続・ポケモン廃人、知らん地方に転移した。【完結】   作:タク@DMP

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第20話:地雷

 ※※※

 

 

 

「──くわぁーくあっ!!」

 

 

 

 タイカイデンは、翼に受けた風を電力に変える事で発電するポケモンだ。

 つまり、空を飛んでいる限り、その電力が尽きることはない。 

 おまけに空中から目についたものを電撃で襲っているために、なかなか手出しが出来ない。

 辺りには落雷が次々に落ちていく。

 物陰に隠れたメグル達は、一先ずの作戦会議に入るのだった。

 

「で、どうするよアイツら……! 俺達の限られた手持ちじゃ、弱点突けるのは──」

「恐らく俺のグレンアルマだけだ」

「バツグンではないですが、電気技も通ると思いますわよ?」

「ったく、分かってねえなお嬢様ァ、良いかァ? タイカイデンってのは、特性が”ふうりょくでんき”の個体と”ちくでん”の個体が居ンだよ」

「”ちくでん”の個体に、電気技は通用しません……!!」

「そしてヌシの個体は必然的に”ちくでん”の個体だろうよ。悪ィが今回はピカチュウをアテに出来ねえ」

「何でヌシが”ちくでん”って分かるんだよ」

 

 メグルの問にラズとミアが「それは──」と続ける。

 そして互いに顔を見合わせた。

 

「……えっと、どうぞ」

「いや、良いぜ。多分嬢ちゃんの考えてる事と同じだぜ」

「両方共博識なのは良いから早く言ってくれ! 気になるだろ!」

「えーと……単純な話なんです。飛行/電気タイプという組み合わせのタイカイデンは、必然的に同族の攻撃を受けやすくなります」

「そうなった場合、有利になるのは”ちくでん”で電気タイプを無効化出来る個体だ。”ちくでん”の個体が自然と群れのリーダーになりやすいんだよ」

「成程、生物学的だ……」

 

 つまるところ同族に対して強く出られる個体ほど出世できるということであった。どちらにせよ、一番の強敵にピカチュウでは戦えそうにない。

 

「あらまぁ、どうしましょう……? 困りましたわ……ピカチュウの技、”かみなりパンチ”、”ボルテッカー”、”アイアンテール”、”かいでんぱ”しかありませんの」

「見事にタイカイデンに掠りもしねえ技構成だ」

「電気タイプの技が半減くらいなら何とかなるのですけども……困りましたわ。流石にアイアンテールでは不安定すぎますし」

「待って、半減までなら何とかなっちゃうの?」

 

 幾ら強いポケモンと言えどタイプ相性にだけは逆らう事が出来ない──と思っていた矢先にこれである。

 

「かと言って、流石にあの数はグレンアルマだけじゃあ手に余るぜ。”パワージェム”じゃあ弾道が細すぎる。”メテオビーム”は強ェがグレンアルマに負担が掛かりすぎる」

「”ハイパーボイス”も、あの高さだと届かねえだろうしな……」

 

 かと言って、このままタイカイデン達を放置することはできない。手に届かない位置に居るとはいえ、ヌシまで見えているのだから。

 

(ここはオシアス組と共闘して何とかするしかねえ……! アルカの奴も無事だったら良いんだが……)

 

「飛ぶカイデンを落とす勢い、という言葉があります」

 

 ぽつり、とミアが言った。それに対してラズも同意するように頷く。

 

「……成程な。空を飛んでるなら撃ち落としゃぁ良いってワケか。嬢ちゃんの考えてる事、大体分かったぜ」

「はいっ……使った事が無いのと、ランクルスはタイカイデン達を一掃する手段が無いのが不安ですが」

「後、落ちてきたタイカイデン共が一斉に激しく抵抗する事が予想されるぜ。地上でも電気を大量に放出されたら危ねェだろがよ」

「それなら──多分、レモンちゃんのピカチュウが鍵になると思うな」

「ああン? レモンのピカチュウの技に、あいつらに通りそうな技は──」

「分かってる。でも、弱体化できる個体だけでも弱体化出来れば御の字だろ?」

「……やるだけのことは、やってみますわ!」

 

 そうなれば、作戦は決まった。

 先ずはランクルスと共にミアが飛び出す。 

 

