続・ポケモン廃人、知らん地方に転移した。【完結】   作:タク@DMP

55 / 108
第50話:カナシミノモリ

 ──イデアの賭け。

 それは、敢えてオオワザを受ける事で自らの身体を焼き尽くす事であった。

 それにはホウオウの不老不死の呪いが何処まで強いかを考えなければならなかったのだが、生憎生まれてこの方死んだことのないイデアには未知の領域だった。

 身体的に再生できない程にダメージを受けても復活できるのか──そこまでは彼も知らなかったのである。

 結果彼は賭けに勝った。ガチゴラスのオオワザによって体を灰にされたイデアだったが、メグル達──そしてサリがぐだぐだと時間を稼いでいる間に再びこの世に受肉。そのまま元の姿で蘇ったのである。

 失った腕も元通り、禿げていた髪も元通り。痩せこけていた顔も元通り。

 あの憎たらしいニヤケ顔を浮かべたまま、イデアは己の復活を宣言したのだ。

 

 

 

 尚、服も全部燃えたので全裸であった。

 

 

 

「コォォォゼェェェン猥褻だろがァァァーッッッ!!」

「うん……ソウデスネ」

 

 

 

 幸い、マーニャの強い日光で局部は隠れていたものの──ブランカの指摘にイデア本人は泣きそうだった。体は蘇るが、服は元に戻らないのである。意気揚々と復活したのは良いが、これでは格好がつかない。

 しかしすぐさま、ポリゴンZが白衣を3Dプリントし、全裸の上から羽織る形になる。ちなむと何にも解決していない。下を何も履いていないからだ。

 

「ゲホッ、何があったの……!? なんでイデア博士が……ボク達を助けたの!?」

「あれがイデア博士……!?」

「イデア……ッ!! どの面下げて」

「ほう──美しい!! 私には及ばないが、彼と私は似通った魂を感じるよ」

 

(絶対に違う)

 

 妙な視線を注がれていることにイデアは鳥肌が立った。好きで全裸になったわけじゃないのに。

 

「……メグル君、細かいことは後だ。僕達の敵は同じ。此処は共同戦線を張らないかい」

「──脱いでるのは細かい事か?」

「敵はふたり。僕達もふたりだ。倒せない相手じゃないだろう?」

「おい無視すんじゃねえ!! ま……納得いかねえことは幾らでもあるけどな。今はあんたと敵対しねえほうが良さそうだ」

「それと──見ない間に随分としょぼくれたね? 昔の君はもっと血気盛んだった」

「──テメェにだきゃ言われたかねえ!!」

 

 メグルはボールを握り締め、突きつける。今此処でイデアに襲い掛からんばかりだ。

 

「だけど、あんたの言う事は賛成だ。……アルカ!! シャイン!! ミアを連れて逃げろ!!」

「ああ分かっているとも!!」

「いこっ、ミア……!!」

「はい……!」

「ッ……逃がすとでも!!」

 

 再びアーケオスが地面を踏み鳴らせば、地面から次々に植物が生えていく。だが、そこにシャインがブロロロームを繰り出した。

 

「”ダストシュート”だ、ブロロローム!!」

「ッ!?」

 

 ヘドロの混じったボールが飛んで行き、悪臭と共に植物の蔓にぶちまけられる。当然、そんなものを掛けられれば枯れ果ててしまうわけで──

 

「私の造り出した花の園を良くも──ッ!! アーケオス!! 試作品492号を追いなさい!!」

「させねえよ!! ニンフィア、”でんこうせっか”!!」

 

 跳躍して追おうとするアーケオス。だが、その脳天に凶暴リボンが頭突きを噛ませて仰け反らせる。

 そして、此処から先は行かせない、とばかりにダンダンと後ろ脚を地面にたたきつけるのだった。

 

「ふぃるふぃーッ!!」

「おお、ニンフィア!! 久しぶりだね、元気してた?」

「に”ーッッッ!!」

「うわ、すっげえ威嚇」

「どうやら嫌われてるのは相変わらずのようだ。とはいえ、今はいがみ合うのは止した方が良さそうだね」

「……どの口が言ってんだか」

 

