続・ポケモン廃人、知らん地方に転移した。【完結】   作:タク@DMP

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それじゃあ皆さん


第53話:反撃の時間でぇす

「──サイゴクの、キャプテンだと……ッ!?」

「話は後ッ!! 今はこいつら蹴散らすッスよ!!」

「──()()()()、ではないッ!!」

 

 シャインは忌々しそうにノオトに叫ぶ。

 

「……このシャイン・マスカットの……代え難き友だ」

「ッ……」

 

 ノオトは緑色に光る目の前の男女を見て──事情を察する。

 相手は、意識を乗っ取られたオシアスのチャンピオンとその付き人とばかり思っていた。

 しかし、隣に立つこのシャインという男にとっては、それ以上に大切な友人であり──この戦いが水を差してほしくないものであることを理解した。

 だが、その上で──

 

「……この戦いは私が一人でケリを付ける」

「ハッ、カッコつけてんじゃねーッス。──オレっちが用があるのはあんたのダチじゃねえ。その先に居る、ドス黒い邪悪ッスよ!!」

 

 ──ノオトは見過ごす事が出来ない。

 この事態を引き起こした元凶を。

 

「ッ……それならば、勝手についてくるが良い。せいぜい巻き添えを食わない事だッ!!」

「応ッ!! 勝手にやらせて貰うッス!!」

 

 ルカリオ、そしてブルンゲルが共に並び立つ。

 再びさっきのように触手を地面に潜らせ、至る所から顕現させたブルンゲル。

 だが、既に軌道は読まれてしまっており、グレンアルマもピカチュウもするすると触手を潜り抜けて近付いていく。

 しかし──その逃げ場を潰すようにして、触手が蠢くエリアの上空を跳んだルカリオは大量の”はどうだん”の弾幕を辺りにばら撒くのだった。

 先の戦闘で”こごえるかぜ”によって足が凍り付いたままのピカチュウはそれを避け切る事が出来ず、被弾してしまう。

 だが、それでも闘志は失われることはない。拳に電気を大量に溜め込むと、ルカリオ目掛けて飛び掛かろうとする。

 

「──ブルンゲル、”ビリビリしょくしゅ”だ!! ピカチュウを止めろッ!!」

 

 それを阻むのは、ブルンゲルの触手だ。

 大量の触手がピカチュウの眼前に現れ、電気を一気に吸い取っていく。

 ブルンゲルの特性は”ちくでん”。触れただけで電気技を無効化し、更に電気を吸収して体力を回復してしまうというものだ。

 だが、今度は触手を破壊するべくグレンアルマがパワージェムを乱射し、触手の破壊を試みる。

 

『こいつら……接点は無いはず……なのに、何だこの連携は……ッ!?』

 

 炸裂音と共に宝石の閃光によって触手は撃ち抜かれ、消え失せてしまう。

 しかし、破壊された触手からすっ飛んできたのは──限界まで右掌にエネルギーをチャージしたルカリオだった。

 

『ッ……!!』

「”てっていこうせん”ッ!!」

 

 掌がグレンアルマの胴に重ねられ、最大出力の極光が撃ち抜いた。

 宝石からは輝きが失われ、鎧は砕け散り、炎は掻き消える。

 ガラガラと音を立てて、グレンアルマは転がり落ちるのだった。

 だが、あまりの強力な威力でルカリオも反動ダメージを負っており、膝を突いてしまう。

 その隙を突くべく、ピカチュウが地面を蹴って全身に電撃を纏ってルカリオに襲い掛かった。しかし──

 

 

 

「ブルンゲル、”うずしお”で()()()()拘束しろッ!!」

 

 

 

 その脚元に巨大な大渦が現れ、ピカチュウの小さな体を飲み込んでしまう。

 あのピカチュウのガッツは底知れない。小型ポケモンとは思えない程だ。シャインも、その恐ろしさは重々理解している。

 故に今この場でピカチュウを倒す必要が無いのならば、巨大な渦に飲み込んで動きを止めてしまえばいい、と考えた。 

 更にラズとレモンも小サイズの渦に閉じ込め、追加のポケモンを出すことを封じ込める。

 

