続・ポケモン廃人、知らん地方に転移した。【完結】 作:タク@DMP
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【サメハダー<AR:サンダース> タイプ:[電気/エスパー]】
──オーライズ。
それは、手持ちのポケモンに別のポケモンのオーラを一時的に纏わせ、タイプと特性を変える現象。
サイゴクのヌシサンダースの電光を鎧として纏ったサメハダーは、黒い稲妻を放ちながらその大きな口を開けるのだった。
ありとあらゆるものを黒く焼け焦がす雷の矢。
自身をレールガンの砲台に見立て、正面にあるものを焼き焦がす必殺必中のオオワザが解禁される。
(──サンダース、ユイ、お前らのオオワザを借りるぞ!!)
メグルの、もう見えない右目、そして──サメハダーの目から黒い稲光が溢れ出す。
一瞬、サンダースの姿が現れそして掻き消えた。
サメハダーの口に高速で電気が集まっていく。
「──オオワザ、”ホノイカヅチ”ッ!!」
【サメハダーの ホノイカヅチ!!】
一直線に放射された高電圧の束が、音を置いていく勢いでオムスターの口腔に叩きこまれる。
遅れて、雷の怒号が海域を揺らして波を荒立てた。
オムスターの身体がぐらり、と揺れる──だが、しかし。
『今のは……痛かったね……!! だが、それでも、全ッ然!! 届いていないんだよねえ!!』
焦げた匂いが辺りに漂う。
オムスターは直前で、触腕を口元に集中させ、正面から雷轟の束を受け止めていた。
結果、触腕は使い物にならない程のダメージを受け、もう動かないようだったが──肝心の、口元が全くの無傷だ。
「冗談だろ……? 今のを受け止めた──!?」
「ヴォオォオオオオオオオオオオオッ!!」
叫ぶオムスターの口元には、先程からずっとチャージされていた水が解き放たれようとしていた。
更に、放たれる冷気のオーラが、サメハダーの纏っていた雷の鎧を一瞬で崩壊させてしまう。
「ぴぃっ……ぴすっ……!?」
(オーライズが解除された──!? だ、ダメだ、もう打つ手が無ェ──!!)
『──ありがとう!! 君達は小生を大に楽しませてくれた!! だが、此処までだ──ッ!! どんな楽しみにも終わりがある……嘆かわしい哉』
メグルは思わずサドルを握り締めるが、サメハダーがそこから動く事は無かった。
氷が既に、彼の身体を蝕んでいた。後ろのラプラスも同じだ。
「アルカ──ッ!! お前だけでも逃げ──」
「……逃げないよ」
「ッ……」
毅然とした態度で、アルカは真っ直ぐにメグルを見ていた。
「だけど、俺……失敗して……!! 俺が、しくじった所為で……!!」
「ボクは逃げも後悔もしないよ。諦めないし……最期まで……君と一緒に居るんだもんっ!!」
「だって、もう──」
「君に教えて貰ったんだよ!!
『コア臨界、オオワザ──”カノーネンスプラッシャー”ッ!!』
【オムスターの カノーネンスプラッシャー!!】
単純明快。
圧縮された水を束にして放出する。
目の前にあるありとあらゆるものを水圧だけで押し潰し、消し飛ばす原始的にして最も強いオオワザ。
ただただ、暴力的な水の柱がオムスターの口から放たれて、正面にあったものを全て押し流す。
破滅的な威力のそれが、ノアの洪水のように氷上の全てを押し流す。
そのはずだった。
確かに水の柱は放たれたのだ。
オオワザは間違いなく成功だった。
ただし。水の束は何故か
「ッ……!? な、なにが起きた──!?」
「……生きてる……俺達……!? 外したのか、あのオムスター……!!」
オムスターの身体が──
『だ、誰だ──!? 誰がオムスターに干渉した──ッ!? 射角が上を向いていた所為で……仕留め損なった!!』
狼狽えるノーゼン。
しかし、オムスターはオオワザの反動でしばらく動く事が出来ない上に、触腕が焼かれた所為で、それを動かしてメグルを捕える事も出来ない。
「ルカリオッ!! あの二匹の周りの氷を砕くッスよ!!」
「メテノ!! ルカリオを応援するでござる!!」
状況が飲み込めないメグル達の前に降り立ったのは、ルカリオとメテノ。
そして──ノオトとキリだった。
間もなく、氷はルカリオの拳、そしてメテノの体当たりで破砕され、サメハダーとラプラスは氷の中から脱する。
「って、わわわわ、滑るッス!?」
「気を付けるでござるよ、ノオト殿。此処で頭を打ったら洒落にならないでござる」
「キリちゃんに、ノオト……!」
「お二人共、無事だったようでござるな」
「待てよ、分かんねえ──何で俺達助かったんだ!?」
