続・ポケモン廃人、知らん地方に転移した。【完結】   作:タク@DMP

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このシリーズで真っ当に四章を四章として書いたのはこれが初めてである


第55話:最悪の再会

「……博士、どの顔ブラ下げて俺ン所に来たんだよ」

「この顔さ」

「うーわ、殴りてぇ」

 

 きゅるるるるるる、と酷く低い声でニンフィアが威嚇する。

 だが、それを意にも介さず、イデアはメグルの隣に立つのだった。

 

「あれから──何があったんだい?」

「……ハッ、あんたにゃ教えてやんねー」

「ひょっとしてひょっとしなくても、怖くて仕方ないって顔だね?」

 

 ぴたり、と彼は言い当ててみせる。

 メグルは眉を顰め「本当に嫌な奴」と返すのだった。

 正直未だに彼の事は底知れないと思っているし、こうしてすり寄ってくるのも気味が悪かった。

 

「……あんたは死なねえから良いよな。怖さとか感じないだろ」

「ああ。もう失うモノなんて無いからね」

「……」

「ま、結論勝てるわけが無いね」

「ッ……」

 

 だがその上でバッサリとイデアは言った。 

 

「相手は機械。それも、心なんて無いブレーキのぶっ壊れたイカれた機械だ。そんな奴は、躊躇いなく君達を消しにかかるだろう。そんな奴相手に、今の君が勝てると思うか?」

「……うっせー。勝てねぇって分かっててもやらなきゃいけねー時があるだろが」

「いつから、君はそんな腰抜けになったんだい」

「あァ……?」

 

 メグルの瞳が血走り、瞳孔が開く。

 

「……勝てないって分かってるって? 少しは張り合ってくれると思ったんだけどね。残念だ」

 

 

 

 ダァンッ!!

 

 

 

 全員が振り向いた。

 メグルは──イデアの首根っこを掴み、思いっきり押し倒していた。

 目は殺気に満ちており、息を荒げ──そして獣のように犬歯を剥き出しにしていた。

 

「さっきからうるせェッ!! 好き勝手やって、人様に迷惑かけ続けたテメェに、俺の何が分かるッ!!」

「君こそ僕の何を知っているって言うんだい。たかだか20年生きたか生きてないかのヒヨッコが──()()()()()()()何を知っているんだい」

「テメェからベラベラ喋っただろが!!」

「そうだね。だけど、あれだって全部じゃない。僕の500年は、お前達が思っている程薄っぺらくない」

「ッ……」

 

 激するメグル。しかし、対してイデアの顔は平静そのものだ。

 それがメグルにとっては、悔しくて悔しくて仕方が無いのだった。

 

「僕の敗北はセンセイの敗北でもある。……僕がセンセイを殺した。500年をフイにしたのは僕自身だ」

 

 その言葉で溜飲が下がったのかメグルは首から手を離す。

 怖い。確かに怖い。

 だが──それ以上に、自分が望む未来を掴むためならば勝たなければならない、ということを改めて突きつけられる。

 勝てなくても、などという投げやりな気持ちで戦っている場合ではないのだ、と思い知らされる。

 

「ふぃるふぃー……」

「……ニンフィア」

 

 心配そうな顔でニンフィアがメグルを見上げていた。

 

(負けても良い、だなんて思ってる場合じゃなかった。俺の敗北は、こいつらの敗北も意味する)

 

 クローンに改造されるのが人間だけではない事を考えれば「勝てないと分かっている」などという発言がどれほど無責任な物であったかを思い知らされる。

 自分はポケモントレーナーなのだ。ボールの数だけ命を預かっている。それがずっしりと圧し掛かれば、胸は締め付けられ、胃は苦しくなっていく。

 余計に「怖い」という気持ちが湧いてくる。だが、それでもこの戦いは──負けてはいけないものだ、と思わせられるのだ。

 

