続・ポケモン廃人、知らん地方に転移した。【完結】   作:タク@DMP

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第70話:しょーがねーだろ赤ちゃんなんだから

「ガキんちょ共が迷惑かけたでちな。余所者に興味しんしんなんでちよ」

「いや、それは良いんだけどよ、ガキんちょ以前に君は赤ちゃんじゃねーかよ」

「赤ちゃんで何か悪いでちか?」

「気になるんだわ!!」

 

 ガッタガタの山道でもベビーカーを問題なく走行させることができるのは、ヤレユータンが念動力でベビーカーを制御しているからである。

 だが、そんな事は正直どうでも良かった。問題はベビーカーの中身である。ガラガラ(ポケモンではない)を持った赤ちゃんが、喋っている上に、あれだけやんちゃだった子供たちをあっさり従えてしまった事だ。

 

「そもそも、なんで赤ちゃんが喋れるんだよ」

「パプリカ様は赤ちゃんだけど赤ちゃんじゃないんだよ」

「ウソだろ?」

「パプリカ様は、薬作りの達人だったの」

「で、若返りの薬作ったんだけど……調合ミスっちゃったみたいで」

「ミスっちゃったの!?」

 

 ポケモンの世界だから最早突っ込むまい。

 しかし、それはそれとして、元々は薬作りの達人とまで言われるはずの賢者が今はこのザマ。

 なかなかに世の中とは無情である。

 

「調合ミスっちまったのは……しょーがねーだろ赤ちゃんなんだから、ってヤツでち」

「もう突っ込まねえぞ……」

 

 調合をミスったのは赤ちゃんになる前である。

 

「見た目は赤ちゃん、中身は大人でち!!」

「おい馬鹿やめろ!!」

 

【新連載:名賢者パプリカ】

 

 結局、ツッコミ根性は治らないのであった。無念。

 山道を越えて、辿り着いたのは──岩山の上に広がる集落。

 ヴォルカニドとブリザベオを崇める”シキの村”だ。

 かつて、王宮だった建物の跡地が此処からでも見える。メグル達は、そこに連れて行かれるのだった。

 付き人と思しき男達の間にベビーカー。何ともまあシュールな光景である。賢者とは、他所で言うキャプテンの立ち位置に辺り、パプリカは実質的に集落のリーダーらしい。赤ちゃんだけど。

 

「さて、よくぞ来たでち!! シキの村に!! お前達はなにゆえ此処に来たでち!!」

「ヴォルカニドとブリザベオの力を借りたい!!」

「ほほーう?」

「空から、ヤバいポケモンが来てるんだ。ヴォルカニドとブリザベオの力じゃないと、対抗できないくらいヤバいポケモンだ」

「闘神様の力を借りたい……と言う事でちな。成程成程、やはり、闘神様が目覚めていたのはそういうことでちか」

 

 ガラガラ(ポケモンではない)を振り回しながらパプリカは言った。イマイチ威厳が無い。

 

「でちも確かに感じ取ったでち。ヴォルカニドとブリザベオが目覚めちまったのを。それはすなわち、このマーニャの危機──否、この星の危機!」

「流石賢者様だぜ」

「……あの二匹が目覚めるのは、恐らく1000年以上ぶりでち。奴らが目覚めるのは、この星が危機に瀕していて、なおかつそれを止められる抑止力が居ない時でち」

「つまり、あの二匹じゃねえと、やっぱりダメなのか……」

「ヴォルカニドとブリザベオは、この星の抑止力、いわば白血球のようなものでち。そうそう目覚めない代わりに、目覚めた時はヤベー危機が迫ってるでちよ」

「ワームホール公団の暗躍に合わせて復活したのでしょうか……?」

「いんや? 風の噂では、あいつら壊滅したらしいでち。()()()()()()()()()()()()は”危機”とは言わないでち」

「……」

 

 その公団を壊滅させたのは自分達なんだけどな、とメグル達は微妙な気分になった。

 となればやはり、あの二匹は事前に感知していたのだ。ガルヴァチスの襲来を。

 

「あの二匹はもっと、マクロな視点で物事を見てるでちよ。大自然が生み出した、抑止力でちからな」

「話によれば、かつて闘神として戦った戦士の躰は、此処に封じられてるらしいな」

「ほう、闘神様の昔話も知ってるでちか」

「一応予習してきたぜ」

 

