続・ポケモン廃人、知らん地方に転移した。【完結】   作:タク@DMP

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第75話:禁断のギガオーライズ

「コォオオオオオオオン!!」

 

 

 

 だが、そこは流石に騎士竜というだけはあった。

 大きく地面を踏み鳴らしたセグレイブの足元から岩の刃が大きくせり出し、そしてアルカを守るように背を向ける。

 間もなく爆炎、そして熱風が吹き荒れたが──岩の刃が”プロミネンスフレア”を受け止め、更にセグレイブがアルカに覆い被さった事で防がれる。

 

「あ、ありがと、セグレイブ……!!」

「コォオオオオオオオン!!」

 

 しかし、あまりの熱気で岩の刃は一瞬で風化してしまい崩れ落ちる。

 後には空に浮かんで第二撃を容赦なく放とうとする闘神ヴォルカニドの姿があった。

 

「あ、あいつ、あの威力の攻撃をまだ撃てるの!?」

『闘神に疲れなど無い──むしろまだ生易しい方まであるな!!』

「ッ……もう一発防壁を作らなきゃ──”がんせきふうじ”!!」

 

 4分の1で攻撃を受け止める事が出来るセグレイブだからこれで済んでいるのだ、とアルカは思わされる。

 ”がんせきふうじ”で周囲に岩の防壁を作り上げ、再び爆炎を防ぐが──

 

「ガタララララララッ!!」

 

 ──ダメ押しと言わんばかりに、ヴォルカニド自らが緑色の稲光に身を包み突撃する。

 岩の防壁は脆くも崩れ去ってしまう。

 

 

 

【ヴォルカニドの イノセントハザード!!】

 

【セグレイブの きょけんとつげき!!】

 

 

 

 突入してきたヴォルカニド、そして──それを待ち構えていたセグレイブがぶつかり合う。

 だが、体格差、そして圧倒的な熱量を持つヴォルカニドが押し込むのは時間の問題であった。

 セグレイブは吹き飛ばされ、地面に叩きつけられてしまう。

 

「セグレイブッ!!」

 

 すぐにアルカは駆け寄った。

 タイプ相性に差があっても──このままでは敵わない。

 超自然的な力を当たり前のように扱うヴォルカニドの前では、完成されたドラゴンであるセグレイブでも届きはしない。

 

(本来なら、このレベルの敵相手にはオーライズでオオワザをぶつけなきゃ話にならないのに……!!)

 

 そのオーライズが実質的に今は封じられてしまっている。

 かと言って、このままでは戦っても勝ち目は薄い。セグレイブが倒れなくとも、技の余波に巻き込まれて自分が先にノックアウトされてしまうだろう、とアルカは考える。

 

(イレギュライズの時のオーラが、あいつから漏れ出してる……!! 大元だから当然だけど……!!)

 

『ヒューゥ、流石ァ。でも、あんなに強いのに、水の龍と戦った時は手ェ焼かされたんだよな』

「……君達を苦戦させた水の龍ってどんな奴だったの?」

『あん? いやぁ、忘れたくても忘れねえよ。あいつ、最初はちっこい水の玉に乗っかってたトカゲみてーだったのに、急にデカいドラゴンになってな』

「……」

 

 少しでもヴォルカニドの弱点を探るための問だったのだが、あまりにも身に覚えしかない「水の龍」にアルカは押し黙る。

 水の玉に乗っかったトカゲなど、この世広しと言えど1匹しかない。以前にベニシティを襲ったマイミュだ。

 以前サイゴク地方総出で捕獲した個体と同じかどうかは定かではない。だが、時空の裂け目を使って何処にでも移動できるあのドラゴンならば、何処に居てもおかしくはない。

 

(マイミュだ!! 大昔に、こっちの世界にも来てたんだ!! あいつマジで何やってるんだよ!! 何処でも迷惑かけてんじゃん!!)