(忘れていた。俺の隣にポケモンが居るのが当たり前になり過ぎて──こいつらが、一蓮托生の存在だったのを……俺が、こいつ等の事を大好きだったのを)

 

 胸倉を離し──メグルは立ち上がる。

 

 

 

「……やってやるよ」

 

 

 

 ずしり、とモンスターボールが重い。己がポケモントレーナーであることを嫌でも思い知らされる。

 

 

 

「俺は、それでも()()()()()()()()()のメグルだ……!!」

 

 

 

 イデアは起き上がり──微笑む。

 

 

 

「……やっとらしくなってきたね」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「──さて。時間でござるな」

 

 

 

 全ての準備を終え、全員は並び立つ。

 向かう場所はワームホール公団の本部、そして地下にあると思われるクローンファクトリーだ。

 目標は、オオヒメミコ・コチョウの捕獲と、クローンファクトリーの停止。そして捕まった人々の救出となる。

 失敗は許されない。異次元空間の出口が開こうとする中、メグルはアルカの隣に立った。

 

「此処までありがとな、アルカ」

「! ね、ねえ、さっきなんだったの、博士とモメてたけど」

「……あの人にちょいと襟元正されたんだよ」

 

 オーカードを腰のホルダーに差し込み、メグルはアルカの手を握った。びっくりした様子で彼女はメグルの顔を見やる。

 

「ッ!? な、何?」

「ごめんな。散々心配かけた。もう大丈夫──ってわけじゃねえけど……今俺がやるべき事は分かった。俺の敗北は、皆の敗北だ。俺が怖いとか言ってられる場合じゃなかった」

「……で、でも、良いの? メグル、もう戦いたくないんじゃ──」

「俺だけじゃ無理だ。でも、俺にはポケモン達が居る」

「ふぃるふぃー♪」

 

 ぴょんぴょん、と足元でニンフィアが飛び跳ねた。

 

「そして、アルカが……仲間が居る」

「……ッ」

「ブッ潰してやるよ、ワームホール公団なんてな」

「……え、えへへ……全くもう、本当に本当に……心配したんだよっ」

 

 嬉しそうに笑いながらアルカが手を握り返した。

 メグルの目は先程までとは違う。何処か吹っ切れたような、真っ直ぐな瞳をしていた。ああ、この眼に自分は惚れたのだ、とアルカは思い知らされる。

 

「お二人共……私の事を忘れていませんかっ」

 

 そんな二人の前に立ったのは、ミアだ。彼女は少し不満げに頬を膨らませると、ゼノの入ったボールを握り締めた。

 

「たりめーだろ? ……三人で始まったマーニャの旅だ。きっちり皆、生きて帰ろうぜ」

「これが、最後の戦いだね!」

「ええ。コチョウを……止めましょう」

 

 三人は手を合わせる。決戦は、間近に迫っていた。

 

 

 

「できるはずだ。俺達なら……きっと!!」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 目の前にはワームホール公団の本拠地である巨大なビルディングが聳え立っていた。

 既に辺りは緊急警報が鳴り響いており、常に厳戒態勢が敷かれている。

 最早小細工は不要。ポリゴンZの異次元空間から飛び出したポケモントレーナー達は、各々の移動用ポケモンでワームホール公団本部へ突入するのだった。

 空を飛ぶのはタイプ:ゼノ、ソルロックにルナトーン、そして──クワガノンだ。

 

 

 

「──よし、頼むぜ……デンヂムシ改め、クワガノンッ!!」

「ヤッテキマッシャーッ!!」

 

【クワガノン くわがたポケモン タイプ:虫/電気】

 

 

 

 ポリゴンZが3Dプリントで作成したライドギアを取り付けたクワガノンにぶら下がる形で、メグルは降下。

 公団御用達の武装職員、そしてポケモン達が辺り一面に取り囲む正門に降り立つのだった。それに続くようにして、アルカとミアを乗せたタイプ:ゼノも降り立つ。

 残るソルロックとルナトーンは別行動の為に、何処かへと飛んで行くのだった。

 

