続・ポケモン廃人、知らん地方に転移した。【完結】   作:タク@DMP

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第77話:星狩の悪魔

「メ・ガ・ラ・ラ・ラ……!!」

 

 

 

 ガルヴァチスは闘神たちを一瞥すると、両前脚に稲光の槍を顕現させる。

 その悪魔の如き形相はメグル達の視界にも映っていた。

 黒光りした外骨格に、棘の付いた脚。ハチの姿をしたモンスターには違いないのだが、これまで見てきたどのポケモンとも姿が異なる。

 最も目を引くのは胸部に棘の如く生えた鉱石。これが常に電気を帯びている。

 

「こ、これがガルヴァチス……!! ヴォルカニド!! やっちゃって!!」

「ブリザベオ、2対1ならなんとかやれるはずだ!!」

 

 旋回した闘神は、我らが青き星にガルヴァチスが落下する前に此処で倒してしまうと最初から決めていた。

 再び、ガルヴァチスを撃ち貫くべく加速していく。しかし──二度目の突撃は防がれることになる。

 

 

 

「メ・ガ・ラ・ラ・ラ──ッ!!」

 

 

 

 ガルヴァチスの周囲に電気で出来た障壁が展開され、それがヴォルカニドとブリザベオをそれ以上通さないどころか弾き返す。

 

『ッ……こいつ、ビリビリしたのを張ってやがる!!』

『ハザードフォルムを解除しろ、兄弟。正面戦闘で押しきるぞ兄弟』

『合点兄弟!!』

 

 高速戦闘特化形態であるハザードフォルムを解除した二匹は、再び並び立つ。

 そして、ヴォルカニドは熱気を、ブリザベオは冷気を纏い──ガルヴァチスへと向かって行くのだった。

 ガルヴァチスの身体がピキピキと音を立てて凍っていく。ブリザベオの目が光っていた。極寒の闘神としての権能だ。睨むだけで目の前の敵を氷漬けにすることができるのである。

 その背後からヴォルカニドが大顎を開き、全身に溶岩を纏う。

 自らを火山に見立て、特大の噴火を見舞う──

 

 

 

【ヴォルカニドの プライマルボルケーノ!!】

 

 

 

 超特大の火山弾が氷漬けになった大蜂に直撃した。

 氷漬けにしたのだ。今度はバリアを張る事も出来ないし、避ける事も出来ない。

 更に、そこにダメ押しと言わんばかりに、ブリザベオが氷河と見紛うほどの巨大な氷の塊を二つ顕現させて、ガルヴァチスを押し潰す。

 

『──避けるなよ』

 

 そこに、巨大な槍と化したブリザベオが突貫し──貫く。

 

 

 

【ブリザベオの アイスエイジブレイク!!】

 

 

 

 爆砕する氷河。

 確かに手ごたえはあった。

 闘神全力のオオワザによるデスコンボだ。事前に氷漬けで動きを封じるオマケまで付けたのである。

 しかし──砕けた氷河の中から、何事も無かったかのようにそれは姿を現す。

 

 ジ、ジジジ……

 

 一瞬、影のようにそれが揺れたような気がした。

 そして星狩の悪魔は一瞬でヴォルカニドに距離を詰める。

 その両前脚には、巨大な稲光の槍が握られており、振りかざせば相手を特大の雷鳴で打ち付ける。

 オオワザを使った後の反動で動けなかったヴォルカニドは吹き飛ばされ、そして振り向きざまにブリザベオもまた、稲光の槍で薙ぎ払われてしまう。

 

「……メ・ガ・ラ・ラ・ラ……!!」

 

 反撃に大顎でガルヴァチスを挟みこもうとするヴォルカニド。

 だが、手応えはない。気が付けばガルヴァチスは闘神の背後に回り込んでいるのだった。

 そしてヴォルカニドの頭部を稲光の槍で──突き貫く。

 続くブリザベオも飛び掛かってくるが、ガルヴァチスは羽根を広げると大量の小バチを召喚。

 そのままブリザベオに集らせる。

 

『な、なんだ、これは──装甲が──食われていく!?』

 

