続・ポケモン廃人、知らん地方に転移した。【完結】   作:タク@DMP

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第三章「中央突破!シティ進撃」
第39話:憶測


 ※※※

 

 

 

 遡る事、数日前。

 

 

 

「──メグルさんとアルカさんは、異世界から来た……?」

「悪い……あんまりにも話のスケールと量が多いから、今まで話すに話せなかったんだよ」

 

 

 

 話の途中で起きたメグルも加わり、二人でこれまでの経緯をミアに話す。

 メグルが時空の裂け目を通ってサイゴク地方にやってきたこと、そしてアルカもまた、裂け目を通ってサイゴクにやってきたこと。

 1年前のサイゴクで起こったテロの裏側、伝説のポケモンのルギア・ホウオウの暴走、そしてベニシティで起こったマイミュと呼ばれるポケモンの暴走。

 この全てに、異世界と異世界を繋ぐ穴である時空の裂け目が関わっていることを二人はミアに伝えた。

 そして、その全ての元凶となったのが──イデアであることも。

 

「ごめんなさい……何故今まで話してくれなかったのか怒ろうと思ったんですけど……怒れませんでした……話のカロリーが重すぎます」

「はは……わりーな。こっちも色々あったんだよ」

 

(納得いった……この人がやけに修羅場慣れしてた理由も、苦しんでた理由も、私に──迷うことなく手を伸ばした理由も、今なら分かる)

 

 話している間も、幾度となく辛そうな顔をしていたメグル。

 ミッシング・アイランドでの死闘もまた、その中の一つだったと考えると胸が痛くなった。

 

(……私が一人で抱え込んで、勝手に絶望してる間に……この人は一体、今までどれ程の戦いを潜り抜けて……だからあんなに、私達の心配をして……)

 

「でも、ミアが気にすることはねえよ」

「気にしますっ!!」

「俺らからすりゃあ、もう……こっちの世界が故郷みてーなもんだしな」

「そうだね。ボクもヒャッキに戻る気は無いし」

「……そうですけど」

 

 それより今最も気掛かりなのは──他でもないイデアの脱獄であった。

 

「キリちゃん、イデア博士の事はどうするんだ? サイゴクに戻るのか?」

「いや、現地の忍者とキャプテンに調査を任せる」

「いっ!?」

 

 ノオトが目を丸くする。「帰らないの!?」と言わんばかりだ。

 イデアが脱獄した以上、サイゴクに何があってもおかしくなく、キャプテンの頭数を揃えておきたいのだ。しかし、当のキリはそうではないようだった。

 

「……まだ確信に足るものがあるわけではないが、拙者がサイゴクを離れているこのタイミングで事件が起こった……嫌な予感がするでござるよ」

「じゃあ、猶更サイゴクに戻るべきじゃねえッスか?」

「逆だノオト殿」

「逆?」

「その前に、今回の事件について、もう少し噛み砕いていこう」

 

 ──サイゴクの中でも凶悪犯を収監するクワゾメ監獄は、忍者隊も警備に当たっている、最も警戒態勢が強い場所だ。

 その場所に突如現れたのは、正体不明のポケモン二匹だったという。彼らは警備や設備を一瞬のうちに破壊していき、最深部へ到達。

 そして、他の囚人には目もくれず、イデアに辿り着くと、そのまま脱獄させてしまったのだという。しかし──キリには引っ掛かるものがあるようだった。

 

「拙者は、そもそもとしてイデアに脱獄の意思があったかは怪しいと踏んでいる」

「何言ってるんスか、キリさん。アイツは何を考えてるか分かんねえんスよ!?」

「そもそも論としてイデアが一人で脱獄することは不可能だ。しかし、調査した結果、彼にシンパのようなものが無い事は既に分かっている。それに、最近こそやや持ち直していたが、あいつは進んで自ら外に出るつもりはないようだ。刑務作業や規律は苦痛そうだが、それ以上に外に出る気力を失ってしまっている」

「原因は、センセイが消えたから……?」

「センセイ──ドーブルか」

 

