続・ポケモン廃人、知らん地方に転移した。【完結】   作:タク@DMP

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第21話:怪盗クローバーの逆襲?

 ──草木も眠る丑三つ時。

 ホテルのバラバラのシングルベッドで寝る旅仲間達。

 相も変わらず悪夢に魘され、ニンフィアを抱いたまま寝ているメグル。

 晩御飯と一緒に酒を飲んだので上機嫌で寝ているアルカ。

 そして夜のトイレからふらふらと戻って来たミア。

 だが、寝ぼけていたのか、あるいは温もりを求めてか。

 彼女はぼんやりとしたまま、そのままアルカのベッドに入ってしまうのだった。

 しばらくして──もにゅもにゅ、と妙な感触を胸に覚え、アルカは目を醒ます。

 

「んぅっ……ねえ、メグル……ミアが居るんだよ? なのに盛ったら……」

「むにゃ……」

 

 その声でアルカは、入ってきたのがメグルではない事に気付く。酔いはすっかり醒めてしまっていた。 

 もみもみ、とこねくり回されている。自分の胸元にぶら下がっている大きな脂肪の塊が。

 

「ミ、ミア……!?」

 

 彼女はぎっちりとアルカを抱きしめてしまっており、ベッドの中ということもあって振り解こうにも振り解けない。

 

「寝ぼけて入ってきちゃったの……!? い、一緒に寝るのは良いけど……ひぅっ……胸……揉んじゃってる、からぁ……!?」

「んー……柔らかい……おっきい……ミルタンク……」

「ンな……ミルタンクって……」

 

 どんな夢を見ているのか知らないが、ミルタンク呼ばわりされてアルカは衝撃を受ける。

 だが、そんな彼女を気にする事もせず、寝ぼけたままミアはアルカの胸を堪能し続けるのだった。

 特に夜寝る時は下着を付けていない所為か、ダイレクトに感触が伝わってしまうわけで、くすぐったさが体を襲う。

 悩ましい声を上げながら、アルカは体をよじらせるしかないのだった。

 

「……ふわふわ……もにゅもにゅ……」

「待って……触り方、えっちすぎるから……!? ひゃんっ!? そ、そこはダメだよ、メグル以外に触らせた事ないもん……お、起きてよーッ!!」

 

 しかし、それでもミアの目が覚める事は無い。

 ねちっこく、しかもしつこくアルカの胸をいじめ続ける──

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 ──翌朝。

 

「なぁ、アルカ……夜寝てる時よ、なんか……すっげー悩ましい声が聞こえてきた気がしたんだけどよ……」

 

 ※何も知らない人。

 

「……」

「……お前まさか、ミアが近くで寝てるのに一人で」

「違うーッ!! 違うんだもんーッ!! メグルのバカーッ!!」

 

 ※結局早朝まで胸をこねくりまわされていた人。

 

 メグルのあんまりな問いにアルカは目の下を擦りながら叫ぶのだった。

 

「だ、だよな、気の所為だよな!! 悪い……」

「もーっ、常日頃からエッチな事ばっか考えてるからだよ! 着替えるから、先にゴハン食べに行ってて!」

「ふぃるふぃー……」

 

 寝起きで機嫌の悪いニンフィアを抱っこしたメグルを部屋から押し出す。

 すると──目を擦りながらミアも起きてくるのだった。

 

「おはようございます……昨日はいつもよりぐっすり眠れた気がします」

 

 ※早朝トイレに行って自分のベッドに戻って二度寝したので、自分のやらかしに気付いていない人。

 

「あれ、アルカさん、どうしたんですか? 朝から顔を真っ赤にして……」

「……ミア、昨晩は良い夢見れたかな」

「え? そうですね──楽しい夢でした。私一度、ジョウトの牧場に行ってみたくって」

 

 彼女はニコニコで答える。

 

 

 

「──牧場でミルタンクの乳搾り体験をする……夢……を……」

 

 

 

 そこまで言って、ミアの顔から血の気が引いていく。

 マーニャの日差しで焼けているはずなのに、ヒャッキの民と同じくらい青白くなっていく。

 聡いミアは全てを察する。己のやらかしを。

 

「まさか私寝ぼけてアルカさんのベッドに? そう言えば途中で起きた記憶が……本当に……すみませんでした……」

「……全くもう……寝つきが悪いってレベルじゃないよ。気にしてないけどさぁ」

「……」

 

 するする、と服を着替えていくアルカ。

 寝間着を脱ぎ捨て、そして明らかにカップ数の違う下着を着こんでいく。

 そうなると──やはり、大きな胸が嫌でも目に付くわけで、ミアはずっとそれを凝視しているのだった。

 

(な、何を食べたらそんなにおっきくなるのでしょう……?)

