続・ポケモン廃人、知らん地方に転移した。【完結】   作:タク@DMP

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第40話:南東に舵を取れ

 ※※※

 

 

 

 会合は終わり、三人はホテルに戻っていた。また明日から、ヴォルカニドとブリザベオを探す日が始まる。

 もしも、キリの推測が全部当たっていた場合、この地方で起きている一連の事件はワームホール公団と伝説のポケモンに帰結する。

 そして公団が伝説のポケモンを追っている以上、片方を追えば必ず片方にも行き着く。だが、今度は公団よりも先に二匹を捕獲しなければならないため、此方も作戦を立てなければならない。

 

 

「──なんだか不思議な気分です」

 

 

 

 ミアは──ベッドでメグルとアルカの隣に挟まりながら、天井を見つめた。

 

「この場に居る私達3人、誰も彼も普通の人なんていないじゃないですか。……まあ、アルカさんは肌の色がちょっと青白いんで、何処から来たのかなーとは思ってましたけど」

「ごめんね、言う機会無いし、話し始めると長くなっちゃうからさ」

「……本当に不思議だな。こうしてみると、異世界人、異世界人、現地人か……そんな俺達が今こうして一緒に寝食を共にしてるのは、ある意味奇跡みたいなことなのかもしれねーな」

「そうだよっ。ボク達皆、違う世界出身だもんね。どうやったら出会うんだよって感じだ」

「……そうですね。本当に、夢みたい」

「……」

「ねえ、メグルさん。アルカさん。私、今回は何も出来なかったけど……次は、役に立ちますから。メグルさんが辛い思いをしないように……頑張りますから」

 

 感慨深そうにミアが言って、すり、とアルカの胸に頭を埋めた。何処か安心したのか、それとも色々あって眠くなってしまったのか、しばらくして小さな寝息が聞こえてきた。

 一方、昼の間ずっと寝ていたメグルはすっかり目がさえてしまっており、寝るどころではないようだった。気遣うようにアルカが問う。

 

「……やっぱ眠れない?」

「ああ。全然だ。それに──俺が不甲斐ねぇから、結局他の奴に気を遣わせちまってる」

「あれだけの事があったら、仕方ないよ。メグル……相当無理してると思うよ」

「……へへ、そーだな」

「……ごめんね。元はと言えば、ボクの課題に君を付き合わせちゃったのが始まりだし……」

「お前は何も悪くねえよ。お前の行く場所には、きっと俺も付いていったと思うぜ」

「……ありがと」

「悪いのは──ワームホール公団と──未だに踏ん切り付けられてねえ俺、そんでもって──」

 

 メグルは天井を睨んだ。

 あの軽薄な顔が昨日会ったばかりのように思い起こされる。

 

「……相変わらず人騒がせな、あのクソ博士だろ。頭痛の種がまた一個増えたぞ」

「……ほんっと、笑えないよねえ……」

「あいつが余計な事しなけりゃ、サイゴクやヒャッキの戦争も起こらなかったのに──」

「そうだね。でも、ボクはあの人にちょっとだけ感謝してるよ」

 

 メグルは目を丸くした。悪戯っ子のようにアルカが指を絡ませてくる。

 

「不思議な事に、あの人が居なかったら……回り回ってボク達は出会ってないんだよねえ」

「っ……それもそうか。ほんっと因果なモンだな……」

「それはそれとしてやった事はやった事だし、牢屋の中で大人しくしてほしいもんだよ」

「二度と出て来ないでほしかったな」

 

 

 

(本当に……今、何処に居るんだ……イデア博士……)

 

 

 

「ふぃーきゅるるるる」

 

 

 

 嫌いな相手の名前を聞いたからか、勝手にボールから出てきたニンフィアが枕元にやってくる。

 

「……ニンフィアも気になるみたいだね」

「元々は博士の所に居たからな」

「ふぃー」

「大丈夫だよ、ニンフィア。もし博士が悪いことしようとしてるなら、ボクらが止めたげるからさ」

「フィッキュルルルルルィ!!」

「あれ、機嫌悪い……?」

「ちげーよ、アルカ。その回答は、ニンフィアからしたら0点だぜ」

 