 

【私が迷惑を掛けました♡ Byマイミュ】

 

『……そんで、そっから更に変なオーラみてーなの纏って、羽根とか生えてもう1段階パワーアップしたんだ、大変だったんだぜ』

 

(ギガオーライズじゃんそれ……ん? 待てよ。ギガオーライズって、オーライズだから闘神の前では解除されちゃうんじゃ……)

 

「ねえ、それって闘神の力で何とかならなかったの?」

『いや、オーラとバケモノの結びつきがあまりにも強すぎてな……引き剥がせなかったんだよ。闘神は、本来なら邪なる力を敵から引き剥がす力があるんだがな』

「へーえ……分かったよ」

 

 アルカは、セグレイブに向かって無記名のカードを翳す。

 

 

 

「つまり……闘神は()()()()()()()()()()()()()()って事だよね?」

『あれ? もしかして我、なんかヒントを与えちゃったカンジ?』

 

 

 

 迫りくるヴォルカニド。

 だが、此処からが反撃開始だ、とアルカは確信していた。

 タイプは変えられないが──ギガオーライズが通用するならば、まだ勝ちの目はある。

 問題は、ギガオーライズはこれが初めてであるという点である。

 

「セグレイブ……ボクを信じてついてきてくれる?」

「コォオオオオオオン!!」

 

 セグレイブの姿が刻まれたオーカードをオージュエルに触れさせれば、カードが空気中で拡散する。

 そしてそれが剣のようになって、セグレイブに突き刺さった──当然、荷重負荷はポケモンと人間、共に大きい。

 特にアルカのオージュエルは純化されている訳ではないため、ギガオーライズには耐えられない可能性が高い。

 しかし──それでも、と彼女は叫ぶ。

 

「──やらせるか──ボクの大好きなこの世界が無くなるなんて!! メグルがやれたんだ、ボクだって……ボク達だってやれるはずだ!!」

「コォオオオオオオオオオン!!」

 

 ピキ、ピキピキ、とオージュエルにヒビが入る。

 アルカの目から黒い稲光が走った。

 

「ヴォルカニド……ボクは全部賭けたぞ!! お前も、全部賭けてかかって来い!!」

 

 全身を襲う虚脱感。

 そして反発するオーラ。

 それに耐えきり──ふたりは覚醒を無理矢理果たす。

 ヒャッキの民の持つ強靭な体力、そして気力が為す技であった。

 倒れそうになるのを無理矢理踏み込み、立ち上がる。

 

『オイオイオイ……オマエ、すげーな……!!』

 

 ヴォルカニドは感嘆する。只の人の子と思っていたアルカが、己の全部を賭して無謀にさえ見えるギガオーライズに挑んだのが。

 セグレイブの身体に突き刺さったオーラが爆発した。

 そして、背中の鰭は更に大きな剣となり、両腕には岩の小手が展開され巨大な盾となる。

 まさに重騎士。これが──セグレイブのギガオーライズだ。

 

 

 

「ボク達はもう……負けたりなんてしない!!」

「コォオオオオオオオオオオオオオオオン!!」

 

【セグレイブ<ギガオーライズ> タイプ:ドラゴン/岩】

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「──くそっ、戻れクワガノン──!!」

「ッシャー……!」

 

 

 

 その後も、戦闘を重ねたもののクワガノンでは能力を上げたブリザベオに敵いはしなかった。

 再び”コキュートスホーン”を受けたクワガノンは地面に転がり、そのまま倒れてしまう。

 回復させることもできるが、残存電力を考えれば、これ以上の酷使は無茶だとメグルは判断する。

 しかし──悪い事ばかりではない。今現在、”麻痺”によってブリザベオはまともに動ける状態ではないからだ。

 

(問題はこの期に及んで、決定打が無い事だけど……!!)

 

 カタカタ、とモンスターボールが震える。

 ニンフィアだ。ニンフィアが「出せ」と言っている。

 サメハダーでは弱点を突かれてしまう──残っているのはニンフィアだ。

 

「頼むぞ相棒ッ!!」

「ふぃるふぃー!!」

 

 メグルはボールを投げた。飛び出したニンフィアが相も変わらず凶悪な形相で闘神を睨み付けた。

 

「トブルルルルルルルッ!!」

「フィッキュルルィィィィーッ!!」

 

 威嚇する両者。

 しかし、このままでは力負けするのはニンフィアであることは明らかだ。

 故にメグルは賭けに出る。

 

(ギガオーライズは……特別なオーライズ。ただ単にオーラを纏う通常のそれとは異なる部分も多い。なら!!)