 

 思わずゴクリ、とミアは生唾を飲む。

 そして自分の胸に手を当てた。哀しいくらい膨らみらしい膨らみが無い。

 人間はやはり自分の身体に無いものが相手に付いていると、どうしても気になってしまう生き物なのだろう。

 着替え終わったアルカが、未だに此方を見つめているミアに「どしたのさ」と問いかける。

 

「……やっぱ気になる?」

「ひゃいっ!? は、はい、同じ女として……少し、敗北感が……」

「ふふん」

 

 年長者らしく今度は余裕を醸し出しながら「でも重いし大変だよ? 肩凝るし」と続ける。

 それを聞いて、余計にミアは眉間に皺を寄せた。完全に分かっていて煽っているのだ。

 

「で、でも、やっぱり憧れる気持ちが無いわけでは……」

「持ってみる? 下からこう持ち上げてさ」

「……うわっ、重!? メロンじゃないですか、これをずっと!?」

「そうだよ。大変なんだよ。合う下着も無いし町に出ると視線もすごい集めるし」

「……私には分からない世界です……ショージキ、私の年齢でこれでは、もう育つ見込みがない気が……」

「でも、そうだな……揉んだら育つって言うけどね」

「ふぇっ!? ちょっとアルカさん──アルカさん!?」

「こっちも散々揉まれたんだから、お返しだーッ!!」

 

 

 

 ガタッ、ガタガタガタッ……!!

 

 

 

「おっと、窓が外れたデース!! いやあ、やっと入って来れマシタよ……」

 

 

 

「……」

「……」

 

 アルカがミアの背後に回ろうとしたその時だった。

 ホテルの窓が外側から開けられ、中から入り込んできたのは──全身白スーツにシルクハットを被った怪人物だった。

 

「あっ、お楽しみデシタか? 私にはお構いなく……」

「いや構うわ──ッ!!」

「誰ですか貴女ーッ!!」

 

 二人は揃ってスマホロトムを取り出し、通報の準備。

 すぐさま怪人物は「STOP!! STOP!! 怪しいモノではないデース!!」と怪しいルー語で叫ぶ。

 

「何処からどう見ても不法侵入です!! 不審者です!!」

「不審者ではなく怪盗デース!!」

「はぁーっ!? 怪盗って……ああぁぁあーっ!! 君はーッ!!」

 

 アルカが思い出したように指差した。

 シルクハットから覗くブロンドの髪に、美しい碧眼。

 すらりとした男装の麗人といった容貌の少女。

 まさしく以前、サイゴク地方・フチュウ地区で共闘した怪盗であった。

 そして今、このカテドラルシティで噂になっている予告状の主だ。

 

「ク、クローバー!! ()()()()()()()!!」

「……えっ、やっぱり通報しなきゃ……」

「STOP!! STOP!! 話を聞くのデース!!」

「おーいどうしたぁ? いっつももっと早く着替え終わるじゃねえか、何かあったのか?」

 

 ばたん、と無遠慮に部屋の扉が思いっきり開く。

 なかなか朝食のバイキングにやって来ない二人に業を煮やし、メグルが戻ってきたのだ。

 そこにあったのは、見覚えしかない怪盗が部屋に入り込んでいる姿。

 すかさず彼もスマホロトムを取り出した。

 

 

 

「……もしもし? ポリスメン?」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「偽の予告状を出されたァ!?」

「ハイ……」

 

 

 

 部屋の真ん中で正座する怪盗の言い分に、全員は困惑する。

 そもそもミアからすればクローバーは初対面。指名手配犯とあっさり打ち解けている様子のメグル達に困惑しているようだった。

 

「あの、メグルさん……? 何で当たり前のようにクローバーと友達みたいに喋ってるんですか?」

「ふふんっ、愚問デスね、そこのGirl!! Mrメグル、そしてMsアルカは私の協力者、仕事仲間なのデース!!」

「協力者になった覚えも仕事仲間になった覚えもねーよ!!」

「一回たまたま目的が合致して一緒に戦っただけだよ!!」

 

 二人がスマホロトムを取り出しても尚「またまたぁー、冗談キッツいんデスからぁ」と彼女は取り合わない。

 

「Msアルカは私がケガして動けなかったところを助けてくれたじゃないデスか! 私達、魂のSoulフレンド、デスよね!」

「頭痛が痛いみたいな……こっちの頭が痛くなってきた……」

 

