続・ポケモン廃人、知らん地方に転移した。【完結】   作:タク@DMP

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第52話:死ねば助かるのに……

 ※※※

 

 

 

「ッ──やはり、手強いね。ピカチュウにグレンアルマ……!!」

『当然だ。彼らはクローン、生前よりも強化改造されている。その上、この私の指揮があれば──』

「……そうなのかい? そうは全然思わなかったな」

 

 

 

 疲労困憊した様子のブロロローム、そしてトドゼルガを気遣いながら氷に覆われたリングの上で絶対零度の貴公子は微笑む。

 

「──本当にラズとレモンが彼らを指示しているなら、私はとっくに負けているさ。凄いのはピカチュウとグレンアルマであって、決してオマエが凄いわけではないさ」

『減らず口を!! ピカチュウ、”かみなりパンチ”!! グレンアルマ、”アーマーキャノン”!!』

 

 ピカチュウの目が更に緑色に光り輝き、紫色の紫電を拳に集約させてトドゼルガに襲い掛かる。

 だが、ピカチュウが飛んでくる場所に予めブロロロームが”ダストシュート”で射線を塞いで防いでみせた。

 そして、飛んでくる巨大な火球はトドゼルガが”ハイドロポンプ”で撃ち落とす。

 更に、常にトドゼルガが”こごえるかぜ”を辺りに吹きつけているため、グレンアルマもピカチュウも足を取られ、徐々に動けなくなっているのだった。

 

「……呆気なかったな。所詮、あの二人でなければ……この二匹も十分に力を発揮できない。トドゼルガ──終わらせてやれ」

「ヒュゴッォオオオオオオオオオオオオオ!!」

 

 咆哮するトドゼルガ、ピカチュウたちの足元の気温が更に低下していく。

 氷は徐々に華の形を象り、咲き誇っていく──

 

 

 

「──やめてッ!! シャインッ!! ピカチュウを傷つけないで!!」

 

 

 

 ──その時だった。

 レモンの声が辺りに響き渡った。

 表情は困惑に満ちており、両の手は祈るように重なっている。

 目の色も元に戻っていた。

 シャインは──思わず立ち止まり、そして言葉を失った。

 

「レモン──ッ!?」

「お願い……!」

「ッ……!?」

 

 それが当然、命取りとなる。

 トドゼルガは技を撃つタイミングを失い、氷の華は掻き消えていく──

 

 

 

『やはり心とは──()()か』

 

【ピカチュウの ボルテッカー!!】

 

 

 

 ──レモンの目が再び緑色に光り、顔が無表情なものへと戻る。

 ピカチュウが電光の如き勢いでトドゼルガに突貫し、そのまま黒焦げにしてしまう。

 更にグレンアルマもそれに続き、”アーマーキャノン”をブロロロームに接射して吹き飛ばしてしまうのだった。

 その爆炎に巻き込まれ、シャインも倒れ伏してしまうのだった。

 

「がっは……!?」

『人間の心とは、どうしてこうも儚く脆い……だが、長年かけて勉強させて貰ったぞ。お前のような手合は、()()()()()()

「ひ、卑怯者め……!!」

『卑怯? 合理的戦術と言え』

 

 本気で怒りを滲ませながらシャインは呟く。利用されたのだ。友人への信愛の情を──そして、踏み躙られたのである。彼女の尊厳も。

 ポケモン二匹は一気に戦闘不能に追い込まれてしまう。

 

『彼女達の記憶も意識も全て私が掌握している。必要に応じて、こうして引き出すことも可能だ』

「──シャイン、どうしましたの? どうして、私達戦ってますの──!?」

「おいおい、何だ!? 何がどうなってやがる──!? シャイン!? しっかりしろ!?」

 

 倒れるシャインに対し、心配するような言葉を投げかける二人。

 だが、すぐに意識は再びハッキングされ、眼から緑色の光を発するのだった。

 

『……だが安心しろ。お前もすぐこっち側だ』

『大人しく敗北を認めるが良い』

「まさか」

 

 咳き込みながらシャインは起き上がる。体は煤塗れで、服は焼け焦げていたが──それでも不敵に笑みを浮かべ、ボールを握り締めた。

 

 ──私は知っているよ。レモン、君の強さをね。

 

 ──ポケモンは──まだ諦めていない。

 