 相棒の事を誰よりも理解しているメグルは言ってのけた。

 

 

 

「こいつは──見つけ次第博士をぶちのめしたいだけだ」

「ふぃっきゅ♡」

「……性格わっるぅ……」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「ガタララララララ!! ガタララララララ!!」

「トブルルルルルル……」

 

 

 

 ──その日の夜。

 燃え盛る溶岩に身を包んだ巨大なクワガタムシのポケモン・ヴォルカニド。

 そして、凍てつく冷気に身を包んだ巨大なカブトムシのポケモン・ブリザベオ。

 二匹は遂に邂逅を果たす。

 互いは互いの力に惹かれ合い、引き寄せ合うようにしてマーニャ地方の上空で出会うのだった。

 そして──二匹は、激突する。迷うことなく。

 冷気が、そして熱波がマーニャ上空から溢れ出す。

 互いの力を試すかのように二匹は旋回し、ドッグファイトを繰り返す。

 吹雪が吹き荒れ、熱波が荒れ狂う。

 試合──否、傍から見れば命を賭した死合がマーニャの上空で巻き起こり続ける。

 盛夏の神は大顎を開き、そこに火球を作り上げる。

 迎え撃つ厳冬の神は全身に氷の鎧を纏わせると、自らが巨大な槍となる。

 

 

 

【ヴォルカニドの プロミネンスフレア!!】

 

【ブリザベオの コキュートスホーン!!】

 

 

 

 ヴォルカニドの放った巨大な火球。

 しかし、それをすれすれのところでブリザベオは高速飛行で躱してみせるのだった。

 纏った氷は全て溶け落ち、剥き身となるブリザベオだったが、それでも勢いは失わない。火球を放ったばかりで無防備なヴォルカニドに組み付くと、そのまま地面へと自ら諸共に突き落とすのだった。

 爆発。後に、冷気が辺りに溢れ出す。

 しばらくして、二匹は向かい合い、鳴き声を上げながら威嚇する。

 全身に溶岩の鎧を纏っていたヴォルカニドだったが、既に鎧は冷え固まって砕けてしまっていた。

 一方のブリザベオも、氷の鎧が溶けてしまっていてすぐには再生できないようだった。

 そして二匹は同時に空を見上げると──そのまま、それ以上の果し合いを止め、何処かへ飛び去ってしまうのだった。

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 ──当然、周囲の被害を顧みない二匹の突然の衝突は、各陣営に衝撃を与えたわけで。

 

「……二匹の飛び去った先は!?」

「ココナッツシティ……!! しかし、両者の反応がロスト!! 確認できません!!」

 

 ワームホール公団は当然、熱源と冷気から二匹の消息を辿る。

 しかし、如何なる計器であっても、空に飛び立った後の二匹の行方を知ることは出来なかった。

 その間イデアはサイゴク地方からマーニャ地方に護送される最中であり、公団は伝説のポケモン捕獲の切札である四天王を動員させることが出来なかった。

 

「流石に私一人では喜ばしくないですね……ヴォルカニドとブリザベオも、もっと弱くなってから出直していただけないでしょうか? これでは私が喜べません」

 

 ※弱い相手をいたぶって喜びたい某四天王のコメント

 

 どの道、二匹の反応が早期に消失したこともあり、公団は緊急の捕獲作戦を諦めることになってしまうのだった。

 

「なんだこれすげえ!! 花火か!?」

「バズってんなあ!? これってポケモン!?」

 

 一方、SNSでも同様の目撃例が多発。

 あまりにも高速で戦闘を繰り広げる二匹は、一般大衆からすれば花火か何かにしか見えなかった。

 だが、この時間帯は数分刻みで気温が異様に乱高下しており、未曽有の異常気象として話題になるのだった。周辺の最高気温は45度。そして最低気温はマイナス2度。これが交互に観測されたのである。

 そして一連の騒動をメグル達が確認したのは、翌朝の事である。

 