『おのれ!! 時間稼ぎをするつもりか……!!』

 

 幾ら電気を放って抵抗しても、渦潮の巻き上げる力には流石のピカチュウも逆らえないようだった。

 その隙にシャインはブルンゲルをボールの中に戻す。

 

「ッ……ノオトと言ったか」

「……!?」

「さっきの発言、撤回しよう。君は強い。……私の友人を助ける方法がもしもあるならば……私は君に同行したい」

「……ヘッ、あたぼーッス」

 

 ノオトも頷き、シャインと拳を合わせる。そして──彼は意識を乗っ取られたままの友人たちを名残惜しそうに見つめると、その場を後にすることを決意した。

 

「──必ず助ける。レモン、ラズ……ッ!!」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「──キリちゃん、ありがとう──助かったよ!!」

「なに。ミア殿のランクルスが放った念動攻撃に、ソルロックが反応したのでな」

 

 

 

 結果──ソルロックとルナトーンの念動力で浮かばされることで、アルカとミアはオオワザを受ける前に難を逃れた。

 そして当のキリは、ソルロックの上に乗っており「派手に戦ってくれて助かったでござるよ」と付け加える。

 その言葉で漸くミアは先程のアルカの指示の意図を理解するのだった。

 

「そうか! ランクルスに必要以上の出力で攻撃させたのは──キリさんを呼ぶため!?」

「もしキリちゃんが居るなら気付くと思ったんだよね。エスパーポケモンは味方の念動力を感知できるから」

 

 ランクルスの激しい攻撃により、ソルロックは味方であるランクルスの位置を探知。

 そして、その方向にキリは急行することが出来たのである。

 賭け同然ではあったものの、あの一瞬でキリを呼ぶ手立てまで考える事が出来たアルカに──改めてミアは感服するのだった。

 咄嗟の閃き、野生のカン、判断力──利用できるものは何でも利用する発想力。

 少なからず怖気づいてしまっていた自分には出来なかったことだ、とミアは目を伏せる。

 

(あのREX……まだ全力を出していなかった……私達相手に遊んでいた……ッ!!)

 

 隙の多いオオワザの乱打は──隙を見せても尚、此方に反撃の芽が無い事を示す為。

 仮に被弾しても圧倒的な硬さの氷の装甲によってセグレイブには傷ひとつ付ける事が叶わなかった。

 クローンのサザンドラ相手に打ちのめされた事で薄っすら分かってはいたものの、REXとの壁は想像以上に大きい。

 だがそれでも尚、アルカは出来る事を模索し、最善手を導き出し続けていた──

 

(私は……弱気になってた……圧倒的な力を持つREX相手に……!!)

 

「でもどうするのキリちゃん。逃げ場とかあるの……?」

「正直、無い……ッ!! 拙者たちも正直何が何だか……住民たちの目の色が変わったかと思えばいきなり襲い掛かってきたからな……」

「そんな……」

「拙者達は既に捕捉されており、またマーニャ全域が現在封鎖されていて、外部への出入りが不可能になっている。町を出るのは勿論、マーニャから出るのも厳しい」

「今のように空を飛んで行けばいいのでは……?」

「今拙者が通っているルートが最も安全だ。武装したドローンロトムが飛び回っている」

「最悪です……」

「ミサイルや電気を撃たれたらポケモン諸共拙者たちは撃ち落とされるでござろう」

「じゃあ、逃げっぱなしってことですか!?」

「……」

 

 キリは口を噤む。

 彼女としても如何ともし難い状況なのだろう。

 加えて、住民たちは殆どクローンであり、これらは黒幕の目でもある。今更地上に降りる事も出来ない。

 

 

 

 

「町から出たいんだっけ?」

 

 

 

 そんな声が空から聞こえてきた。

 ピキピキ、と空が割れ、マダラ色の空間が現れる。

 そこからひょっこりと現れたのは──見覚えしかない金髪のニヤケ顔。

 

