続・ポケモン廃人、知らん地方に転移した。【完結】 作:タク@DMP
※※※
──古戦場。
それは、かつて水の龍と闘神が死闘を繰り広げた場所。
戦いの跡は、崩壊した古代都市の跡という形で残っている。
木々も生えていないだだっ広い荒れ地が広がっており、自然豊かなスリング島では異端とも言える。
「おおう、懐かしいな兄弟!! 此処であの水の龍と戦ったんだったか!!」
「直接此処に来るのはいつぶりだろうな兄弟」
「……調伏の儀って、ボク達二人でやるの?」
「ああ。史実によれば、闘神と絆を結べるのは1人だけでち。メグル、アルカ。お前達二人に、闘神と挑んでもらうでち」
「闘神とのマルチバトルってわけか」
メグルは古戦場に立つ。その横にはアルカも並び立つ。
祈るようにミアは指を組んだ。どうか、二人が無事でいますように、と。
「どちらにせよ、私が介入する余地は無い、ということですね……」
「これは儀式でちからな」
「メグルさん……アルカさん……どうか、勝って……ッ!!」
メグルとアルカは、それぞれ玉を握り締める。そして、それを天高く掲げた。
──マーニャに顕現した闘神に捧げる。
彼らの魂は此処にあり。
──熱波、そして寒波が同時に吹き荒れた。
「ガタララララララッ!!」
「トブルルルルルルッ!!」
風は、熱気となり──やがて全身に溶岩を身に纏った巨大なクワガタムシの怪物を作り出す。
風は、冷気となり──やがて全身に氷を身に纏った巨大なカブトムシの怪物を作り出す。
其れは闘神。マーニャという地を守る為に自然が造り出した強大なシステム。
メグル達の持つ玉に引き寄せられるようにして、再び彼らの前に現れたのである。
突然として現れた二匹の闘神を前にして、メグルは思わず後ずさる。その巨体も相まって、威圧感が半端ではない。
「おお、おお!! 千年ぶりだな、闘神よ!!」
「……再び我らがひとつになる時だ」
メグルとアルカの手から玉が離れた。
そして──闘神の胸にそれぞれの玉は吸い込まれていく。
闘神は咆哮した。彼らの身体が光り輝いていく。
「──これが、本当の……ヴォルカニドと……ブリザベオ!!」
「行くよ、メグル……!!」
「ああ……ッ!!」
ヴォルカニドの身体に、溶岩が迸る。
ブリザベオの身体に、冷気が迸る。
相反する二つの力を持つ化身が今、並び立つ。
メグルの脳に声が聞こえる。
「おいお前ら気を付けろ……目覚めたばっかりの我らは──手加減が出来んぞッ!!」
アルカの脳に声が届く。
「……身体が昂る。以前と同じ感覚だ」
「……お前ら、死ぬなよ」
それを合図として、二匹はこれまでにないほどの咆哮を上げ、羽根を羽ばたかせた。
「ガタララララララララララッ!!」
「トブルルルルルルルルルルッ!!」
【ヴォルカニドが 現れた!!】
【ブリザベオが 現れた!!】
今此処に、マーニャの闘神が真の意味で君臨した。
メグルもアルカもボールを投げる。飛び出したのは──クワガノンとセグレイブだ。
「二匹を引き離そうッ!! まともに二匹同時に相手してたら、命が幾つあっても足りないよ!!」
「ああ、分かった!!」
すぐさまライドギアを取り付けたクワガノンにメグルはぶら下がり、わざとブリザベオの傍を横切ってその場を離れる。
案の定、ブリザベオはそれに釣られてメグルとクワガノンを追いかけるのだった。しかし、現在のクワガノンは”こうそくいどう”しながら飛行している。
そう簡単には追いつけはしない──はずなのだが。
「トブルルルルルルルッ!!」
「いや、デカいデカい怖い怖い!! デカすぎだろ、このカブトムシ!!」
全長およそ6メートル。
その巨体が羽ばたきながら飛んでくる故に、速度面でのアドバンテージなど直ぐにひっくり返されてしまう。
おまけに、羽根が動く度にマーニャには似つかわしくない猛吹雪が襲い掛かってくる。
天候など一瞬でひっくり返してしまう、それが闘神の恐ろしい所だ。
「トブルルルルルルルッ!!」
