続・ポケモン廃人、知らん地方に転移した。【完結】 作:タク@DMP
※※※
【ガルヴァチスは しょうたいふめいのオーラをときはなつ!!】
辺りの空気が一変する。
巨大バチの化身は両前脚に二本の槍を握り締め、威嚇するように咆哮する。
雷雲が轟々と鳴り響く中、メグル達は最後の戦いに挑む。
「──ニンフィアッ!! ”ハイパーボイス”!!」
「──セグレイブ、”ストーンエッジ”ッ!!」
「──ゼノ、”だいもんじ”ッ!!」
三者三様。
全長5メートルは下らない巨体を誇るガルヴァチス目掛けて、技を射出する。
地面を駆け抜ける岩の刃が、そして大の字に広がる炎が、そして──妖精の加護を受けた大音声が一斉に襲い掛かる。
それら全てをガルヴァチスは展開した電磁パルスシールドのみで受け止めてしまうのだった。
……しかし。
「メ・ガ・ラ・ラ・ラ!?」
びりびりと音を立てて胸部の割れた鉱石から電気が漏れる。
パルスシールドはすぐに途切れてしまい、岩の刃こそ弾き返したガルヴァチスだったが、続け様に飛んできた炎を浴び、そしてニンフィアの咆哮に至ってはまともに受けて地面に落ち、悶え狂う。
「やっぱりだ!! あいつの胸の鉱石は発電器官!! あれが壊れたから、さっきみたいな大出力のシールドが張れないんだ!!」
「闘神様々だよ!! これで、まともに攻撃が通るね!!」
「効いてます……いくら宇宙生命体と言えど、ポケモンはポケモンです!!」
しかし、喜ぶ暇はない。
猛攻を受けたガルヴァチスは、その感情の無い複眼で獲物たちを舐めるように一瞥すると、再び羽根を大きく広げる。
そして、夥しい数の悪魔の眷属が次々にその羽根から飛び出してくるのだった。
隠れていたのか、はたまた最初から格納されていたのかは分からない。
だが、ガルヴァチスをそのまま全長3cm程度のミニサイズに縮小したようなそれらは、一斉にポケモン達目掛けて襲い掛かる。
【ガルヴァチスの こうげきしれい!!】
見ただけでメグルも、以前戦ったビークインの専用技に類するものであると察した。
ただし、その時とは違って量も子分1匹1匹のサイズも比較にならない。
すぐに空は災禍の黒によって埋め尽くされる。獲物目掛けて小バチ達の群衆はポケモン、更にはトレーナー達目掛けて襲い掛かってくる。
子分の小バチ達は確かに身体こそ全長5cmと小さいが、親分譲りの大顎に加えて、まるでアイスピックのような鋭い毒針を腹部に仕込んでいる。
誰が見ても分かる。刺されて病院送りならば幸運な方だろう、と。
……そもそもこの規模の群れに刺されては、全身が蜂の巣のように穴だらけになってあの世送りである。
「いやぁぁぁーっ!? 蜂の群れーッ!?」
「あの数を全部撃ち落とすのは……無理です!!」
無理です、と言い切ったミアは──ゼノにパッチを当てる。
その姿はゲンガーに酷似した姿へと変わっていく。
「だから、パルスシールドで防いで──毒で全部一網打尽にしますッ!!」
周囲に電光の障壁が展開される。
更に、ゼノが噴き出した猛毒のガスが拡散していき──近付いてきたハチを全て猛毒で飲み込んでいく。
「毒と電気の併せ技か!!」
「電気で敵の侵入を防いで、殺虫剤でコバチたちを撃退!! 害虫駆除のお手本だーッ!!」
メグルが叫ぶ間もなく、小バチ達は皆ひっくり返って地面に落ち、そのまま粒子となって消えていった。
幾ら宇宙生物と言えどゼノの毒も普通に通用するのだ。
問題は──ガルヴァチス本体も空中で毒針を向けた突撃姿勢に入っている事である。
「メ・ガ・ラ・ラ・ラ」
「……でも、ごめんなさい、あのサイズのハチは多分無理ですーッ!?」
急降下するガルヴァチス。
すかさず、セグレイブが”ストーンエッジ”を放って迎え撃つが、それすらも貫通してゼノのパルスシールドを真上から毒針で貫く。
【ガルヴァチスの ワイルドボルト!!】
パルスシールドに、ガルヴァチスの巨大な毒針が突き刺さる。
更にガルヴァチスは毒針を起点として黒い稲光が前身を覆っている。
それがゼノのパルスシールドに亀裂を入れていく──
──ぴき。ぱきぱき。みしっ──
パルスシールドが罅割れ、砕かれる。
そして、ガルヴァチスはゼノを真上から突き貫き──地面に捻じ伏せる。
