続・ポケモン廃人、知らん地方に転移した。【完結】 作:タク@DMP
※※※
「”ほのおのキバ”ァッ!!」
ガチゴラスの大顎がルカリオを捕える。
そして思いっきり音を立てて、噛み砕いた──しかし。がきん、と音が鳴ると共にルカリオの身体は氷像のように砕け散る。
「ドバァ──ッニセモノかぁ!!」
「オーライズしたって事は、タイプが変わってやがるッスね──ッ!!」
本物は既にガチゴラスの直上に回り込んでいた。
掌には”りゅうのはどう”が既にチャージされている。異様な加速。そして、シンボラーが巻き起こし続けている風。その正体を推測した時、ブランカは口角を上げた。味方全員の素早さを急上昇させる技があるのだ。
「あのシンボラーの”おいかぜ”かッ!! ふざけやがってッ!! だけどなァ……甘ェドバァ!! アドアドアドォッ!! アドレナリィィィンッ!!」
空中のルカリオの全身に四方八方から糸が巻き付いた。
糸からは強烈な毒が流されていく。ただし、ギガオーライズした今のルカリオも毒タイプ。本来ならば毒は通用しない──はずだった。
【特性:むしばみのゆうせい】
「ッ……ルカリオ!?」
ルカリオは悶絶し、苦しそうな声を上げる。図鑑を展開すると、毒状態にならないはずのルカリオが毒を受けていた。
そうなると考えられるのは敵の特性。毒状態にならないポケモンに毒を盛る事ができる”ふしょく”ではないかとノオトは考える。
「──それじゃあもう、自由に動けねえなァ、ドババババババババァ!!」
ガチゴラスが尻尾を振り回した。ルカリオの身体はボールのように吹き飛び、ノオトにぶつかり、そのまま壁に叩きつけられるのだった。瓦礫がごろごろと二人の上に崩れ落ちる。そこからルカリオもノオトも起き上がってくる様子が無い。
「ドババババ──ギャハハハハハハハハハハハハッ!!」
高笑いを上げるブランカ。
しかし、もう既に彼はノオトに興味は無かった。目からは紫色のオーラが迸っている。
「……食いてェ」
その目は、同じくオーラギアスのオーラを纏って戦うオムスターに向けられていた。既にブランカとガチゴラスの脳は、オーラギアスのオーラに焼かれてしまっていた。
「ノオト殿……助けねばッ!!」
すかさずシンボラーはルカリオの救援に向かうべく飛び立つが、正面に立って立ち塞がるのはノーゼンのオムスターだ。
触手から放たれる糸をシンボラー目掛けて放つが、シンボラーもまた障壁を展開してそれを弾き返すのだった。
(虫タイプになっているという事は、此方の攻撃が通りやすくなっているという事──しかし、あの糸、厄介すぎるッ!!)
加えて、ガチゴラスは背部、オムスターは殻から巨大な八本の脚が生えており、その様はオーラを纏うというよりもオーラに乗っ取られているように見えた。
最早、二匹とも目は虚ろで元のポケモンの意識のようなものは感じられない。そして何より、攻撃を加えてもゾンビのように全く痛覚を感じている様子も無い。
キリが目を凝らすと、二匹のREXが巨大な蜘蛛の怪物に乗っ取られているように見えた。さながらアリアドスに咥えられたコラッタのようだ。
「ッ……最早操り人形、オーラの傀儡か!!」
「ぁー……ああああああああああああああッ!!」
ノーゼンが不気味に叫び、オムスターの身体から糸が伸びる。そして、それを巻き戻して自らの身体を無理矢理引っ張ってシンボラーに迫りくる──
「シンボラー……ッ!!」
(敵の質量が大きい!! 風では吹き飛ばない──ならばッ!!)