 ポリゴンZ、そしてニンフィア。

 二匹はいがみ合うように火花を散らしたが──それでも目の前の強敵を前に共同戦線を張ることを決意する。

 今、敵は互いではないのだ。

 一方、完全に水を差されたブランカはブチ切れる。倒したと思っていた相手が生きていたことも我慢ならない。

 

「オイ。オイオイオイオイ!! ダメじゃねえかよォ、死んだヤツが出張ってきちゃあ!!」

「ゴメンゴメン、僕不死身なんだよね──全身消し飛ばされるのは初めてだったけどさ」

「ドババババ!! 俺の魂が言ってるぜ──こいつは許しておけねえってなァァァーッ!! 二度と娑婆に出られねえようにグチャグチャにしてやらァーッ!!」

「ブランカ、貴方が何かを許したこと、今まで一回でもあった?」

「あるだろうがァァァーッ!?」

「ない。でも──」

 

 怒り狂うブランカの横で耳を塞ぎながら──同意するようにサリは言った。

 

「私もこいつらは許せないのは同じ。……可哀想なくらい苦痛を与えてやる」

「良いなァそれ!! ガチゴラァス!! ”ゆうきのほうこう”で奮い立たせろッ!!」

 

 号砲が轟き、辺りを再び揺さぶる。

 ニンフィアもポリゴンも立ち竦み、一方でアーケオスは鼓舞されたことで更に勢い付いてニンフィアに襲い掛かる。

 だが、鉤爪による引っかきなど、凶悪リボンからすれば脅威でも何でもない。ひらりひらり、と妖精のように舞い踊り、翻弄してみせるのだった。

 

「ならば動きを止める!! アーケオス、”じゅかいごく”!!」

「キィイアアアアアアアアア!!」

 

 甲高く声を発したアーケオス。その足を強く強く踏み鳴らせば、再び地面から樹木が沸き立ち、ニンフィアに絡みつく──

 

「これで動けない……本当に本当に哀れ……」

「そいつはどうかな? さっきとは違ェよ!!」

 

(出るか──メグル君の──)

 

 メグルは腕輪にカードを翳す。そこからオーラが拡散していき、ニンフィアの身体に纏わりついた──

 

 

 

「オーライズ、ブースター!!」

 

 

 

 ──蔓は一気に焼き切られる。

 ニンフィアの全身には焼け焦げるような炎、そしてどろどろに溶けた鋼鉄が纏わりついている。炎と溶鉄に焼かれ、植物の蔓は次々に焼け落ちていく。

 

「こいつ、タイプを変えやがった……!! 炎タイプになったのか!?」

「オーライズ……コチョウ様と同じ……!!」

「久々に見ると圧巻だね──ッ!! 触れるだけで邪魔な蔓、全部焼き落とした」

「ニンフィアッ!! 今度はこっちの番だ!! どろどろの鉄を辺りに広げるんだッ!!」

「ふぃッ!」

 

 だんだん、と前脚を打ち鳴らせば、そこから溶けた鉄が溢れ出し、波打ち、アーケオス、そしてガチゴラスに襲い掛かる──

 

「──ドーバドバドバァ!! 何が鉄だッ!! 俺様の熱気で焼き尽くしてやらァ!!」

「ハズシさんが言っていた!! 炎よりマグマの方が強いんだッ!!」

 

 ガチゴラスが吐き出した火炎により、一度は溶けた鉄は堰き止められることになる。だが、元より溶解している鉄は形を変え、ガチゴラスとアーケオスの足元に絡みつく。

 避ける事が出来なかったのは──先程のポリゴンZの”でんじは”によって、二匹共足を止められてしまったからだ。

 

「クッソがぁ!! ガチゴラス、”げきどごう・かさいりゅう”!!」

 

 グラグラ、と音を立ててガチゴラスの中の油が沸き立つ。

 そして、ニンフィア達目掛けて特大の大噴火が大口から放たれるが──

 

「悪いね! もう君達のオオワザはまともに喰らってやらないよ。ポリゴンZ、次元移動の時間だッ!!」

「逃げるな卑怯者ァァァァーッッッ!!」

 

