続・ポケモン廃人、知らん地方に転移した。【完結】   作:タク@DMP

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第57話:葬送

「──くすすっ、教えて差し上げましょう。……あのレモン・シトラスがどうやって死んだのかッ!!」

「哀れで可哀想……姉さんに勝てる訳が無いのに」

 

 

 

 ジェット噴射の勢いで空へ飛びあがったプテラは、ブロロローム目掛けて滑空する。

 それを真正面から受け止めたブロロロームの身体は──全身が冷気を帯びた水のオーラに包まれていた。

 オーライズ。それも、氷水の力を宿したシャワーズのオーラをブロロロームは纏ったのだ。シャインの腕にはオーバングルが嵌めこまれている。

 

「ッ……オーライズ!?」

「有難い事だ。私が最も得意とする氷の戦術。それをブロロロームに授ける事が出来るのだから」

 

 プテラの頭突きを耐えきったブロロロームはエンジンを噴かせながらクローンファクトリーを駆け抜けていく。再び飛び上がろうとするプテラだったが──その身体が一気に鉛のように重くなるのだった。

 

「これは──」

「おっと。僕の事も忘れないでおくれよ。”スピードスワップ”で、プテラとポリゴンの素早さを入れ替えた」

 

 異次元空間からイデア共々現れたポリゴンZが、プテラの上を取り、”スピードスワップ”で素早さを入れ替えたのだ。

 これにより、プテラの武器である素早さは一気に奪われることになる。ジェット噴射で飛行しようとするが、せいぜい並みの速度しか出ない。対して、プテラの素早さを手に入れたポリゴンZは一気にプテラの正面に回り込むと”トライアタック”をぶつけて撃墜するのだった。

 

「居るんだよねえ。君みたいに、素早さに頼った戦法を取るトレーナー。そーゆーヤツは、足を奪うと一気に落ち込む」

 

 サングラスを指で押し込み、イデアは笑う。

 しかしそれが面白くないサリはアーケオスを嗾けた。

 

「姉さんの邪魔をするなァァァーッ!!」

 

 アーケオスが飛翔した。そして、その身体は無数の木の葉に分裂したかと思えば、ポリゴンZの前に飛び掛かる。しかし、最高速を手に入れたポリゴンZにあっさりと躱されてしまうのだった。

 

「っと、光学迷彩か。カクレオンのそれと同じ。周りの景色に溶け込んでいる訳だね。シャイン君! そっちのプテラは任せよう」

「ああ。任されたッ!!」

 

 ブロロロームが壁を走り、プテラを猛追する。車輪が通った場所は氷柱が生えていくのだった。

 それを横目に、イデアはポリゴンZへ「アーケオスを近付けさせるなッ!!」と呼びかける。対するサリは憤りを隠せず、それがアーケオスにも伝わっているのか、地面を駆けるアーケオスはポリゴンZ目掛けて飛びかかるのだった。あっさりそれ自体はポリゴンZに避けられるのだったが、

 

「アーケオス……”じゅかいごく”ッ!!」

 

 避けられるのすら計算に入れていたのか、天井に張り付いたアーケオスはファクトリー全域を一気に草木の芽吹く大地に塗り替えていく。グラスフィールド──地面技の威力を低減し、足を付けているポケモンの体力を継続的に回復していくフィールドだ。

 更に、辺りからは草木が急成長していき、ポリゴンZを絡めとろうと巻き付いてくるが、瞬間移動を繰り返すポリゴンZを捕える事は出来ない。

 

「──森羅万象の罰を受けなさいッ!! オオワザ──”しんらばんばつ”!!」

 

 

 

【アーケオスの しんらばんばつ!!】

 

 

 

 生えてきた樹木が更に勢いを増し、ポリゴンZを取り囲む。

 更に、辺りからは草木で構成されたアーケオスの分身が現れ、次々に襲い掛かる。

 だが──

 

 

 

【ポリゴンZの メルトリアクター!!】

 

 

 

「罰ならとっくに受けたさ──ッ!!」

 

 

 

 ──樹海獄も、アーケオスの分身たちも熱の爆弾を前に全て焼き切られる事になるのだった。

 しかし、それが限界だった。流石にこの質量差では、オオワザ同士で相殺させるのが精一杯だったのである。尤もイデアにとってはそれで十分なのであるが。

 

「燃えた──私の造り出した、樹海獄が……ッ!!」

「君が牢獄を作らずとも、この身体は罰で焼かれ続けるのさ。これからも永遠にね。余計なお世話だと言っておこうッ!!」

「どうして、私の樹海獄に囚われてくれないのですッ!! ──”リーフブレード”ッ!!」

「だから……君達も報いを受けて貰おう。──”れいとうビーム”ッ!!」

 

 リーフブレードを引き抜く前にポリゴンZが正面に移動する。

 そして、死角から放つのは最高速チャージの冷凍光線。全身の羽毛が凍り付いたアーケオスは悲鳴を上げる間もなく倒れ伏す。そして、全身の羽毛が茶黒く枯死していく。草タイプと飛行タイプを併せ持つアーケオスにとって、氷タイプの技は致命傷も良い所だったのである。

