続・ポケモン廃人、知らん地方に転移した。【完結】   作:タク@DMP

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第18話:オシアスからの来訪者

「私のお友達を助けていただき、ありがとうございます♪ 何とお礼を言ったらよろしいか……」

「た、助かった……死ぬかと思ったぜェ……!!」

「フッ……長く苦しい戦いだったね」

「自爆だろが全部」

 

 

 

 ようやくハチミツと着ぐるみから解放されたアホ二人。

 正直メグル達は関わり合いになりたくなかったが、仮にも相手があのレモンの並行同位体なので助けに行かざるを得なかったのである。

 ただし、そのレモンも頭をエナドリにやられたのか、元からこうだったのかは知らないが大分あっぱらぱーであったが。

 よく見ると、吊り目というよりも猫目に近く、ぱっちりと目を真ん丸にしながら彼女は嬉しそうに言った。

 

「御三方にはお礼をしなければ……そうだ、金一封お包みしましょう!」

「良いよ、そんな事……」

「いいや貰おう!! ボク達、そこのクワガノン着ぐるみの所為で無駄足踏まされたんだから!!」

「そうです。何なら変な物を見せられたお詫びをしてもらわなければ」

「貰っとくかあ!!」

 

 普通は遠慮するところだが、最早貰ってもバチは当たらないんじゃないかと思っていた。

 何故ならばハチミツから解放された後も、シャインは半裸だったからである。

 

「フッ、豪勢だねレモン。流石私達の中では一番のお嬢様だ」

「諸悪の根源の一人がなんかほざいてら」

「もうダメですわよ、シャイン。紳士がむやみやたらと脱いでは、貴方の美しさが勿体ないですわ」

 

(俺の知ってるレモンちゃんが絶対に言わねえ事を言ってる……)

 

「……仕方がない。レモンの言う通りだ、私の美しさは此処で無駄遣いするべきではない」

「すげー、暴力じゃなくて言葉で変態に服を着せた」

 

 向こうのレモンなら、グーで殴っていたところだ。

 やはり、性格が根っこから違うように思える。

 

「改めましてごきげんよう。私たちは砂の国・オシアスから観光にやってきたポケモントレーナーですの」

 

【”旅のトレーナー”レモン・シトラス】

 

(オシアス地方って変人ばっかりなんですね……)

 

 言いかけたミアだったが、口を噤んだ。えらい。しかし、オシアスが変人ばかりというのは紛れもない事実である。

 しかし「オイオイ待てや」と呆れたように言うのはオレンジ髪のラズだ。

 

「ケッ、レモンよぉ、観光だけじゃねえよ。伝説のポケモンのヴォルカニドとブリザベオの伝説を調査すンだろうがよォ」

「そうだとも。その調査の一環で私達は虫捕りをしていたんじゃないか」

 

 絶対にウソである。

 

「あらあら、私としたことが伝説のポケモン様を忘れておりましたわ。旅行があまりにも楽しくて!」

「もしかして私達が虫捕りしてた2日間、結構1人で楽しんでたのかな?」

「まさか! なかなか帰って来ないので、心配してたんですのよ。確かにずっとマニャカで1人観光していましたけども」

 

 

 ※※※

 

 

 ──なんか二人が虫捕りに行ったっきり帰ってこないけど、観光楽しいですわー♪

 

 

 ──なんか夜になっても二人共帰ってこないけど、観光楽しいですわー♪

 

 

 ──観光楽しいですわー♪

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「1人で観光エンジョイしてんじゃねえか!! 2日も経つ前に探したげろよ!!」

「仕方ねェンだァ……レモンは、超がつくほどのマイペースだかンな……」

 

 ラズが頭を掻いた。

 どうやら天然お嬢様に普段から振り回されているらしい。

 しかし、天然はコイツらも大概である。ボケ、ボケ、ボケ、ツッコミが居ない。

 

「……まァ、レモンは昔っから、そう言うところが放っておけねえっつーか可愛いっつーかなんつーか……いや、今俺ァ何口走った? 大丈夫だよな、聞こえてねえよな?」

「俺には全部聞こえたぞ思春期ボーイ」

「私にも聞こえているよラズ」

「ボクも」

「私も」

「いっそ殺せ!!」

 

