続・ポケモン廃人、知らん地方に転移した。【完結】 作:タク@DMP
※※※
「おいおいおい、なんか爆発音がしたかと思やぁ、スマホロトムが使えねえぞ!? なんか周りの人の様子も変だし」
「ねえー、バス来ないんだけど!! どーなってんの!?」
『危険な野生ポケモンが暴れています。住民や
何も知らない観光客たちは、急に目が緑色に発光し始めた住民たちを前に困惑するばかり。
爆発音も聞こえてきて、パニックは更に拡大するばかりだ。だが──そんな彼らを導くかのようにアナウンスが辺りに響く。
間もなく公団の車両が次々にやってきて、戸惑う観光客を中に連れ込んでいく。
「落ち着いて!! 落ち着いて!! 皆さん、車両の中は安全ですから!! 順番に!!」
「助かったァ!! 公共交通機関が使えなくて困ってたんですよ!! ね!? なんか目が緑色に光ってるそこの貴方も一緒に逃げましょう!!」
「……」
観光客は──隣で突っ立っているサラリーマンの男に話しかける。尚、眼は何故か緑色に光っていて、ぼーっとしていた。辺りからは爆発音が響いているのに。
そんな彼を見て、観光客は頷き──笑顔で一言。
「無口な人だなァ!!」
──そうして周りの人々が皆、車両の中に入った後。ゲートが締められる。
誘導を終えた公団職員の脳内に──コチョウの声が響いた。
『騒ぎを知る者で私の管理下に無い者は皆、クローンファクトリー送りだ──避難の名目の下、全員逃すな』
「了解です、コチョウ様」
※※※
『危険な野生ポケモンが暴れています。住民や
──間もなく。
遠くから、何かが凄まじい勢いで凍り付く音が聞こえ、周囲の気温が一気に下がったことで、アルカは自分の判断が正しかったことを確信した。
もしもあの場に居たならば、シャインは全力を出す事が出来なかっただろう──と。
辺りからはサイレンが聞こえ、ワームホール公団のアナウンスが聞こえてくる。
おまけに、スマホロトムの電波は繋がらない。町を中心に強力な妨害電波が放たれていると見て良い。
また、各交通機関は完全閉鎖されており、水路も道路も封鎖され、町の出口からは強固な防壁が競りあがって塞いでしまっているのが遠目からでも分かる。
完全に閉じ込められてしまった事をアルカは悟った。
辺りを見回せば見回す程生気のない目をした人々であふれかえっていた。おまけに、その目は発光している。それが意味するのは、マーニャに深く刻まれた根深いクローン汚染だった。
「何処を見ても目が光ってる人ばっかり……!! あれ全部、クローンにされた人なんでしょうか!? だとしたら、ワームホール公団は……」
「今は考えちゃダメ!!」
「そ、それに、クローンではない観光客相手を避難誘導させてるのって……!!
人だけではない。
街角に止まるポッポやニャースといった小動物型ポケモンに至るまで、眼が翠色に発光している。
今までこのような事は無かったが──この事件の裏で糸を引いている者が、一斉にクローンの支配を始めたのだろうか、とミアは寒気立つ。
そうして、このクローンたちの素体が何なのかを考えた時、この地方に巣食っていたものが途轍もない程巨大な悪意であることを思い知る。
(でも私はクローンにも拘わらず、影響を受けていない……!! いや、でも、それすらも黒幕の思惑通り……!?)