 ──かつて王国を襲った巨大な水の龍。

 それを退ける為、王様は二人の戦士を遣わせた。

 その戦士は水の龍との戦いの末に、熱波と寒波の闘神となり──水の龍を滅ぼした。

 闘神は去り、後には戦士の亡骸だけが残っていた。人々は戦士の亡骸を丁重に葬った。復活の時が来るまで──

 そのような昔話をメグルは諳んじてみせる。隣ではアルカが微妙な顔をしていた。「元はボクが教えてもらった話なのに!」と。

 

「大体相違はないな?」

「成程……しかし、それはあくまでも対外向けに整えられた話でしかないでち」

「何だって?」

「あの神話には、語られざるシンジツがあるのでちよ!! 余所者には聞かせられぬ、シンジツが!!」

「……シンジツ」

 

 メグルはごくり、と息を飲んだ。

 「ソード・シールド」の伝説のポケモン達のような知られざる真実が、ヴォルカニドとブリザベオにもあるのだろう、と考える。

 そもそもかつて厄災を追い払ったポケモン達だ。その立ち位置は、かのザシアン・ザマゼンタと酷似している。

 

(きっと、何かしら悲劇だとかがあるに違いない……!!)

 

「どちらにせよ、待っていたでち。闘神を従える意思を持つ者達が来るのを。ヌシ様が通した者達ならば、でちも信用できるでち」

「ヌシ様すげぇんだな……」

「闘神の躰がマーニャを離れ、暴れ回ってるのは風の噂で聞いてるでち。魂無き闘神は、本能のままに、縄張りたるマーニャを守る為に配下を増やそうとしてるでちよ。このままでは却ってマーニャに被害を出すばかりでち」

「魂無き……闘神?」

 

 アルカが首を傾げる。「魂無き闘神」と言う言葉に違和感を覚えたのだ。

 

「ねえ、おかしくない? 確か、この封印の祠に封じられてるのは()()()()()なんだよね? で、今動いてるのは闘神──つまり、ヴォルカニドとブリザベオの躰ってこと? てっきりボクは、魂だけが独り歩きしてると思ったんだけど」

 

 要するに、この手の伝説では大抵、体と魂は対になっているものだ、とアルカは言いたいのである。

 しかし、この祠に封じられているのは戦士の亡骸。そして、今暴れ回っているのは闘神の躰。

 魂は──何処に行ったのだろうか? と。戦士は死んでしまったので、魂は成仏してしまったと考えるのが普通だが──そうなると、わざわざ祠に「復活の祠」と付けられるのが得心が行かないのである。

 

「そうでち。今動いてるのは()()()()でち。と言っても、闘神の躰に実体はないでちけど」

「ややこしいな」

「闘神は熱波と寒波がポケモンになった存在でちからな。魂が無い今の闘神は、本能だけで動いてるのでち。理性も知性も何も無ェでちよ。あれでは人に協力など出来ねーでち」

「じゃあ、魂は何処に行ったの? 納得いくのは、()()()()()()()()()()()……なんだけど。今彷徨ってるのは闘神の躰って言ってるけど、普通そこは魂なんじゃない?」

「クックック、カンの良いガキは嫌いじゃねーでち」

「ガキじゃないんだけど。これでもハタチ超えてるんだけど」

「え”ッ」

 

 パプリカはアルカの顔を見る。そして──次に胸を見た。そして、頷いた。

 

「賢者、納得したでち。納得だけがッ!! 人を前に進めるでちッ!!」

「おい今何処見て納得したんだよ」

「ま、まあまあ落ち着いてメグル」

「お前達も納得したければ──試練に挑み、真実を知る権利を手に入れるでち!!」

 

 ビシッ、とパプリカが自然な流れで試練への導入を作った。

 イマイチ納得がいかないメグルは肩をすくめる。

 

「おいおい随分と悠長だな、詳しく言ってなかったけど世界の危機なんだぜ。隕石がもうじき近付いてきていて、多分それにあの二匹は反応したんだ」

「隕石ィ!? マジで世界の危機でち……」

「んで、多分隕石にはヤベーポケモンが眠ってる。着弾したら地球は終わるね」

「しかしッ!! だからと言って、おいそれとあの二匹を従える方法を教えるわけにはいかんのでち!!」

「何でだよ」

「でちとお前達は、今日初めて会ったばかりだからでち!! 何も知らない人に、王国の宝を簡単には渡せねーのでち!!」

「ごめんなさいでした」

 