 しかもラズは色ボケであった。始末に負えない。

 

「うん? 何故ラズは真っ赤になって蹲ってますの? 面白いですわ♪」

「こっちには全然聞こえてなさそー」

 

 尚、色ボケは天然ボケには一生かかっても勝てないようだった。

 

「はぁーあ、どうしようメグル。マニャカでの用事無くなっちゃったよ、ボク達」

「どうするよ。俺達も観光していくか。マニャカ全然見て回れてねえし」

「とんだ時間の無駄遣いでしたね……返してほしいです」

「それならば──良い場所がありますわ♪ 皆さま、ポケモントレーナーなのでしょう?」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 ──そんなわけで、レモンの案内の元、メグル達はマニャカシティ沿岸沿いにある”バトルポート”に訪れていた。

 海風が吹きすさぶ開放的な場所でバトルが楽しめる、という謳い文句で多くのトレーナーの姿が見られる。

 どうやら、トレーナー向けに開放されている対戦スペースらしいが──どうやらトレーナー同士の競争を加熱させるための仕組みが取り入れられているらしく。

 

「バトルポートでは入場時にポイントが付与されますの。そして、対戦相手のトレーナーを倒すことで、そのポイントを奪うことが出来ますの♪」

「成程な、レーティングバトルって奴か」

「それだけじゃあない。バトルポートでポイントを集めると、様々な景品が手に入る」

「どうせ粗品でしょう」

 

 ハナから期待していなさそうなミアは白い目で答えた。

 結局、オシアス三人組も観光についてきてしまったので、露骨に機嫌が悪くなっているのだ。

 中には当然、変態・シャインも含まれている訳で。

 

「わざわざトレーナー相手にバトルしなくとも、野生のポケモン相手に戦えば経験値は手に入りますよね。メグルさん、適当なところで切り上げて──」

「確かポイントを集めると、特性カプセルだとかタウリンだとか、後、珍しいポケモンの化石が最高景品にあってだね」

「ポケモンの化石が何だってェ!?」

 

 化石、の二文字を聞いた途端にアルカの態度が急変する。

 ミアを押しのけて前につんのめり、レモンの両の手を握り締める。

 

「化石!? 今化石って言った!? 言ったよね!?」

「は、はいっ……マーニャでは、復元できるようなポケモンの化石が産出されないので、極めて貴重で」

「そう!! そうなんだよ!! でもね、復元できないってだけで、マーニャでも古代のポケモンの化石が産出されたことはあるんだよ!! たとえばユレイドルの化石とか、後々、セグレイブの歯の化石とか!! すっごいよねえ、ロマンだよねえ、セグレイブが、マーニャに居たんだよ!? あの極寒の雪山にしか住まないっていうセグレイブがさ!! もしかしたら、掘り進めていったら今後マーニャでもポケモンの化石が見つか──いだだだだだ、耳が痛い!! 千切れる!!」

「人を押しのけておいて蘊蓄語るのはやめてくれませんか?」

 

 ぐいぐいぐい、とミアが思いっきりアルカの耳を引っ張る。顔は笑っていた。目は笑っていなかった。

 

「えーと、ポケモンの化石ってどれだけポイントを集めたら良いんだ?」

「プレイヤーの初期BPが100で、1000集めたら手に入るのかなあ。バトルに勝って30ポイント手に入るから、かなり根気強く、しかも勝ち続けなきゃいけないけど」

「へえ、大体30回くらいバトルしねえといけねえし、諦めた方が良いんじゃねえか、アルカ──」

「いよぉぉぉし、待ってろポケモンの化石ちゃーんッ!!」

 

 ミアの拘束を振り切り、アルカは爆速で会場へ走っていく。

 その様をぽかーんと、ミアは見つめるしかなかった。そして──叫ぶ。

 

「何なんですか!? 何なんですか、あの人!? 化石って聞いた途端、セキタンザンみたいになりました!!」

「仕方ねえんだ。憧れは、止められねえ。あいつ、遺跡だとか化石だとかにマジで目が無くってよ。単語を聞いたらああなる」

「メグルさん、よくあの人を御せてきましたね!? あの人、化石の事になると頭の中ネンドールみたいになってるんじゃないですか!?」

 