それでも、十二分にヴォルカニドから引き剥がす事は出来たので、メグルはそのまま着地。ブリザベオと相対するのだった。
存在しているだけで辺りは凍り付いていき、氷の柱が次々に立ち上がっていく。
「……漸く会えたな、ブリザベオ……!! 勝負だッ!!」
「トブルルルルルッ!!」
羽根を大きく開き、脚部のスラスターからは冷気が放出される。
ジェット機のようにブリザベオは飛行するとそのまま勢いよく突っ込んで来る。
足を折りたたみ、さながら巨大な槍の如き姿となるのだった。
【ブリザベオの コキュートスホーン!!】
突撃してくるブリザベオ。
その巨体全部でぶつかられれば、幾らクワガノンでも一撃KOは避けられない。
だが、暴走しているからだろうか。動きが直線的過ぎる。
”こうそくいどう”で素早さが上がっているクワガノンならば、避ける事は容易い──のだが。
「ッシャー……!」
ふわり、と避けたクワガノンの体表には氷が纏わりついてしまっているのだった。
ブリザベオの周囲は非常に強い冷気が常に放出されており、近付かれただけでも凍り付いてしまうのである。
「ボールはあるけど……これじゃあ近付けない……!!」
メグルの手には──どんなポケモンでも捕まえられるマスターボールが握られている。
ブリザベオを正面戦闘で倒すのは不可能に近い、と彼は考える。
あの巨大甲虫の周囲からは冷気だけではなく、これまでヌシポケモンと戦った際に何度も感じたイレギュラーなオーラが放出されている。
イレギュライズ──オーライズやメガシンカを無効化し、ポケモンを更に暴走させる現象。その大本たる闘神もまた、オーライズを無効化する力を持っているだろう、と考える。
一発逆転のタイプ変更、そしてオオワザすら使わせて貰えないのは大きな不利要員となる。
しかしあくまでも、倒すのが不可能と言うだけだ。ポケモンの種類、残り体力に関係なく閉じ込める事ができるマスターボールならば、戦闘を終わらせることができる。
問題は、ボールを投げる事が出来る圏内に近付くことができないという点であるが。
「──とにかく、こっちは速度で圧倒しねえと──ッ!! クワガノン、”でんじほう”ッ!!」
「ッシャァァァーッ!!」
クワガノンの大顎から巨大な電気の球が放出される。
しかし、あまりにもそれは大振りで遅い。ふわふわふわ、とブリザベオ目掛けて飛んで行くので、あっさりと躱されてしまうのだった。
『何をやっている。そんな技が闘神に通用するわけがないだろう』
「うるせー!! こっちにも考えが──って」
メグルは頭に突如響いてきた声に驚愕した。
ブリザベオだ。ブリザベオの声が聞こえてくるのである。
「ブリザベオ!! お前なんで喋れてんだよ!?」
『今の闘神は俺達の意思に反して暴れ回っている状態だ。我らはさながら、それを俯瞰して見ている状態だな』
「ッ……オマエ、何か攻略法とか知ってたりしねえのかよ!? 昔のポケモン使いはどうやってお前を捕まえたんだ!?」
『さぁな。だが、少なくともヒントも何も無い状態で戦っていたのは確かだ。お前は──どうなんだ?』
「”頼るな”って事ね!! かーっ、辛いぜ」
『圧倒的重装甲、近付く者全てを止める冷気、そして大岩をも軽々放り投げる力。闘神は──無敵だ。そうでなければ、災禍を潰せるはずもない』
「確かに倒すのは難しいな……なら、俺は俺のやり方で行かせて貰うッ!!」
【クワガノンは からぶりほけんで素早さがぐーんと上がった!!】
クワガノンは電光の如き速度でその場を離脱し、メグルの元へと戻ってくる。再びメグルはクワガノンのライドギアに掴まると空へと上昇するのだった。
『これは……! あのクワガノンの動きが変わった!』
「”からぶりほけん”だ! 技を外すと素早さが上がる! これでクワガノンは超火力と素早さを両立できるようになった!」
確かにブリザベオのデカさは強みだ。当たり判定は大きい上に、その力を存分に振りまわす災禍となる。
しかしその巨体は弱点にもなり得る。自分より小さな相手と戦う時、それもすばしっこい相手と戦う時、小回りが利かないのだ。
