続・ポケモン廃人、知らん地方に転移した。【完結】   作:タク@DMP

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第19話:最強ピカチュウ

 ──ゲームにおける「ポケットモンスター」では、ポケモンには種族値と努力値、そして個体値が設定され、更にポケモンが進化する条件までもが設定されており、基本的に例外はない。

 しかし──あくまでもゲーム内でのステータスは「ゲームのプレイヤーが育成した時」のものだとしたら?

 ゲーム中でも、NPCが使うポケモンに、本来そのポケモンが習得できない技を使う個体や、本来そのレベルでは進化出来ないのに進化している個体が存在する。

 メタ的な視点では、進化レベルが遅いポケモンをそのままのレベルで出すと、ゲームの進行度に合わなくなってしまうといった理由があるが──このポケモンが実際の生物として生息する世界でも同様の事例は存在するのだ。

 そもそも、ポケモンが生物である以上、ゲームでの数値では表現できない個体差というものが存在し、生育環境によって能力も左右される。

 レモン・シトラスの相棒であるピカチュウは、ある種の特異個体と言っても差し支えない程の強さを誇る。

 その最大の特徴は、格闘戦への非常に高い適性。そして、それを彼女の育成によって限界まで引き上げられている点だ。

 

「ピカチュウ。”かみなりパンチ”ですわッ!」

「”でんこうせっか”で躱せッ!!」

 

 ズドン、と地面を一度打つとその勢いでピカチュウは拳を握ってニンフィア目掛けて何度も打つ、打つ、打つ。

 紫電が残像となって残り、まるで何度も稲光が地面に落ちているかのようだ。

 

「へっ、流石だ。強いなそのピカチュウ……! 俺のニンフィアを追い詰める程とは思わなかったぜ」

「持ち物は勿論”でんきだま”。だけど、この子に格闘術を教えたのは他でもない私ですわ」

「いっ……!? ウソだろ!?」

「紳士淑女たるもの、いざという時に自分の身を自分で守るのは当然の事。シトラス家の教えですの♪」

「ピーカピカ」

 

 キュッ、と格闘家の如き構えを取るピカチュウ。

 それに合わせ、レモンもキレッキレのポーズを取ってみせる。

 

「……ポケモンはトレーナーに似る、ってことか!」

「ふぃるふぃー……!!」

 

 背骨に受けたダメージが残っている所為か、ニンフィアはいつもの動きが出来ない。

 次第に動きも衰え、ピカチュウが放つ”かみなりパンチ”を顔面に受けてしまう。

 

「フィッキュルルルルルルル……!!」

「平気か、ニンフィア……!?」

「フィッ!!」

 

 頭に血が上り始めたのか、後ろ脚を地面にだんだん、と叩きつけ始めた。 

 イーブイ時代からの機嫌が悪い時の仕草だ。

 

「冷静になれニンフィア! 真っ向から突っ込んで勝てる相手じゃねえ!」

「ふぃーっ……!!」

「うふふ。随分と血の気が多い子ですのね。うちのピカチュウとそっくりですわ」

「ッ……!!」

「でも、気質だけで勝てるならバトルは苦労しませんわよね?」

「御尤も──ッ!! ニンフィア、広範囲攻撃だ!! ”ハイパーボイス”で吹き飛ばせ!!」

 

 思いっきり息を吸い込むニンフィア。しかし──先手を打ったのはピカチュウだった。

 

「”かいでんぱ”です♪」

「──ッ!!」

 

 ピカチュウが両手を地面につけ、耳をピンと立てる。

 すぐさま辺りには不協和音が響き渡り、メグルは頭を押さえ、ニンフィアも耳をキュッと絞るのだった。

 

「しまっ──特攻を下げる技……!!」

「ふぃるふぃ……ふぃいいいいいいいいいーッ!!」

 

 しかし、それでもニンフィアも負けじと大音声を放つ。

 妖精の加護が乗せられたそれは辺り一面を巻き込む勢いで空気を震わせ、空を飛んでいたカイデン達を撃ち落とす程。

 流石のピカチュウも音圧の前に吹き飛ばされはしたが、すぐさま尻尾を地面に突き刺して態勢を立て直す。

 ふらついており、確かにダメージは響いてはいるものの、まだ戦えるようだった。

 幾ら火力が高くとも所詮、耐久は並みのピカチュウと同じという事なのだろう。それでも──ゲームでのピカチュウのスペックを知るメグルからすれば異能生存体も良い所のしぶとさであったが。

 

(致命傷にならなかった……!! ”かいでんぱ”で特攻を下げられた所為だ!!)

