続・ポケモン廃人、知らん地方に転移した。【完結】 作:タク@DMP
セゴールとラプラスのぶつかり合いは止まらない。それを前に、シャインは後方で腕を組みながら笑みを浮かべる。
(自分のポケモンは自分で始末をつける。それが出来て初めて一人前のポケモントレーナーだ)
(これだけ激しく暴れてるとなると、反動もその分酷いはず……早く鎮めて楽にしてあげないと!! ……だけど、もう少し引き付ける!!)
しかし、鈍重で巨大なラプラスは、範囲の広い岩攻撃を何度も喰らってしまう。結果として被ダメージが必要以上に嵩んでしまうのだ。
おまけにラプラスは捕まえてから日が浅く、地上の敵相手の訓練もまだ進んでいない。自由に動ける海中とは訳が違うのだ。
とうとうセゴールは完全にラプラスを捉え、龍気を帯びた爪で何度も何度も殴りつけるのだった。
「ぷれしぃ……!!」
(よし、此処だ!!)
「戻ってラプラスッ!!」
アルカはボールを手早く取り出すと、ラプラスを引っ込める。
そして──目の前から敵が消えて戸惑うセゴールの前に、もう1つのボールを投げ込んだ。
「モトトカゲ!! 頼んだよッ!!」
「アギャァス!!」
(ほう?)
アルカがモトトカゲに交換したのを見て、シャインは眉をひそめた。
確かに与えるダメージは大きくなるし、セゴールの攻撃も持ち前の速度で躱しやすくなるだろう。
しかし、それ以上に被弾時のリスクは大きくなる。モトトカゲはドラゴンタイプ、セゴールの技を効果バツグンで受けてしまう。
(ラプラスに痺れを切らして交換か? だが、もっとセゴールを削ってからでも遅くない。もし被弾すれば、一撃で倒れてもおかしくないぞ)
「翻弄だ! 旋回しながら攻撃!」
疾走するモトトカゲはセゴールの周囲を駆け回り、翻弄してみせる。
得意の岩投げ攻撃も当たらず、接近しようとしてもひらりと飛び跳ねて躱し、距離を離すモトトカゲに対してセゴールは次第に苛立ちが募っていくのだった。
互いに弱点を突き合う関係であるものの、セゴールの動きは明らかに乱れており、モトトカゲに攻撃を当てる事が出来ていない。
一方のモトトカゲは、隙あらば口から放つ”りゅうのはどう”をセゴールに浴びせ続けており、ダメージレースで優位に立っている。
その様を見て、シャインはアルカの意図に気付いたようだった。
(成程ね、
先程まで遅いラプラスとの戦闘に慣れつつあったセゴールは、一気に速度が上昇したバトルに慣れていない。
辺りを走り回り、更に飛び跳ねて空にも逃げられるモトトカゲに目が追い付いていないのだ。被弾すれば確かに危険だが、そもそも被弾しなければ何も問題は無いのである。
(ポケモンの特徴、いや……生物の特徴、狩りのセオリーを論理ではなく本能で理解しているのか? これが……君のバトル……!!)
「グルルルゴォォォォル!!」
咆哮したセゴールは、大量の岩を召喚してモトトカゲを押し潰そうとする。
しかし、それすらもモトトカゲにとっては都合のいい足場でしかない。跳びあがり、岩の上に乗ってそのまま駆け抜けていく。
そして宙に浮かぶ岩の上に飛び乗れば、当然地上に居るセゴールからは死角になるわけで──モトトカゲを捕捉することが出来ない。
「今だ!! ”りゅうのはどう”ッ!!」
岩の隙間を縫うようにして赤い龍気の波動がセゴールに浴びせられた。
爆音が響き渡り、岩が次々に落ちて砕け散っていく。致命打を受けたセゴールはふらふら、とよろめいたかと思えば、そのまま倒れ込んでしまうのだった。
「セゴールッ!!」
急いでアルカは駆け寄った。
セゴールの身体からは赤い稲光が消え失せていく。
回復アイテムを使おうとした彼女だったが、また暴れ出したら、という懸念が過る。
しかし、そんな彼女の不安を打ち消すかのように、拍手しながらシャインが歩いてきた。
「もう”げんきのかけら”を使っても大丈夫だろう、回復させてやると良い」
「……はぁ。良かったぁー……!!」
セゴールを抱きかかえながら、”げんきのかけら”を翳す。
欠片は粒子となって消えて、セゴールの身体に再び活力を取り戻させるのだった。
目に再び光が灯り、セゴールが起き上がる。思わずアルカは抱き着いた。
「グルルルゴォォォル……?」
「セゴール!! ゴメンっ!! 怖くて痛い思いさせたよね!?」
「グルルルル……」
「大丈夫……また同じ事があっても、ボクが止めてあげる! 安心して!」
「グルルル……ビィィ」
