続・ポケモン廃人、知らん地方に転移した。【完結】   作:タク@DMP

65 / 108
第60話:砕龍激動

 ※※※

 

 

 

「──クローバー……ッ! お願い、返事をして!! ボクの声が聞こえない!?」

「……」

 

 

 

 氷に阻まれ、進めはしない。

 声は届かない。

 決して──救えはしない。

 現れたセグレイブが吼える度に、辺りに氷の壁が現れていく。

 

「さっきから五月蠅いデスね……」

「クローバー!? ボクの声が──」

 

 対するラプラスは、その氷を頭部で破砕しながら突き進む。

 硬いキバで氷を噛み砕き、セグレイブに迫る──

 

「……私は……コチョウ様の、理想の礎、デス」

 

 

 

【セグレイブの りゅうのはどう!!】

 

 

 

 部屋中に赤黒い稲光を帯びた龍気が撒き散らされ、ラプラスに直撃した。

 

 

「ラプラスッ!!」

「……貴女が誰かは知りマセンが……此処で、消えてもらいマス」

「……クローバー……覚えてないの、ボクの事……!!」

 

 それもそうか、とアルカは自らに言い聞かせる。本物のクローバーは死んでおり──意識はコチョウによって閉じ込められている。

 

(それでも、諦められない……目の前のクローバーが……生前の記憶を持っているなら……!! ボクは、クローバーを解放してあげたい!!)

 

 冷気を撒き散らし、這いずり回るセグレイブから逃げ惑いながらも、アルカは攻め時を常に伺う。

 慎重に。しかし大胆に。そして──強敵は先ず弱体化させる。それが、バトルの鉄則だ。アルカはラプラスに”りゅうのはどう”を受け止めさせながら──セグレイブの弱体化を図る。

 

「──ラプラスッ!! ”すてゼリフ”ッ!!」

「プレシイイイイイイイイイイイイイイルッ!!」

「ッ!?」

 

 辺りにノイズが響き渡る。

 同時に、ラプラスはアルカのボールへ戻っていき、交代して現れたのはモトトカゲ。セグレイブには不利極まりない相手だが──”すてゼリフ”で攻撃性が弱体化したセグレイブは反応が遅れた。

 急接近したモトトカゲの”りゅうのはどう”による反撃を許してしまったのである。

 

「ッ……!! セグレイブ!!」

「そのまま──”しっぽきり”!!」

 

 攻撃しようとしたセグレイブだったが、モトトカゲは身代わり人形を作りだして超高速でアルカの握るボールへと戻っていく。

 

「ゴーッ!! セゴールッ!!」

 

 そして姿を現したのは──セゴールだ。

 

「……”すてゼリフ”で弱体化、”しっぽきり”で身代わりを用意──」

「そしてッ”りゅうのまい”──ッ!!」

「……一対一では勝ち目が薄いと踏んで、コンボを使ってきマシタか」

 

 身代わり人形を盾に、”りゅうのまい”を舞うセゴール。

 セグレイブが”れいとうビーム”を撃ち、身代わり人形を凍結させるが、その後ろからセゴールが飛び出した。

 

「ッ……!!」

「今ので、セゴールの攻撃と素早さもアップ!! セゴール、オーライズ!!」

 

 オーカードをジュエルに翳したアルカ。

 セゴールの身体には無数の黒い剣が突き刺さり、尾には日本刀のような装甲が纏われていく。

 

 

 

「オーライズ……”アブソル”ッ!!」

 

 

 

【セゴール<AR:アブソル> タイプ:[ゴースト/格闘]】

 

 

 

 その姿は、まるで鎧武者の如し。

 アブソルのオーラを見に纏ったセゴールは吼え、勇ましくセグレイブに立ち向かう。

 天井から降り注ぐ氷柱は尻尾で切り裂き、そして放たれる冷気さえも断ち、接近する。

 そして、迫ったセゴールは何度も自らの爪でセグレイブを殴りつけるが──全くと言って良いほど効いていない。

 

「ッ……やっぱり硬い──!!」

「セグレイブを覆う氷の鎧……そう簡単に砕けると思ったら、大間違いなのデスよ」

「なら、切り裂くまでだよッ!! オオワザ──”あかつきのごけん”ッ!!」

 

 セゴールの背部から5つの剣が並び立つ。

 そして剣は重なり合い、巨大な刀となってセグレイブを貫こうとするが──地面から突き出した氷の墓標がそれを全て受け止める。

 

 

 

「……此処が貴方達の墓標デス。……オオワザ”ひょうろう・グレイブヤード”」

 