 

 

「ヤッハローキリ君、お久~♪ 助けてあげよっか♡」

 

 

 

 ドシュ

 

 

 

 キリの手首から射出されたジップラインアンカーがイデア博士の顔面に突き刺さった。

 本来は壁に向かって撃ち、ワイヤーで身体を釣り上げる為の道具である。断じて人の顔に打つものではない。

 額からだらだらと血を流しながらイデアは割れた空間から顔を覗かせたまま両の手を挙げる。

 

「いやーすまない、丁度そこに岩盤があったかと思えば……貴殿の額だったでござるか、イデア殿」

「ちょっと……幾ら何でも()()()()()()()()()()()は良くないと思うんだけどね……死なないっつっても痛いモンは痛いんだよ僕、OK? OKござる?」

「はいはいござるござる」

「あッ痛い!! マジで痛い!! 刺さってる!! 刺さってるから!! 引き抜こうとしないで!!」

「漸く見つけたぞ脱走犯、まさか自分から出てくるとは思わなかったがな、元気そうで何よりでござるよ」

 

(しかも最後に見た時よりも髪色と顔が健康的になっている……)

 

「何があった、言え」

「あだだだだ!! 痛い痛い!! 頭蓋骨に刺さってる!! アンカーが!! 待ってくれよ、ぼかぁ脱走したんじゃないんだ、拉致られたんだって」

「……それで? 何故こんな所に居る」

「協力しようよ。僕達、互いに目指す敵は同じだと思うんだよね。ねえそこのアルカ君もそう思うだろう?」

「ドノツラ下げて言ってるんだろうってボクは思うよ」

 

 心底嫌そうな顔でアルカは言った。ド正論である。

 

「塩~~~!! キリ君はどう思う?」

「はいはいござるござる」

 

 ジップラインアンカーが突き刺さったままキリは巻き取りのボタンを押した。

 刃が引っ掛かったままイデア博士は異次元空間から引っ張り出されることになる。

 

「痛い痛い痛い!! NO!? それってNOって意思表明!? NOござる!?」

「NOござる」

「あのー、キリちゃん……俺もいるんだけど……」

 

 ピキピキ、と割れた空間の中からメグルが顔を出す。キリは驚き──更にアンカーを握る手に力が入る。

 

「メグル殿!? 何故イデアと一緒に居る!?」

「アルカもフォロー入れてやれよ……博士、頭に穴ァ開いちまうぞ」

「いや、今までやってきたことがやってきたことだから……つい」

「君達揃いも揃って酷いね!? ……でも、取り合えず逃げ場は作ったよ。そこで話そうか」

「……止むを得まい」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 ──ポリゴンZは異次元空間を潜行する能力を持ち、通常人や他のポケモンは長時間そこに潜る事が出来ない。

 そのため、基本的に潜行と脱出を繰り返しながら移動することになる。

 また、異次元空間内の座標は現実世界の座標に対応しており、異次元空間内のみで移動距離を稼ぐことは出来ない。

 そのような制約こそあるものの、監視の目を掻い潜って町から出る程度ならば造作も無く。

 とうとう人の目の届かない寂れた海岸に全員は集っていた。残るノオトとシャインも、イデアが拾ったのだ。

 

「いやー、何とか全員そろったみたいだね」

「癪ッスね……()()()に助けられることになるなんて……」

「戦力が限られている今、やむを得ない事ではあるが……」

 

 全員は立ち並び──約一名にその視線が注がれる。

 メグルですら、未だに彼を信用していいのか分からない。

 だが、今この場に居るのは、底知れぬ悪意を見過ごせない者達。大切な人やポケモンを守りたい者達。

 そして──傷つけられた友のプライドを取り戻したい者達。

 何より、ワームホール公団が気に食わない者。

 

「そんじゃまあ、始めようか? 此処にいる人たち皆、思う所はあるかもしれないけど……結論から言おうか!」

 

 パンパン、とイデアが手を叩く。

 

