続・ポケモン廃人、知らん地方に転移した。【完結】   作:タク@DMP

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第67話:あとしまつ

 ※※※

 

 

 

「──終わった、んですね」

「ああ」

 

 

 

 国際警察の車両が押し入っていくのを目にしながら、メグル達はワームホール公団のビルを眺めていた。

 あまりにも──失ったものが多い。

 公団はきっと解体されるだろう。ワームホール公団がクローン研究をしていた、という事実だけで十二分だ。

 だが、その裏で行われた殺戮行為は──社会的な混乱も含めれば「無かった」事にされるしかない、とメグルは聞かされた。

 今更自分がクローンである、と聞かされて納得できる人間がどれほどいるだろうか? と言う話だ。

 街はもう、すっかり元通りになっていた。コチョウが消滅したことで、クローンが操られる事ももう無い。

 

「報われねーよな……この戦いに意味はあったのかって言われると、きっとあったんだろうけど」

「うん。きっとこの先、公団がクローンを作る事はもう無いからね。その裏で犠牲になる人も──もう現れない。だけど──救われないよね。犠牲になった人たちは」

「死者は救う事は、私達には出来ません。強いて言うなら、同じ事を繰り返させない。それが──せめてもの弔いになるでしょう。後は、私達が忘れない事だと思います」

「……だな」

 

 きっと、これから先もマーニャは変わらずに動いていく。皆、何も知らないままだ。

 だが、それでも忘れてはならないのだ、とメグルは考える。このマーニャで起きた悲劇は、きっとこの事件に関わった自分達だけが覚えている。

 

「私も、彼らの秘密は墓場まで持っていく」

 

 シャインが言った。

 

「良いのか? ……いや、それで良いんだろうな」

「無かったことには出来ない。だが、悲しみを背負うのは私一人だけで良い」

 

 彼は手を振り、一足先にその場を後にした。きっと、友人たちに──会いに行くために。

 

「生まれた者に……今を生きている者達に、罪は無い」

「……そうだな」

「また会おう。私の力が欲しければ──いつでも力を貸す」

 

 何処か寂しそうなシャインの背中を見送った。

 そして──

 

 

 

「キリさんの事は厳重に警備を頼むッス!! 仮にもサイゴクの要人ッスから!!」

「ハッ──!!」

 

 

 

 ──キリは、すぐさま病院に運ばれる事になった。

 切断された右腕は手術でくっつけるらしいが──出血が多く、予断が許されない状態だと言う。

 

「悪いッス、メグルさん!! オレっち、しばらくキリさんの傍に居るんで!! ってか、手術中にキリさんが変な事されたら、全員ぶちのめさないといけねーんで!!」

「あ、ああ……そうか」

 

 ノオトも付きっ切りになるらしく、しばらくは戻って来られそうにない。

 

「さーてと、センセイを侮辱したツケは……払って貰う事は出来たかな」

 

 国際警察に連行されていくイデアが、そう言った。

 本当に抵抗する意思はさらさらなく、大人しくサイゴク地方の監獄に戻るつもりらしい。

 

「……でも、君達のその目……まだ、何にも終わってないって顔だね」

「ああ。終わってねえ」

「大変だなあ。君達の活躍を見られないのが残念だよ、ぼかぁ」

「他人事みてーに……本当なら、最後まで手伝ってもらうつもりだったんだぜ、俺達」

「せめてこれから何が起こるのか教えてくれないかな?」

「オメーには絶対教えねえ」

「ケチ」

 

 伝説のポケモンって聞いた瞬間に目の色を変えそうなので、メグルはこの場では教えなかった。

 しかし、最後にイデアに──こう言ったのだった。

 

「でも、たまには会いに行ってやるよ」

「……はは。優しいね」

「優しくなんかねーよ。煽りに行ってやるって言ってんだ」

「……良い性格してるな。誰に似たんだろうね」

「テメェの胸に聞いてみやがれ」

 

 イデアは──警察車両に乗せられていった。間もなく、サイゴクに送還されるだろう。

 敵ではあったが、今回は確かに彼に助けられる形になってしまった。

 複雑めいた気持ちを抱きながらメグルは呟いた。

 