泣きそうな顔の主人に気付いたのか、セゴールは頬をぺろぺろと舐める。
すっかり凶暴さは失われ、元の甘えん坊に戻ったようだった。モトトカゲも嬉しそうにアルカの下に駆け寄る。
「お見事だったよ、アルカ。だが、ケガをしたままだとポケモンが不安に思う。セゴール共々、ポケモンセンターで手当をしよう」
「あはは……ありがと。シャインのおかげで、覚悟を決められたよ」
「共にドラゴン使い同士、助けになれたならそれで良いよ。ま──私の専門はドラゴンキラーである美しい氷タイプだけどね」
「ブロロロームは?」
「彼は別腹さ」
※※※
「うげ、すげー包帯してんじゃん、大丈夫なのか!?」
「ヘーキヘーキ、ボク頑丈だから!」
「ジョーイさんもビックリしてたよ、セゴールに噛まれたのにあんまり牙が食い込んでないってね」
「どんだけ頑丈なんですか……」
「でも血はめっちゃ出たよ」
「出ねえと困るよ」
──次の日。
セゴールを何とか鎮めた事をメグルとミアに報告したアルカは、何処か嬉しそうな顔だった。
元通りの甘えん坊に戻ったセゴールは、元通り彼女に懐いており、昨晩は一緒のベッドで寝たらしい。
また、シャインには昨晩ドラゴンの育成について色々教えて貰ったらしく、二人はすっかり意気投合していた。
街を出れば、最後の大湿地地帯。此処を駆け抜ければ、ココナッツシティへ
「ねえねえ、メグル。シャインってすっごくドラゴンの育成に詳しいんだよ。温度とか、エサのペースとか……あと、バトルの戦術もすっごく本格的! 色々教えてもらっちゃった!」
「私達は仲良くなれそうだな」
「……ふぅーん」
そんな二人を見れば、当然メグルは穏やかではない。完全に拗ねた様子で、サイドカーで足を組むのだった。
「そーかよそーかよ、良かったじゃねえか。仲良いのは良い事じゃねえの」
「もうっ、メグルも喜んでよ!」
「アルカさん……それ以上はメグルさん拗ねますよ」
「……あー!」
今更何かに気付いたように、アルカは言った。そして、サイドカーで足を組んでそっぽを向いてしまったメグルに向かって叫ぶ。
「やっぱりヤキモチ妬いてるんだあ、可愛いなあ」
「うるせー!! 妬いてねーよ!!」
「うーん……でも、メグルがヤキモキするのは良くないから、はっきり言葉にして言うね」
「?」
メグルは──モトトカゲのサドルを握るアルカの顔を見やる。
「──ボクは君の隣で戦っていたいんだよっ。だから頑張れるんだっ」
「……お前」
「だから心配しないでっ! ねっ♪」
そんな腕で言われても説得力無えよ、とはメグルは言えなかった。
また一歩強くなれた事に喜びを感じているアルカに、水を差す事が出来なかった。
(……ただでさえ傷だらけなのに、また傷増やして……お前が良いなら、それで良いんだろうけど……俺は気が気じゃねえよ)
「ハハハハ!! 私としても良い物を見せて貰った!! 公団への訪問よりよっぽど面白かったよ」
「あ? 訪問? どういう事だ」
「本来なら今日、レモンとラズはワームホール公団の本部に訪問している所だろうからね」
「はぁ!? 本部!? 訪問!? 何で!? 幾らお嬢様でも、一般のトレーナーが尋ねられる場所じゃねえだろ!?」
「おや、知らなかったのかい?」
愉快そうにシャインは返す。
「レモンはチャンピオンだ。オシアス地方のね。きっと今頃──ワームホール公団のトップと謁見しているところだろうよ」
「え”ッ」
「どうした? ああ、言ってなかったか──レモンはオシアスでも最強クラスのポケモントレーナー。学園をトップ主席で卒業し、ポケモンリーグでも優勝して現チャンピオンさ」
メグルは言葉を失う。異様に強いピカチュウを使うと思っていたが、やはりその力を遺憾なく発揮した結果、この世界でもレモン・シトラスはオシアスの頂点に立ったらしい。
だが、問題はそこではない。
「と言っても、本人は見ての通りゆるふわだから、チャンピオンっぽさは全然無いだろうしね」
「そ、そうだったんだ……オシアスの事は全然知らないから何も分かんなかったよ」
(問題はそこじゃなくって……)
「私は所詮、只の同行者さ。付き人の役目は私じゃなくてラズが果たすだろうし──レモンの隣に居るのは、彼の方が相応しいだろう」
(問題はそこでもなくってだなァ……)
「ふふっ、幼馴染でずっとラズの事を見てきたからね。応援したくなるのが情というものさ」
(気持ちは分かりますが、問題はそこでもないと思います……)
「大丈夫なのか……?」