 連続窃盗犯の仲間みたいに思われる言動は勘弁してほしい、と言わんばかりにメグルとアルカは頭を抱える。

 本当にたまたま、呉越同舟的に戦っただけに過ぎない相手に「私達昔からの仲間でしょ?」と言わんばかりにベタベタされるのは困る。非常に困る。

 

「でもさぁ、偽の予告状ってどういうこと? カテドラル博物館に届いた予告状は君が出したものじゃないってこと?」

「Yes! こんなイタズラは初めてデス!」

「オメーの窃盗行為は悪戯じゃ済まねえけどな」

「怪盗行為と言ってくだサイ!」

「同じなんだわ」

「私達一族は依頼があった曰く付きの宝物しか盗みマセン!怪盗行為が悪であることは間違いないデスけどね? 悪には悪の美学があるんデスよ!」

「そうですか、じゃあ悪は悪らしく通報しますね……」

「NO!! STOP!! ねえMrメグル、Msアルカ、何ナノこの子!? Youたちの子供!? とんでもない塩っぷりダヨ!?」

「旅仲間です」

 

 心の底から胡散臭いものを見る目でミアは怪盗を見下ろす。

 

「で、偽予告状を出してきた相手に覚えはあるの?」

「勿論──ありマセンッ!! だからこれから、勝手に予告状を出した不届き者が誰なのか、探しに行くんデショ?」

「俺達もかよ」

「貴方達の事は調べさせてもらいマシタ! 色々厄介ごとに首を突っ込んでいて、対処に慣れているみたいデスね」

 

 半数くらいは巻き込まれ事故であり、首を突っ込んでいると言われると激しく反論したくなるメグルだったが、もう面倒だったのでそういうことにした。

 

「もしも、貴方達がこの件について協力してくれるなら……伝説のポケモンの目撃情報を提供してあげない事もないデスよ?」

「ッ!? それは本当なのか!?」

「勿論、怪盗ウソ吐かない」

「直近でしょうもないデマに騙されたので、正直警戒してるんですけど」

「ふふん、私の元には世界中のあらゆるところから情報がやってくるのデスよ」

 

 急に何処からともなく鹿追帽を取り出し、二重コートに早着替えしたクローバーはベッドの上に座り込み、足を組んだ。

 

「……貴方達が探しているのは、マーニャに伝わる伝説のポケモン、ヴォルカニドとブリザベオ……デスね?」

「ッ……! どっからそれを……!」

A secret makes a woman woman(秘密は女を女にする)……デスよ。なんかそれっぽいデショ?」

 

(ウッゼェ……)

 

「でもま、調べてる理由は分かりマスよ。マーニャで起きてるヌシポケモンがオーラの鎧を纏う現象。それに加え、ヴォルカニドの復活。関連性が無いとは言えないデスしね?」

「……そこまで知ってるなら話が早い。お前は俺達にどんな情報を教えてくれるんだ?」

「ブリザベオの居場所……後は、それに伴うワームホール公団の怪しい動き、デショウか?」

「ッ!!」

 

 メグル達は思わず立ち上がる。クローバーは足を組みなおし、妖しく微笑んだ。交渉のカードはしっかり此方が握っているのだ、と言わんばかりだ。

 

「……ちょっとは協力する気になったデスか?」

「もしウソだったらお前を詐欺罪と詐欺罪で訴えるぜ。理由は勿論お分かりだよな? 裁判所にも問答無用で来て貰うし、お前は元より犯罪者だ、刑務所にぶち込まれるのを楽しみにしておけ」

「こっわ……言ったデショ、怪盗ウソ吐かない」

「後、脱ぎ捨てた服を拾え」

 

 いつもの紳士服をスーツケースに詰め込んだ怪盗は、鹿追帽子をキュッと掴む。

 

「とゆーワケで! 来て貰いまショウか? 私と一緒に、私の偽物探しに付き合って貰いマース!」

 

 3人は揃って顔を見合わせる。

 そして、スマホロトムを取り出すのだった。

 

「ちょいちょいちょいちょーい!! 今のは協力する流れデショ!?」

「あ、悪い悪い、つい手癖で……」

「ちょっとでも妙な事をしたら分かってるよね」

「……貴女とは情報交換の元で取引しているにすぎません、協力者だのと宣ったらこうですよ」

 

(やれやれ……これだから、ツンデレは……☆)

 

 ツンデレ等ではない。彼らは割と本気で目の前のクローバーを通報しようかと思っている。

 何が悲しくて、折角来たカテドラルシティで怪盗の手伝いをしなければならないのか。

 