 

 

「……じゃあな、イデア博士」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 その後、メグル達も国際警察の手で取り調べを受けた。

 だが、結局の所、無罪放免で釈放される事になったのである。

 ある種の司法取引というものが働いたのは言うまでもない。施設への不法侵入という視点で見ればメグル達に非が無いわけではなかったからである。

 しかし、今回の事件はそれくらい、公にすると不味い情報が多かった点、更にいち地方のトップが関わっている点、ワームホール公団のやっていたことがやっていた事だけに温情が働いたのだ。

 とはいえ、メグル達に休んでいる暇は無かった。

 メグルは一度、サイゴク地方のキャプテン達に連絡を取る事にした。

 ……もうじき、残り一週間に迫った、星の脅威への対策を練る為に。

 リモートではあるが──大合議の始まりだ。と言っても、ノオトとキリが居ないので、キャプテンは三人しかいないのであるが。

 画面に映ったのは三人。ハズシ、ユイ、そしてヒメノだ。

 

「あらぁー♡ メグルちゃん、お久~♡ 聞いたわよ、色々あったんでしょう、心配したのよ。マーニャ、大変な事になってたんでしょう?」

 

【”ベニシティ・キャプテン”ハズシ】

 

「ま、まぁな……それにしても悪かったな、ハズシさん。忙しいのにわざわざ呼び出す形になっちまってよ」

「良いのよぅ。たまにはこっちに顔を出さないといけなかったしねえ。それより、キリちゃんの容体は──」

「あー、大丈夫。腕は無事にくっついたみたいだぜ。なんつーか……パワフルだよな」

「良かったわぁ!! オネエさん心配したのよ、夜しか眠れなかった!!」

「眠れてんじゃねーか」

 

 キャプテン達が知るのは、対外的なニュース──ワームホール公団がクローン研究をしていたこと。

 そして、メグル達から受けた断片的な報告だけだ。伝説のポケモンの調査の最中、彼らの怪しい挙動に気付いたので、成り行きで戦う事になり、その過程で彼らの黒い野望を暴いた──ということだけである。

 

「あ、ついでにイデア博士は向こうで捕まったから。すぐ送還されるっぽい」

「良かったわ……ったく、とっちめてやらないとなんだから」

「あんまりいじめてやるなよ、博士からしても不本意だったらしいからさ」

「? メグル君が博士を庇うなんて珍しいわね」

「……今回は世話になっちまったからな、色々」

「ふぅん、ワケアリみたいなのですよ」

 

 従ってノオトとキリ以外のキャプテンは、マーニャで起きた悲劇を知らない。恐らくそれを知らせても、ショッキングな思いをするだけだ。

 それよりも、今重要なのは──目先の危機である。

 

「それで? キャプテン全員の力を借りたいくらい、ヤバい事って何なのかしら」

 

【”シャクドウシティ・キャプテン”ユイ】

 

 相も変わらずぶかぶかのパーカーを着ているキャプテン・ユイが問うた。

 

「久々に顔を見せたと思ったら、面倒事押し付けてくるなんて、ほんっと良い根性してるわね、メグル君」

「はははは……まあ、地球規模の面倒事なんだけどな。オフレコにしてーから、わざわざ直接会うのを選んだんだけどよ」

「面倒事? そんなもの、以前のマイミュの件に比べれば、大体大した事は無いと思うのですよー」

 

【”イッコンタウン・キャプテン”ヒメノ】

 

 巫女装束姿のヒメノが胸を張って言う。

 テング団の件、マイミュの件で大抵の事には慣れっこだった。

 

 

 

 ……慣れっこだった、はずなのだ。

 

 

 

「──世界の危機ィ!?」

 

 

 

 三人が口をそろえて叫ぶ。

 特にユイは顔を引きつらせていた。

 