「──サイコキネシスッ!!」
シンボラーの目が光り輝いた。オムスターの巨体は停止し、そして地面に激しく打ち付けられ、ゴロゴロと転がる。その先には──ガチゴラス。そして、足元には不気味に目を紫色に光らせたブランカの姿があった。
ガチゴラスも、ブランカも口からヨダレが垂れてしまっている。
「……おいノォォォゼェェェン……」
「ぁー……?」
「お前の……オムスター……
倒れ伏せたオムスター目掛け、ガチゴラスは口に炎を纏わせ──貪りつくようにして齧りついた。
次の瞬間、ノーゼンの目が血走った。
「あ”ァあああああああああああああああああああああああああ!?」
REXと四天王の意識は強固なほどにリンクしている。調整を施されたノーゼンも同じだ。殻を食い破られ、中身を啜られるオムスターの激痛、そして苦痛がノーゼンにも襲い掛かったのである。
単なる「捕食行為」ではない。その肉に齧りつくと共に、ガチゴラスはオムスターの持つオーラを、そして生命エネルギーを吸い尽くしている。そうさせているのは──間違いなく、ガチゴラスに宿る毒蜘蛛のオーラだった。
(ひ、ひひゃはははは!! 食う、食らいつくすゥ!! コイツのオーラを,ガチゴラスに食わせるゥ!!)
ぐちゃ、ぐちゃぐちゃと肉塊が潰れる音が聞こえてくる。
だが、それは当然、オムスターの生命を奪い尽くす行為であり、同時にノーゼンにも激しく負荷をかける行為だった。間もなく、オムスターは死に至る。そして、意識をリンクさせているノーゼンもまた、オムスターの受けたショックをリンクした事で、全身が痙攣。
間もなく白目を剥いてその場に倒れ落ちたのだった。
「役立たずは……もういらねえ……ッ!! 後は、テメェだけだァ……ドバババババァ!!」
「こいつ、味方を……!!」
「ドバババババ──ドバババババババァ!!」
ガチゴラスの身体がめきめきと音を立てていく。
全身を迸るオーラに支配されていくように。ガチゴラスを覆っていたオーラは間もなく、その肉体を崩壊させ──作り変えていく。
顎が崩れ落ちた。後ろ脚が崩れ落ちた。肉体がブロックのように崩れていき、再構築されていくのだ。
元より、このオーライズはREX達に主導権など無かった。主導権を最初から握っていたのは──オーラギアスの方だった。
「こ、これはギガオーライズ……!? いや、しかし……!!」
巨大な八本の脚。
そして重く大きな巨大な腹。鉱石のようなものが突き出した顔。
あまりにも強大過ぎるオーラは、纏った側のポケモンを完全に乗っ取り、その肉体を呼び水とすることで召喚したのである。
これこそがコチョウの狙っていた奥の手。オーラギアスをオーライズさせたREXは本能的に同じ力を持つオーライズしたREXと共食いするようになる。その理由は──纏わせたオーラが自らの完全顕現を狙う為だ。
もしREXだけでは勝てない相手が現れた時、
ギガオーライズは、近似した強大なポケモンを神下ろしのように再現させる現象だ。
一方、これは──本能を持ったオーラが自身と同じ力を吸い尽くしたことで顕現した災禍。奇生元が何のポケモンであろうが関係ない。その肉体を元にして顕現できればそれで良い。むしろ、強力なポケモンで無ければ自己崩壊を起こして、顕現できる時間が減ってしまう。
コチョウは、こうなる結果を見越して四天王を二人出向かわせたのだ。二匹のREXが同時にオーライズした場合、オーラギアスが
そして食われたのはガチゴラスだけではない。ガチゴラスと精神同調をしていたブランカも同じだ。彼はもう、オーラギアスに食われた哀れな被食者でしかない。その意識はオーラギアスに隷従するだけだ。
祝福は今、呪いに転じる。
──
「ヲヲヲ……ヲヲヲヲヲヲラギガァァァァァァス!!」
【オーラギアス<オーラ再現体> ゆうせいポケモン タイプ:[毒/虫]】
圧倒的なオーラを前にシンボラーも立ち竦んでしまっていた。
巨大な毒蜘蛛のポケモン。全身がオーラで塗り固められており、その姿は朧げだ。しかし本能が告げている。「戦ってはいけない」と。外宇宙からやってきた脅威を嫌でも感じさせる。
「これがオーラギアス……ッ!? バカな、どうやって……!!」
キリは、それを直接目の当たりにするのは初めてだった。しかし、オーラと肉塊だけで構築された再現体にも関わらず、その巨体からは威圧感しか感じない。
そして表情無き顔からは「捕食」という生存本能しか感じられない。今もシンボラーという獲物を前に舌なめずりするように大顎がカチカチと鳴っている。
「シンボラー、気を付けろッ!! これまでの敵とは訳が違うッ!!」
「キュォォォォッ!!」
巨大な糸を壁に向かって吐き出したオーラギアスはそのままそれを巻き取る勢いで自らの身体を引きずっていく。
その勢いで地面は抉れていくあたり、質量のとんでもなさを嫌でも思い知らされる。
「ドババババババァ!! 喰わせろォ、テメェも喰わせろォォォーッ!!」
「オーガギガガガガガガ!!」
念動力の波をぶつけるが、オーラギアスは勢いが留まる事を知らない。そして、”ふうとん・つむじ”を受けてもまるでそよ風でも受けているかのような仕草で受け流してしまう。
聞きしに勝る超耐久力。ギガオーライズしているとはいえ、シンボラー1匹では勝ち目がない、とキリは考える。
(しかし、此処で拙者がどうにかしなければ、ノオト殿が……!)