 

 メグルが取り出したのはニンフィアの姿が刻まれたオーカードだ。

 それを自らの黒く染まったオージュエルに翳す──

 

 

 

「──此処からは賭けだ!! ニンフィア、ギガオーライズだ!!」

「ふぃるふぃーッ!!」

 

 

 

 迫りくるブリザベオ。 

 しかし、羽根を広げ、妖精のオーラを纏ったニンフィアの前で闘神は失速してしまう。

 ギガオーライズを果たしたニンフィアの身体から溢れ出る癒しの波動。それが、闘神の戦意を一気に刈り取ったのだ。

 

「ト、トブ、トブルルルルル……ッ!?」

『ほう!? 凶暴極まりない闘神が、大人しくなっただと──』

「やっぱり……ギガオーライズは解除出来ねえんだな!!」

 

 しかし──闘神もただでは転ばない。

 ブリザベオは思いっきり地面に頭を叩きつける。無理矢理痛みで正気を取り戻したのだ。

 再び羽根を大きく広げ、脚部のスラスターを全開にニンフィア目掛けて飛びかかる。

 ”コキュートスホーン”の構えだ。

 だが、それでも”麻痺”と癒しのオーラによる戦意の削ぎ取りによって、ブリザベオの勢いは先程よりは弱まっている。

 

「トブルルルルルルルルゥゥゥーッ!!」

 

【ブリザベオの コキュートスホーン!!】

 

 ハートの障壁を展開し、正面からニンフィアはブリザベオの突貫を受け止める。

 可愛い舎弟──クワガノンの仇討ちと言わんばかりに。

 

『拮抗している──ッ!?』

「ニンフィア──”はかいこうせん”ッ!!」

 

 バリアでブリザベオを堰き止めている中、ニンフィアは”はかいこうせん”のチャージを開始した。

 圧倒的な冷気によって、流石のニンフィアの身体にも霜が降り、徐々に凍り付いていく。

 だが、目の前で必殺技がチャージされていることに流石の闘神も危機感を感じ、バリアを破壊してニンフィアを押し潰そうとするが──間に合わない。

 

【ブリザベオは 体が痺れて動けない!!】

 

 体が自由に動かないのだ。此処に来て”麻痺”が効いてくる。

 

 

 

「──ぶっ壊せッ!!」

 

 

 

【ニンフィアの はかいこうせん!!】

 

 

 

 ハートの障壁が解除される。

 巨体が雪崩れ込もうとしたのも束の間だった。

 フルチャージが完了した”はかいこうせん”の洗礼が待っている。

 だが、それでもやはりそこは闘神だった。真正面からそれを受け止め、6本の脚で地面に踏ん張る。

 

 闘神は無敵だ。この程度の攻撃では倒れはしない。

 

 ”はかいこうせん”を撃った後、反動でニンフィアは白目を剥いてしまい動けない。

 無防備な妖精を自慢の前脚で叩き潰そうとするが──

 

 

 

「──わりーな、これで終わりだッ!!」

 

 

 

 ”はかいこうせん”を指示した直後、メグルは走り出していた。

 そして、気絶して動けない相棒を庇うようにしてブリザベオの前に立ち塞がる。

 握り締めたマスターボールを投げ付けた。

 

 

 

「ト、トブルルルルルルル!?」

 

 

 

 有無を言わせず、闘神の身体が吸い込まれていき、ボールに閉じ込められるのだった。

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「ガタララララララララッ!!」

 

 

 

 暴れ狂う闘神は特大の火の玉をセグレイブは愚かアルカにぶつけて消し飛ばそうとする。

 だが、ギガオーライズを果たしたセグレイブは地面を大きく蹴るとヴォルカニドの居る空中にまで飛び上がる──

 

「”きょけんとつげき”!!」

 

 体を丸めれば、それは岩の大剣の如し。

 ブレスを推進機にして、セグレイブはヴォルカニドが作り出した巨大な火の玉を貫く。

 間もなくそれは爆発し、その勢いに巻き込まれて流石のヴォルカニドも地面に墜落するのだった。 

 耐久力も、攻撃力も、そして──素早さも、全てが強化されている。

 ギガオーライズによって、セグレイブの全身の龍気が活性化しているのだ。

 

『オーラを自らの身体に取り込んで爆発させるとは……!! これが、我らの知らぬポケモンの戦い方か!!』

「通用してる……闘神に、ボク達の力が!!」

 