「侵入者ッ!! 例のトレーナー達だッ!!」

「アルカ!! ミア!! 正面突破で行くぞ!!」

「はいっ!! ゼノ、お願いしますッ!!」

「オーケーっ!! 出番だよモトトカゲ、レディゴーっ!!」

 

 周囲を取り囲むトレーナー達、そしてポケモンが次々に襲い掛かってくる。

 だが、3人は一斉に息を合わせ、自らの手持ちに指示を出す。この程度の包囲網は相手にならない。

 

「──ゼノ、”かえんほうしゃ”ですッ!!」

「モトトカゲ、”りゅうせいぐん”ッ!!」

「クワガノン──”10まんボルト”だ!!」

 

 黒竜の熱線が、そして空から降り注ぐ流星の嵐が、そして──羽化の喜びを乗せた高電圧の電流の雨が辺りの敵を次々に薙ぎ倒していく。

 そうして正面からやってくる敵を倒しながら、メグル達はゲートをくぐり、公団本部へと侵入してみせるのだった。中は異様なほどに静まり返っている。

 

(地下のクローンファクトリーの場所は、きっとキリちゃんが探してくれるはずだ……ッ! 俺達は、コチョウの居場所を探すんだッ!)

 

「──感じます、嫌な気配……! コチョウのサイコパワーが……私にも感じられる……あいつは、ビルの最上階に居ますッ!!」

「そんじゃあ駆け上がるか、ワームホール公団アジト!! 面白くなってきたぜ、悪の組織の本拠地はこうじゃねーとな!!」

 

 自分を奮い立たせる為、メグルは敢えて強気に言ってみせる。エレベーターは電子制御システムで、いつでも停止させられるため、最上階に安全に行けるのは階段だ。

 そして、コチョウの誤算があったとするならば、クローン全員を制御するためのサイコパワーを放出していたが為に、同様にクローンであるミアにその居場所を逆探知されてしまった事である。

 一方、キリたちは別の場所からクローンファクトリーを探す為に潜入しており、コチョウを倒しに行くのはこの3人の役目となった。

 

「恐らく敵もなりふり構っていられないのだと思われます!! これだけの力を行使すれば、私に感知されるのはコチョウも分かっているはずです……ッ!!」

「そりゃあ、自分の素性を知ってるヤツがこれだけ大挙して雪崩れ込んできたんだ、生かしちゃおけねーんだろな! ま、簡単に捕まってやるつもりなんて微塵も無いが!!」

「ね、ねえ! また敵! 敵来たよ!」

 

 階段で待ち受けるのは、公団で作られたクローンと思しき、目が緑色に光るポケモン達。ネズミのような姿をしたラッタや、レアコイル、そしてオーベムがメグル達を死角から襲う。

 それらは待ち伏せするなり、飛び掛かってくるものの、ニンフィアの頭突きによってラッタは捻じ伏せられ、更にピクシーの姿にフォルムチェンジしたゼノがレアコイルを壁に叩きつけてノックアウト。

 最後にオーベムは、アルカが繰り出したラプラスの”かみくだく”で力尽き、がっくりと地面に落ちるのだった。数は多いが、一匹一匹の強さは然程でもない。

 

「っし、こいつらそんなに強くねえぞ!! さっさと先行こうぜ、先!!」

「うん……! でも、こんなに簡単で良いのかな……!?」

 

 そのままメグル達は階段を上り切る。だが、最上階はまだ先にも関わらず、階段は此処で終ってしまっていた。

 

 此処から先は、また上へ登る手段を探さなければならない。だが、その前に──このだだっ広い広間にぽつん、と一人。黒いシルクハットと紳士服を着た少女が立っていた。

 その目は緑色に光っており、クローンである事をうかがわせる。

 

「クローバー……ッ!!」

「……」

 