 イデアの最愛の手持ち・ドーブルの”センセイ”は、メグル達との戦いの果てに力を使いきって消滅してしまった。

 それにより、イデアは酷く打ちひしがれて、以降は生きる気力をすっかり失ってしまっていた。

 

「また、ヤツの手持ちは──ポリゴンZ以外は全て此方で抑えている。有り得るとすれば、ポリゴンZの次元潜行能力による脱獄──しかし、拙者たちは当該個体がどれほどの力を持っているか把握してござらん」

「次元潜行能力って?」

「理論上、ポリゴンZは異次元へ繋がる穴を開けて自由に行き来する能力を持ちます。でも、上手くいかなかったって……書かれてました」

 

 ミアが即答し、キリも頷いた。

 

「そうだ。ポリゴンZというポケモンは、異次元潜行能力付与の過程でバグを起こしてあの姿になっている」

「なあ、結局……ポリゴンZで異次元への移動って出来るのか? できるとして、どんな感じなんだよ?」

 

 メグルの問に対して、キリは困ったように言った。

 

()()()。成功した事例が極めて少ない。しかし、わざわざポリゴンZだけ行方を眩ませている辺り、博士の個体に関しては()()()()()()()()()()()()()()

「じゃあ、何で逃げなかったんスかね? あっ──そこでさっきの話に戻るのか!」

「ポリゴンの方は博士を逃がすつもりでも、()()()()()()()()()()()()()()()()()()。加えて、仮に監獄で怪しい動きがあったなら忍者たちがすっ飛んで来ただろうな。ポリゴンZの次元潜行能力では脱獄する事が出来ないのか、あるいは()()()()()()()()()()か。または両方か」

 

 それを踏まえていけば、今回の事件はイデアが自分の意思で外に出た訳ではないということが分かる、とキリは続けた。

 

「脱獄はポリゴンによるものではない。力づくで檻が襲撃され、イデアは()()()()()……と拙者は推理する。となると──犯人はイデアの力を求めている他の誰か、ということになる」

「……こんな少ない情報から、よくもまあ」

「憶測も多分に含まれている。あまり期待するな」

「でもさ、犯人って誰なんだろ? 博士の力を欲しい人? でもセンセイはもう居ないんだよ?」

 

 アルカの問に、キリは首を横に振った。

 

「……今の所、拙者の中に確証じみたアテは無い」

「犯人を捕まえられなかったのは何でだ?」

「どうやら飛行機を使い、空から逃げたらしい。忍者たちも追撃しようとしたが──飛行機が木の葉の嵐に隠れたかと思えば、跡形もなくなってしまったらしい。反応はその後LOST、サイゴクに犯人グループが居る可能性は極めて低いと拙者は考える」

「それって、ポケモンの力で目晦まししたって事?」

「考えられるのはそうだ。檻を襲撃したのもポケモン、逃走に使ったのもポケモン。少なくとも、力技だけで拉致を決行できるだけの戦力が2匹以上は居るという事になる」

「しっかし、どうやって警備が厳重な刑務所を襲撃したんだ?」

「熱だ。鉄を熔かす程の恐ろしい熱によって、監視カメラ諸共消し飛ばされてしまったらしい。死人が出なかったのが不思議なくらいだ」

「熱──!! 炎タイプのポケモンってことだね!!」

「それに加えて、逃走時にも使った奇妙な木の葉。これはどうやら、対象の姿を隠してしまう力があるようだ」

「草タイプのポケモンも居たって事か。でも、そんな力を持つヤツ居たっけか?」

 

 まさに木の葉隠れ、という言葉が相応しい。

 木の葉自体に、対象の姿を隠す光学迷彩のような力があるのでは、とキリは分析する。

 しかし、そのような力を持つポケモンは、この場に居る全員覚えがないのだった。

 閑話休題。

 

「話を戻そう。サイゴクに居る限り彼らは何処に逃げても忍者たちに捕捉される可能性が高い。初手でサイゴクの外、それも列島から逃げるしかない」

「じゃあ犯人はもう、海外に逃げてるってことか!?」

「幾ら反応をロストしたと言えど、忍者たちの包囲網を逃れるのは簡単な事ではないからだ。拙者なら、包囲網が広がる前に、サイゴクの外、そして簡単には追えない列島の外へ逃げる」