「あれを見るッスよ──」
ノオトが指差したのは、オムスターを見張るようにして浮かび上がる二匹の隕石型ポケモン・ソルロックとルナトーンだった。
二匹の周りからは紫色のオーラが漏れ出しており、それがオムスターの身体に干渉している。
キリのソルロックとルナトーンの”テレキネシス”──超能力で相手のポケモンを浮かび上がらせる技だ。
流石にこの質量のポケモンを二匹だけで浮かせることは出来なかったが──頭部を持ち上げて射角をずらすことは出来たのだ。
「あの質量を完全に浮かせることは出来なかったが……オオワザの射線をずらすことは出来たようだな」
「キ、キリちゃん……ははは……死ぬかと思った……」
メグルは口から色々抜けていきそうだった。
「拙者の働きではござらん。メグル殿がオオワザで触腕を封じ、そして相手の注意を逸らしてくれたからこそ、二匹が自由に動き、敵のオオワザを不発させることが出来た。奴はもう──無防備でござる」
「はは、助けるなら助けるって言ってくれよ──冗談抜きで死んだかと思ったんだぜ」
「すまぬ、此方も間一髪だったのでござる」
「よく言うぜ……」
生きた心地がしない様子でメグルが言った。
ともあれ、これで形勢は一気に逆転。後に残るのは、オオワザが不発に終わった上に、触腕が機能停止したオムスターだけだ。
「さあ、総攻撃でござるよ。あの海魔を沈めるとしよう!!」
「腕が鳴るッスねえ!!」
「メグル──ッ!!」
アルカの呼びかけに、メグルは頷いた。
「……ったく……最高だ、お前ら!!」
ばくばくと鳴る心臓を右手で握り締める。
生きている。確かにまだ、生きている。
恐れもあるし、情けない思いもしたが、それでもまだ、赤い血はこの身体を駆け巡っている。
「ルカリオ、”はどうだん”!!」
「メテノ、ソルロック、ルナトーン、一斉に”だいちのちから”!!」
先ずはノオトのルカリオが氷の上を駆け抜け、オムスターの口に至近距離から”はどうだん”を浴びせる。
三度目の致命の一撃を受けたオムスターは、白目を剥き、ぐったりと倒れ込んだ。
そこに、三匹の隕石型ポケモンが集い、海底から溶岩の渦を噴き上げてオムスターに追撃を仕掛ける。
堅牢極まりなかった氷の鎧は削ぎ落ちていき、後に残るのは本体だけだ。
『は、はははははっ!! 楽しい!! 楽しいなあ!! まさか、まだ楽しませてくれるとは!! オムスター、動け!! 動くんだ!! まだ、小生たちの楽しみは終わって等いないからね!! ひっひっひひひひ!!』
「ラプラス──”ディープファング”……からの”かみなりのキバ”!!」
ラプラスが触腕の一本に思いっきり噛みつく。
それは、同族たちの誇りを穢された怒りか、はたまた突き抜けるような闘争本能からか。
深く深く食い込んだ牙から、高圧電流が流され、それがオムスターの全身を駆け巡っていく。
怒号のような悲鳴が海を荒らす中、最後に水を駆け抜けるのはサメハダーだった。
『ハッハハハハハ!! 楽しいな!! スペックで下回っている君達只の人間とポケモンが、小生とオムスターを打ち倒そうとしている!! こんなに面白い事は無い!!』
「……こいつらの覚悟をナメてたのは俺も同じだよ」
サメハダーが一層加速し、”ラスターカノン”と”れいとうビーム”を躱し、波に乗って高く高く飛び上がる。
『イカれてるねえ!! 死ぬのが怖くないのかい!!』
攻撃の数々に対し、逆に肉薄することで避けるサメハダーに、ノーゼンは興味深そうに叫ぶ。
『もしかして君も何処かのクローンだったりするのかなあ!!』
(違ェよ。俺もちょっち襟元正されたんだ)
「これが……たった一つしかねぇ命を燃やすって事だッ!! ”インファイト”ッ!!」
【サメハダーの インファイト!!】
【効果は──バツグンだ!!】
渾身の頭突きがオムスターの脳天に叩きこまれる。
殻を揺さぶり、全身を衝撃が襲い掛かる。
サメハダーを捕えようと、全ての触腕を動かそうとしたオムスターだったが、黒焦げになったそれらはもうまともに機能しない。
そのまま意識を刈り取られ、今度こそ沈黙。自身が物言わぬ氷山のように海に漂うのだった。
異常なる冷気のオーラはその身から消え失せていく。
そして、コックピットに乗っていたノーゼンもまた、同じだった。
『あ、ああ……そんな……ははは、だけど最高に愉しかったぁ!! こんなに、こんなに愉しい経験が出来るなんて──!!』
全身は痙攣し、口からは血が噴き出ていた。
REXとのシンクロ、そしてイレギュライズの反動は想像以上の形で彼の身体を蝕んでいた。