 言われると御尤もである。

 

「ねえ、思うに……この村の人たちって、ヴォルカニドとブリザベオを従えられないの?」

「いやー……ちょっとワケアリでぇ……無理なんでちよ。あの二匹は絶対に、外から来た人間じゃないと従わねーのでち」

「随分とワガママな闘神様だな……」

「そんで、悪意を持った者はそもそもヌシ様が弾いちまうでちから、あの二匹が目覚めてから、あの二匹の使い手に足り得る者達は来なかったのでちよ」

 

 そもそも、有史以来闘神が目覚めるのは二度目でちからな、とパプリカは言った。

 

「でちは見極める義務があるでち。オヌシ達が、あの二匹を従える資格があるのかを!!」

「……分かったよ。どっちみち、試練も乗り越えられねえんじゃ、伝説のポケモンを捕まえられる訳がねえ」

「ボク、やるよ試練!」

「……」

 

 二人が乗り気になっている中、ミアだけは怪訝そうに俯いていた。

 どうも腑に落ちない事が多いからである。

 

(違和感のある伝承、ヴォルカニドとブリザベオが集落の人間では制御できない理由……何やら、嫌な予感がしますね……ロクでもない予感が……)

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 街から少し外れた場所に、切り立った岩山のような場所がある。

 この先に”復活の祠”があるらしいが──辺りには、尻に火が灯ったような猿のポケモンの姿が散見された。

 

「ヒコザルだ! 初めて見たな」

「それもこんなに沢山! 野生じゃ滅多にみられない貴重なポケモンだよ!」

 

【ヒコザル こざるポケモン 炎タイプ】

 

「クックック、このスリング島はヒコザルの数少ない生息地でち。しかもフォートマウンテンでしか見られないでちよ」

「へーえ。ん? 待てよ、じゃあ試練って──」

「この先でち」

 

 メグル達が案内されたのは──行き止まり。

 切り立った岩の壁が三方を囲んでいる。

 通称、猿の詰め所。崖の上には、ヒコザルたちが興味深そうに此方を見下ろしている。

 そして、ガラガラ(ポケモンではない)を振り回しながらパプリカが叫ぶ。

 

 

 

「おいでやァァァす、ヌシ様ァァァーッ!!」

 

 

 

 ヌシ様ァー、ヌシ様ァー、と木霊する。

 岩山のヒコザルたちが、一気に散らばり、何処かへ行った。

 間もなく──ぬぅ、と岸壁の上から大きな影が現れる。

 

 

 

「キィィィィ……」

 

 

 

 一際大きな猿が、飛び降りる。

 大きく長い腕と足、そしてすらりとした体型。

 そして燃え尽きた灰のような色の体色の毛皮。

 だが、ひとたび吼えれば、体毛は黄金に輝き、頭からは炎、そして稲光が吐き出される。

 

「ゴウカザルだよ、メグル……すっごく珍しいポケモンだ!! まさか、スリング島に生息してただなんて!!」

「だけど俺の知ってるのとは姿が違う気が──」

「マーニャのすがたの個体です。……マーニャのゴウカザルは、神話の戦士の如く、稲光と炎を操ります」

「この個体は、長生きしたボス猿でち。さあ、先ずはこいつが相手でちよ」

 

 ゴウカザルの手には、大きく長い骨が握られていた。どうもこの骨を得物にしているらしい。

 さながら、西遊記の孫悟空が振るう如意棒のようである。

 

 

 

「ウキキキキィッ!!」

 

【ゴウカザル<マーニャのすがた・ヌシ> かえんポケモン タイプ:炎/電気】

 

 

 

「さぁ、3人のうち1人!! 代表を選んで、ヌシ様に挑むでちよ!!」

「3人のうち、1人か……そんじゃあ俺が──」

「いーや、此処はボクが行くよ!」

 

 ポキポキと指を鳴らし、アルカはボールに手を掛けて前に進み出る。

 

(まあ、確かにタイプ相性的に俺の手持ちじゃあ有利取れそうにねえし、アルカが行くのが正しいか……)

 

「メグルさん、良いんですか?」

「……ま、大丈夫だろ。アルカ、強えーし」

「育て上げたこの子の実力、しっかりとヌシ様に見せてあげるもんねー!」

「ほーう、大した自信でちな」

 

