続・ポケモン廃人、知らん地方に転移した。【完結】   作:タク@DMP

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幕間:残火

 ──万能細胞を用いたクローンは、死者の復活が原点だ。

 既に死んだ存在を復元し、元の通りに蘇らせることがこの研究の始まりだった。

 それは何時しか、死者の細胞を万能細胞と融合させたキメラ生物の研究へとシフトしていく。

 極めて培養速度、そして成長速度が速いクローン兵士の増産へ向けたものだ。

 脳細胞、体幹細胞など、必要な細胞を採取。更に、必要時に備え、各種新鮮な臓器を摘出し、保管する。

 脳、心臓、眼球、肺、肝臓、クローン兵士の臓器を補完するのは、当然オリジナルの臓器が最も適しているからだ。

 適時培養することもできるが、何故か臓器だけの培養は失敗しやすく、エラーが起きやすい。

 何処までいってもコピーはコピーであり、複製する度に劣化していくものなのだ。

 

「クローバー……本名不明、肉体年齢は19歳、死因……溺死」

 

 手術台から()()()()()()()()()()()()少女の肢体が運び込まれていく。

 全ての準備は完了した。後は──培養液の前で待つだけだ。

 

「臓器は摘出済み、クローン培養に必要な細胞量を確保。クローントレーナーの準備完了です」

「流石ノーゼンだ、新鮮なままの細胞が手に入った」

「培養に掛かる時間は?」

「平常通り、10日もあれば十二分かと」

「了解」

「それにしても──気の毒だ。我々に首を突っ込んだことで、逆に我々に手を貸すことになるのだからな」

「残った遺体は?」

「手筈通り焼却しておけ。痕跡を残すな。後に残るのは──ワームホールに忠実な新しいクローントレーナーだ」

 

 クローントレーナーには、専用のクローンポケモンが与えられる。

 クローバーは生前、ゾロアークやカクレオンといったトリッキーなポケモンを使用していた。

 その為、予め保管されていた中から、クローンのゾロアークやカクレオンが与えられる。

 一方、彼女がボールに仕舞っていたデリバード、ゾロアーク、そしてメタモンたちは──ボックスの中に保管されることになるのだった。

 主人に懐いている彼らが、顔が同じだけのクローンに従うはずがないからだ。

 こうして、生前そっくりの能力で、そして生前と同じポケモンを従えた上で──ワームホール公団に忠実なクローントレーナーが()()されるのだ。

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「……げろげろ……」

 

 

 

 ──カテドラルシティの一角。

 取り残されたカクレオンは、クローバーに事前に指定されていた場所で膝を抱えて蹲っていた。

 しかし、待てども待てども彼女がやってくることは無かった。

 

「……げろ……」

 

 カクレオンはしょげたように、首を持たれる。

 彼女は善き主人だ。いつも苦楽を共にして来た。

 自分を捨て置くことなど有り得ない。そんな彼女が戻って来ないということは──彼女に最悪の事態が起こったことを意味している訳で。

 ぽろ、ぽろぽろ、と涙が溢れ、零れてくる。

 いつの日か、彼女が言ったことを思い出した。

 

 

 

 ──カクレオン。もし私に何かあって、離れ離れになったら……その時は、Youだけでも生き残るのデス! きっと、きっとデスよ!

 

 

 

 誰よりも聡く、誰よりも賢い彼は主人を喪ったことを悟った。

 だが、動くことなど出来なかった。

 

 

 

「めめ」

 

 

 

 声がした。

 思わず、カクレオンは振り返る。

 ずるずる、と一匹のメタモンが彼にすり寄ってくる。

 言うまでもない。彼女の手持ちに複数いるメタモンだ。

 他のメタモンたちとは別行動で、メグル達にUSBメモリを渡す役割を請け負っていたのである。

 遅れてではあるが──彼女との待ち合わせ場所にはせ参じた。

 だが、彼女の姿は何処にもない。

 

「……げろ」

「めめ……」

 

 雨が降りしきる。

 二匹は、来ない主人を待ち続ける。

 だが──何時まで経っても、クローバーの姿は見えない。

 彼らは諦め、あてもなく町の中を彷徨うのだった。

 これからどうするか、など分からない。今までトレーナーのポケモンだった彼らに、野生で生きる術など無い。

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「──辞める……!? 国際警察を!?」

「……」

 

 

 

 机の上には辞表が置かれていた。

 差出人は──ゼラだ。

 彼はその前で一人、サングラスを掛けたまま「申し訳ございません」と言った。

 

「今回の件で責任を……って、そんなの、ダンガンとフカの二人は何回クローバーを取り逃していると思っているんだ!?」

「……」

「お前はクローバーに一発命中させ、宝を取り戻したんだろう!?」

 

 そんなものは、クローバーが置いていったに過ぎない。

 元より彼女は宝には興味など無かった。

 首を横に振り、国際警察の拠点を出て、晴れて「何者でもないゼラ」になった彼は──カテドラルの町で、ふと立ち止まった。

 

「……雨が、やまないな」

 

 サングラスの下の頬から雫が落ちていく。

 あの後、「バジル」という少女の戸籍を改めて探し、調べ尽くした。

 なんてことはない。やはり「バジル」は卒業後、消息不明になっていた。

 調べなければ分からなかった事とはいえ、彼女の事を忘れようとしていたことをゼラは悔いた。

 そればかりか入学する前の彼女の経歴はあまりにも不自然かつ不明瞭で、まるで誰かに作られたのではないか、と思わされるものだった。

 結局「バジル」という少女も架空の物でしかなかった事を悟り、ゼラは──やはりクローバーが自分の良く知る「彼女」だったのだと思い知らされる。

 一発は当てた。

 だが、二発目は──外した。

 もし、命中させることができていたならば、彼女を捕えることはできて、今までの事を聞きだす事ができたのに、と悔やむ。

 

 

 

(俺は……狙撃手失格だ)

 

 

 

 ただの一度、情に流されて狙撃を失敗するなんてことは無かったのに、と彼は悔やむ。

 これからどうするか、など考えていない。

 失意のまま──ゼラは歩き続ける。

 バジルを射った、という罪悪感が、そして自ら狙撃手としての誇りを傷つけたことへの後悔が彼を苛み続ける。

 もし一発目を当てていなければ? もし二発目を当てていれば?

 そんな考えが脳裏に過り、どうどう巡りを続ける。

 

「……」

 

 ふと、ゼラは足を止めた。

 目の前には──カクレオン、そしてメタモンがずるずると町の中を歩いていた。

 珍しい組み合わせの上に、町で自然に居るようなポケモンではない。

 それがトレーナーも無しに歩いている。 

 このままでは、危ない目に遭うのは時間の問題だ。

 ゼラは──ポケモンレンジャーだった頃の癖で、つい二匹に声をかけるのだった。

 

「おい──」

「げろ?」

「めめ?」

「……珍しいな。トレーナーが居ないのか?」

「げろげろ……」

「めめ……」

 

 二匹は顔を見合わせる。

 そして、ゼラの元に駆け寄るのだった。

 

「行く当てが……無いのか」

「げろ……」

「……俺も同じだ」

「……めめ」

 

 彼らの寂しそうな目を見ていると、ゼラは放っておけなくなってしまった。

 

 

 

「……一緒に来ないか。探し人なら……人が一緒の方がすぐに見つかるだろう」

作者の作風に期待するものは?(良ければ感想欄でも教えて下さい)

  • ラブコメ、純愛
  • 戦闘シーン
  • シリアス、曇らせ
  • ギャグ、コメディ
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