「あのコチョウってヤツを放っておくと、世界は……クローン塗れになるだろうね」

「ワームホール公団は公権力の影で人々を攫い、クローンに改造していた……!!」

「そして、クローンに改造された人やポケモンはコチョウの思い通りの駒になってしまう……」

「おっと。信じてる辺り、君達も何か思い当たるフシがあるみたいだね?」

「まあな」

「そんじゃあ、情報共有と行こう。それぞれが今持ってるものを全部開示する」

「成程──これから共に戦う仲間同士、持っているもの全てを曝け出すという事か」

「君が言うとちょっと嫌だな」

 

 尚、シャイン・マスカット本人はいたって真面目である。いついかなる時も。

 

「……それで、良いよねえ? メグル君」

「……」

 

 メグルは──正直分からなかった。

 博士を信じても良いのか、そしてこのまま突き進んで良いのかも。

 だが、時間の猶予はない。敵は──いつこの場所を突き止めてもおかしくないからだ。

 アルカが不安そうな顔でメグルの手を握った。

 

「……メグル、良いの……?」

「俺はあんたにやられた事、忘れた訳じゃねえよ」

「僕だって忘れた訳じゃないさ。センセイを失ったあの戦いはね」

 

 互いの視線が火花をぶつけ合う。

 剣呑な空気がその場に流れた。

 だが──先に折れたのはメグルだった。

 

「……でも、もう良い。疲れた」

「ほう?」

「さっさとやろうぜ。持ってんだろ、公団の情報」

「おやおや? 見ないうちに……随分とスレちゃったねえ? 昔の君はもっと血気盛んだったよメグル君」

 

 あまりにも張り合いの無いメグルに、イデアは肩を竦める。

 

「ま、いっか。此処でいがみ合うよりはよっぽど時間の有効活用ができるね」

「どの口が言うのやら……」

「不本意だが仕方があるまい」

「それじゃあ始めようかっ♪」

 

 いつになく真面目な顔で──イデアは言った。

 

 

 

「ちゃちゃっと世界を救うための作戦会議……って奴をね」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「忌々しい……あれだけ大規模な捕り物でも逃げ果せたか。やはりあのイデアと言う男を連れてきたのが間違いだったか」

 

 

 

 結果的に、コチョウはイデアを取り逃す事になり、更にメグル達との合流まで許す事になってしまった。

 だが、四天王たちを処分している場合ではない。時は一刻を争う。

 邪魔なサイゴクの英雄も、キャプテンも、そしてイデア博士も、全員を捕えるべく、コチョウは最大限の人員を動員する。

 

「既に追手を放っています。カゲン島から彼らが出る事は無いでしょう」

「ヴォルカニドとブリザベオは未だに見つからないのか?」

「何処かに潜伏し、力を溜めているものかと……」

「フン……不完全とはいえ闘神は闘神だ。必ず確保しろ」

 

 四天王との通信を切ったコチョウは、自らの身体につないだ計器で自らの五感を最大限までに拡張する。

 そして、接続するのはワームホール公団本部の屋上に設置された巨大な天体望遠鏡だった。

 それが捉えた1つの小天体。その意識は、確かにコチョウに引っ掛かるもの。

 

「奴らを相手にしている場合ではない。呪禍は廻る。宇宙を巡り廻り──そしてこの星にも辿り着く」

 

 確かにざわつく思考回路。

 己の原初に呼応する小天体。

 その全てが──彼女の計画の障害になり得る。

 

 

 

「やはり近付いているか、()()()()……もし、ヴォルカニドとブリザベオを捕獲する前に、この星に到達すれば──文明は消し飛ぶ」

 

 

 

 

 

 ──第三章「災禍呪来・オーラギアス」(完)

 

 

 

 これまでのぼうけんを レポートにきろくしますか?

 

 

 

 ▶はい

 

 

 

 いいえ

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  • ラブコメ、純愛
  • 戦闘シーン
  • シリアス、曇らせ
  • ギャグ、コメディ
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