「技マシンで技を入れ替えました──ランクルス、気合を入れて」

「……ぐりゅりゅ」

「くわぁーくあ!!」

 

 早速、一際大きなヌシがミアに気付いたのか、他の個体を引き連れて電撃を放ちにやってくる。

 だが──既に近付いた時点で彼らは術中にかかっていた。

 辺りの重力は既にランクルスが支配している。次々に地面に引き寄せられて落ちていく。

 

「”じゅうりょく”──空を飛ぶポケモン、浮いているポケモン、皆地面に引き寄せられます!」

 

 空での自由を失い、彼らは一気に地面に縫い付けられることになった。

 だがそうなれば当然、地上で激しく暴れながら電気を放出し始める訳で。

 すぐさまランクルスと共に物陰に隠れたミアは電撃を防ぎながら叫ぶ。

 

「次っ!! レモンさん、お願いします!!」

「ごめんあそばせ! ピカチュウ、”かいでんぱ”ですわ!!」

 

 ピカチュウが耳を立てて強烈な不協和音を辺りにかき鳴らす。

 驚いた事に、地面に落ちた個体の殆どがこれを受けて苦しみ始め、電撃が目に見えて弱まり始めるのだった。

 ”かいでんぱ”を受けて苦しんでいないのは、一際大きなヌシ個体だけだ。

 

「やっぱあいつが”ちくでん”だったか!! ラズ!! 決めるぞ!!」

「ヘッ、良いぜ。ぐっずぐずに纏めて煮込んでやらァ!! ──グレンアルマ!!」

「──ニンフィア!!」

 

 電撃を放ち、グレンアルマとニンフィアを焼き焦がそうとするタイカイデン達。

 後は足りないのは速さだけ。当然、ミアが最後の仕上げと言わんばかりに宣言する。

 

「ランクルス──”トリックルーム”!!」

 

 辺りの空間はランクルスによって歪む。 

 遅いものが速くなり、速いものが遅くなる。

 タイカイデン達の電撃は飛ぶ蠅のように遅くなり、逆にいの一番に飛び出したニンフィアの”ハイパーボイス”、そしてグレンアルマの鎧から乱発された”パワージェム”が地上に縛り付けられたタイカイデン達を薙ぎ払うのだった。

 周りの取り巻きたちは力尽きて小さくなっていき、ヌシもまた、回避不能の攻撃を受けたことで倒れ伏すのだった。やはりスピード型のポケモンというだけあって耐久力が低く打たれ弱いのだろう。

 

「ガッチャ!! これで、決まりだぜィ!!」

「待ってラズ!! まだあのタイカイデン、動けますわ!!」

 

 

 

「──クワァアアアアアアアアアアアオオオオオオンッ!!」

 

【ヌシ咆哮:ポケモン達は怯んで動けない!】

 

【ヌシ咆哮:不思議な空間が解除された!】

 

 

 

 辺りを震撼させる程の咆哮が響き渡る。

 そして、辺りの温度が急激に下がっていく。

 薄着の彼らは当然肌寒さを覚え、鳥肌が立った。ヌシのタイカイデンの身体に、氷の鎧が纏わりついていく。

 

「イレギュライズした……!!」

「イレギュライズだァ!? 何だそりゃぁ、聞いた事ねぇぞ俺ァ!!」

「えっと、俺の連れが付けた名前だから、名前は知らなくても問題ねえんだけど──」

「勝手に新用語を作るんじゃねえ!!」

「ざっくり言えば、このマーニャのヌシポケモンにみられる異常行動です!」

「本当にざっくりだ!」

 

 言ってしまえば、此処からが第二ラウンドの開始である。

 タイカイデンは完全に氷に覆われたような姿となり、未だに飛び立てはしないものの、不思議な空間を打ち破ったことで素早さが逆転したからか、即座に辺りに向かって放電してみせる。

 

「だぁぁぁ!? ミア、もう一回ランクルスに”トリックルーム”を──!」

「ダメです、怯んじゃって動けそうにないです……!」

「動けグレンアルマ!! どわぁぁああ!? 稲光がこっちにまで来やがったァ!?」

「だ、大惨事ですわ……」

 