【セグレイブの ひょうろう・グレイブヤード!!】

 

 

 

 更に部屋中には大量の氷の墓標が生え揃い、アルカ達の行動圏は大きく制限されてしまうのだった。

 ひょうろう・グレイブヤード──そのオオワザの本質は、龍気を帯びた氷の墓標で相手を閉じ込め、低温で死に至らしめるというもの。

 即ち、並大抵の技では突破不能の氷の牢獄が完成してしまったのである。

 

「……この氷の牢獄から、貴女達は抜け出す事は出来ない」

「ッ……ま、まずい!!」

 

 セゴールが幾ら叩いても、氷を砕くことはできない。メグル達と分断された時と同じ、龍気の氷が辺りを取り囲んでしまっているのである。

 そうこうしている間にアルカの身体の表面にも氷が纏わりつき始め、体温を奪われた事で彼女は膝を突いてしまうのだった。

 

「……まさに、籠の中のマメパトも同然」

「ま、て……!!」

 

 クローバーは踵を返し、その場を後にしようとする。

 此処でクローバーを逃せば、彼女はメグルとミアを追いに行くはずだ。

 そうなれば、メグル達は確実にREXとコチョウの二体がかりを相手にする事になる。

 だが、体温は既に低下しきっており、身体もまともに動かない。

 セゴールが何度も爪を氷に叩きつけるが、氷で出来た牢獄を壊す事はままならない。

 

(……身体が、動かない……ボク達、このまま凍死──)

 

 体温は徐々に奪われていく。

 セゴールも冷気が苦手なため、徐々に体力が減っていく。 

 とうとう、オーライズを保つ体力も無くなってしまったのか、オーライズが解除されてしまうのだった。

 

「ダ、ダメだセゴール……!」

 

 このままでは、トレーナーもポケモンも凍死するのは時間の問題だった。

 

(ダ、ダメだ。弱気になったら……考えなきゃ……此処から出る方法を)

 

「セゴール、戻って……! 君はボールの中で──待機だ」

 

 アルカは力を振り絞り、ボールのリターンビームをセゴールに照射しようとする。

 しかし、セゴールはそれを察するとひらり、と躱してしまうのだった。ボールの中に戻る事を拒絶するように。

 

「!? セゴール!! 駄目だよ!! この氷の中じゃ、君は衰弱する一方だ!! 君に、この氷は壊せない……!!」

「グルルルゴォォォル!!」

 

 怒号のような鳴き声が聞こえてきた。俺が壊せないなら、他の奴でも壊せないだろ、と言っているようだった。

 そして──それは事実だった。

 

「でも、このままじゃあ、君が……」

「グルルルルルル!!」

 

 諦めない、と言わんばかりにセゴールは何度も”ドラゴンクロー”を氷にぶつけ続ける。

 しかし、突破方法は──思い浮かばない。

 

(……こ、こんな時……メグルなら……!!)

 

 徐々に薄れていく意識の中、アルカは想い人の顔を浮かべ歯を食いしばるのだった。

 

 

 

「アルカッ!!」

 

 

 

 その時である。

 彼女は思わず振り返った。

 そこには──後ろから駆け寄ってくるメグルの姿があった。

 

「メ、メグル……!? 助けに、来たの……?」

「心配になっちまってな。もう大丈夫だ、俺が居る、一緒に此処を抜け出そう!!」

 

 メグルが、アルカに手を差し伸ばした。

 助けに来てくれたのだ。メグルが。そう思った時──アルカは思い出す。

 クローバーと対峙する前に、メグルが何て言っていたのかを。彼の言葉を思い出した時、アルカの取る行動は一つだった。

 

 

 

「セゴール──メグルに”ドラゴンクロー”ッ!!」

「……グルルルゴォオオオオオオオル!!」

 

 

 

 思いっきり跳び、竜気を帯びた爪でセゴールはメグルを切り裂く。

 訳が分からないという顔でメグルはアルカの顔を見下ろした。胴は切り裂かれ、彼はその場に倒れ伏せる。

 

「アル……カ……!?」

「──メグルが……来るわけないじゃん。助けに来るわけがないッ!! 此処に来るわけがないんだッ!!」

 

 吐き捨てるようにアルカは叫んだ。そしてガツン、と思いっきり彼女は凍った地面に自らの頭をぶつける。

 額からはたらたらと赤い血が流れ出て、すぐに凍ってしまうのだった。

 