「本来なら、そうなる前に捕まえられるはずなんスけどねえ、相手が悪かったみてえッス」

 

 クワゾメは海に隣しており、海を越えて北に進めば大陸もある。スペックにもよるが、航空機ならば初動で追手を撒けば十二分に逃げられる距離だ。この状況でキリとノオトがサイゴクに戻る事は、もう居ないイデア博士を追う事に時間的リソースを費やすばかりか、マーニャでの戦力をいたずらに減らす事になりかねない。

 

「海外に敵が逃げたなら、最早拙者がサイゴクに戻る意味も無い。別途、海外派遣部隊を送った方が効率的でござる」

「……さ、流石キリさんッス」

「とはいえ、状況証拠のみで憶測も入っているし、拙者が敵の戦力を過大に見積もっている可能性も否定できない。だが──今此処で拙者たちが帰国するのは、敵の思うつぼのような気がしてならないのだ」

「総括すると、犯人がサイゴクに留まっているならば程無くして奴らは捕まる。でも、犯人が一定の期間内で捕まらなかった場合、()()()()()()()()()()()()()()()()……だから、キリちゃん達はマーニャに残るんだろ?」

「ああ。そもそも、あのREXと公団の計画を見聞きした後では帰ろうにも帰れん。一先ず、メグル殿たちは引き続き──ヴォルカニドとブリザベオを追ってほしい」

 

 メグルとアルカは顔を見合わせた。

 正直、あの博士が野に放たれたとなると嫌な予感しかしない。

 呑気にマーニャでカブトムシとクワガタ探しをしている場合ではないのではないか、と思わされるほどだ。

 

「なんかよ、あの博士が逃げたって聞くと、伝説のポケモンどころじゃねえ気がしてくるんだけどな」

 

 げんなりした顔でメグルは「本当に大丈夫なのか?」と付け加えた。正直気が気でない。

 

「公団の狙いはヴォルカニドとブリザベオだ。あの二匹を追えば、自然と公団の野望に行き着くだろう」

「だろう、って……でも確かに、あの二匹が逃げちまったのは公団側も想定外、あいつらも血眼になって探してるだろうしな」

「キリちゃん達はどうするの?」

「無論、同行する。何があっても良いようにな」

「助かるぜ」

「……最も当たってほしくない憶測の事を加味しても、恐らくこれが最適解でござろう」

 

 全員はそこで押し黙った。

 キリの憶測は──本当によく当たるのだ。

 たとえその時点では証拠が出揃っていなかったとしても、独自の推論や根拠の元、真実に辿り着いている事が多い。

 何故ならば、キリはキャプテンの中でも屈指の頭脳派。戦いに於いて常に二手三手先を読むことができる戦術眼の持ち主だからである(仮面を付けている時に限る)。

 

「ねえキリちゃん。悪い事は言わないから、ボク達にもその憶測教えてくれない?」

「確証が無い事だ。今言っても混乱させるだけでござる。沈黙は金、雄弁は銀でござるからな」

「おい!! 勿体ぶってんじゃねえぞ!!」

 

 何となくだが、此処でその情報を逃すのは致命的な気がしたメグルは、思いっきり食らいついた。カンが言っているのだ。長年ゲームやアニメで探偵モノを摂取し続けてきた日本人としてのカンが。

 

「なあキリちゃん、今更クールぶってんじゃねえよ。俺とキリちゃんの仲じゃねえか、教えてくれよ、なあ?」

「クールぶるとは失敬な。拙者そんな風に思われてたでござるか」

「うん、思ってた」

「……」

 

(酷いでござる!! 酷いでござる!! メグル殿はたまーに酷いでござるよ!! 拙者はクールでカッコいい忍者のカシラでござる!! びえええん!!)