幸い、ガス状の身体であるが故に、すぐさまゼノはガルヴァチスから逃げ果せて、ミアの傍に再び佇むが、全身に黒い稲光が迸ったかと思えば苦しそうに呻くのだった。
「マヒ状態──!? どうして──ッ!?」
”かいふくのくすり”を打ち込みながらミアは考察する。電気タイプである現在のゼノは麻痺しない。
にも関わらず──あのガルヴァチスの攻撃を受けた途端に、身体が麻痺してしまった点。
それを考えた時、ミアの脳裏に最悪の可能性が過る。
あのガルヴァチスというポケモンは相手のタイプ関係なく電気技を当てて麻痺状態に出来るのではないか──と。
それを可能にするのは、恐らくガルヴァチスが持つ特性にあるとしか考えられない。
「メグルさん、アルカさん、気を付けてください!! あいつの特性……多分、こっちのタイプに関係なくこっちを麻痺させられます!!」
「待てよ、まさか──」
メグルはスマホロトムを起動してガルヴァチスをスキャンした。
以前ロトムが分析して解析したある特性と、今目の前に居るガルヴァチスが持つ特性が一致したのである。
【特性:いぶんのゆうせい】
さぁ、とメグルの額に汗が伝った。
単に麻痺しない相手を麻痺できるだけならばどんなに良かっただろうか。
この特性は以前ヒャッキ地方で戦ったオーラギアスの亜種が持っていたものと全く同じなのである。
その効果はミアが推測する通り、本来ならば麻痺しないポケモンを麻痺させることができる効果も勿論含まれている。
だが最大の問題点は──それに加えて、ポケモンの持つ特性も無視して相手に攻撃出来る点だ。
(いや、でも、幸い……特性をアテにして攻撃を無効化しようとする奴はいねえから良かった……のか!?)
「ちょっと待ったでちーッ!! これ以上の狼藉は許さねーでち!! でちとドサイドンが相手するでちよーッ!!」
「ドドンガドォォォォーンッッッ!!」
「あっ……」
お手本のような、電気技を特性で無効化するポケモンを引き連れてパプリカがベビーカー共々馳せ参じたのである。メグルは頭を抱えた。
「やった!! ”ひらいしん”だッ!! ”ひらいしん”であいつの電気技を全部吸って貰える!!」
「今まで散々ヒューマンエラーだの何だとの詰ってすいませんでした、今はあの赤ちゃんが救世主に見えます!!」
「いや、待て……ガルヴァチスの特性は──」
「オラァ、クソバチィ!! ドサイドンの特性は”ひらいしん”ッ!! 水タイプでありながら電気技が効かねえのでちよ!! テメェの電気なんざ痛くも痒くも──」
喜び勇んでドサイドンが腕を振り回しながら、ガルヴァチスに向かって突っ込んでいく。
そんなドサイドンに──ガルヴァチスはあしらうようにパルスフィールドを展開。そのまま、電気の球体をぶつけるのだった。
【ガルヴァチスの プラズマスフィア!!】
激しい稲光と共に、ドサイドンの身体が感電する。
何も知らないミアとアルカは唖然としていた。特性でドサイドンに電気技が効かない事は彼女達も知っていたからである。
間もなくガクガクと痙攣しながらドサイドンは倒れるのだった。物理防御力は非常に高いドサイドンだが、何処までいっても特殊防御力は紙耐久だったのである。
追いうちのように”こうげきしれい”でハチが集っていき、完全にドサイドンにトドメを刺す。エネルギーをドサイドンから吸収した小バチ達はガルヴァチス本体に戻っていくのだった。
【ドサイドンはたおれた! パプリカは戦えるポケモンがいない!】
「あー……コホン」
モンスターボールを構えてリターンビームをドサイドンに射出したのち、パプリカは首を横に振った。
「しゃーねーのでちッ!! 赤ちゃんだからッ!!」
「オメーは何しに来たんだよ!!」
ベビーカーに取り付けられたジェットエンジンが噴射し、すぐさまその場からパプリカは離脱する。何ともまあ高性能なベビーカーであった。
微妙な顔でアルカもミアも、残った大バチを見上げるのだった。戦力がすぐにやってきて、すぐに去っていった。結果的に坑道のカナリアの役目を果たしたが、それだけである。
「てかあいつ、”かたやぶり”持ちなの!? ヤバすぎるんだけど!!」
「……身をもってあの大バチの恐ろしさを思い知らせてくれましたね……」
「ああ……ドサイドンは……必要な犠牲だったな……」
「で、どうするの? ”ひらいしん”で電気技受けてもらうのって、割とボクの中で有力な手だったんだけど」