 ポリゴンZの周囲がブロック状に分解され、メグルとニンフィアも巻き込んでその場から消え失せる。

 だが、それでもガチゴラスの口から放たれた大熱波は止まる事を知らず、そのまま瓦礫の山を消し飛ばすだけに終わったのだった。

 

「ク、クソ、何処に逃げても無駄だぜ!! あいつには発信機が付いてるんだ……二度と娑婆に居られねえようにしてやらぁぁぁ!! ドーバドバドバァ!!」

「それ多分無理……」

「何でだァ!?」

「……」

 

 スマホロトムの画面をサリはブランカに見せた。イデア博士に付けた発信機の記号が消失している。

 

 

 

「……あいつ、さっきのオオワザをわざと受ける事で……()()()()()()()発信機を燃やし尽くした……!!」

「ア、ア、ア、ア、アァァァァ!? アドレナリィイイイイイイイイイイイイインッ!!」

 

 

 

 大失態も良い所である。機密情報の漏洩が確定してしまった瞬間であった。

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「──此処まで離れれば大丈夫だと思うけど」

「あのイデア博士って大丈夫なんですか!? 確か敵だったんですよね!?」

「分かんない……でも、今は逃げるしかないよ!!」

「ハハハハ!! どうやら私は蚊帳の外!! 何の事だかさっぱり分からないが──」

 

 グッ、と親指を立てるとシャインは言った。

 

「こんな時こそレモンとラズが居れば心強い!! 丁度、彼女の指定した合流ポイントがこの近くだ」

「なら良いんだけど……」

 

 不気味なほどに人気のない広場に、彼らは駆け付ける。

 そこに立っていたのは、スマホロトムを眺める見覚えのある人影達。

 

「ラズ!! レモン!!」

「ッ──シャイン! 会えて良かったですわ!」

「テメェ──ったく、良かった。無事にこっちに辿り着いたのか」

 

 シャインの顔を見るなり、ラズとレモンは安心したように駆け寄るのだった。

 

「レモンちゃん! あー良かったあ……君達見て安心することになるなんて、ボク思わなかったよ……」

「私もです」

「なんかすっごく酷ェ事言われてんな、俺様達……」

「ともあれ、これで揃いましたわね! あれ? でも何だか人数が足りないような気がしますわ?」

 

 きょとん、とレモンは首を傾げる。

 

「もしかしてよ、さっきから起こってる爆発事故に巻き込まれたんじゃねえだろな──ッ!?」

「人は逃げるし、皆大変になっていますの。これではエナドリも喉を通りませんわ」

 

(相も変わらず揺るがないエナドリ馬鹿……)

 

(安心感すら覚えます)

 

「……そうだな」

 

 そんな中、珍しく大人しいシャインが──すっ、とラズ、そしてレモンの顔を順番に見る。

 

「……どうしたシャイン? 変なモンでもついてるのかよ?」

「いや──そうだな。何かあったのか?」

「あ?」

「言語化は難しいのだが──私はどうも、今日の君達を見ると、胸騒ぎがする」

「シャインさん、何を言ってるんですか?」

「意味不明だよ」

「……いや、すまない。私の気の所為かもしれない。取り合えず安全な場所に行こう」

 

 

 

『いいや、お前達は何処にも行かせない』

 

 

 

 全員はゾッ、と心の底から肝が冷えたようだった。

 ノイズの混じった機械音声だ。それを口にしたのは──他でもなく、レモンだった。

 思わずアルカはミアを庇う姿勢を取り、シャインが前に出る。

 

「ゴメン、前言撤回……ボクも意味が分かった」

「これは……どういう……」

「ラズ、レモン、どういう真似だコレは」

 

 二人は既にボールを構えており──更に、眼が翠色に発光していた。

 シャインの質問に答える事はせず、ボールの中からはグレンアルマ、そしてピカチュウが飛び出す。

 二匹共、眼の色は主人と同様に翠色に光り輝いているのだ。

 