だがそれでも、ノーゼンは心の底から満足したような笑みを浮かべて座席にもたれる。
『今日は、なんて最高な日なんだ……あははははははは……!!』
そんなことなどつゆ知らず、完全に沈黙したオムスターを見て、メグルは呟く。
「……終わった、みてーだな……今度こそ」
「……いや、喜ぶのは早い。早急に海域を離れるでござるよ」
「ええ? ちょっと休んでからにしねーッスか? オレっちもうヘトヘトっすよ」
氷の上に座り込みながらノオトが言った。しかし──キリは暗視スコープで確認した方角を指差す。
「……公団のヘリが近付いてくるでござるな」
「ヤバいじゃん!! 逃げなきゃ!!」
「だぁー、最初っから最後まで騒がしかったな、今回は……」
各員はライドポケモンに乗り、海域を離脱する。
そんな彼らを追う気力も無いノーゼンだったが──心底愉快そうに笑う。
夜の闇で、相手が誰なのかも分かりはしなかったが、心は晴れ晴れとしていた。
「良い、実に良い……!! 何処の誰だか知らんが……しばらく退屈しなさそうだ──ッ!!」
「──残念ですが、貴方を待つのは永遠の退屈ですよ、ノーゼン」
バキバキと音が鳴り、コクピット型ライドギアの天井がこじ開けられ、海へと捨てられた。
三つ首の悪竜・サザンドラがノーゼンを覗き込んでいた。それに騎乗するのは──ワームホール公団四天王の筆頭・ユリだ。
彼女の瞼はヒクヒクと痙攣しており、額には青筋が大量に浮かんでいた。呆れ。そして怒り。失望。
それに類する感情が一瞬で分かる表情だった。
尚、当のノーゼンはそれを全く気にする様子も無く「はは」と笑ってみせると肩を竦める。
「小生を処分するのかい? ──折角情報を沢山持って帰ってやったのに」
「ええ。たっぷりと解析させていただきました。オムスターと貴方を暴走させた現象は、マーニャの野生ポケモンが暴走している事象と同一。ヴォルカニドとブリザベオは、人とポケモンを暴走させる力があるようですね」
「……ああ、そうだ、楽しそうだろう!? ユリ!! あの力の奔流、一度身を任せれば──」
「……貴方は危険すぎます、ノーゼン。よって……”再調整”の処分が下りました」
「再調整!! 成程。成程成程。小生の”本体”を直接弄る訳か」
「ええ、次に目覚めた時、
少なくともこれまでのような好き勝手は出来ないでしょうね、とユリは続ける。
そこに、今までのような意識の連続性は無い。次に目覚めた時、ノーゼンはこれまでの全ての記憶を失っているかもしれない、とも続ける。
所詮、彼らは公団の駒でしかない。性能が悪ければ”調整”されるだけなのである。
だが、それでも──ノーゼンは笑みを絶やさない。
「……何ですか? この期に及んで、命乞いですか? ノーゼン……」
「……ユリ。小生はね、漸く分かったよ。限られた命が死の間際に見せる輝き、覚悟──それはクローンである小生には、決して味わえないのだろう、とずっと思っていたさ」
「今確信しましたよ、ノーゼン。貴方はやっぱり──最底辺の屑ですね」
「だがね、この戦いを経て、そして──今、こうして”小生”が消えゆく瞬間になって尚、何故か悔いは無いのさ!! 満ち足りている。確かにもう”次”は無いがね!! だが──」
手を広げ、彼は叫ぶ。最高潮の歓喜を胸に。
「──悔いなど無いさ!! 本当に全く楽しい人せ──」
ブツン
そこで、ノーゼンは電池の切れた人形のように静止した。そして、そのままコックピットに突っ伏し、倒れ込む。
そのまま──サザンドラが、抜け殻のように動かなくなったノーゼンの首根っこを咥えると、再び羽ばたき始める。
「ああ、漸く停止しましたか、ノーゼン。暴走中は、此方からの如何なる処理も受け付けませんでしたからね。”本体”への停止処理すら、受け付けなかった。貴方は……公団の駒ではない──ただ一人の人間のようでした」
羨ましくなんてありませんがね、とユリは付け加えた。
「……ノーゼン。最期まで不愉快でしたよ。私達は……”あの方”の駒。パーソナリティも能力も”設定”された忠実なる駒。それが独立して動くなど、有り得ないのですから」
※※※
「……巨大不明生物って事になってるッスねえ、あのオムスター。顛末は公団が撃退したって事になってるッス」
「本当に、何から何まで真っ黒でござるな……」
──翌朝──になる頃には、皆疲れで潰れてしまったので、その日の夕方の事。
各員はキリが取っていたホテルに再度集まり、朝刊やネットニュースを確認していた。