「待ちなさい! ついこの間、マイミュの事件があったばかりじゃない! 一体どうして……」

「俺が言いたいわ、そんな事。ハズシさんにお願いしたいのは──キャプテンのツテで調べてほしい事があるんだけど」

「何かしら」

「ベニ大学って確か宇宙研究センターがあったよな。この星に接近してる小天体があったら、そいつを仔細に調べてほしいんだ」

「しょ、小天体……待ちなさい。ワタシたち、まだ事態を飲みこめてないのだけど」

「もしかしたら、その小天体が……ポケモンかもしれねーんだ。世界を脅かすバケモノだ」

「何でそんな事が分かるのよ……!?」

「公団のトップが言ってた……ってだけじゃダメかな」

「公団のトップって──クローン研究してたイカれた悪い奴でしょ!? 妄言だったらどうするのよ!」

「妄言だったなら、それで良いじゃねーか。大変なのは、妄言じゃなかった時、だろ」

 

 メグルは頭を下げる。

 

「頼む! 三人には悪いんだけど……何かあった時の為に、また協力してほしい……!」

「やれやれ水臭いわよ、メグルちゃん。サイゴクの英雄に頼まれたら、断れるわけないでしょ?」

 

 バチン、とハズシがウインクして答える。

 

「ったく……またとんでもない事になってきたじゃない……あたしに出来る事がどれだけあるか分からないけど……ヌシ様の力が、最悪また必要になるわよね」

「お安い御用、なのですよー♪」

「……ありがとう」

「それより、アルカ様はどうされてるのです?」

「ああ、あいつなら──」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「ハイビ先生、調べて貰えましたか!?」

「……ああ、あるにはあったよ、ヴォルカニドとブリザベオについての古い資料。マジでなかなか見つからなくってね……大変だった」

 

 

 

 ──その間、アルカはずっと彼女が師事するハイビ先生に連絡を取っていた。

 最初、ニュースでワームホール公団の起こした事件を知ったハイビはショッキングそうな顔をしていたが──次いで、アルカがその摘発に関わった事を知って二重に驚いたのだと言う。

 そして、その後はもう何があっても驚かない事にしたらしい。アルカから聞いた、伝説のポケモンについても手持ちの資料、そして自らの知識からの知見を彼女に話す。

 

「マーニャ地方の各地には、ヴォルカニドとブリザベオを象った石像が置かれている。でも、その伝承が残ってる場所はあまりにも少ない」

「……きっと、あの二匹がとんでもなく長いライフサイクルで活動するポケモンだから、ですよね」

「ああ。その記録が残ってないのも当然と言えば当然なのかもしれない」

 

 だけど──とハイビは続けた。

 

「色々考えたんだけど──1つだけ、あの二匹の詳しい伝承を知る者が残っていそうな場所があるんだ」

「え!? 本当ですか!?」

「マーニャから遥か西。スリング島と呼ばれる島があるんだけど……此処には、滅多に人が寄り付かない秘境がある」

「秘境……」

「亡くなった師匠が、スリング島に出向いた事があってね。その時の手記を読み返してたんだけど……秘境には、ヘラクロスとカイロスとは似て非なるポケモンを象った石像があったと書いているよ」

「それって──」

「現地の彼らは、それらを”闘神”と崇めていたらしい。そして、来るべき時が来れば、彼らは復活し、目覚める──とね」

「闘神……」

「真実が知りたければ──スリング島に行くと良いだろう。そして秘境──”フォートマウンテン”にね」

 

 アルカは息を飲む。

 次なる目的地は決まった。

 時間はもうあまり無い。

 

「……フォートマウンテンには、何があったんですか?」

「さあね。現地の人々から聞いた昔話、かつての王宮の後、そして──”復活の祠”なる場所があるらしい。ただ、そこは固く閉ざされてしまっている」

「昔話……その昔話、聞かせてくれませんか!?」

「また聞きだし、記憶もおぼろげだけど──確か、こんな話だったかな」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 スリング島に、かつて災いがやってきた。

 空の果てからやってきた、水の龍。

 それは空を裂き、水を流れさせ、数々の島を沈めた悪しき龍。

 それがとうとうスリング島にもやってきたのだ。

 事態を重く見た王様は、若き戦士たちに龍の討伐を頼んだ。

 

 若者たちはかつて、東方の地・マーニャで修業を積んだ戦士であった。

 

 一人は熱を操る術を手にしていた。

 

 もう一人は冷気を操る術を手にしていた。

 

 激闘は三日三晩に続いた。

 