 地面に墜落したヴォルカニド。その分身も全て消え去る。

 ダメージを受けた事で、超自然を操る力が弱まっているのだ。

 だが、これでは闘神の面目が丸潰れだ。怒りを隠せないヴォルカニドは地面を踏み鳴らし──吼える。

 

 

 

「ガタラララララララララッ!!」

 

【ヌシ咆哮:悪い効果を打ち消した!!】

 

 

 

 地鳴りの如き咆哮が辺りを揺さぶる。

 だが、それを前にしてもセグレイブは動じはしない。

 

【ヌシ咆哮:セグレイブは怯まない!!】

 

「セグレイブ──行くよッ!!」

「コォオオオオオオオン!!」

 

 精神同調。

 トレーナーとポケモンがギガオーライズによって繋がっている時、その五感は接続され、共有される。

 セグレイブの視界も、気持ちも、そして痛みも、全部アルカは引き受けている。

 

(君がボクを守りたいなら……ボクも、君の痛みを感じていたい!!)

 

『ッおい、大丈夫かァ!? オメー、顔色悪いぞ!!』

「ヘーキ!! こんなの、今まで受けた痛みに比べれば、なんてことない!!」

 

 吐き気を抑え、地面に手を突く。

 オージュエルがミシミシと鳴り、赤く熱されている。

 無茶は承知だ。だが、それでも彼女はギリギリで戦い続ける。

 

「ガタラララララララッ!!」

 

 再び飛び上がるヴォルカニド。

 太陽と重なり、光の柱を次々に降りそそがせる。

 

 

 

【ヴォルカニドの マジカルシャイン!!】

 

 

 

「コォオオオオン!!」

「押しきるよ、セグレイブ!! ”ストーンエッジ”!!」

 

 地面を叩くセグレイブ。

 岩の刃が弾丸のようにヴォルカニド目掛けて飛んで行く。

 だが同時に、光の柱もまた、セグレイブを撃ち貫いていく。

 真正面からの果し合いは互いが互いの装甲を貫き合い、ボロボロになるまで続いた。

 しかし──岩の刃の1つがヴォルカニドの羽根を切り裂いた。

 

「ガタラララッ!?」

 

 巨体を支えられなくなったのか、ヴォルカニドは再び墜落する──

 

「ガ、ガタララララ……!!」

「ッ……お終いだ!!」

 

 ──そこに、アルカがマスターボールを投げ込んだ。

 闘神の身体はボールの中へと吸い込まれていく。

 かたかた、と震えていたボールだったが、マスターボールの強制ロックが音を立てて作動すれば、そこで動かなくなるのだった。

 

「……やった、捕まえ──た」

 

 疲労感、そして達成感。

 

 体中からは汗が噴き出しており、立つのもやっとだった、しかしそれでもやり遂げたのだ、と歓喜に打ち震えていた。

 

 

 

「え、あれ……?」

 

 

 

 ──明らかに汗ではない赤い液体が、地面にぽたぽたと滴り落ちている事に気付くまでは。

 

 彼女は思わず顔を拭う。

 鼻血だ。鼻血が、とめどなく溢れている。

 

 

 

「コォオオオオン!?」

 

 

 

 ギガオーライズが解除されたセグレイブが駆け寄る。

 主人の異常に気付いたのだ。

 

『おい!! お前、顔、すげー事になってんぞ!! 大丈夫か!?』

「ヴォルカニド、ボク──どうなって」

 

 アルカの目は真っ赤に充血していた。

 そして、つぷりと血管が切れる音と共に涙ではなく血が流れ始める。 

 鼻からも血が滴り、彼女の服はたちどころに真っ赤に染まった。

 

 

 

 そして。彼女の中で何かが切れると共に、オージュエルが──音を立てて砕け散った。




【DETA】

ヴォルカニド 炎/虫 せいかポケモン
種族値:H100 A60 B130 C150 D140 S100
特性:???


ブリザベオ 氷/虫 がんとうポケモン
種族値:H100 A150 B140 C60 D130 S100
特性:???


イノセントハザード 威力100 命中100 特殊 虫
攻撃と特攻のうち、能力値が高い方で攻撃する。闘神の力を最大限発揮するのに必要となる。

作者の作風に期待するものは?(良ければ感想欄でも教えて下さい)

  • ラブコメ、純愛
  • 戦闘シーン
  • シリアス、曇らせ
  • ギャグ、コメディ
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