 自分で言った言葉を──彼は、自分で反芻し、尚も立ち上がる。

 

「悪い冗談も大概にしろよ。レモンとラズの前で敗北を認める? それは……美しくないな」

『愚かだな。クローンになれば皆同じなのに……』

「何とでも言え。愚か者扱いは慣れていてね」

 

(岩タイプでありながら炎技を扱えるグレンアルマに、恐ろしく速いピカチュウ……!! ”こごえるかぜ”で素早さを下げているが、完全に弱体化出来た訳じゃない)

 

 結局二匹共倒されちゃったしね、と自嘲するようにシャインは笑う。全ては自分の甘さが招いた窮地だ。

 

(レモン、ラズ……!!)

 

 改造された友達の顔を見やる。

 自分が遅れた事、居合わせる事が出来なかったことをシャインは本気で悔やむ。

 一緒に居てやるべきだった、気を遣ったのは間違いだった、と無念の気持ちが湧き上がってくる。

 あまりにも唐突で、そして突然の悲劇。

 まだシャインの中でも何が何だか分かっていない。しかし──そんな中でも、毅然と目の前の悪意に立ち向かえてしまえるほどに、シャイン・マスカットの自我は強かった。

 

「ブルンゲル!! 次は君の番だッ!!」

「ぶるわぁぁあん」

 

【ブルンゲル<マーニャのすがた・♀> でんきクラゲポケモン タイプ:水/電気】

 

 現れたのは全身が電気を帯びた巨大なクラゲのようなポケモン。

 その目からはまつ毛のようなものが生えており、全体的に女王のような印象を与える。

 しかし、全身の飾り鰭は尖っており、女王は女王でもさながらパンククイーンだ。

 

『ブルンゲル──ハッ、ノーゼンに渡したクローン個体に比べれば強さは一目瞭然、取るに足らない』

「ラズ──覚えてるかい? 君と素潜りした時に捕まえた子だ。うっかり二人共刺されかけたのは良い思い出だよ」

『聞こえるわけがないだろう。彼らの意識は私が閉ざした』

「……そうだね。ならば返して貰おうか!! 私の友を!!」

 

 ブルンゲルは触手を地面に埋める。

 元がゴーストタイプであるが故に、不規則、そして荒唐無稽な技も多用する事が可能。

 沈められた触手は次々に地面から生えてピカチュウ、そしてグレンアルマを捕える。

 当然抵抗する為に電気を放つピカチュウだが──特性が”ちくでん”であるが故に、ブルンゲルには全く電気が効いていない。

 

『やはり”ちくでん”個体か──ならばグレンアルマ、”パワージェム”で直接ブルンゲルの頭を狙え』

 

 グレンアルマの目が妖しく光り、大量の宝石が宙に浮かぶ。 

 そして、眩い閃光がブルンゲルを撃ち貫き、仰け反らせる。

 触手は瞬く間に消え失せ、二匹共拘束は解かれてしまうのだった。

 そこにグレンアルマが”シャドーボール”の弾幕を張り、ブルンゲルにぶつける──

 

 

 

『大人しくしていれば、苦しまず逝けるのに……』

 

 

 

 ※※※

 

 

 

『件のイデアがお前達を助けに来る様子も無いな。大方、お前達だけ置いて先に逃げたか? 見捨てられたな』

「メグルはボクを見捨てたりなんかしないよ!! きっと何か考えがあるんだ!! ボクはメグルを──仲間達を信じてるかんね!!」

『信用か。何と脆い──支配と管理こそ、強固で絶対だ』

 

 重金属の如き咆哮が、辺りを揺さぶる。

 そして、四足歩行の氷龍は、強力な氷の爪を生やした前脚を振るって這いずり回る。

 アスファルトは抉れ、そして凍り付き、周囲は荒れ果てていく──

 

『やるだけ時間の無駄なのに……抵抗するのか?』

「ッ……!!」

 

 岩を纏わせた腕で何度もセグレイブを殴りつけるセゴール。

 しかし、砕かれた氷の装甲は再び再生しており、全く効いた様子が見られない。

 そのまま鋭く尖った鉤爪を振りかざせば、セゴールの顔面を覆う岩がはがれてしまうのだった。

 

「セゴールッ!!」

「ぐるるるご……ッ!!」

「ゼノ!! ”ドラゴンクロー”ですッ!! セゴールを援護して!!」

 