 アルカが投げたボールからは──セグレイブが飛び出す。

 通常種と違い、格闘タイプを失っているマーニャのゴウカザル相手ならば、岩タイプのセグレイブでも優位に立ち回れるという考えからだ。

 

 

 

「──それではッ!! 試練、開始でちよーッ!!」

 

【ヌシのゴウカザルに 勝利し 力を示せ!!】

 

 

 

 パプリカの掛け声で戦いが始まった。

 岸壁の上からヒコザルたちが見下ろす中、ゴウカザルとセグレイブが互いに睨み合う。

 流石に老練としたボス猿というだけあって、むやみに此方に飛び掛かっては来ない。

 

(……ボス猿ってだけあって、喧嘩慣れしてんな……先に仕掛けてきたら、カウンターしてきそうだ)

 

(リーチは長いとみて間違いないでしょう。骨を用いた棒術こそが、あのゴウカザルの武器……!!)

 

「にしても、セグレイブにしてはヤケにゴツゴツしてるでちね……てかマーニャにセグレイブっていたっけ?」

「ありゃ化石から復活したリージョンフォームだ」

「マジでちかー……でも、ゴウカザルも強いでちよ。そう簡単には負けねえでち」

 

(とはいえ、このまま動かないままじゃ、戦況も動かない! 先ずは仕掛ける!)

 

 アルカがセグレイブに目配せし、セグレイブも頷いた。

 

「──”パワフルエッジ”!!」

 

 地面を思いっきり叩けば、セグレイブの腕には大きな岩の刃が現れる。

 そして構えながら、一気にゴウカザルに飛び掛かり、切り裂こうとする。

 だが──ゴウカザルは、あっさりと岩の刃を骨で受け止めていなしてみせると、軽々と跳びあがり、宙を舞う。

 

「んなッ──!?」

 

 勢い余ったセグレイブは転び、地面に倒れてしまった。

 そこを狙い撃つように、ゴウカザルは骨で何度もセグレイブを打ち付ける──

 

 

 

【ゴウカザルの ボーンラッシュ!!】

 

 

 

 ──しかし、セグレイブもただでは倒れはしない。

 すぐさま起き上がり、尻尾でゴウカザルを打ち払おうとするが、アクロバティックな動きでゴウカザルはそれすらも躱してみせるのだった。

 

「──ストーンエッジ!!」

 

 セグレイブが地面を殴りつけ、岩の刃が次々とせり出す。

 だが、迫りくる岩の刃も、ゴウカザルは骨による一突きで破砕。叩き壊してみせるのだった。

 

(ダ、ダメだ! 攻撃全部に最適なカウンター行動を取ってくる!!)

 

 そして、岩の刃を壊し、摺り抜けたゴウカザルはその懐に潜り込むと──

 

 

 

【ゴウカザルの スタンロッド!!】

 

 

 

 ──電気を帯びた骨を、セグレイブの腹に突き刺すのだった。

 微弱だが、電気がセグレイブに流し込まれていく。ダメージは然程ではない。しかし──

 

「コ、コォアン……ッ!!」

 

【セグレイブは まひした!!】

 

 ──セグレイブの躰は痺れてしまい、足が奪われる結果となってしまう。

 そうして怯んだ隙に、ゴウカザルは拳を思いっきり握り締め、セグレイブを滅多打ちにするのだった。

 

 

 

【ゴウカザルの インファイト!!】

 

 

 

 セグレイブの巨体が大きく吹き飛ばされ、岩盤に叩きつけられる。

 格闘タイプの技だ。効果は──バツグンである。

 

「正面戦闘だけじゃねえ、搦め手まで得意だなんて……!!」

「おまけに格闘技までちゃんと持ってましたか……難敵ですよ」

「攻撃技は通用せず、麻痺で素早さも低下、勝負あったでちな」

「……まだだよ」

 

 アルカの前髪の下のルビーの目は──まだ闘志を失ってはいない。そして──セグレイブもだ。

 

 

 

「……ボクも、セグレイブも、まだ──諦めてない!」

作者の作風に期待するものは?(良ければ感想欄でも教えて下さい)

  • ラブコメ、純愛
  • 戦闘シーン
  • シリアス、曇らせ
  • ギャグ、コメディ
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