「起きたら大変な事になってやがる……ポケッターは大荒れじゃねえか」

「ふぃー」

 

 目に隈をしっかり作っているメグルがスマホロトムを机の上に放り投げた。彼を寝かしつけようとしていたニンフィアも、ずっと起きていたのかギンギンの目で頷く。

 

「ココナッツシティ周辺で起きた気候の乱高下、花火、目撃された巨大な影、いずれも──ヴォルカニドとブリザベオのもので間違いないです」

「おっし。今度こそ、姿を拝んでやるぜ、ヴォルカニドにブリザベオ! で、ココナッツシティって何処なんだ?」

 

 朝支度をするメグルの問に、ミアは首を横に振って答えた。

 

 

 

「ムーナ諸島……マーニャ南部に連なる弧状島群の中央です」

「えーと……大分遠くね?」

 

 

 

 マニャカから南東へ下りに下った先に、ムーナ諸島は連なる。

 その中の一つがマーニャ屈指の大都市・ココナッツシティが座す。メグルが住んでいた世界で言えば、インドネシアのジャカルタに当たる場所であり、対応する此方も首都と言えるほどに発展した場所だ。

 問題はその距離であり、橋を使った陸路換算で1100km以上に及ぶ。参考までに、東京から鹿児島までの距離がこの程度だ。

 

「すぐに飛行機のチケットを取りましょう──ああ!! 全席埋まってます!!」

「何でェ!?」

「ただでさえ大都市ってだけあって、ココナッツシティ行の飛行機は激戦区なんだよ。それに加えて、昨日の騒動で物見遊山のトレーナー達がデンジャラスって感じでさ」

「おい待てよ。ちょ、待てよ。飛行機がダメでも、”そらとぶタクシー”があるじゃねえか」

「”そらとぶタクシー”は飛行距離で値段が変わるんです、相場が凡そ1kmにつき列島円換算で50円程度……」

「陸のタクシーよりは安いじゃねえか──いや待て。それでも1100×50で──ごっ、ごまんごせんえん……!?」

「ついでに、今はツアーシーズンで若干値上がりしていて……1kmあたり60円まで高くなってます。酷い所は70円とか」

「タダで二回もタクシー出してくれたタゴ園長ってめっちゃ優しかったんだなあ!!」

 

 伝説の”そらとぶタクシー”は懐まで伝説級であった。

 

「ハイビ先生、交通料金出してくれるって言ってたけど、流石に片道6万円以上は怒るかも……」

「俺だって怒るわ!! さ、流石に割に合わねえ!! 飛行機の5倍近くの値段だぞ!?」

 

 しかもそれで着くまでに20時間近くかかるので、本当に割に合わない。

 

「しゃーねえ……空路がダメなら海路だろ!!」

「マニャカ海峡は昨晩の騒動で現在封鎖されていて……運搬船以外は殆ど便が止まってしまっています」

「じゃ、じゃあ、後残ってるのって……」

「陸路……かな」

「陸路ってどうすんだよ!! 俺達ゃ車なんて持ってねえぞ!? それかタクシーかバス!?」

「ひっどい値段になりそうですね、どっちにしても」

「……いや、一つだけあるよ。たった一つの冴えた方法って奴がね」

 

 アルカはホテルから見えるポケモンセンターを指差した。

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「アギャァス!!」

 

【モトトカゲ ライドポケモン タイプ:ノーマル/ドラゴン】

 

 

 

 ──外の地方からマーニャに連れて来られるポケモンは、1匹だけ。 

 その為にアルカが選んだのは、まだ手持ちに入れて間もないサニーゴだった。しかし、手持ちの入れ替えに伴う審査を受ければ、ポケモンHOMEと呼ばれる大型ボックスに預けたポケモンを引き出す事が出来るのである。サニゴーンはHOMEに預けられ、代わりにアルカの手持ちとして戻ってきたのが、このモトトカゲだ。非常に強い足腰と持久力を持ち、長い間、そして長距離を走り続ける事が出来るポケモンであり、多くの人に乗られている。そしてアルカもまた、彼を長い間手持ちに加えていた。

 