「メグルは確かに心配性さ。ボクも何回も迷惑かけたし、仕方ないけど」

「ア、アルカ、なんで、おれを──助けに、きて、やったのに」

「でも──そのメグルが、ボクに”任せる”って言ったんだ。尋常じゃない覚悟に決まってるし、覚悟を曲げてボクを助けにやってくるわけがない」

 

 彼女は蹲るメグルに──吐き捨てる。それに、冷静に考えてみれば、メグルの手持ちにはこの氷の牢獄を壊せるポケモンは居ない。

 にも拘らず、メグルの傍には何のポケモンも居ない。一人で彼が此処に来られるはずがないのだ。

 

 

 

「メグルは信じてくれてるんだ……ボクが強いのを知ってるのは……外でもないメグルだ!! ボクが好きになった人は……一回決めた事を曲げるような半端者じゃないんだよッ!!」

 

 

 

 ぐにゃり、とメグルの偽物の姿が歪んだ。後に残るのは、黒い化け狐のポケモン・ゾロアーク。ゾロアークの目は翠色に光っており、クローンである事を示していた。かつてのクローバーの手持ちの生き写しだ。

 

「コキュキュキュキューンッ!!」

「やっぱりゾロアークの幻影……ッ!! ボク達を確実に仕留めに来たのか!!」

 

 臨戦態勢を取ったゾロアークは、セゴールに襲い掛かる。しかし、アルカを守るように腕を広げたセグレイブは──彼女の方を振り返ると頷くのだった。

 

「セゴール……!? やるんだね……良いよ。メグルを真似た事、後悔させてやろう!!」

「グルルルゴォォォル!!」

 

 ゾロアークの強烈な悪意の波動を右拳に収束させた”ナイトバースト”が至近距離でセゴールにぶつけられる。しかし、それをセゴールは体全部で受け止め──耐え切るのだった。

 その姿は──まさに騎士。主を守る騎士の如き立ち振る舞いだ。もう、泣いてばかりだった赤ん坊の姿はそこにはない。主を守る騎士竜の姿がそこにあった。

 

「コキュッ!?」

「グルルルルル……コォオオオオオオオオオオアアアアアアアアアアン!!」

 

 金属を打ち鳴らしたかのように反響した咆哮が響き渡る。

 セゴールの身体が一気に膨張し、そして外装が全て砕け散る。

 凄まじい光と共に、尾は更に太く大きく、腕も足もより大きくなり──そして、背には巨大な剣の如き鰭が生えるのだった。

 最後に、騎士の甲冑の如く頭部には岩の装甲が纏わりついていく。

 アルカはその姿を見て、確信する。最後の──進化だ。

 

 

 

「コォアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンッ!!」

 

【セグレイブ<マーニャのすがた> さいりゅうポケモン タイプ:ドラゴン/岩】

 

 

 

 泣いてばかりで、何も出来なかった幼竜の面影は、もうそこには無かった。

 巨大な背びれは剣。頭部の装甲は甲冑。主を何が何でも守り通す、岩鎧の騎士がそこには立っていた。

 流石のゾロアークも、戦力差というものを一目見ただけで思い知らされる。全身を迸る竜気。生き物としての格が違う。

 だが、それでも排除せねばならない。再び”ナイトバースト”を見舞うため、突っ込んでいくが──あまりにも無謀だ。

 

 

 

「──”きょけんとつげき”ッ!!」

 

 

 

 アルカの声と共に、セグレイブは竜気を帯びたブレスを吐き出し、その推進力のまま背びれをゾロアークに向けて突撃する。

 防御全てを投げ打った必殺の一撃。背びれの剣は幻影の覇者どころか、氷の牢獄すらも砕くのだった。

 

「……すごい」

 

 ゾロアークが倒れ、氷の牢獄は──抜け穴が開かれる。

 進化前とは比べ物にならない程の膂力。そして、全ポケモンの中でもトップクラスの攻撃力を持つ存在。

 メグルはかつて言っていた。大器晩成の極みとも言えるポケモン達の事を──600族と。

 その名に恥じぬ力を今、セグレイブは見せつけたのである。

 

「コォオオオオオオオアン」

「……セグレイブ。行こう。クローバーを……助けるんだッ!!」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「──コチョウ様を援護に向かわなければ」

「コォオオオオアン」

 

 

 

 クローバーは通路を通り、コチョウの居る部屋に向かっていた。

 此処に来るまでにメグルとミアの姿は無かった。恐らく、もう最上階に辿り着いているのだろう、と考える。

 しかし──どちらにせよ、彼らの運命は決まっている。自分とコチョウの二人掛かりでは、彼らが勝つ未来など無い。

 そう考えた時、彼女は頭痛を覚え、突然蹲るのだった。

 