 

 声では取り繕っているが、仮面の下ではギャン泣きしていた。可哀想。

 

「いいか、キリちゃん……これはよくあるお約束なんだぜ」

「お約束って何ッスか?」

「拙者は知らん」

「ノオト……オメー、推理小説や探偵漫画読んだ事ねーのかよ!?」

「ねーッスけど!?」

「お前アレだよ。主人公の探偵よりも先に、犯人の正体に気付いちゃって、その場では”確証が無い……憶測でしかないから今は言う時じゃない”って言って、後で口封じに殺される……ってシチュエーションだよ」

「キリさんなら返り討ちにするっしょ」

「そう言う事を言ってんじゃねーんだよ!! 大体、そうやって曖昧にしとくのが一番気持ち悪いだろが!」

「分かった分かった、話すでござるよ」

 

 メグルの勢いに根負けしたキリは、渋々話し始めるのだった。

 

「……ワームホール公団がイデアの拉致に一枚噛んでいるのではないか……という憶測だ。証拠も何も無いが、根拠がないわけではない」

「え? いやいやいや、でも……ええ?」

 

 困惑したようにノオトが言ったのを見て「ほら、そう言われると思ったからまだ黙っておきたかったのだ」と言った。

 

「いや、キリさんのカンは少ない情報から組み立てた推論ッスけど。ただ、あいつらの研究とイデア博士に、何の関係が?」

「イデア博士を拉致して、公団がどのような利益を得られるのかは拙者も分からん。だが、今回の件は不自然な点がいくつかある」

「キリちゃん、聞かせてくれ。……多分それが、皆を守る事に繋がる気がするんだ」

「……まず、事件が拙者の不在中に起こったという点だ。まるで狙ったかのようじゃないか。公団は拙者の滞在スケジュールをある程度知っている。拙者が今サイゴクに居ない事も知っているということだ」

 

 この点から──キリは、ワームホール公団ならばそこから逆算して犯行計画を立てる事が出来るのではないか、と考えた。更に、犯行に必要な飛行機といった物資も公団ならば簡単に調達することができる点からも、イデアを拉致したのは彼らではないか、という疑念が過ったのである。

 

「もう一つは、監獄を突破出来る程の強力なポケモンだ。はっきり言って、忍者隊が居るあの刑務所を突破されるのは異常事態。手持ちを正面から薙ぎ倒せる強さ、設備を溶かせる熱、姿を隠匿できる木の葉。並大抵のポケモンではない」

「もしかして──REXとか?」

「いや、REXならばあのブリザベオの捕獲に投入してるだろう。その時はまだ、REXはオムスターしか使えなかったと考えるのが自然だ」

 

 更に、超常的な力を起こす上に巨大なREXは悪目立ちし過ぎる、とキリは考える。そうなると犯行に使われたポケモンも限られてくるが──

 

「クローンポケモンだと思います。四天王の1人が使っていたサザンドラは、ゼノを圧倒する程の強さだったので」

「……ならば、それだ。通常の個体の強さを超えるように”調整”されたクローン……それが監獄を襲撃したのだろう」

「それだけの強いポケモンを仕入れることができる組織って点からも、やっぱり公団は黒いのか」

「また、あの時ブリザベオの捕獲に出向いた四天王は1人しか居なかった。残りの3人が何処にいたのかを考えた時──サイゴクに出向いていたのではないか? と拙者は考える」

「辻褄は合うッスけど……」

「そうだ。これは結論ありきの憶測でしかない。だから、あまり真に受けない方が良い」

「でも、もしキリちゃんの憶測ってヤツが当たってたら、博士がマーニャに居るかもしれねえんだろ」

「ああ」

 

 メグルの言葉にキリは頷いた。

 

 

 

「尤も、このマーニャで博士を見つけでもしない限り、この説が真実味を帯びはしないだろうがな」

「そもそも捕まってるだろうしね、博士……」

「そう簡単に出会う事はなさそうだな……」

作者の作風に期待するものは?(良ければ感想欄でも教えて下さい)

  • ラブコメ、純愛
  • 戦闘シーン
  • シリアス、曇らせ
  • ギャグ、コメディ
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