 パキパキと音を立てて、ブリザベオの装甲は小バチによって蝕まれていく。

 すぐに冷気を展開して小バチを氷漬けにして砕くブリザベオだったが、彼は自らが先程までの力を出せない事に気付いた。

 ただ単に装甲を食べただけではない。こちらの持つエネルギーを小バチ達は喰らい尽くしたのだ。

 

『成程な、まさに狩りバチ……自ら獲物を仕留めに行く天性の捕食者よ!!』

『おまけにそれを子供たちの苗床にするってわけか!!』

「メ・ガ・ラ・ラ・ラ……!!」

 

 ガルヴァチスの身体から電磁パルスシールドが展開されていく。

 そして、それを纏ったまま大量の電気弾をまるで蜂のように闘神たちに飛ばしていく。

 数の暴力。大量の弾幕による飽和攻撃。すぐに、ヴォルカニドが溶岩の弾で迎撃を図るがあまりにも数の差が多すぎる。

 相殺できるはずもなく、二匹は弾幕を受け続け、後ずさっていく。

 ただでさえ宇宙空間では行動の自由が効かない上に、単純にガルヴァチスの放つ電気攻撃の出力が大きすぎるのだ。

 そうして弾幕に苦戦する二匹に対し、死刑宣告を告げるかのように、パルスシールドを展開したままガルヴァチスは突撃するのだった。

 

 

 

【──ガルヴァチスの プラズマスフィア!!】

 

 

 

 ガルヴァチスの胸の鉱石が一際輝いた。

 槍を更に巨大化させ、ガルヴァチスは羽ばたき、二匹を切りつける。

 電気の障壁はありとあらゆるものが近付くことを許さない。

 ヴォルカニドとブリザベオの装甲は既に剥がれ落ちており、回復速度も落ちていた。

 疲弊しているのだ。電気の障壁を破壊するだけの有効打が出せない上に、自由が効かない。

 そればかりか、相手は宇宙空間での遊泳に長けた宇宙生物で、地の利が明確に出てしまっている。

 トドメを刺すと言わんばかりに槍を振り上げた狩蜂の王は、自らが展開した電気の障壁を更に大きく広げていく。

 そして、あろうことか今まで外敵が入り込むことを防ぐために使っていた障壁の中に、今度は闘神たちを招き入れたのである。

 

 

 

【ガルヴァチスの ハンティングゾーン!!】

 

 

 

『な、何だ!? どうなってやがる!?』

『兄弟、嫌な予感がするぞ兄弟──ッ!!』

『しゃらくせぇ!! 反撃のチャンスだ!!』

 

 火球を吐き出そうとするヴォルカニド。

 だが、反撃のチャンスなどというものが訪れる事は無かった。

 彼らは招き入れられたのではない。閉じ込められたのである。

 狩蜂の王の背後に、羽根を広げた悪魔のような影を二匹は感じとる。

 

『おい、シンクロを切るぞ!!』

『了解だ兄弟』

 

 嫌な予感がしたヴォルカニドは──地上に居るメグル達との精神同調を独断で切断した。

 そして次の瞬間、四方八方から雷が闘神たちに襲い掛かる。

 この空間では入り込んだ者全てに、神鳴りの洗礼が待ち受けているのだ。

 一度招かれたが最後。闘神の力をもってしても障壁を中から壊す事は出来ず、彼らは電気刑を延々と受け続ける事になるのである。 

 もしも精神同調を切っていなかった場合、この苦痛は地上に居るメグルとアルカも受ける事になっていた。

 そうなれば、人間の精神で耐えきることなど出来るはずがない。ショック死は避けられない。

 

 

 

 しかし。

 

 

 

『舐めんなよ……我らはマーニャ最強の戦士だぜ』

 

 

 

 その電気刑を受けて尚。

 ヴォルカニドとブリザベオは立っていた。

 正直、意識を保つのもやっとだったが、それでも意地と根性だけで彼らは羽根を羽ばたかせ、脚部スラスターの火を噴かせてガルヴァチス目掛けて飛ぶ。

 

 赤と青の閃光。それが大バチに、ぶつかっていった。

 