 

(流石に”かいでんぱ”が無ければ危なかったですわね。でも、これで終わりにしましょう!)

 

「──さあ、幕引きですわ。”ボルテッカー”ッ!!」

「ピッ!!」

「──迎え撃て”はかいこうせん”ッ!!」

「ふぃるふぃーッ!!」

 

 全身に電気を纏うピカチュウ。

 一方で、口に極光を溜め込むニンフィア。

 互いの必殺技がぶつかろうとしていた。

 

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「”シャドーボール”だ、グレンアルマ!!」

「”トリックルーム”展開です!!」

 

 

 

 宙に浮かぶ影の弾幕の速度は一気に減衰し、目でゆっくりと追えるほどに低速化する。

 元々が鈍重なポケモンであるランクルスの動きは高速化し、一気にシャドーボールを展開するのだった。

 しかし、撃ち合いになれば、どうしても元々ゴーストタイプであるグレンアルマの方に軍配が上がる。

 使ったポケモンとタイプが同じ技は、威力が跳ね上がるからだ。

 

「今度はこいつとかどうだ? ”メテオビーム”!!」

 

 グレンアルマの宝石の鎧が太陽の光を浴びて輝き始める。

 更に、グレンアルマは懐から葉っぱを取り出すと、それを噛み締めた。

 ジュッと音が鳴って、煙が沸き立つ。

 

【グレンアルマはパワフルハーブで 力が漲った!!】

 

【グレンアルマの 特攻が上がった!!】

 

「しまった、間に合わない──!!」

 

 チャージから発射までの速度があまりにも速過ぎる。

 それもそのはず、パワフルハーブは1ターン跨いで攻撃する技を1度だけ短縮するアイテムだからだ。

 シャドーボールを何発もぶつけるランクルスだったが、それら全てを消し飛ばす勢いで極光が真っ直ぐにランクルスを貫く。

 全身が焼け焦げたランクルスだったが、すぐさま”じこさいせい”で自分の身体を修復した。

 

「ッ……強い──!」

「おっと、くたばらんか……! ランクルスの頑丈さに助けられたな……!! だけど、こっからァ、ギアをもう一段階上げていくぞ!!」

 

(グレンアルマの特攻が”メテオビーム”で上がってしまってる……此処から先は回復が追い付かない……!! かと言って”トリックルーム”は封じられてしまってるし……!!)

 

 ごくり、とミアは息を呑む。

 落ち着け、落ち着け、と自分に言い聞かせる。

 どちらにせよランクルスはグレンアルマの攻撃をまだ耐える事が出来る。

 そして特攻が高いのは此方も同じ、撃ち合いになっても勝てる見込みはある。

 

(受けきる事は出来ないけど、このまま撃ち合えば──!!)

 

(こっちが特攻を上げれば、当然短期決戦を狙ってくる。自分がトリックルームを展開しているなら猶更。そこに──隙が出来る!!)

 

「ランクルス──」

 

 焦り、攻撃の指示を出そうとするミア。

 だが──そこに、1つ引っ掛かるものを覚えた。

 珍しいオシアスグレンアルマの特徴をレポートで読んだ時の事だ。

 

(文献にあったオシアスグレンアルマの特徴……! 通常種と比べて能力に差異はないものの、鎧が宝石で出来ているから頑丈、オマケにオシアス種特有の技として、ソウブレイズ共々メタルバーストを覚える……)

 

 彼女の顔が一気に青くなった。

 ”メタルバースト”は受けたダメージを跳ね返す技だ。

 つい直近でも、”ミラーコート”が敗因となった戦いを経験したミアとしては警戒せざるを得ない。

 そして、グレンアルマもまた、原種含めて中途半端な素早さを補う為に”トリックルーム”を持っていることが多い。

 相手に”トリックルーム”を使われた場合に切り返すことも多々あるのだ。

 それを──しなかった意味を考える。

 