「ッ……」

 

 脳裏に浮かぶのは、あのアルカの顔だった。何処かで会った気がする。鮮明に焼き付いて離れない。しかし、思い出せない。

 

「あの少女と、私は何処かで……!!」

「コォオオン」

 

 当然、自らとリンクしているセグレイブREXも苦しむ。

 クローバーの中では、封じ込められたかつての記憶が目覚めようとしていた。

 

「いけない、私は……私はクローン、デス。コチョウ様の──理想の礎……」

 

 

 

 

「クローバーッ!!」

 

 

 

 声が響き、彼女は顔を上げた。

 自分を追って来たのか──そこには、アルカと進化したであろうセグレイブが立っていた。

 

「ッ……抜け出してきたのデスか、オオワザを……!!」

「第二ラウンドだ。今度こそ、ボク達が勝つ!! 勝って──君をコチョウから解放してみせる!!」

「……うざったいデスね。大人しく氷の牢獄で死んでいればよかったものを」

 

 忌々しそうに言ったクローバーはセグレイブREXを嗾ける。

 対するアルカのセグレイブも主を守る為に飛び出すのだった。

 ”りゅうのまい”を舞い踊り、速度と勢いを付けた上で、両腕から生えた岩の刃でREXを狙う。

 

 

 

「外さないッ!! ”パワフルエッジ”ッ!!」

「!?」

 

 

 

 それは騎士の剣。正確無比にREXの頭部を狙い、斬りつける。技が不発し、冷気が暴発したREXは横転してしまうのだった。

 

「は、速い、そして強い──ッ!? REXが押されている!?」

 

 氷の装甲は砕け散り、ばらばらと破片が転がっていた。クローバーは驚愕する。進化を遂げた事で、セグレイブはREXに肉薄する程の強さを手に入れていた。

 

「こんな事は有り得ない。また氷漬けにしてやるデスよ──ッ! オオワザ、”ひょうろう・グレイブヤード”ッ!!」

「コォオオオオオオオオオオオオオン!!」

 

 部屋中が冷気に覆われる。

 そして、REXを守るようにして龍気を帯びた氷が出現した。

 辺りには墓標の如く氷が競り出してくるが──

 

「セグレイブッ!! 本体を狙って、”きょけんとつげき”ッ!!」

 

 ──アルカはオオワザの弱点を見切っていた。この手の、周囲の環境を書き換えるオオワザは、途中で本体が攻撃されると集中が途切れて失敗してしまうのだ。

 その為に、本体を守るようにして真っ先にセグレイブREXは龍気を帯びた氷を自らの周囲に出現させたのである。

 だが、それを貫くようにしてアルカのセグレイブは”きょけんとつげき”を見舞う──龍気を帯びた氷は砕け散り、そして中に居たセグレイブも、同時に貫かれるのだった。

 

「こ、氷が破られたッ!?」

 

 オオワザは失敗。周囲の氷は全て消え失せ、更にREXは暴発した龍気が抑えきれず、ダウンを取られてしまう。

 そこに、アルカのセグレイブは──トドメと言わんばかりに岩の刃を振り上げるのだった。

 

 

 

「これでトドメだ!! ”パワフルエッジ”!!」

 

【セグレイブの パワフルエッジ!!】

 

 

 

 無防備なREXの脳天に、力いっぱい振り絞った刃が叩きつけられる。

 その一撃で──REXは完全に沈黙するのだった。辺りが、静寂によって支配される。勝負は今、決した──

 

 

 

「──まだデスよ」

 

 

 

 ──クローバーの右腕にはオージュエルが嵌めこまれている。そして、左手には──オーカード。

 

 

 

 

 そこに刻まれているのは、水玉に乗った小さなトカゲ。

 

「ッ!? そのオーカードは──」

「……かつて、サイゴクに駐留していたマーニャの研究員が採取したオーラ……!! 試作品の1つだけデスが、完成してたのデスよ!!」

 

 オージュエルにカードが翳され、粒子となって拡散する。そして──倒れ伏せるREXに装甲のようにして纏われるのだった。

 

 

 

 

「……オーライズ、マイミュ」

 

 

 

 

 冰龍は今、時空を断つ水龍の力を武装し、再び目覚める。

作者の作風に期待するものは?(良ければ感想欄でも教えて下さい)

  • ラブコメ、純愛
  • 戦闘シーン
  • シリアス、曇らせ
  • ギャグ、コメディ
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。