大昔の剣豪も、目の前の武者を斬るより空を素早く飛ぶ燕を斬る方が難しい。
ブリザベオは今のクワガノンを捉える事が出来ない。
「トブルルルルルルルルッ!!」
咆哮するブリザベオもまた飛翔する。
だが、流石にそこは伝説のポケモン、此処まで素早さを上げているにも関わらず一歩間違えれば追いついてくるほどの速度で飛翔してくる。
しかし──メグルも真っ向からやり合うつもりは無い。向かってくるブリザベオを見下ろす形になると、クワガノンに指示を出す。
「本命はこっちだ! ”でんじは”!」
クワガノンが大きく翼を広げ、電磁パルスを一気にばら撒いた。
それを正面から受けてしまったブリザベオは失速。
距離を大きく開けられてしまうのだった。
「これは倒すための戦いじゃない──捕獲だ!! 隙を突いてボールをぶつけられればそれで良い!!」
『モンスターボールというものか! だが、果たして闘神を捕まえられるのか?』
「捕まえられる!! マスターボールなら……ッ!!」
失速したブリザベオ。
しかし──それによっていよいよメグルとクワガノンを倒すべき敵と認めたのか、大きく翼を広げ──咆哮した。
目からは赤い稲光が迸る。
「トブルルルルルルルルルルルルッッッ!!」
【ヌシ咆哮:ポケモンは怯んで動けない!】
【ヌシ咆哮:悪い効果を打ち消した!】
真上からでも身体全部を揺さぶられる程の音の爆弾。
それがクワガノンの身体の動きを止めてしまう。そればかりか、痙攣していたブリザベオの身体は一気に快復。
凄まじい速度で此方に向かって飛んでくる。
「ウッソだろオイ!? あいつもヌシ咆哮使えるのか!?」
「トブルルルルルルルルッ!!」
【ブリザベオの しょうりのまい!!】
【ブリザベオの攻撃が上がった! 防御が上がった! 素早さが上がった!】
ぐるん、ぐるん、と飛んでくる際に何度も回転して舞い踊るブリザベオ。
その挙動でメグルも冷や汗をかく。積み技だ。何処からどう見ても、能力を上げようとしている動きである。
『気を付けろ──此処からが本当の地獄だ。闘神の能力が上がっている』
「いっ!? あいつ、何の技を使ってんだよ!!」
このまま上空に居ては危険、と判断したメグルはクワガノンに降下を指示。
ブリザベオを振り切るように地面に向かう。
だが、当然巨大甲虫は此方目掛けて追ってくるわけで──
「トブルルルルルルゥゥゥーッッッ!!」
羽根が大きく開かれる。
そして、ブリザベオが全身に大きく力を溜め──突撃してきた。間に合わない。ブリザベオの速度がこれまで以上に急上昇している。迎撃するしかない。
地面に滑り込むようにして降り立ったメグル。前に出るクワガノン。
ブリザベオはすぐそこまで迫ってきている。
だが、それ故に都合が良い。標的が自ら此方へ突っ込んで来てくれているのだから。
「”でんじほう”ッ!!」
「ッシャァァァァーッ!!」
【クワガノンの でんじほう!!】
炸裂音。
直撃、そして命中だ。
当たれば確実に敵を麻痺させるレールガン。
──それでも全く勢いを失う事なく、ブリザベオは迫る。
【ブリザベオの イノセントハザード!!】
ブリザベオを緑色の稲光が包み込んだ。
そして、クワガノンに身体全部でぶつかっていく。
撥ね飛ばされたクワガノンは吹き飛んでいき、地面に打ち付けられるのだった。
「クワガノンッ!!」
メグルはすぐさまクワガノンの方に向かった。
「ッシャァァァ……」
「だ、大丈夫か……!?」
こくこく、とクワガノンが頷いた。
すぐに”かいふくのくすり”の注射を打ち込んで回復させる。
恐らく二度も受ければ、瀕死にさせられることは確実だ。
”でんじほう”でブリザベオが麻痺して、勢いが弱っていたのも大きいだろう。
だが、もしも空中で今の攻撃を受けていたら? と思うとメグルはゾッとする。
恐らく、クワガノン諸共メグルは空中に放り出されていただろう。
(もう、空中に逃げる作戦は使えない……!! 地上でケリを付けねえと……!!)