 怪盗少女のクローンは、無言で此方を睨み付け、ボールを投げ入れる。

 ──部屋がヒリついた冷気に包まれた。四足歩行の重厚な身体、氷に覆われた巨大な背びれ。

 スピノサウルスのような姿のセグレイブがメグル達の前に現れ、咆哮を上げる。

 

 

 

「コォォオオアアアアアアアアアアアアアアアンッ!!」

 

 

 

 

 セグレイブが吼えると共に地面から次々に氷柱が生え出す。

 刃のようにせり上がるそれらを避けていくうちに、メグルは気付いた。

 ミアは傍に居るが、アルカが居ない。サッ、と顔が蒼褪めたメグルは叫ぶ。

 

「アルカッ!! 聞こえるかッ!!」

「ゼノッ!! 氷を溶かしてくださいッ!!」

「ばぎゅあっ!!」

 

 ゼノが火炎を氷に吹きつける。しかし、氷は赤い稲光を纏っており、炎を逆に弾き返してしまう。

 ドラゴンタイプ特有の強大なエネルギー・龍気だ。龍気の帯が氷を炎から守っているのである。ドラゴンの力は炎を半減する。故に、幾ら炎を吹きかけてもセグレイブの氷は溶けない。

 

「──二人共!! 先に行ってて!! クローバーはボクが相手する!!」

 

 そんな中、アルカの声が氷の奥から聞こえてくる。

 しかしミアは気が気でない。先程二人掛かりでも歯が立たなかった相手だ。アルカ一人で勝てるわけがない。

 

「ダメですアルカさん!! このままじゃアルカさんが──」

「いや、此処はアルカに任せよう」

「ッ!? な、何で!? こんな時、いっつも助けに行くのはメグルさんじゃないですか!!」

「……あいつは俺よりもバトルが強ェ。勝機が無い戦いは挑まない」

「……で、でも……! REXの力は強すぎます、幾らアルカさんでも……!」

「行くぞ。……あいつなら、大丈夫だ」

 

 不安でないわけがない。

 しかし──信じる事の意味は、安心して背中を託すことができるという事だ。

 恐怖のあまり、これまでメグルは彼女に背中を預ける事も託す事も忘れてしまっていた。自分が彼女を守らなければいけないと思っていた。だが──真のパートナーとは、そういうものではない。

 

(大事なのは守る事、守られる事じゃねえ……ッ!! 俺が信じた──あいつの強さを今此処で信じてやる事だ!!)

 

「コチョウは間違いなく強敵だ、此処で俺達を消耗させねえためにアルカは俺達に任せたんだろ」

「ッ……」

「アルカは勝つさ。絶対に」

 

 メグルは氷の柱に背を向け、大広間を後にする。別のルートから最上階へ繋がる道を探す為に。

 不安を隠せず振り返ったミアは──胸に手を当て、叫ぶ。

 

「アルカさんっ!! 負けたら許しませんからねっ!!」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「さぁて、クローバー。久しぶりだね」

「……」

 

 アルカは、フチュウの町で墜落したクローバーを助けた時の事を思い出す。

 故に、今の変わり果てたクローバーを見て、アルカは怒りがフツフツと湧いてくるのだった。

 この悪辣な支配から、必ず友人を解き放つために彼女は覚悟を決める。此処で必ずREXを倒す、と。

 

「クローンかオリジナルとか関係ない。今君がこうして生きてるなら!! 操り人形にされて良い理由なんて無い!!」

「コォアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!」

 

 セグレイブが咆哮した。

 辺りの壁が凍りつき始めた。

 それが戦いの火蓋を切る合図となる。

 

 

 

【ワームホール公団の クローバーが勝負をしかけてきた!!】

作者の作風に期待するものは?(良ければ感想欄でも教えて下さい)

  • ラブコメ、純愛
  • 戦闘シーン
  • シリアス、曇らせ
  • ギャグ、コメディ
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