「アルカさん……私……!!」
蒼褪めた顔でミアは、隣を走るアルカに問いかける。
今この時、この瞬間、もしかすれば自分も操られるのではないか、とミアはゾッとする。
もしそうならば、とっくにコチョウによって意識を乗っ取られていてもおかしくはないのだが、それでも不安はぬぐえない。そもそも、意識を乗っ取られているならば、その間の事を彼女は知覚することが出来ないわけで。
「私……私……!!」
「ミア!!」
「ッ……」
「今はメグル達と合流することを考えるよ!!」
「でも、私とゼノもクローンで──もしかしたら──」
「だったとしても、ボクはミアを信じるよ! ミアに何かあった時は……ボクが全力で止める! ボクがミアを守るよっ!」
「……なんで、そこまで私を信じてくれるんですか……!?」
「前も言ったでしょ! クローンだとか何だとか関係ない! ミアはボクの友達で、仲間だよ!」
「ッ……」
その言葉で、ミアは安心して前を走る事が出来た。
そして──彼女のこの真っ直ぐな所に、きっとメグルも惹かれたのだろうか、と考える。
とはいえ、メグル達が今どこで何をしているのかは定かではない。
『ようこそ、マーニャ地方へ──と言っても今更か。だが、これでこのマーニャがどういう場所なのか分かっただろう?』
ノイズ混じりの声が皮肉たっぷりに響き渡る。
道行く通行人たちの首がぐりん、と曲がり、アルカ、そしてミアを取り囲む。
その口からは、次々に同じ声で同じ言葉が発せられていく。
『特に、この町は……ココナッツシティは、私の庭も同然。お前達は迷い込んだ哀れな虫ケラだ』
ぞくり、ぞくり、とミアの肌が更に粟立った。
「このカンジ!? やはり、同時並列的にクローンの意識を乗っ取っている……!? でも、こんな高等技術は高い知能のエスパーポケモンでも不可能なはず……!!」
『そもそもマーニャは私が管理する國。道行く人々、そして四天王──その視点をジャックし、私は常にお前達の事を見ていたぞ』
『既に調べも付いている。アルカにメグル──サイゴクを救った英雄の名は伊達ではなかったようだな』
違う人から同じ声が発せられる違和感に頭がおかしくなりそうになりながらも、アルカは駆ける。駆ける。ミアを連れて、駆け続ける。
心拍数は上がっていき、汗は溢れていく。口元が乾く。だがそれでも叫ぶ。
「お前は──ボク達の事を知ってるの!?」
足を止めることなく群衆を力づくで掻き分け、アルカはその声に問いかける。
『ああ。取るに足らないトレーナーならば見逃しても良かったが……お前達はノーゼンを退け、湿地帯をくぐり抜け、ヴォルカニドとブリザベオを追ってこのココナッツシティまでやってきた……合格だ。しかし、同時に私にとっては邪魔になる』
『私はずっと、お前達の事を見ていた。──ある意味では合格だ。こうして土足で私の庭に足を踏み入れた以上、お前達もクローンになれ』
「じゃあボク達がマーニャに来たのは全部仕組まれたことで、まさか、ハイビ先生も……!?」
『ハイビ? 誰だそれは? 知らん……生憎、クローンにしていない者の人間の名前も素性もいちいち覚えてはいない』
「あー……疑ってゴメン、ハイビ先生」
※只の善良な一般教師。
「え、えーと、コホン!! じゃあ何故今になってボク達を襲う!? ワームホール公団の力なら、ボク達を力づくで抑え込むことも出来たんじゃないの──!?」
『邪魔なサイゴクの忍者たちだ。お前達と関係が深い以上、奴らの戦力を測るまでは下手を打って摩耗させるような真似をしたくなかっただけだ』
「ははーん、なぁるほど……!! そしてボクらが自分の巣に入ってきたから、こうして牙を剥いてきたってわけだ、まるでアリアドスだね」
『アリアドス呼ばわりは──心外だな』
群衆は、気付けばアルカ達を取り囲んでいた。そのひとりひとりの手にモンスターボールが握られている。
『こちらでも更に
「あなたは……私を恐れているんですね」
『……何?』
「クローンでありながら、自分で制御することが出来ない私を」
しかし、それを前にしていよいよ覚悟が決まったのか、ミアもまたボールを構える。
「いや──もっと言えば、貴方は自分の管理下に置くことが出来ない全てのものを恐れてる。だから、人々を、ポケモンをクローンにして、自分に操れるものを増やしていってる。そうでしょう?」
『失敗作の試作品風情が……私は恐れなど感じていない』
「へへん、それは効いてるヤツの台詞だ!!」
『……この圧倒的な数を前に沈んでいけ』
群衆が次々にモンスターボールを投げる。その中から飛び出したポケモン達の目は、緑色に発光していた。どうやら手持ちのポケモン諸共、この町の住民は皆クローンにされたらしい。
それらは一斉にアルカとミア目掛けて襲い掛かる。文字通り、数の暴力。だが──
「──ゼノ、”ドラゴンクロー”ッ!!」
「──セゴール、”ドラゴンクロー”ッ!!」