※※※
「ガタララララッ!! ガタラララッ!! ガタラララッ!!」
一方。
アルカもアルカで、ヴォルカニド相手に苦戦を強いられていた。
タイプ相性では圧倒的に有利なはずのセグレイブをぶつけても尚、体力が削れない。
炎・虫タイプのヴォルカニドに対して、岩技は4倍弱点のダメージ。当たればそれだけで致命傷である。
にも拘らずダメージを与えられていないのは、ヴォルカニドに全くダメージが入っていない事が大きい。
「……攻撃が全く当てられない……! 火力バカに見えて、相当なトリックスターだ!」
ヴォルカニドが飛ぶ周囲ではあまりの高温で陽炎が立ち上っており、空気が大きく屈折している。
その為、見る者にはこの常夏の化身が何匹にも分身しているように見えるのだ。
そうして翻弄されていたセグレイブだったが、不意を突かれて”おにび”を撃たれ、あわや火傷の危機──と思われた。
「コォオオオオオン……!!」
「幸い、火傷状態にはならないんだよね……セグレイブは!」
【特性:ねつこうかん 火傷状態にならず、炎技を受けると攻撃が1段階上がる】
だが、それが効かないと見ると、ヴォルカニド達は再び分身し──太陽に負けない程の眩い光を放つ。
その光はセグレイブの纏う龍気を引き剥がす聖なる光。
【ヴォルカニドの マジカルシャイン!!】
光が剣のようにセグレイブの身体を突き刺した。
龍殺しのフェアリータイプの技だ。流石のセグレイブもそれを受け、ふらふらになってしまう。
『おーっと姉ちゃん、苦戦してんなァ!?』
「その声は……ヴォルカニド!?」
そんな中、ヴォルカニドの声がアルカの脳に直接響いた。
『常夏の闘神は、強いぜ。熱を用いて出来る小細工は一通りできる。ああ見えて滅茶苦茶賢いんだ』
「何で喋れてるの!? 暴走してるんじゃ──」
『暴れてるのは闘神の身体だからな。我の意思じゃァない。本当なら我だって暴れたいけどね?』
「どうやらディープファングが足りなかったみたいだ」
『おい待てよ。ちょ待ーてーよ。只の冗談じゃんよ。そもそも姉ちゃん、このままじゃ厳しいだろ? そもそも闘神は此処までの戦いの中で、舞を舞って能力を上げちまってるしな』
【ちょうのまい 特攻、特防、素早さを1段階上げる】
何故クワガタムシが蝶の舞を舞えるのか、というツッコミは禁句である。
何もヴォルカニド側もセグレイブの攻撃から逃げ回っていたわけではない。
攻撃を避けて避けて避け続けて、その間に──”ちょうのまい”で能力を上げ続けていたのである。
それが可能なのは、闘神が自然現象を味方につけて此方を撹乱していることが大きい。
「うん……そもそもまともに勝負をさせてくれない! ポケモンとしての格が違うんだ……!」
闘神がそもそも生き物ではない、というのが大きい。
自然現象から生まれた抑止力である闘神は、ありとあらゆる自然現象を味方につける事が出来る。
戦士の魂と融合した事で、その力は更に強大なものとなっている。
流石に覚醒直後の、熱を持て余していた頃に比べれば落ち着いてはいるものの──
「ガタラララララララララッ!!」
【ヴォルカニドの プロミネンスフレア!!】
──辺り一面を熱だけで消し飛ばす程の熱量は体内に宿してはいるのだ。
『おーぅ、ヤベェかも。あれ喰らったらセグレイブは生きてても姉ちゃんは消し飛ぶね』
「ッ……冗談じゃないんだけど!?」
作者の作風に期待するものは?(良ければ感想欄でも教えて下さい)
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ラブコメ、純愛
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戦闘シーン
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シリアス、曇らせ
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ギャグ、コメディ