右の首がその腕に噛みつき、電流を流し込むのだった。

 

「あはっ、もっと弱くなってくれる。何と喜ばしいのでしょう!」

 

 身体が痺れ、ゼノは膝を突く。

 そこにサザンドラはすかさず、再び念動力を発するのだった。

 脳を直接破壊する”サイコキネシス”。これにより、ゼノの精神力は打ち砕かれていく。

 そして、繋がりが強いミアにも、そのダメージは跳ね返ってくるわけで、頭が割れるような痛みに襲われるのだった。

 

「何故私が、他の三人を先に行かせたか分かりますか?」

 

 つかつかとユリがミアに近付き──そして蹴飛ばした。

 彼女の身体は、地面に叩き伏せられ、首元にユリの硬い靴が置かれた。

 

「……喜びを独占するためです♪」

「ッ……」

「弱者を踏み躙り、痛めつけ、その悲鳴を聞く! その瞬間こそ至高の喜び! 伝説のポケモンのような大物からでは……悲鳴は聞けそうにないですから」

「……クローニングの弊害か……腐ってますね」

「私は私より弱い相手と戦いたいのです。だって、その方が喜ばしいですから♪」

「がぁっ……!!」

 

 じり、じりじり、とユリはその力を強めていく。

 

「弱すぎておめでとう!! 私を喜ばせてくれてありがとう!!」

「がぐぁ……!!」

「貴女を捕まえるのは簡単ですが……それだけでは喜ばしくありません! もっと私を喜ばせて下さい! 悲鳴を上げて、苦しんで下さい! あはははぁっ!」

 

 ユリが力を入れればめきめきと音が鳴る。

 首に掛かる圧力が強まっていく。息苦しさと痛みが襲い掛かる中、ミアは──蚊の鳴くような声で呟いた。

 

「ゼノ……立ちなさい……」

「うん? 何か言いましたかぁ? 懺悔ですかぁ? それとも命乞いですかぁ?」

「ッ……!!」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「火口付近まで近づけェ!? なかなか無茶を言うもじゃ!!」

「しゃーねーだろ……!! 知り合いが、火山の方に行っちまったんだから……」

「近くまで下ろしてくれればいいから」

「ええい、こうなったらとことんまでやるもじゃ!!」

「ぴーりゅう」

 

 

 

 火山の熱気などカイリューからすればそよ風同然だ。

 ぱたぱたと羽根を羽ばたかせたかと思えば、一気に火口に急接近していく。

 ごぽごぽと音を立てて煙を吐き出し続ける溶岩溜まり。

 その周辺に人の影が見える。そして、予め設置されていたのか、火口周辺には物々しい機械の数々が設置されていた。

 

「何だあいつら……!! 何で、火口にあんな機械が?」

「観測用の機械には見えない……!」

「見た所、ワームホール公団の制服みたいもじゃ」

「ミアは何処だ……!? もっと下の方に居るのか……!?」

 

 禿げ上がっている山頂とは違い、下の方に行くに連れて木々が生い茂っており、詳しく見る事が出来ない。

 

「山頂にミアちゃんは居ないみたいだね……!」

「や、ヤバいもじゃ……!! 地鳴りもじゃ……!! 噴火するもじゃ……!?」

「いや、噴火じゃない……!!」

 

 ズーム機能付きの双眼鏡で火口を覗いたアルカは──血相を変えた。

 

「すっごく嫌な気配を、火口から感じる……!!」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「良いかい、三人共。標的が這い上がって来た瞬間に、この冷凍重機で凍結させる」

「相手がどんな炎ポケモンだろうが関係ねえ。こいつで温度を奪っちまえばイチコロよ。簡単すぎてイライラするぜ」

「哀しい……伝説ポケモンが人類の叡智に屈する様を想像しただけで、今から涙が出るわ……」

 

 

 

 ぼこっ!! ぼこぼこぼこっ!!

 

 溶岩溜まりが沸き立つ。

 そこから溢れ出る熱風など物ともせず、三人は装置を作動させた。

 標的は間もなく、音を立てて飛び出した──

 

「今だッ!! 高圧冷凍ビーム装置作動!!」

 

 機械のアンテナ状の主砲が火口に向く。

 そして、飛び出して来た物体目掛けて青白いビームが発射された。

 湧き出る冷気だけで火口どころか溶岩溜まりすら冷え固まっていく。

 当然、火口から飛び出した何かは、浮かび上がったままその場で冷凍される。

 後に出来上がるのは──巨大な丸っこい氷漬けの溶岩球だった。

 

「はて? ヴォルカニドとはクワガタムシのようなポケモンと聞いていたが……これは楽しくなってきたな! 何処からどう見ても只の球体ではないか!」

「ンだぁ!? 間違えたかァ!?」

「……間違いじゃない。アレは間違いなく火山地下から確認された高圧エネルギー反応の正体。でも哀しいかな、ヴォルカニドじゃなかった……」

「……どちらにせよ、これだけ氷漬けにして体温を奪ってしまえば……もう動けまい」

「待って。様子がおかしい」

 

 

 

 ピキ、ピキピキピキ。

 

 

 

 溶岩球が音を立て始める。

 すかさず冷凍ビームを射出する三人だったが、それでも溶岩球は止まらず、火口から浮かび上がっていく。

 

「おい止まらねえぞコイツ!! キレるぞ!!」

「中から熱源反応……こりゃダメだ、出てきてすぐ凍らせちゃおう作戦は失敗だね。んん、面白くなってきたじゃないかあ」

「哀しい……涙が出てくるわ……姉さんに会いたい……」

「言ってる場合か、離れるぞ!!」

 

 溶岩球は勢いよく火山上空で光り輝いたかと思えば、爆ぜる。

 激しい光が辺りを覆い尽くし、夜なのに太陽が昇ったかのようだった。

 中からは大きな翅が伸び、巨大な二本の大顎が顕になる。

 全身はハサミに至るまで真紅の甲殻に覆われており、複眼からは燃え盛る炎が常に溢れ出している。

 特筆すべきは体躯に似合わぬ巨大な鎧に覆われた前脚と後ろ脚だ。

 前脚は頑強な爪が生えており、後ろ脚からは常にバーナーが噴き出しており、それで空中での姿勢を制御しているのである。

 

 

 

 

「ガタラララ……ガタララララララッ!!」

 

 

 

【ヴォルカニド せいかポケモン タイプ:炎/虫】

 

 

 

 

 さっきまで冷凍されていたのが嘘のように、硬い外翅からは溶岩が泡立ち始める。

 

「おい、お前ら逃げ──」

「いけませんね、これは──」

「退却、退却──」

 

 ヴォルカニドの腹部が突如、白く光り輝き始める。

 そして。

 

 

 

【ヴォルカニドの プロミネンスフレア!!】

 

 

 

 

 ──火口付近を一瞬で熱と光が覆った。

 その場にあった機械は全て蒸発した。

 無論、四天王たちが逃げ切れるはずもなく──ジュッと音を立てて、彼らは光に飲み込まれ──焼き切られる。

 

 

 

 

「ガタラララララッ!! ガタラララララッ!! ガタラララララッ!!」

 

 

 

 

 後に残るのは、真っ白に残る灰だけ。

 ()()()()()()()()()()()を気にも留めず、ヴォルカニドはカチンカチンと大顎を打ち鳴らすのだった。

 己の存在を、マーニャ全てに誇示するようにして。

作者の作風に期待するものは?(良ければ感想欄でも教えて下さい)

  • ラブコメ、純愛
  • 戦闘シーン
  • シリアス、曇らせ
  • ギャグ、コメディ
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