 黒い翼を広げたゼノが飛び立ち、そのままセゴールに襲い掛かる。

 だが、三形態のうち最も膂力の強いドラゴン形態を以て尚、歯が立たず──腕は大顎に咥えられて投げ飛ばされてしまうのだった。

 

 

 

『”れいとうビーム”だ、セグレイブ』

 

 

 

 高圧縮された冷気の光線がゼノの身体を貫き、一瞬で凍り付かせる。

 ”こおり”状態──全身が凍結したことで動けなくなってしまったのだ。

 

「──特殊攻撃──ッ!? 原種とは能力の傾向が違う──ゼノ!! しっかり!! 内側から炎で氷を溶かして!!」

『……旧型風情が。タイプ:ゼノの能力など、既に割れている』

「セゴールッ!! ”ストーンエッジ”だッ!!」

『む』

 

 アスファルトが叩き割れて、岩の刃が次々と生えたかと思えばセグレイブを突き刺し、横転させた。

 その間にゼノは自らの爆炎で氷を溶かし、倒れたセグレイブ相手に急降下して龍気を帯びた爪により一掻きしてみせる。

 しかし──やはりその表面は低温そのもの。引っかいた場所から腕が凍り付き、剥がれなくなってしまうのだった。

 

「ッ……まだまだ!! ゼノ、”フレアドライブ”ですッ!!」

 

 だが、そこでも更に炎を爆発させ、ゼノはセグレイブを突き飛ばす。凍り付いていた箇所も溶けており、その威力も低温下で尚留まる事を知らない。

 しかし──

 

『なんだ? ──全く効いていないがな』

 

 ──両足をアスファルトに食い込ませ、セグレイブは態勢を立て直す。

 そして、空中に”れいとうビーム”を空撃ちしたかと思えば、空気を一気に凍てつかせて氷柱を次々に落とすのだった。

 

 

 

『オオワザ使用許可──”ひょうろう・グレイブヤード”』

 

 

 

 次々とゼノ、そしてセゴールに氷柱が絶え間なく降り注ぐ。最初こそそれらを躱し続けていた二匹だったが、今度は地面から氷の刃が競りあがり、二匹を突き貫いた。

 そして──氷の刃は二匹に触れた場所から途方もない冷気で凍らせていく──

 

 

 

 

【セグレイブの ひょうろう・グレイブヤード!!】

 

 

 

 ──まさしくそれは凍てつく氷の墓標。

 二匹は完全に氷の牢獄に閉じ込められた。

 そこに、セグレイブが空中に向けて冷凍光線を放ち、一際巨大な剣が現れ──氷諸共二匹を砕く。

 後に残るのは、砕けた氷の中から投げ出され、ぐったりとしたセゴールとゼノの姿だった。

 

「う、嘘……ゼノ!! しっかりしてください!!」

『耐えられるわけがない。最初からお前達如きに勝ち目はないと言っている』

「ッ……!!」

 

 アルカはすぐさまセゴールをボールに戻す。

 残る手持ちで有力そうなのはラプラスしかいない。

 すぐさまポケモンを交代させて次の戦いに備える。

 

「……勝ち目はない? ううん、諦めないよ」

『呆れさせるな。REXはヌシポケモン等とは訳が違う』

「だとしても、ボクは諦めない……ッ!!」

「アルカさん……ッ!!」

 

 ゼノをボールに戻したミアも頷き、ランクルスを繰り出した。

 まだ手持ちは残っている。

 

「此処で諦めたら……クローバーに申し訳が立たないからね!!」

『やはりクローバーと繋がりがあったのはお前達か。涙ぐましい事だ。しかし愚かな事だ。この少女を見てみろ──私に歯向かった者の成れの果てだ』

「クローバーの意識も記憶も返してもらうよ!!」

『どうやって? その前に、お前達もクローンの仲間入りだ!!』

 

 セグレイブが咆哮し、ランクルスとラプラスに襲い掛かる。

 一方のランクルスは”トリックルーム”を展開して張り巡らせ、素早さを逆転。ラプラスが今度はセグレイブに先手を打って噛みつく結果となった。

 だが氷の装甲はあまりにも分厚く固く、牙が食いこまない。それでもラプラスは歯を食いしばるようにしてセグレイブに噛みつき続ける──

 

「クローンの素体は……死体、だっけ!?」

『ああ、そうだ。オリジナルのクローバーはもう居ない。此処にいるのは優秀な私の手駒だ』

「ッ──!!」

 

(クローバーはずっと命懸けだったんだ!! ワームホール公団の事を調べて、自分が死ぬかもしれないから、僕らに託した──!!)