 そして、不思議な力を使い続けたからか、はたまた龍の不思議な力を浴びたからか、戦士たちの身体は──この世の者ではないモノへと変化していた。

 

 

 

 人々は、変わり果てた戦士たちを”闘神”と呼んだ。

 

 

 

 だが、不屈の闘志と力により、闘神たちは決して倒れる事は無かった。

 

 そして来たる三日目。

 

 ついに、熱の闘神と冷気の闘神が、龍の邪悪な身体を滅ぼした。

 

 

 闘神の躰は何処かへと飛び去っていく。人々はお礼をしようと駆けていったが──闘神たちは告げる。

 

 

 

「我らの亡骸を残しておいてほしい。いずれ──我らの力が必要になる時が来る」

 

「それまで我々は、マーニャの熱き風として」

 

「マーニャの冷たい風として」

 

「この地を──見守ろう」

 

 

 

 闘神たちが消え去っていく。そして、戦場には──息絶えた戦士たちの亡骸が横たわっていた。

 

 

 闘神の躰はマーニャを守るための風となった。

 

 

 戦士の躰は人々の手で丁重に葬られた。

 

 

 その場所は”復活の祠”と呼ばれ、決して探せない地下深くに戦士たちの魂は眠っている。

 

 

 

 

 熱を齎す者を意味する”ヴォルカニド”。

 

 冷気を齎す者を意味する”ブリザベオ”。

 

 

 

 闘神が復活する、その日まで──戦士たちは眠り続ける。

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「的な……話だった気がするんだけど」

「ッ……復活の祠……! そこに眠る戦士の魂! ビンゴですよ、先生! きっと──」

「これが、一般的にスリング島に伝わっている伝承だ」

「一般的に……?」

「師匠曰く、どうやら”他言無用”という条件で教えて貰った伝承の裏があるみたいでね……いずれにせよ、それがヴォルカニドとブリザベオの謎に繋がっているのは間違いない」

「……じゃあ、真実を知るならスリング島に直接行くしかないってことですよね」

「ああ」

 

 丁度良い。自分達はマーニャに居る。

 スリング島は遥か西にあるが──そこに真実は眠っている。

 

「だけど、くれぐれも気を付けておくれよ、アルカ君。僕はね、大人として君の事を案じてるんだ。まさかフィールドワークがこんな事になるなんて……野生ポケモンの暴走に伝説のポケモンが関わっているとは」

「大丈夫です、ハイビ先生。ボク達──慣れっこですから!」

「……なら、良いけどね。じゃ、良い報告を期待してるよ」

 

 ぷつり、と通信はそこで途切れる。

 そして──アルカは隣に居るミアに目配せした。

 

「ミア──」

「ええ、大丈夫です。スリング島行きの航空便、確保してます」

「先生、おったまげるだろうな……この星に危機が迫ってて、それを解決できるのが伝説のポケモンだけかもしれないって」

「──お前ら、待たせたな!」

 

 向こうからメグルの声も聞こえてくる。

 

「……色々あったけど……この3人での最後の冒険になるかもな」

「うん。ヴォルカニドとブリザベオの謎……そして、空から来るポケモン……か」

「私達なら出来るはずです。きっと──」

 

 メグル達は、港に立つ。

 もうじき、スリング島行きの船便がやってくる。

 ヴォルカニドとブリザベオの謎は──そこに眠っている。

 

(コチョウの奴が恐れていた滅びの未来……でも、俺達は証明しなきゃいけねえ。誰かに管理されなくたって、望んだ未来は掴めるって事を!!)

 

 コチョウを──そしてマーニャ地方を取り囲んでいた暗雲をも乗り越え、メグル達は最後の冒険に挑む。

 

 

 

「……待ってろよ、ヴォルカニドとブリザベオ……絶対に捕まえてやるからな!!」

 

 

 

 ──第四章「失楽園のカルラ」(完)

 

 

 

 これまでのぼうけんを レポートにきろくしますか?

 

 

 

 ▶はい

 

 

 

 いいえ

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  • ラブコメ、純愛
  • 戦闘シーン
  • シリアス、曇らせ
  • ギャグ、コメディ
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