「ランクルス、”トリックルーム”!!」

「おっと──気付いたか!!」

 

 ”メタルバースト”は、相手よりも後に行動しなければ不発に終わる技だからだ。

 此処でミアが取った選択は、自分が使ったトリックルームを再度解除する事だった。

 ラズも眉をひくつかせる。

 グレンアルマに指示したのは──”メタルバースト”だったからだ。

 その様を見て、海から這い上がって来たシャインが後方腕組彼氏面で「なかなかやるね……」と一言。

 

「ラズはああ見えて頭脳派だ。ポケモンの知識は私達の中でもトップ……そのラズに出し抜かれず、行動を読み切ってみせるとはね」

「ぶろろろろろろろろ」

「あっ、ちょっと待──」

 

【ブロロロームの ホイールスピン!!】

 

 変態は再三海へと突き落とされていった。残念でもないし当然であった。

 そんな彼の惨状など気にするものなど誰もおらず。

 

(トリックルームを逆手に取られるところだった……!! でも、此処からは小細工無しのぶつかり合いになる──!!)

 

(完全に読んでやがったな、”メタルバースト”を……だけど、それは真っ向勝負をするって事で良いんだよなァ!!)

 

 

 

「──グレンアルマッ!!」

「──ランクルスッ!!」

 

 

 

 「シャドーボール!!」と二人が同時に叫ぶと共に、弾幕合戦が始まる。

 互いの放った”シャドーボール”を”シャドーボール”で潰し合う。

 先に力尽きた方が飽和爆撃の餌食になるのだ。

 だがそれでも、特攻の上がったグレンアルマの爆撃はそう簡単に抑えきれるものではない。

 次第にランクルスが押されていく──

 

(こ、このままじゃ、押しきられる……!)

 

(なかなかだぜ、だけどこれでゲームセットだ──ッ!!)

 

 ──勝負が付こうとした、その時だった。

 グレンアルマとランクルスは、ほぼ同時のタイミングで”シャドーボール”を放つのを止める。

 

「ッ!? どうしたグレンアルマ!」

「ランクルス!? 勝負はまだ終わってないですよ!!」

「いや、待て。これは──」

 

 グレンアルマとランクルスの視線は──空に向けられる。

 そして、ほぼ同時に、横のバトルコートでニンフィアとピカチュウも、技を取りやめるのだった。

 ニンフィアは口の中で光線を噛み殺し、ピカチュウは尻尾を地面に突き刺し、溜めていた電気を全て逃がしていく。

 トレーナー達も流石に異変を感じ取った。

 ニンフィアもピカチュウも、同じ方向を警戒するようにして向いている。

 

「……何か来るのか!?」

「ふぃるふぃー……!!」

「あっちには海鳥の群れしか見えないですわ……」

「待て。あいつら、こっちに近付いてきてやがる!!」

 

 答え合わせをするように、沖合から幾つもの影が飛んでくる。 

 

 

 

「くわぁーくわぁっ!!」

 

 

 

 真っ黒な羽毛に覆われたグンカンドリのポケモンの群れが、向こうから飛んでくる。

 大きさは1メートル以上もあり、見ていれば遠近感がおかしくなってくるほどだ。

 しかし、その群れを率いる先頭の個体は特に大きく──高さだけで2メートル以上はあるのではないか、と疑うほどの巨大さだ。

 

 

 

【タイカイデン<ヌシ> ぐんかんどりポケモン タイプ:電気/飛行】

 

 

 

 いずれの個体も目は赤く輝いており、そして真下に居る此方を見るなり、すぐさま急降下して次々に空から電気を放ってくるのだった。

 当然、メグル達は逃げ回る事しか出来ない。

 

「どわぁぁぁ!? あいつら雷落としてきやがった!?」

「おいレモン!! オメーのピカチュウ、特性は──」

「”せいでんき”ですわ!!」

「クソッ、この肝心な時にかよ!! もう特性パッチ使えーッ!?」

 