「お、おお、モトトカゲ!! あんまり期間は空いてねえけど、久しぶりな気がするぜ!!」

「アギャス」

 

 モトトカゲ流の気さくな挨拶である。

 

「これがモトトカゲ!? 初めて見ましたっ」

「サニゴーンには悪いけど、一度HOMEに預けたよ。代わりにこの子を使う」

「でもよ、こいつじゃあ狭くて3人は乗れないぜ? 3人引っ張るだけの膂力はあるだろうけどさ。サイズ的にミアは乗れても俺まで乗せられねえだろ」

「──ふふっ、ボクが何も考えてないと思った? マーニャには便利な代物があるんだよね!」

 

 そう言ってアルカが通販サイトをメグル達に見せた。

 そこには──「モトトカゲ専用サイドカー」なるものが映っており、バイクのサイドカーの要領でモトトカゲの横に接続し、人が乗る事が出来る小さな車を取り付ける事が出来るようだった。

 

「お、おおお!! それで、肝心の値段は!?」

「列島円換算……なんと!! 驚きの16万円……だね……」

「本末転倒じゃねえかァ!!」

 

 これでもバイクのサイドカーに比べればよっぽど安いのであるが、耐久性を考慮するとこれ以上値段は下げられないのだった。これならばまだタクシー代の方が安いという罠である。

 

「はぁ、仕方ない……ミアを後ろに乗せて、メグルには悪いけど、歩いて貰おうかな」

「ふざけんじゃねえ!!」

「速度が問題だけど、メグルに首輪付けてさ、モトトカゲのギアに接続すれば──」

引き回すな引き回すな!! 俺なんも悪い事してねえよ!!」

「冗談だってば。どうしよ……せめてアヤシシをマーニャに連れて来られれば良かったんだけど」

 

 そのアヤシシは入国制限によって連れてくる事が出来ない。もしも此処に居たならば、霊気によって実質スタミナ無限のアヤシシと、モトトカゲを並走させることで陸路を走破する事が出来たのであるが、それは叶いそうにない。

 

「クソッ……こんな時に、なんかこう、都合よく良い感じにアイディアが降って来ねえもんか……!!」

「キリちゃんとノオト、どうやって移動するんだろ。用事があるから先に行ってるみたいな事言ってたけど、付いていけば良かったよ」

「やめとけ。死ぬ目に遭うぞ」

「何でさ?」

「キリちゃんは忍者だからな……どうにかできる。ただ、キリちゃんのやり方について来られるのは、フィジカルが強いノオトだけだ」

 

 

 

 ──飛行機が使えず、空飛ぶタクシーだと遅すぎる……ならば、封鎖されている海峡の監視を掻い潜り、海路でマニャカ海峡を突破、その後は陸路をその場で捕まえたポケモンに乗って走破する。

  

 ──うおおおおお!! 1100kmトライアスロンッスね!! 燃えてきたッスー!!

 

 

 

「この話を聞いて……あの二人に同行するのは……やめとこうってなった」

「ボク達が真似したらヴォルカニドとブリザベオに遭遇する前に漏れなく瀕死だ」

「サイゴクのキャプテンって……凄いんですね……」

 

 サイゴク本土に残っているユイが聞いたら卒倒しそうな話であった。キャプテン皆がバケモノのような能力やフィジカルを持っているわけではないのである。

 

 

 

「──そこの君達、何かお困りのようだね?」

 

 

 

 その時であった。何処からともなく声が聞こえてきて、メグル達が振り返った。

 緊急事態時には、どのような助けの手でも神から差し伸べられた蜘蛛の糸に見えるものである。

 

 

 

「こうして度々美しい私に会うとは、君達は幸運だ!! さあ、何でも私に言いたまえ!! 聞いてしんぜよう!!」

 

 

 

 ……それが、ブロロロームに半裸で乗った変態から差し伸べられたものであっても、だ。

作者の作風に期待するものは?(良ければ感想欄でも教えて下さい)

  • ラブコメ、純愛
  • 戦闘シーン
  • シリアス、曇らせ
  • ギャグ、コメディ
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