思わずメグルは問う。これまでメグル達は散々公団の黒い部分に触れてきた。
そんな場所に、あのエナドリお嬢様が出向くのは嫌な予感しかしないのである。しかし、シャイン含めて一般人はそれを知らない訳で。
「なにを心配する必要がある? ただの研究資料の交換だ。マーニャとオシアスの珍しいポケモンのね。レモンはあれで結構研究熱心だからさ」
シャインも、能天気に鼻歌を歌いながらブロロロームのハンドルを握るのだった。もうすぐジョウゲン島を抜けて、ココナッツシティのあるカゲン島に着く。
「楽しみだ! レモンからどのような話が聞けるか……ね!」
※※※
「──以上が、オシアスで確認されたヌシポケモンの出現事例ですわ。キャプテン達が総力を挙げて調査をしていますの」
『アリガトウゴザイマス。ソチラハ、オ変ワリガ無イヨウデスネ』
「ええ。故に、余計にマーニャの生態系変化が目につきますの。もしかすると、伝説のポケモンが何か関わっているかもしれない──つい先日も、SNSで異常気象について話題になってましたわ」
──ワームホール公団本部にて、レモンとラズはコチョウとの対談を行っていた。
と言っても直接顔を合わせるわけではない。大部屋に通され、モニター越しに会話をするというものだ。
相も変わらず怪しさ満点のスタイルに、ラズは口にこそしないが不信感を抱いていた。不機嫌さは口元に出ている。
(これで何度目か分からねえが、本当に胡散臭ェヤツ!! レモンの親父の知り合いじゃなけりゃあ、断れって言ってるぜ俺ァ……)
目的は互いの持つ研究資料の交換、そしてマーニャで起こっている異変についての情報共有。彼女自身、チャンピオンになってからこれまでも何度かマーニャを訪れており、予約を取り付けるのは容易だった。
尚、時間に遅れた変態は捨て置かれた。残念でもないし当然の事である。
だが──今回、直接レモンに会いたいと取り付けたのは珍しくコチョウの方からであった。
一通り情報共有も終わり、と思われたその時。引き留めるようにコチョウが問いかける。
『トコロデレモン様。今回、貴女ヲオ呼ビシタノハ……見セタイモノガアルカラナノデスヨ』
(見せたいもの……?)
傍に立つラズは眉を顰める。そして、それが今回呼び出された理由か、と胸の内で得心した。
『キット、今後ノ研究ニ役ニ立ツモノダト思ワレマス。機密事項デハアリマスガ……他デモナイレモン様ナラバ』
「まあ! 楽しみですわ! 一体何なのでしょう! 私、そういうのに心が躍りますわ!」
『地下ノ、研究施設ニ彼ラヲゴ案内ナサイ』
「ええ。かしこまりました、コチョウ様♪」
恭しく礼をするのは──その場に居合わせたワームホール公団四天王のユリ。
そのまま彼らをエレベーターにまで案内していく。
「では、お二方。こちらの地下へ……」
「まあ! 秘密基地みたい! わくわくしますわね、ラズ!」
「あ、ああ……」
天真爛漫に笑いながら彼女はラズの手を引く。
そのまま、エレベーターで地下に降りると──巨大な金属探知機のようなものの前に通された。
「この先は機密事項も多く、スマホロトムを始めとした電子機器の持ち込みは禁止となります。よろしいですか?」
「ええ勿論!」
「……ああ、構わねえが」
「ふふ、素直なのは喜ばしい事ですね♪ ユリも嬉しいです。では、先に進みましょう!」
鉄に囲まれたゲートを通り抜けたその先には──広大な地下ドームが広がっていた。
辺りには、空を飛ぶ丸型の機械、地面には巨大なアームを取り付けた作業用ロボットが不気味な光を放ちながら徘徊している。
「わあすごい! なんというか──全体的にSFっぽいサムシングですわ!!」
「どんな褒め言葉だよ……」
「この施設は、我らワームホール公団が誇る最新鋭の生産施設です」
「生産? 何を生産してんだよ」
「もっと先に行けば分かります♪」
ラズとレモンが通されたのは──無数のカプセルが立ち並ぶ真っ白な部屋だった。
「まぁー! 此処は何なのですの!?」
「覗いてみますか?」
カプセルにはガラス状の窓が取り付けられており、そこから覗けば──
「え……?」
──目を瞑った人の顔と、対面する事になる。
思わずレモンは腰を抜かして離れた。すぐさまラズは彼女を受け止め、窓を覗き込む。
そしてやはり、驚愕のあまり言葉を失うのだった。
「な、何だこりゃ、随分と精巧に出来た……アンドロイド? なんだな」
「なーんだ、アンドロイドですの! びっくりしましたわ! てっきり人の死体が入ってるかと!」