「ま、良いよ。ボク達も丁度博物館に用事があったし。クローバーが居なかったら、前の事件、絵の所為で大変な事になってたかもだし」

「ホントデスか!? 流石、Msアルカ! 私達やっぱりベストフレンド、デスね! ところで──博物館に何の用事デス?」

「そこの化石を復元しに行くんだよ」

 

 アルカは頑強なケースの中に入れた化石を指差した。それを見ると興味深そうに怪盗は目を丸くした。しかし、彼女が何かを言う前にその手首を掴む。

 

「後、その化石に指一本でも触れたら手首から先は無いと思いなよ」

「ヒェッ……触らないデスよ!!」

「気を付けろよ、そいつは化石の事になるとマジで怖いぜ」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「それで──えーと」

「バジル! 街に居る時は、私の事を()()()って呼んで下サイ!」

 

【”5代目怪盗クローバー”バジル】

 

 バジルという名前は、どうやらクローバーが表社会で生活している時に使う名義の一つだという。

 そもそもクローバーの名前は襲名制らしく、個人の名前というわけではないらしい。

 へそ出しのタンクトップにジーパン、そしてサングラス、髪をポニーテールに纏めれば、クローバー改めバジルはすっかり観光客に溶け込んだ姿となるのだった。

 

「くれぐれも私を人前で裏の名前で呼ばないように! OK?」

「おう分かったぜクロ──」

 

 

 

 ドスッ

 

 

 

 バジルの正拳突きがメグルの鳩尾に突き刺さる。

 彼が蹲って悶え苦しむのを捨て置き、彼女はスマホロトムを取り出す。

 

「予告状にあったのは、カテドラル博物館の展示品、”黄金のタマゴ”デス。ポケモンのタマゴの化石……デスね。表面が光り輝いているので、”黄金のタマゴ”って呼ばれてるデス」

「でもまだ展示されてないのですよね?」

「Yes。展示する前のモノに予告状が来たのデスよ」

「そっか、どっちにしても許せないね」

 

 シンプルな言葉なのにアルカが言うと重みが深い。周囲の温度が2度くらい下がった気がしたバジルだった。化石愛好家は──怖い。

 

「でもよ、訳分かんねーよな。何でクローバーの名前で予告状を出すんだ? 警察だって警備を固めて盗むのが難しくなるだろうに」

 

 復活したメグルが至極真っ当な疑問を投げかけた。

 クローバーは今や、国際警察に指名手配されている有名な怪盗だ。

 ありとあらゆる警備や罠を掻い潜り、必ず狙いのものを盗み出すプロフェッショナルだ。

 

「そもそも、こんなモノにクローバーのウソ予告状を送ってまで盗み出す価値があるのか? タマゴは復元出来ねえらしいじゃねえか」

「何言ってんのさメグル、復元できるかどうかに関わらず化石は等しく尊いんだよ」

「ごめんなさいでした」

 

 どういったものなのかは実物を見ていないのでまだ何とも言えないところだ。

 ホテルの外に出て、一先ずはカテドラル博物館で化石を預けよう、ということに。

 

「んーっ! シャバの空気は美味いデース!」

「堂々と言うじゃねえか」

「しかも、変装しているとはいえ、堂々とカテドラル博物館に行くのですか?」

「勿論デス! だって今回、私悪くないデスし!」

「それにボクも用事あるし」

 

 保管用ケースを大事そうに抱えたアルカが言った。彼女としては早く化石を復元してしまいたいのだろう。

 幸い、カテドラル博物館はホテルからそこまで遠くはない。歩いて行ける範囲だ。

 

「フーン? ところで、Mrメグル。フチュウの時は、Msアルカとべったりだったのに、また新しい女の子だなんて……やり手デスねェ?」

「そんなんじゃねえよ年が離れすぎなんだわ」

「私がワガママ言って付き合わせて貰ってるだけなので」

「成程ォ。それにしても、Cute! 私の幼馴染みたいデス!」

「ちょっと、抱き着かないで下さい、通報しますよ」

「Sorry! しばらく会ってないので、寂しくなっちゃって」

 

 今頃何処にいるんデショウねー、と彼女は言う。

 そんなに寂しいなら人に言えない稼業なんてやめればいいのに、と切にメグルは思うのだった。

作者の作風に期待するものは?(良ければ感想欄でも教えて下さい)

  • ラブコメ、純愛
  • 戦闘シーン
  • シリアス、曇らせ
  • ギャグ、コメディ
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