『聞けよ、大バチ!! 我らはこの程度で屈することはない!!』

『しぶといのだけが取り柄なんでな。罷り通るッ!!』

 

 ガルヴァチスは大槍で二匹を受け止める。

 しかし、それでも──闘神たちの闘志を押しとどめる事は出来はしない。

 

『兄弟!! 奴が発電する時、必ず光っているのが胸の宝石だ!!』

『要するに──此処さえぶっ壊せば良いってこったなぁ!!』

 

 ガルヴァチスの胸でキラキラと光るオージュエルにも似た鉱石。

 闘神たちは流石に戦闘の天才だった。ガルヴァチスがあれほど、此方に間合いを取る攻撃を仕掛けてきたのは、この鉱石を破壊されたくないからだ。

 しかし、想定外の反撃をしてきた闘神にガルヴァチスは間合いを詰める事を許してしまったのである。

 

 

 

 これまでにない最高出力の突貫。

 

 

 

 それがガルヴァチスの胸部の鉱石を打ち壊す──

 

「メ・ガ・ララ……ッ!!」

『へへ……やる事は、やったぜ……!! 後は、頼んだ……ッ!!』

 

 

 

 しかし。

 そこで闘神二匹の身体からもオーラが消えてしまった。 

 先のオオワザのダメージは決して小さくは無かったのである。

 力尽きたように二匹は宇宙空間を漂う。それを見たガルヴァチスは──胸の鉱石が破壊されたことに対し焦るように羽根をばたつかせるも、自らの使命を思い出したかのように──獲物である青き星に向かって行くのだった。

 

 

 

 狩りバチは己の身体を稲光へと変える。そして、文字通り──星へと「落ちて」いく。

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 マーニャの空には暗雲が立ち込めていた。

 闘神との精神同調が途切れ、早数十分ほど。

 メグル達は、いつ戻ってくるかも分からない闘神たちを待ち続ける。

 しかも、黒雲は稲光を吐き出し、次第にゴロゴロと鳴り始めるのだった。

 

「なんか、不穏だね……!」

「ああ。あいつら、あの後どうなったんだ……!?」

「結局どうなったのでち!?」

「……分からねえ。ただ、隕石の中に居た大バチのポケモン……バカみたいに強かった……! 闘神でも、押されていた……!」

 

 辺りはどよめく。

 伝説の闘神でも、此度の災禍には敵わないのか、と。

 とはいえ隕石は破壊され、マーニャが消し飛ぶ事態は一先ず避けられた形だ。

 後は闘神たちを信じるしかないのであるが──

 

 

 

 ゴロゴロゴロ──ビッシャァァァーンッ!!

 

 

 

 一際大きな雷が落ちた。激しい光。そして、耳が割れる程の轟音が辺りに響き渡る。

 

 

 

「……これはこれは、大きな客人でちね」

 

 

 

 住民たちの悲鳴が上がった。

 落雷の後に現れたのは、全身が漆黒の外骨格に覆われた巨大な蜂の怪物だった。

 しばらく身体を丸めていた怪物だったが、間もなく6本の脚を開いて宙に浮かび、羽根を大きく広げる。

 メグルもアルカも、そしてミアも、これが星を狩る災禍であると確信する。

 

「あいつら……負けたのか……!?」

「……仕方ないよね。すっごく強かったもん、あいつ……!!」

「これが、ガルヴァチス……ッ!」

 

 すぐさまパプリカの「退避ッ!! 退避でちーッ!!」の声で、住民たちは逃げ出した。

 

「お前達ッ! でちは住民たちを誘導するでち!! 後は──」

「分かってる!! 此処からは俺達に任せろ!!」

「皆の事、お願い!!」

「……こいつは、私達で対処しますッ!!」

 

 三人は並び立ち、ボールを投げる。

 中からはニンフィア、セグレイブ、そしてゼノの3匹が現れるのだった。

 

「……お前ら気を引き締めろよ」

「うんっ……これが、最後の戦いだね!!」

「……ゼノ。相手は……これまで戦った誰よりも強いです!!」

 

 悪魔の如し狩蜂の王の周囲に、球状の電磁パルスシールドが展開されていく。

 だが──メグルは気付く。心なしか、放つ電気が先程宇宙空間で見た時よりも弱々しい。

 

(こいつ、なんだか様子が……あっ!!)