「その発想ができるテメェが恐ろしいよ俺ァ」
「……いいえ、アンドロイドでも死体でもありません♪」
「あ?」
手を広げ──ユリは高らかに告げた。
「此処は、我々ワームホール公団の研究施設、クローニング・ファクトリーです♪」
「く、くろーん……?」
「ちょっと待てや、どういう了見だコラ」
嫌な冷や汗がラズの額に伝う。
あのカプセルの中に入っているのは人間だ。クローン人間技術が倫理的観点から禁止されているのは、少し生物学を齧っている人間ならば皆周知の事実だからである。
平然と禁忌に手を出し、あまつさえ自分達にそれを見せつける神経がラズには理解出来なかった。
電子機器は取り上げられているとはいえ、これを公表したら公団の権威は地に落ちるのは確実だ。
狼狽えているレモンを庇い、ラズがユリに詰め寄る。
「……クローンってどういう──」
「おい、何考えてやがる……!! どういう意図で俺達にこれを見せた!? クローンは……国際条約で規制されてる、人間なら猶更だろ!?」
「あら、まだ分かりませんか?」
にこり、と微笑んだユリはモンスターボールを取り出す。
「これはスカウトです……貴女には、
「ふ、ふざけんじゃねえ!! 誰がクローンなんぞに──」
「おっと、言葉が足りませんでしたね……もっと直接的に言葉を変えましょう。オシアスのポケモンチャンピオン、レモン。類稀なる身体能力と、ポケモンを扱う卓越した頭脳の持ち主」
「ッ……わ、わたし」
「貴女は……コチョウ様の計画を手伝うに相応しい人材です♪ コチョウ様がそう判断しましたから」
「だ、誰が手伝うものですかっ……! こんな研究をしていただなんて……お父様が知ったら、何と言うか……!」
震える声で返すレモン。しかし、ユリは首を横に振る。元より、彼女達の意思を汲むつもりなど毛頭ないのだ。
「……貴方達には優秀で忠実なクローンになってもらい、コチョウ様の生態系管理を手伝って頂きます。その為に──死んでください♪」
「本性現しやがったな……! 胡散臭ェとは思ってたが……!」
「死ッ……!?」
「それが──コチョウ様の意向です」
「……!」
動揺のあまり、動けないレモンの肩を抑え、ラズはボールを投げる。
中からはグレンアルマが飛び出し、二人を守るように前に出た。
「……だけど、ボールを没収しなかったのは失策も良い所だぜ。このまま、研究施設諸共ぶっ壊してやるよ!!」
「おやおや、何も分かっていないようですね。先ず、この施設は強力な防護プロトコルによって守られています。ポケモンが暴れても、カプセルには傷ひとつつきません」
「バカが!! 施設は守られててもテメェは守られてねえだろが!!」
「もう1つ。それは──私のREXの試運転相手になってもらうためです。貴方達の犠牲は……無駄にはなりませんよ」
「れっくす……!?」
ユリはボールを投げる。
研究施設の床上に、巨大な影が飛び降りた。
羽毛の生えた身体、地面に付けられた翼竜の翼。
そして──全身から溢れ出す冷気。
その脚部は大きく膨れ上がり、発達しているものの──胴体はまるでジェット機のように先鋭化し、やせ細っていた。
大きな頭部と翼膜のある前脚が非常にアンバランスだ。
何より特筆すべきはその全長。頭の先から尾の先端までで4メートル以上はあるという巨体だ。
「このREXは、とある地方で採取されたポケモンのDNAを組み込んでいて、まだ不安定そのもの。故にデータが欲しいのです。オシアスのチャンピオン相手ならば、不足はありません」
ユリは可愛がるように、プテラの大きな頭を撫でる。
そして、目の前の獲物に対して──最上級の感謝と言わんばかりに恭しく礼をした。
「
【プテラ<REX> かせきポケモン タイプ:悪/氷】
作者の作風に期待するものは?(良ければ感想欄でも教えて下さい)
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ラブコメ、純愛
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戦闘シーン
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シリアス、曇らせ
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ギャグ、コメディ