 ※ネンドール:中身は何も無いがらんどう

 

「御せてねえよ?」

「えっ」

「御せてねえよ? 俺如きにあいつが御せると思ってんのかオマエ」

「……なんか……すみませんでした……」

 

 にっこり、とメグルは笑う。そうでないなら、サニーゴの化石の時に喧嘩になっていない。

 

「ガチ周回勢は置いておいて、折角だし俺達もバトルしようってことだよな」

「はいっ。私、ポケモンバトルはあまり得意ではありませんが……相棒のこの子がバトルがとても好きなので♪」

 

 レモンがボールを投げる。

 中から飛び出したのは黄色いネズミのようなポケモン。

 

 

 

「ぴーかちゅー!」

 

【ピカチュウ ねずみポケモン タイプ:電気】

 

 

 

 ほっぺには赤い電気袋が付いており、尻尾はギザギザ。

 恐らく誰もが知っている、世界一有名なネズミのポケモンだ。

 

「ピカチュウか! そういや実物見るのは初めてかもしれねえ。サイゴクには生息してねえんだよ」

 

(にしてもピカチュウが相棒か。あの電球蛇に比べれば随分と可愛いぜ)

 

「カントーでも、発電所やトキワの森にしか生息していない珍しいポケモンです。可愛いので人気はあるんですけども」

「可愛いからって油断すんじゃねェぞ。コイツ、アホみたいに強いからな」

 

 横でラズが言った。

 いやいやまさか、とメグルは首を横に振る。

 所詮は何処までいっても種族値が合計320と低い進化元である。

 やたらと強いアニメの個体でもない限り、苦戦するなんてことは考えられない。

 

「では、そこのお嬢さんは手隙だろう? 私が相手しよう」

「えっ嫌ですけど……」

「なぁに、私のブロロロームもバトルを今か今かと待ち望んでいてね」

「話聞いてました?」

 

 人の話を聞かない変態はボールを放り投げる。

 しかし──中から出てきたブロロロームは未だにハチミツ塗れだった。

 

「……いけない、洗うの忘れてたね。ハハハハハ」

 

 全員はその場で沈黙する。

 当然、このような扱いを受けなければならない謂れは無いため、ブロロロームはかなりキレており、エンジンをふかしていた。

 

「ぶろろろろろろろろ」

「ハハハッ、参ったね……ご機嫌斜めだったようだ……怖いね☆」

 

 

 

【ブロロロームのホイールスピン!!】

 

 

 

 変態は撥ねられて海の中へと飛んで行った。

 すぐさま岸壁に駆け付けるラズだが、しばらくしてプカプカ、とシャインが浮かび上がってくる。

 

「おい大丈夫か!! 全部自業自得だけど死んでねえか!? 自業自得だけど!!」

「どうだい、ラズ……水も滴る良い男、ってね」

「ブロロローム、やっちまって良いぞ」

 

 変態の悲鳴がフェードアウトする中、ラズは「すまねぇな」とミアの前に出る。

 

「嬢ちゃん……シャインはアホだが悪いヤツじゃねえんだ……いや、やっぱ悪いヤツかもしれねえ」

「せめて貴方は自信を持ってあげましょうよ」

 

 手持無沙汰も何なので、ラズとミアは隣のコートに向かい合い、ボールを構える。

 

「……レモンの手前、負けられねえ。遠慮はいらねえぞ」

「勿論です。私も──負けられない理由があるので!」

 

(……私は勝たなきゃいけません。もっと強い相手に)

 

 ランクルスの入ったボールを握り締めるミアの表情は硬い。一方のラズも、想い人の隣で負けたくないのか重圧を感じているようだった。

 

「それでは、ごきげんなポケモンバトルの時間にしましょうね♪」

「ああ、よろしく頼むぜ」

 

(強いピカチュウって奴がどんなもんなのか、見せて貰おうか!)