 ピカチュウの隠れ特性は”ひらいしん”。

 電気技を吸い寄せて無効化する特性だ。

 しかし、わざわざピカチュウ相手に電気技を撃つ相手も少ないので、レモンは”せいでんき”にしているのだった。

 だが今回はそれが裏目に出ることになってしまう。

 空から稲妻を落としてくるタイカイデンの攻撃を無力化出来るポケモンが居ない。

 

「生憎持ち合わせていませんわ!! 貴重品はホテルに置いてますわよ!!」

「何でそんなときだけ防犯意識しっかりしてんだ、このお嬢様はーッ!!」

「メグルさん、どうしましょう!? アルカさんに伝えますか!?」

「ダメだ離れすぎてる、先にこいつら何とかしねえと……! 他の観光客に被害が出るぞ!」

 

 見ると、他の方向からもタイカイデンの群れが飛んでくるのが見える。

 彼らも正気を失っているのか、地上のものに電気を放ちながら飛び回っている。

 当然、その攻撃対象はやっとの思いで岸に上がって来た変態も含まれるわけで──

 

 

 

「は、はぁ、はぁ、やっと海に上がれた……だが、必死になる私もまた美しい──」

 

 

 

【タイカイデンの 10まんボルト!!】

 

【シャインは 倒れた!!】

 

 

 

 ──変態は滅びた。取り合えず。

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 ──死屍累々。

 多数のトレーナーの屍の上にアルカは立っていた。

 にっこり笑顔のアルカ。しかし、前髪で目が隠れている所為で表情が分からない。

 関係者一同は危うく失禁するかと思った。連れているサニゴーン共々、オーラがとんでもない事になっているからだ。

 

「化石を──おひとつ、くださいな♪」

「ひ、ひぃっ……」

 

 トレーナー達だったものが彼女の後ろには積み上がっている。

 勝敗でポイントの増減が発生する上に、1日でポイントがリセットされるというルールの施設に於いて、まず1000ポイント達成できるトレーナーの方が少ない。

 そんな中、彼女は僅かな時間で30人近くのトレーナーを叩きのめし、1000ポイントを達成してみせたのであった。

 最早バケモノであった。石マニアという名のモンスターである。

 

「た、助けて……命だけは……」

「え? 命なんて要りませんよ。ボクは化石さえ手に入ればそれで良いんです。まさか、()()()()()()が景品だなんて言いませんよね、だって”本物”って書いてますよね、この景品表には」

 

 関係者一同は震えあがっていた。渡せるはずがない。渡せる訳が無い。 

 何故なら──先日、滅多に出ないクリア者が出て、景品の化石が売り切れになってしまったからである。

 かと言って目玉景品が無いままでは集客に影響が出るし、クリア者なんてそうそう出ない上にどうせ素人には分かるはずがないだろう、ということでレプリカを景品に置いていたのだが──あこぎな商売は彼女の前で打ち切られることになる。

 誤魔化せる訳が無かったのだ。特に、化石に関して並々ならぬ知識を持つアルカに対しては。

 

「レプリカだなんてそんな、難癖──」

「え? まだそんな事言うんですか? これレプリカですよね? だって、触っても冷たくないし……感触も樹脂じゃないですか。石じゃないですよ、精巧に石に似せてるけど樹脂ですよ」

 

(何で触っただけで分かるんだよ!!)

 

(多分この子、その道のプロだ!!)

 

「あっ、分かったぁ! 間違えちゃったんですよね! ありますよねえ、そういうこと。ボクも最初はニセモノとホンモノの違いとか分かんなかったんで、お気持ち分かりますよ……景品の化石は何処に?

「ッ……スゥウウウウウウ」

 

 真ん中に立っていた支配人が土下座する。もう誤魔化しようがない。何より目の前の少女の殺意が──ガチだ。口は笑っているが、それ以外が笑っていない。

 

 

 

「……間違いがあったので、代わりの物を持ってきます……」

 

 

 

 謝れて偉い。ただし、前髪から覗くアルカの目は、横のサニゴーンが震えて泣きだす勢いで瞳孔がカッ開いていたことを追記しておく。

 

「ぷ、ぷきゅぅぅぅ……」

作者の作風に期待するものは?(良ければ感想欄でも教えて下さい)

  • ラブコメ、純愛
  • 戦闘シーン
  • シリアス、曇らせ
  • ギャグ、コメディ
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