 そればかりか冷凍光線はサリにも襲い掛かって一瞬で氷漬けにしてしまう。

 

「面倒な事をされると困るんでね。……どうせクローンで代わりが居るんだろう?」

 

 ピキ、ピキピキと氷漬けになったサリが音を立て──砕け散る。

 辺りには凍った肉塊だけが残るのだった。

 

「──サリッ──!? おのれ──よくも私の妹をッ!!」

 

 一方のブロロロームも失速したプテラを猛追し、サリの方へ加勢する事を許さない。

 

「っ……プテラ、”ジェットウイング”ですッ!!」

「キュォオオオオオオオオオオン!!」

 

 天井に張り付いたプテラは亜音速の勢いで加速し、ブロロロームに飛び掛かる。

 確かに減速こそしたものの、それでもジェット噴射の勢いで一時的に加速する事は出来るのだ。

 しかし──インパクトの寸前、ブロロロームの表面が水のように飛び散る。

 

 ──特性:さんたいへんか。サイゴクのシャワーズが持つ、強力な防御特性だ。

 

 自身の身体を全て水分子に置き換え、必要に応じて液体・気体・固体の姿を切り替える事が出来るというものである。

 とはいえ、それを自在に扱う事が出来るのはキャプテンの個体のみではあるが──それでも、自身の身体を液体に変えたことでブロロロームは”ジェットウイング”の衝撃を全て無力化することに成功する。

 

「……教えて貰う必要など無い。ラズとレモンの仇を討つのは私だ。その事実は揺るがない」

「ッ……猪口才な!! 誰を討つと!? 貴方に何ができるのですッ!! レモン・シトラスよりも実力が劣る貴方がッ!!」

「確かにそうかもしれないね。レモンは強い。……私一人では貴様には勝つのは難しいだろう。だから、力を借りる事にしたのさ」

 

 手首のオージュエルを撫で、シャインは改めて決意を口にする。

 

「……私一人で貴様に挑んでも無駄死にだ。彼らもそれは望まない」

「良い方法がありますよ!! 貴方もクローンになる事ですッ!!」

「ならない。私だけは……すべてを知っていても尚、彼らの隣に居なければならない。その為に貴様らは邪魔だッ!! 消えて貰うッ!!」

 

 ぶつかり合うプテラとブロロローム。

 壁を高速走行してプテラとドッグファイトを繰り返す二匹。

 だが、最初に比べて大幅に失速しているプテラに対し、”ギアチェンジ”で加速しながら猛追するブロロロームが度々ぶつかり、遂に地面へと叩き落とすのだった。

 更に辺りには泡が浮かび上がっていてプテラが立ち上がろうとすると、ぬめりを帯びたそれが邪魔をして滑らせてしまう。

 

(こ、この私が……この私がマウントを取られている!?)

 

 ユリの失策は、自分が優位に立ち続けている前提で技のビルドを行っていることだった。プテラの圧倒的な速度にかまけすぎて、自分が常に相手を圧倒し続ける事しか考えていない。弱者をいたぶり、愉悦する事しかできない。

 

「これはラズの分だ──”ホイールスピン”ッ!!」

 

 プテラの懐に潜り込んだブロロロームが車輪を高速回転させ、一気に押し込む。プテラの氷の装甲はガリガリと音を立てて削られていく──

 

(なんと喜ばしくない──でも”ホイールスピン”は使えば、素早さが大幅に下がる技──反撃を──ッ)

 

 反撃を行うべく、プテラは腕を振り下ろし、冷気を照射してブロロロームを凍らせようとする。しかし、次の瞬間にはもうブロロロームの姿は無かった。

 あまりにも速すぎる。”ホイールスピン”を使った後とは思えない。

 まさか、とユリはちらり、とアーケオスと交戦するポリゴンZの姿を見やる。先程まで速度で圧倒していたポリゴンZの動きが急激に鈍くなっている。

 

(ッ……”スピードスワップ”!! 今度は、ポリゴンとブロロロームの速度を入れ替えたッ!!)

 

 

 

「──よし、かましてやれ」

「そしてこれが、レモンの分だッ!! ──”ホイールスピン”ッ!!」

 

 

 

 二度目の”ホイールスピン”がプテラに炸裂する。

 効果バツグン。あまりにもヘビーな一撃がプテラの顔面を抉り、削る──

 

「──ま、不味い……ッ!! 私まで負けるのは喜ばしくないッ!! こんなのは──」

 

 非常に止むを得なかったが──ユリはオージュエルに手を伸ばそうとする。

 だが──既に何もかもが遅きに失していた。

 

 

 

「私は既に……オオワザを発動していたんだ」

 

 

 

 辺りに浮かんでいた泡。

 それが次々にユリ、そしてプテラに纏わりついている。

 泡が纏わりついて邪魔をしており、ユリはオージュエルに手を伸ばす事が出来ない。

 