 

 4人のモンスターボールが投げられる。

 勝負の火蓋が切られた。

 

 

 

「──グレンアルマ!! テメェの出番だッ!! ぐっずぐずに煮込んでやれッ!!」

「ぼうぼうッ!!」

 

 

 

 ラズのボールから飛び出したのは、赤い宝石が胸に埋め込まれた鎧を纏った戦士だった。

 薄っすらと狂気を帯びた装飾品のような瞳。

 その外見は、ミアやメグルが見た事のあるグレンアルマとは大きく異なる。

 

「ヘッ、オシアスのグレンアルマの鎧は特別製だぜッ!!」

「……文献でしか見た事のないオシアスのグレンアルマ……!!」

 

【グレンアルマ(オシアスのすがた) のろいせんしポケモン タイプ:ゴースト/岩】

 

【古の祭事で使われた鎧を身に纏う。魔法が込められた宝石を生み出し、弾丸にして飛ばす。】

 

 リージョンフォーム──つまり、オシアス地方でのみ見られるグレンアルマだ。

 古代遺跡が多数残るオシアスでは、宝石の装飾が施された鎧が出土する場合がある。

 それをカルボウが身に着ける事でリージョンフォームのグレンアルマ・ソウブレイズに進化するのだ。

 メグルは、かつて共闘した異世界の少年がソウブレイズを使っていたのを見たことはあったが、グレンアルマの方は結局見る事が出来なかったので引っ掛かっていたのである。

 

「ふふっ、余所見をしてもらっては困りますわ、メグル様」

「……そうだな。こっちも行くぞ、ニンフィア!」

「ふぃるふぃーっ!」

「ピカチュウ、久々に全力で暴れられますわね!」

「ぴーっ!!」

 

(一方でこっちはピカチュウか……正直グレンアルマと戦ってみたかった感もあるけど)

 

 相手が誰だろうとやる気十分なニンフィアは、ざり、ざり、と後ろ脚で地面を蹴る。

 一方のピカチュウも赤い電気袋から電気を迸らせて身構えるのだった。

 

「──ニンフィア!! 先ずは”ハイパーボイス”──」

「”アイアンテール”、ですわっ!」

「えっ──」

 

 視界からピカチュウの姿が消える。

 ニンフィアは辺りを見回し、標的の姿を探すが既にピカチュウは背後に回っており、連続した動作で硬化させた尻尾を叩きつける。

 背骨に甚大なダメージを負ったニンフィアは立つことが出来なくなり、早速ピカチュウにマウントを取られるのだった。

 あまりにも鮮やかな先制攻撃にメグルは愕然とする。

 

(ぜ、前言撤回!! このピカチュウ、強すぎる!!)

 

「あらあら? もうお終いですの?」

「ニンフィア、”マジカルフレイム”でピカチュウを遠ざけろ!!」

「ふぃ、ふぃるふぃっ……!!」

 

 魔法の炎を撒き散らし、ニンフィアは辛うじてピカチュウと間合いを取ることに成功する。

 ピカチュウは何処までいっても耐久の低いポケモンだ。出来るだけダメージを負いたくはないのだろう。

 問題は、効果バツグンの物理攻撃を受けた致命傷に近いダメージをニンフィアが受けており、立ち上がるのもやっとであることである。

 ダメージレースの土俵にすら立てていないのである。

 

「くっ、くくくっ……!! レモンは、私達3人の中で最強だよ……大体、そのピカチュウが悪いと言っても過言ではないが……」

「ブロロロロロロロ」

 

 漸く岸に這い上がろうとしていたシャインだったが、ブロロロームの”ホイールスピン”を受けて再び海へ叩き落とされる。

 しかし、そんな彼の惨状を気にする者などこの場に誰もいない。

 

(このままじゃ、一瞬で体力溶かされる!!)

 

「勝つのは私達ですわ。やれるものなら、やってみなさいな♪」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 一方、その頃。

 

 

 

「オイテケ……ポイント、オイテケ……!!」

「ひいいい!! 何だあのメカクレ女!! やべえぞ!!」

「逃げろ!! 持ってるポイント全部むしられる!!」

「ポイント、オイテケェェェーッ!!」

 

 

 

 ……アルカは化石モンスターと化していた。

作者の作風に期待するものは?(良ければ感想欄でも教えて下さい)

  • ラブコメ、純愛
  • 戦闘シーン
  • シリアス、曇らせ
  • ギャグ、コメディ
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