 かと言ってこの状況、相手がタイカイデンということもあってピカチュウが助太刀しに行けるわけでもない。

 辺り一面に雷が降り注ぐ状況を、レモンは袖を握って見守るしかないのだった。

 当然、ニンフィアとグレンアルマも高圧電流を受けて被弾し、その場に倒れ伏す。

 ヌシというだけあって、その火力も尋常ではない。

 

「あっはははー、なんか騒がしーねぇ」

「!?」

 

 その時だった。聞き覚えしかない声が向こうの方からやってくる。

 そして見覚えしかない赤毛メカクレの合法ロリデカパイ女が、いつもの調子でステップしながらやってくる。

 

「うわー、ビリビリ光ってて、綺麗だねー、電飾か何かかな?」

「あ、おい、アルカ!! 今はどう見ても危な──」

 

 

 

「そんなに暴れて──ボクの化石に傷がついたらどうすんのさ?」

 

 

 

 全員は──静かになった。

 ヌシポケモンよりも恐ろしい気迫を彼女は放っていたからである。

 ぽい、とボールが放られ、中からサニゴーンが現れる。

 ぷるぷる、と震えていたサニゴーンだったが、主人のオリジナル笑顔を見て、すぐさまタイカイデンの方を向き──

 

 

 

「サニゴーン、”ミラーコート”お願い」

「……ぷきゅー」

 

 

 

 ──乱雑に放たれていた電気の雨を全部タイカイデンに撃ち返し、撃滅するのだった。

 ヌシポケモンの氷の鎧が溶けていき、そしてタイカイデンも小さくなりながら逃げていく。

 辺りの騒乱も徐々に消えていき、空を飛んでいたタイカイデン達も何処吹く風で何事も無かったかのように飛んで行くのだった。

 あまりにもあっさりと、バトルポートでのヌシ騒動は鎮圧されたのだった。最後の最後に現れた化石モンスターによって。

 

「お前……何かあったん……?」

「うん?」

 

 そう問うメグルの声は間違いなく震えていた。

 アルカは笑顔のままだ。景品が入っていると思しき紙袋を大事そうに抱えている。

 だが、声が笑っていない。

 

「べっつにー♪ 景品の化石、危うくレプリカ掴まされそうになったこととか、オムナイトの化石欲しかったのに手に入らなかったとか、全然気にしてないよっ♪ 代わりの化石も手に入ったしね!」

「は、ははは……あくどい事考えるヤツもいるモンだな……」

「サニゴーン、大丈夫ですか!? 泣いてるじゃないですか!?」

「ぷきゅー……」

「鳴き声が進化前に戻ってる──!?」

「ボクね、化石の偽物とか掴ませようとするのってマジで地雷でさ。何なのかな、ボクちっちゃいからナメられてるのかな。素人だって思われるのかな。いや、その場は穏便に済ませたよ? ただねぇ、すっごく腹が煮えたぎって仕方ないって言うかさあ」

「あ、アルカさんが今まで見たことないくらいキレてます……」

「つか何オマエ? 今の間にトレーナー30人ブッ倒して来たって事?」

「うんっ」

 

 屈託のない笑顔だった。

 好きな物の為に頑張れるのはきっと、得難い才能なのだろう。

 そのために際限なく強くなれるということも。

 ただ、メグルはこの先、どんなに頑張っても化石が絡んだ時の彼女にバトルで勝てそうにないな、と思うのだった。

 

「とゆーわけで、ボク先にホテルに戻ってるから! この子を早い所復元してあげないとねー♪」

 

 嵐のような顛末であった。

 その様を見ていたレモンはラズにしがみつく。

 

「……世の中には、恐ろしい人がいますのね……! 私、怖くなってきましたわ……」

「ぴかぴーか……」

 

(うおおおおおお!! あのレモンが自分から俺に……神様ありがとう、マジで感謝!!)