 

「ミア!! とにかくエスパー技で派手に攻撃させて!!」

「は、派手に!? それじゃあ息切れが──」

「良いから!!」

「分かりましたッ!!」

 

(セグレイブは強い……今のボク達の戦力じゃ、とてもじゃないけど倒せない……ッ!!)

 

 せめてヘラクロスが居れば、と彼女は零しそうになり、飲み込んだ。今必死に戦ってくれているラプラスに失礼だ。それに──彼女は希望を捨てたわけではない。

 

(だからクローバー、ボクも君に倣うよ。今自分に出来る最善を!! 仲間を……信じる!!)

 

 ラプラスと取っ組み合うセグレイブの背後から、ランクルスがとにかく大量の念動弾を撃ち放つ。

 辺りには爆音が鳴り響き、セグレイブの背中をとにかく撃ち鳴らし続ける。

 が──特殊防御力も頑強なのか、全くと言って良いほど響いていないのであった。

 

『くどい』

 

 そのまま尻尾が振り回され、ランクルスを捕える。鞭のようにしなれば、地面に激しく打ち据えてしまうのだった。

 

『苦しむ前に諦めるが良い──ッ!!』

 

 周囲の温度が一気に下がる。

 そして──次々に地面から氷の刃が競り出し、ポケモン達のみならず、とうとうアルカ達をも飲み込んだ。

 

 

 

『氷漬けだ。出来るだけ身体は綺麗な方が良いからな──ッ!!』

 

 

 

 体から温かさが奪われていく。

 氷の刃が体を掠め、そして辺りから氷柱が生え始めた。

 そうして全員の動きを止めた後、セグレイブは口元に冷気を収束させ、再度オオワザの準備に取り掛かる──

 

 

 

「トドメだッ! ”ひょうろう・グレイブヤード”ッ!!」

 

 

 

 ──巨大な氷の剣が動けないアルカ達を、そしてポケモン達を目掛け、次々に降り注ぐ。

 後に残るのは完全に氷に飲み込まれた哀れな反逆者たちのみ──

 

 

 

 

 

『──手ごたえ無し……ッ!!』

 

 

 

 

 

 ──そのはずだった。

 ボロ、ボロボロと氷柱や氷の刃が崩れ落ちていく。

 中に入っていたのはアルカやポケモン達ではない。

 可愛らしい姿の”みがわり人形”であった。

 

『子供騙しの”みがわり”──おのれ、サイゴクの忍者か……!! しかしどうやってこの場所を……!!』

 

 氷が彼女達を飲み込む前に入れ替わったのだろう、と考えるが──そうなると、この広いココナッツシティでどのようにして忍が彼女達の居場所を突き止めたのかが不可解だった。

 もし見張っていたのならば、こうなる前に彼女達の助太刀に入っているはずだからである。

 

 

 

『まあ良い。いずれ、捕まえてやるさ──ッ!! このココナッツシティは私の庭だ……ッ!!』

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「──2対1とはずいぶんな趣味ッスね?」

『……貴様』

「君は……ッ!?」

 

 

 

 大量のシャドーボールの弾幕は、突如割り込んできた乱入者によって総て撃ち落とされる事になる。

 両掌をピカチュウ、そしてグレンアルマに向けるのは──ルカリオ。そして、その隣には好戦的な笑みを浮かべた少年の姿。

 思わずシャインは気色ばみ、叫ぶ。友人の弔い合戦に水を差されたからである。

 

「子供は邪魔だッ!! 巻き込むぞ!!」

「只の子供じゃねえッスよ。オレっち──キャプテンなんで」

「キャプテン……ッ!?」

「そう、サイゴクのキャプテン」

 

 ファイトポーズを取り、彼は高らかに名乗る。

 

 

 

「イッコンタウン”よあけのおやしろ”キャプテン・ノオト……勝手に参戦するッスよ!!」

作者の作風に期待するものは?(良ければ感想欄でも教えて下さい)

  • ラブコメ、純愛
  • 戦闘シーン
  • シリアス、曇らせ
  • ギャグ、コメディ
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