「……全員欠けずに帰還は出来たものの──肝心のブリザベオは、野放しになったままだよね」
「結局拙者たちはブリザベオと接触する事すら出来なかったでござるからな……」
「……しかし、これだけの損害を出せば、ワームホール公団もしばらくは動く事が出来ないと思います」
辺りの無人船は殆どが沈められるか大破炎上していたからである。
ニュースでは被害を出しつつも、撃退はされた、とあるが──当面、マニャカ海峡は通行禁止の見込みだという。
当然だ。結局、海峡で行方不明になったブリザベオが何処に行ったのか誰にも分からないのだ。
「メグルさんの体調はどんなモン、ッスかね?」
「……まだ寝てる。久しぶりのオーライズで、トレーナーの方にも負荷が掛かっちゃってるみたいだったし」
「それ以上に、相当参ってるみてえッスけど。魘されてるように見えるッス」
決して穏やかではないメグルの寝顔を見て、ノオトが眉をひそめた。
戦闘中でも度々見せた情緒不安定な彼。以前のメグルを知るノオトとしてはやはり気に掛かる。
「上手く立ち直ってくれたから良かったッスけど……戦いの途中でビビるなんて。危うくオムスターを仕留め損なう所だったッス」
「ううん。メグルは──英雄だとか何だとか言われてるけど……怖い事があったら怖がるし、悲しい事があったら悲しむ。普通の人間だよ」
メグルの汗ばんだ額をタオルで拭きとり、アルカがノオトに振り向いた。
「……オレっち達が普通じゃねえみてえな言い方ッスね」
「ノオト殿。メグル殿の出生を考えれば、当然の事でござるよ」
「キリさんまで」
「メグル殿は訓練された拙者たちとは違うのでござるよ」
「そうだけど、それでも今まで修羅場を何度も乗り越えてきたじゃねえッスか!!」
「だからだよ。とっくにメグルの心は……擦り切れてたんだ。これまでの戦いで」
ごめんね、とアルカは彼の頬を撫でる。
「酷くなったのは、マイミュの事件が終わった後。原因はきっと……ボクだ」
「アルカさん、マイミュって確か──ベニシティを襲った、あの巨大なポケモン、ですよね?」
「うん。でもね、その事件の時に色々あったんだ。本当に──色々」
いずれ話そうとは思ってたけどね、とアルカは言った。
別世界の事は勿論、メグルとアルカが異世界人であることもミアは知らない。
とはいえ、当の本人が寝ている時に勝手に話すのも気が引ける──そうアルカが考えていた時だった。
「ッ……緊急回線?」
キリが仮面に搭載された通信機を指でトントン、と叩く。
その場に緊張が張り詰めた。緊急回線は、サイゴクのおやしろからの通達だ。
ノオトが「何事ッスか!?」とキリに問いかける。
しばらく、その場に静寂が漂った。回線による通信が聞こえているのは、キリだけだからだ。
そして、
「──脱獄した」
「え?」
ぽつり、とキリが言った。
「──たった今……
静寂は、打ち破られる。
これから巻き起こる波乱には、大きく及ばなかったが。
「……何だ……何事だ……?」
そして、目を醒ましたメグルもまた、直ぐにその波乱を知る事になったのである。
かつてサイゴクを揺るがし、滅ぼしかけた混沌が今、復活しようとしていた。
──第二章「激突!!マニャカ海峡沖夜戦」(完)
これまでのぼうけんを レポートにきろくしますか?
▶はい
いいえ
※※※
「あー……痛い痛い。本当に手荒な脱出劇だ。今更僕に、何の用なのかなあ。もう正直、表に出るつもりは無かったのだけど」
「……こうして部下まで使って僕を引きずり出したって事は、大方セレクト団の残党なんだろうけどさ。死ぬかと思ったよ。死なないけど」
「コチョウ、だなんて名前変えちゃって。
──……。
「ヴォルカニドとブリザベオだっけ? 伝説のポケモンで何をしようって言うんだい、ワームホール公団理事長のコチョウさん?」
──本当ノ名前ヲ隠シテイタノハ、貴方モ同ジデショウ──イデア博士。
作者の作風に期待するものは?(良ければ感想欄でも教えて下さい)
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ラブコメ、純愛
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戦闘シーン
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シリアス、曇らせ
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ギャグ、コメディ