『どういう真似か? まだ分からんか』

『今、この者達の意識は私がハックしている。彼らは既に私の人形だ──しかし、直にお前たち、そして全世界の人間とポケモンがこうなる』

 

 ラズ、そしてレモンが交互に喋っている。だが、聞こえてくるのは同じ声だ。

 

「意識を乗っ取られてるって事……!?」

「でも妙ですね。何処の誰だか知りませんが──こんな回りくどいことをするくらいなら、直接私達を乗っ取るべきでは? 大方エスパーポケモンの力でも使ったのでしょうが」

『なに、乗っ取れないだけだよ』

「思ったより情けない返事ですね……」

 

 クク、と笑い声がレモンの口から洩れた。

 

 

 

『──()()()()()()()()()()()()()……ね』

「──ッ!!」

 

 

 

 シャインの顔付が一気に変わる。

 そして、ブロロロームもまた、呼応するように彼の傍でエンジン音を鳴らす。

 

「……答えろ。貴様、ラズとレモンに──我が友に何をした」

『直に分かる。この私の所に──ワームホール公団に来れば、な』

「クローン……!? この二人が!? 全く分からなかった……!?」

『試作品492号。私の作った群衆型クローンは、オリジナルと能力の違いが全く存在しない汎用型だ。それゆえにお前の探知にはかからない』

「……じゃあまさか」

『そのまさかだ』

 

 声の主は──悪びれもせず言い放つ。

 

 

 

『……お前が感知していないだけで、既にこのマーニャはクローン人間、そしてクローンポケモンが大量に居る……私は、その全てを管理し、時にはこうしてジャックする事が出来る』

 

 

 

 恐怖のあまり、ミアはアルカに飛びついた。「大丈夫だよ」とアルカが彼女の頭を撫で──そして毅然とした態度で、レモン達の奥に居る声の主に問うた。

 

「此処の住民たちの様子がおかしかったのは……クローンだったから?」

『ああそうだ。オリジナルと全く同一の記憶を持ち、同一の身体構造を持つ完全模倣型のクローン。その素体は……()()()()()()()()だ。試作品492号、そしてタイプ:ゼノと変わらない』

「さっきの質問の答えをまだ聞いてなかったな」

 

 すっ、と周囲の気温が一気に下がる。

 シャイン・マスカットは──最大級の激怒を以て、敵対者と相対する。

 

 

 

「──我が友に、何をした?」

『答えは言ったはずだが?』

「そうか──」

 

 

 

 友の姿を睨み──シャインはボールをもう一つ掲げる。

 

「……アルカ。ミアと共に此処を離れろ」

「ッ……え、でも」

「この二人の戦術も、ポケモンも、私が一番よく知っている」

「シャインさん……!?」

 

 冷たい眼差しが──変わり果てた友と、そのポケモンの姿を突き刺した。

 

 

 

「今の私は──冷静で居られそうにない。君達も氷漬けにしてしまうぞ」

 

 

 

 普段からは考えられない程の怒気を孕んだ声に、アルカもミアも圧倒され──言われるがままに離れるしかなかった。

 

「行こう、ミア」

「でも、助けないんですか!?」

「……あんな顔されたら……邪魔出来ないよ。でも──」

 

 助けたいのは山々だ。シャインは圧倒的に不利。

 だが、近くからは目を光らせたクローンの住人たちが迫ってきている。

 戦いに気を取られていては、包囲網から抜け出せなくなる。

 加えて、アルカは感じていた。言語化は出来ないが、更に嫌な気配を何処からか感じるのだ。

 

(何処かから、誰かがボクらを見ている気がする──ッ!! すっごく嫌な気配だ!!)

 

 逃げていく二人を見ながら、シャインは安堵したように友の姿を見た。

 

 

 

「……それで良い。絶対零度の貴公子の力は……見せびらかすものではないからね」

『こいつらの思考、経験、その全て、私が掌握している。お前に勝ち目はない、シャイン・マスカット』

作者の作風に期待するものは?(良ければ感想欄でも教えて下さい)

  • ラブコメ、純愛
  • 戦闘シーン
  • シリアス、曇らせ
  • ギャグ、コメディ
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。