瓦礫の下からノオトが這い出してくる様子はない。
今戦えるのはキリしか居ないのである。そうこうしている間に、オーラギアスの身体からは大量の糸が放たれ、シンボラーの身体を貫くのだった。
更に、足元には既に幾何学模様の糸が展開されてしまっている。
(しまった──ノオト殿に気を取られて……!!)
【オーラギアスの どくどく!!】
防護スーツすら貫通して糸はキリの身体に侵入し、彼女を毒で侵す。
皮膚から直接それは流し込まれ、血液の中に混じる。
有機生命体が受ければ、直ちに意識の混濁が始まり、呼吸が困難になってくる猛毒だ。そして糸が張り付いた床は腐食し、溶けてしまっていた。
「がっ、ご──頭が上手く、働かない……!!」
「オーガギガガガガガガガ!!」
そうして弱ったシンボラーとキリを捕食するべく、オーラギアスは巨大な前脚を振り上げようとする。身を挺して主人を庇うシンボラーは障壁を展開してそれを防ぐが、圧倒的な質量差を前に押し負けてしまうのだった。
幾らギガオーライズしていると言えど、ヨイノマガンとシンボラーではあまりにも力に差があり過ぎる。
「シ、シンボラー……ッ!! オオワザだッ!! ”たそがれのざんこう”──ッ!!」
「ヲオオオオオオオオオオオオオォ!!」
咆哮したオーラギアスの口からズドォン!! と音を立て、オーラが放出される。
それはシンボラーの纏っていたオーラの鎧をすぐさま分解し、元の姿へと戻してしまうのだった。
──ギガオーラジャミング。ギガオーライズすらも強制解除するオーラギアスの波動。
シンボラーはそのまま地面に捻じ伏せられてしまう。ギガオーライズ無しでは、最早戦いにならない。体格差は余計に不利になり、オーラギアスに噛みつかれてしまう。
「ッ……シンボラー!! ま、マズい!! ソルロック!! ルナトーンッ!! シンボラーを助けろッ!!」
「ドババババァ!! 雑魚が何匹集まろうがァ!! 全員喰らってやるドバァ!!」
飛んでくるソルロックとルナトーンも、オーラギアスが大量に展開した糸に絡め取られ、猛毒によって腐食させられてしまう。
念動力の集中砲火をしても尚、全く弱る様子が無い。何故ならば、自己再生を繰り返しており、体力が減っていないからである。
一方で、キリとポケモン達は一方的に体力が毒で減らされている──頭が毒の影響で霞む中、キリは這う這うの体で”パワージェム”の集中砲火を指示するが──オーラギアスは倒れる事を知らず、3匹を蹴散らしてしまう。
(身体が……自由に動かない……!? 頭が働かない!! あらゆる薬や毒に耐性を持つ、この身体が……!?)
無理もない話であった。オーラギアスの毒は外宇宙の未知なる毒。忍者でさえも耐性を持たない。それを血管内に直接注入されたキリはもう動く事もままならなくなっていた。
ポケモン達をボールに戻そうとするが、右手が動かない。そうしてる間に──大蜘蛛が目の前に迫っている事に気付く。動かなくなったポケモン達から興味を失い、次の狙いをキリに定めたのだ。
「しまッ……!!」
「ヲヲヲヲヲヲヲヲヲヲッ!!」
辛うじて身体を捻って胸への直撃は躱したつもりだった。
しかし、噴水のように、赤い飛沫が撒き散らされる。
キリの
作者の作風に期待するものは?(良ければ感想欄でも教えて下さい)
-
ラブコメ、純愛
-
戦闘シーン
-
シリアス、曇らせ
-
ギャグ、コメディ