──二匹の竜の強烈な一撃を以て、大して鍛え上げられてもいないポケモン達は皆、吹き飛ばされてしまったのだった。
どんなに数が多くとも、所詮は温室で飼われたペット同然。さしてポケモンバトルが盛んではないマーニャで、強いポケモンを育てている人は少ないということなのだろう。
次々にポケモン達は襲い掛かってくるが、それに対してアルカとミアも戦力を更に投入。モトトカゲが高スピードでポケモン達を蹴散らし、ランクルスが念動力で相手を吹き飛ばして排除する。
こうしていくうちに、群衆の数は次々に減っていくのだった。
『なかなかやる……やはりお前達にはREXでないと相手にならないらしい』
「REX!?」
「気を付けてミア!! さっき感じた嫌な気配──近い!!」
アルカが叫び、ミアも彼女と背中合わせになって辺りを警戒した。
空を見上げると──黒い影が何処からともなく飛んできて、ジェット機の如き勢いで降り立つ。
何かと思い、身構えた二人は愕然とした。
漆黒の紳士服。そしてシルクハットにモノクル。鮮やかな──ブロンド。
その姿には、見覚えこそあるが、目だけが緑色に発光している。
『さっきはああいったが……私はクローンにした者の名前は全部記憶している』
「クロー……バー……!?」
アルカは立ち尽くした。明らかに見知った顔の少女がそこには立っていた。
かつて城下町で相対し、共に戦い、奇妙な友情を築いた少女。
そして──短い時間だったが、共にマニャカを散策し、最後にはワームホール公団とブリザベオへの足掛かりを残していった少女。
彼女が何処でどうしているのか知るすべはなく、だがもしかするとまた会えるかもしれない──とアルカは考えていた。
事実、こうして再会できた──想像もし得なかった最悪の形ではあるが。
「何で……クローバーが……!?」
『こいつは曲者だった。私の周りを嗅ぎまわっていたんで、エサを垂らしてやったらノコノコと……まあ今となっては私の従順な手駒だが』
「ッ……!!」
さあっ、とアルカの体から血が冷たく引いていき、そして──頭が沸騰した。
「オマエ……ふざけるなッ!! クローバーをよくもッ!!」
激昂するアルカ。
その勢いにミアは気圧され、声も出なかった。
明るく、自分の背中を押してくれたクローバー。USBにメッセージを残してくれたクローバー。
そんな彼女の末路は──公団に改造され、クローンに作り替えられたというものであることを直視させられ、流石のミアもショックを受けていた。
「何で……私がマーニャで見知った人たちが……次々に……!!」
『やはりコイツもお前達と繋がっていたか。この少女の身体は気に入っている。愚かな害虫も捕まえれば従順な手駒。お前達ポケモントレーナーとやっていることは同じだ』
「なんでこんなひどい事が出来るんだよ!! ふざけんなッ!!」
『酷い事? 記憶もそのまま残してやっている。体は一度作り変えたが、そっくりそのまま当人のものを素体にしている。何が酷いのか私には理解出来ない』
いけしゃあしゃあと言ってのける声の主に、アルカは怒りを隠せない。目の前のクローバーはアルカの呼びかけに応える様子が無い。
これをどうして「同じ」などと言えるのか──声の主の神経が彼女には全く分からなかった。
『御託は良い。私は忙しい身分でね──奴らを捕えろ、クローバー』
「REX起動許可──セグレイブ」
「ッセグレイブ!?」
ボールが投げられる。
そこから現れたのは、パルデアでよく見られる凍える氷龍。
しかし、白目と黒目が反転したような眼球、そして大量の氷柱が伸びた大顎、重い上半身を支える為に四足歩行と化しており、その姿は大きくゆがめられていた。
原種よりも一回り以上大きな身体を持つそれは、現れただけで周囲の気温を一気に低下させ、見る者を畏怖させる。
【セグレイブ<REX> ひょうりゅうポケモン タイプ:こおり/ドラゴン】
「……コォオオオオオオオオオオアアアアアアアン!!」
重金属が反響するような鳴き声が辺りを揺さぶった。
当然、同種の頂点を目の当たりにしたセゴールも、呼応するように咆哮するが──格があまりにも違い過ぎるのか押し負けてしまい、吹き飛ばされてアルカに抱き留められた。
「しっかり、セゴール!!」
「ぐるるごぉぉぉ……」
『それは化石から復元した個体か……だが、セビエの化石を手に入れたのが自分だけとは思わない事だ。既に私は何年も前からコイツの遺伝子改造を進めてきた』
空から氷柱が降り注ぎ、地面を穿っていく。
その力はパルデアに生息する原種のそれを優に上回っている──
『当然──お前に勝ち目はない』
「やってみなきゃ……分かんないよッ!!」
作者の作風に期待するものは?(良ければ感想欄でも教えて下さい)
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