 

 すぐに度付きゴーグルを掛けて、ガルヴァチスの身体を注意深く観察する。胸部だ。胸部の結晶がさっきとは違って砕けている。

 

(闘神たちのおかげだ! あいつらが頑張ってくれたから……今のガルヴァチスは、弱体化している!!)

 

 とはいえ、それでも並大抵のポケモンをしのぐ強さである事には違いない。メグルは気を引き締めて最後の戦いに臨む。

 

 

 

「メ・ガ・ラ・ラ・ラ──ッ!!」

 

 

 

【ガルヴァチスが 現れた!!】

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「──あー、キリさん大丈夫ッスかねぇー……」

「まだ言ってるのですよ。キリ様は忍者たちに任せておけばいいのですよ。万が一、何かがあった時に備えて、ヒメノ達はフォートマウンテンにゴーゴーなのですよ」

 

 なにも、ヒメノは一人だけでマーニャに来たわけではない。キリの護衛をするために渡航してきた忍者も同行していたのである。

 そのためノオトのキリを護衛すると言う役目は終わった。彼は今だ健在、立派な戦力の一人である。

 暗雲が立ち込めるスイング島の空港に辿り着いた二人は──スマホロトムでフォートマウンテンの場所を確認して嘆息した。

 こんなに雷が鳴り響いている時に、飛行するポケモンは使えない。陸路であの岩山の頂上に辿り着かなければならないのである。なかなかに手間だ。

 報告によれば──隕石は破壊されたらしいが、そこから未知の熱源が感知されたらしく、それが先程フォートマウンテンに落下したのだと言う。

 嫌な予感を禁じ得ない二人だったが、かと言って出向かないわけにはいかない。今もあそこではメグル達が戦っているのだから。

 

「……何か騒がしいのですよ」

「なんかあったんスかね?」

 

 そんな中、飛行機から降りた二人は妙な喧騒に直面する。 

 係員が何やら叫んでいた。

 

「ですからッ!! 今空港から出るのは危険ですッ!! 凶暴化したポケモン達が空港を包囲していて……」

「……うーわマジッスか」

「やれやれ、キャプテンの出番なのですよー」

「ああ、そこの子供たち──!! 今は空港からは──」

 

 ノオトもヒメノもボールを放り投げる。

 中から飛び出したのはルカリオ、そして──ジュペッタだ。

 

「あっ、ちょっと!!」

「オレっち達、これでもキャプテンなんスよ。サイゴク地方の。何処の野生ポケモン共ッスか、大人しくさせてやるッス──拳で」

「はぁ!? 何処の田舎だよサイゴクって──良いから子供は寝てなさい!!」

「はぁぁあ!? サイゴク知らねえんスか!? トレンディな列島の大都会ッスよ!!」

「大嘘を吐くのはやめるのですよ」

 

 悲しいかな、どう足掻いても列島の片田舎でしかない。

 係員を押しのけ、ヒメノは空港の窓から外の様子を見やる。

 

「何なのです、あれは──!?」

 

 なるほど確かに、滑走路周辺にもポケモン達が集り始めている。

 だがいずれも、様子がおかしい。目は金色に光っており、更に身体には妙な色の電気が迸っている。

 

「もしかして、例のガルヴァチスとやらの影響なのです……ッ!?」

 

 いずれにせよ、彼らを鎮圧しなければ話にならない。

 ヒメノはノオトに「とっとと行くのですよ」と目配せした。ノオトは未だに係員にお国自慢をしていた。

 

 

 

 げ ん こ つ

 

 

 

 この手に限る。

 

 

 

 ……世界一無駄な時間であったことは言うまでもない。

 頭にたんこぶを作り、目を回した弟を引きずり、ヒメノは暴走したポケモン達の掃討に向かうのであった。

作者の作風に期待するものは?(良ければ感想欄でも教えて下さい)

  • ラブコメ、純愛
  • 戦闘シーン
  • シリアス、曇らせ
  • ギャグ、コメディ
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