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「──なるほどな。ヴォルカニドとブリザベオ……伝説の二匹がポケモンの暴走に関与してる可能性があるのか」

「ああ。それで俺達も足取りを追ってる」

「もしもあの二匹を見かけた時は、私達にも情報を下さいね」

「勿論だぜ。ラズ様に任せておきな!」

「はいっ。お二人もお元気で。アルカ様にもよろしくお伝えくださいな」

 

 4人はその場で、別れ──また、それぞれの旅路に戻っていく。

 夕陽が沈む中、レモンはラズに笑いかけながら「不思議ですわ」と言った。

 

「何だか私、あの方たちと初めて出会った気がしませんの。また会えるかしら?」

「あァ。マーニャで伝説のポケモンを追ってりゃ、何か分かる事があるかもしんねえな」

「はいっ。楽しみですわ♪」

「ぴーかぴっ」

「……なぁレモン」

「どうしましたの、ラズ」

 

 神妙な顔をするラズの顔が夕陽に照らされる。

 それが妙に鮮烈で、レモンは思わず彼に見惚れてしまうのだった。

 

(……ラズ? どうしたのでしょう、いつもよりも真剣……?)

 

「ずっと言いてえ事があったんだけどよ」

「……ラズ」

 

 ピカチュウも空気を察し、レモンの肩から降りる。そして物陰から行く末を見守るのだった。

 ごくり、と緊張したレモンが喉を鳴らす中、ラズは──思い切って口火を切る。

 

 

 

「俺達ゃ……何か忘れてねえか?」

「……」

 

 

 

 レモンもピカチュウも沈黙した。

 

「……忘れちゃいけねーもん、忘れてる気がするんだけどよ」

「忘れているということは、大したことではないかもしれませんわ」

「……そうかぁ? そこそこ大事なモンの気が……あ”ッ」

「……あッ」

 

 そうして二人は漸く思い出した。回収しないといけないものをまだ回収していない。

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「はぁ、はぁ、はぁ……やっと、陸に上がれた……」

「ぶろろろろろ……」

「ああ、ブロロローム! 迎えに来てくれたのか! しかし見たまえッ!! 水も滴る濡れた私も美し──へくしょいッ!!」

「ぶろ……」

 

 ※特別意訳:もうやだこの主人……。

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 ──その日の夜の事。

 

「んで、アルカ。結局その化石は何なんだ?」

「うん? 分かんないんだって」

「ええ……そんなもん貰っちまったのかよ」

「偽物掴まされるより百倍マシだよ。ボクの観察眼が言ってる。確実に本物、ってね」

 

 何かのヒレみたいだけど、ヒレなんて幾らでも出てくるからさぁ、とアルカは語る。

 しかし、その楽しみそうな顔からは、概ね化石からポケモンが復元できるであろうことが予測できているようだった。

 

「工事現場から偶然出てきたみたいで。あまりにも綺麗だから、今まで支配人が買い取って飾ってたみたい。だから、まだ鑑定もされてないんだって」

 

 「価値の分かんないヤツの手に渡ってると困るよねえ、もし世紀の大発見だったらどうすんのさ」とアルカは言ってのける。

 

「この子はボクの手で復元する。してみせる!」

「でもよ、マーニャに化石の復元が出来るようなところってあるのか? 化石、あんまり産出しねえんだろ」

「一つだけ──該当する場所があります」

 

 スマホロトムの画面をミアが見せる。

 

 

 

「──マーニャ地方の首都、カテドラルシティ。此処には大きな博物館があるんです」

 

 

 

 写真は高層ビルが立ち並ぶ、如何にもな中央都市といった様相だ。

 それ故に、地方の主要な施設もこの町に集中しているのだろう、とミアは語る。

 

「……ただ、ちょっと今厄介な事になってるみたいで」

「うん? どういう事だ」

「ニュースサイトでちょっとした話題になってるんですよ。事件の予感しかしなくって……」

 

 

 

【怪盗クローバーの犯行予告、カテドラル博物館に!?】

 

 

 

 そんな大々的な見出しのニュースを見て、思わずメグルとアルカは顔を見合わせるのだった。

 

 

 

(ク、クローバーって、()()()()()()()、だよな!?)

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「──ダンガンとフカの二名は、カロス地方の別件に捕まっていて、マーニャには行けない。そこで──代わりにこの男を派遣する」

「……」

「無口な男だな?」

「だが良い仕事をする。そうだろう──”ゼラ”」

 

 狙撃銃を投げ渡されたのは長身で体格の良い大男だった。

 サングラスをかけた顔からは表情を伺い知ることなど出来ない。

 

 

 

「……俺が堕とす」

作者の作風に期待するものは?(良ければ感想欄でも教えて下さい)

  • ラブコメ、純愛
  • 戦闘シーン
  • シリアス、曇らせ
  • ギャグ、コメディ
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