「こ、これは──」

「此処がクローン・ファクトリーで助かった。冷房が効いている場所なら……泡は消えにくいッ!!」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「オーライズとオオワザの説明は、おおよそ理解した、ありがとうメグル」

 

 

 

 ──数時間前。

 異次元空間の拠点内で、メグルはシャインにオーライズとオオワザの事を説明していた。

 そして、キリが持って来ていたオーカード、そしてオージュエルを彼に手渡す。

 

「……なあ、メグル」

「どうした」

「少し考えていたんだ。……レモンとラズの事」

「……!」

 

 それはきっと、己の内心を整理するためだった。ぽつりぽつり、とシャインは呟くように言った。

 

「……この戦いが終わった後、あの二人に私はどう接すれば良いのか……考えてしまった。オリジナルが死んだなら、今居る彼らはクローン。ニセモノだ」

「……」

「私は──どうもしない事にした」

「どうもって──」

「公団は許されざる敵だ。私の友の仇だ。しかし──生み出されたクローンに罪は無い」

「……」

「私も考えたさ。いっそのこと、死んだままで居てほしかった、ってね」

 

 受け入れられるはずがない。彼らが死んだことなど。今生きているのが精巧なコピーだと。

 でも、それが事実なら──その事実を受け入れながら、生きていくしかないのだ。

 

「……それでも……私にはどうしても、彼らの存在を否定することなど出来ない。生きていてほしいんだ」

 

 スマホロトムに保存された写真を彼は眺めていた。三人で肩を組み、マーニャを出発した時の写真だった。

 

「自分がコピーだなんて知らされて、受け入れられる人間はいない。一生、残酷な真実を背負ったまま生きていく」

「……クローンも、生きていくから」

「ああ。死んで終わりじゃあないんだ。私も、クローンたちも生きていく。私は残された側だが……クローンもまた、残された側なんだよ。確かに彼らの生きた証であり、軌跡なんだ」

 

 あの時。広場で再会した時の二人の姿をシャインは思い出す。

 シャインは彼らがクローンだとは気づかなかったし、夢にも思わなかった。

 

「だから、彼らがクローンであることは私が墓場まで持っていく」

「……シャイン」

「それくらい私には……代え難い友人なんだ。……たとえクローンでも、幸せでいてほしいんだ……彼らが、私の知る彼らと同じ記憶と姿をしているなら……何故彼らをないがしろに出来る?」

 

 私には出来ない、とシャインは首を横に振る。

 

「それが……私にできる最後の手向けなんだ」

「……シャイン」

「メグル。私は最初、友の仇はこの手で討つべきだと考えていた。だが……気付いたよ。私が死んだら……きっとクローンでも彼らは悲しむ」

 

 彼はメグルに手を差し伸べる。

 

「……協力してくれ。オオワザとやらを……私のポケモンも扱えるようにしておきたい」

「ああ、良いぜ。あんたの友達への思い、確かに受け取ったよ」

 

 こうして、二人は残る時間でオオワザの練習をする事になったのである。ぶっつけ本番でもオーライズすればオオワザは発動できる。しかし、応用は出来ない。

 敵の強さを鑑みれば、時間が許す限り、仕上げておいて損は無かったのである。

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「オ、オーライズ、出来ない……!!」

「……弱者をいたぶる愉悦に浸る為、切札を最後の最後まで隠し持っていたのが仇になったな。使わせはしないさ。……レモンも、オーライズなんて使えずに死んだだろうからな」

「こ、この私が一方的に──!? こんなの喜ばしくない──ッ!!」

 

 大量の泡が部屋中を包み込む中、ブロロロームが全身を駆け巡る水を極限までチャージする。水は鉄さえも斬る、最も普遍的な刃だ。

 泡に包まれ動けない彼女は喚きたてた。

 

「こんな事が許されるはずがない!! 私は、私は四天王筆頭ですよ!? 私は全てを蹂躙し、全ての喜びを啜るべき、進化した人類なのです!! それを、貴方はこうして身動きの取れない私をいたぶるつもりですね!?」

「我が友の思い、泡沫にあらず。……夢幻となって消えるのはお前達の方だッ!! ”むげんほうよう”ッ!!」

 

 

 

【ブロロロームの むげんほうよう!!】

 

 

 

 部屋中の装置を、そして泡を全て斬り刻む勢いで圧縮された水ブレスが放たれた。

 あちこちで爆音が響き渡る中、プテラも、そして──ユリの身体も一刀両断される。

 

 

 

「こ、こんなの喜ばしくな──ッごぱ」

 

 

 

 ──鉄さえも裁断する水の刃。

 それが人体に向けられればどうなるかは想像に難くなかった。

 完全に沈黙したプテラ、そしてユリを見届けたシャインは──イデアに「行こう」と呼びかける。

 

「……こんな場所は……さっさと止めてしまうべきだ」

 

 イデアも無言で頷いた。

 

 

 

 ──四天王ユリ・サリ、撃破。

作者の作風に期待するものは?(良ければ感想欄でも教えて下さい)

  • ラブコメ、純愛
  • 戦闘シーン
  • シリアス、曇らせ
  • ギャグ、コメディ
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