「……嫌な予感がしてましたが、此処まで無法な特性持ちだったとは」
ミアがゼノにパッチを当てる。
今度はゼノの姿が火竜のそれへと変わっていく。
「ばぎゅあ」
「……一つだけ、手が無いわけではありません。最大出力のオオワザで奴を全部纏めて焼き尽くします」
「できるのか?」
「ただ──例によって、チャージに時間が掛かります。その間、奴を食い止める事は出来ますか?」
「……」
メグルとアルカは──顔を見合わせ、頷く。
可愛い妹分の頼みだ。断れるわけがない。それに、今この場で最もガルヴァチスに大ダメージを与えられるとすれば、ゼノのオオワザしかない。
「ッ……動きを止めれば良いんだね!!」
「俺達に任せろッ!!」
メグルはオージュエルにカードを翳す。
ニンフィアの背中にリボンの形をした羽根が生えていく。
相手の動きを鈍らせるならば──ギガオーライズしかない。
そこに、多彩な岩技を持つセグレイブも加われば、大バチの動きを多少だが止める事は可能だ。
ドサイドンのエネルギーを小バチ達から供給したことで、体力を回復させたガルヴァチス。胸部の鉱石は再生しているのか、先程よりも大きくなっている。
もしも完全に再生してしまった場合、本当に手が付けられなくなってしまう。
その前に、一撃でケリを付けなければならない。
「行くよ、セグレイブ! ”がんせきふうじ”!!」
「ニンフィア──いやしのオーラを発動だ! ガルヴァチスの戦意を刈り取れ!!」
「ふぃるふぃーっ!!」
ニンフィアの脚から癒しのオーラが波紋となって周囲に拡散していく。
そして、それがガルヴァチスのパルスシールドとぶつかり合い、拮抗する。
だが、それを狙ってセグレイブは”がんせきふうじ”で大量の岩石をガルヴァチスの上に降りそそがせるのだった。
「ッ……ゼノ。お願い──自己犠牲の為じゃない。私は、貴女と一緒に戦いたいんですッ!!」
「ばぎゅあッ!!」
※※※
「──お前は、その人工ポケモンと心が繋がっているのでちね」
「……はい」
「ポケモンと人間の五感が繋がっているということは、相手の考える事がいつでも分かると言う事。しかし──それも善し悪しでち」
「……どういうことですか?」
「優しすぎるがあまりに、ポケモンの側が力にリミッターを掛けちまってるのでちな」
「……あっ」
ミアには覚えがあった。
ゼノの苛烈さは、付き合いが長くなるごとに大人しくなっていった。
それは、バトルが激しくなればなるほどに、五感を共有しているミアの側にダメージが入る事をゼノが理解してしまっているのだ。
ゼノが痛みを感じれば、ミアも痛みを感じる。ミアがすっかりそれに慣れてしまっているだけで、ゼノの側はできるだけ主人に負担を掛けたくないと考えてしまっている。
故に、それがゼノが本気を出す事に歯止めをかけてしまっていた。
「お前達の繋がりはある種の呪いみてーなもんでち。だから──今一度、しっかり話すのでちよ」
※※※
「……ゼノ。少し良いですか」
「ばぎゅあ」
その日の夜、ミアはゼノに語り掛けていた。
ずっと以心伝心だと思っていた。だが、それに甘えてしまっていたのだ、とミアは気付く。
自分が知らないところでゼノは、ずっと自分に気を遣っていたのだ。
無理もない、と彼女は目を伏せる。マーニャに来た時も、無理矢理ゼノを体内に潜ませていたため、ミアはずっと苦痛を感じていた。だが、それは当然ゼノにも伝わっていたのである。
ゼノが痛いと感じれば、ミアも痛い。
だが、同じようにミアが痛いと感じればゼノも痛いのだ。
「……ごめんなさい。私、また突っ走ってた」
「ばぎゅあ……」
「メグルさん達は、きっと闘神を手懐けます。でも、そうしたら私は……また置いていかれてしまう。そう思っちゃって」
「……ばぎゅあ」
「貴方に広い世界を見せてあげたい、ってずっと思ってた。だから、貴方にもう気を遣わせる事なんて無いって思ってた」
ワームホール公団は潰えた。
もう、ミアが戦う必要は本当ならば無い。
だが──それでも今、メグルとアルカについていき、一緒に戦う理由があるとするならば──ミア自身が彼らを強く好いてしまっていることだった。
「……いつの間にか……私は貴方の為だけじゃなくて、大好きなあの二人の為に戦ってた。公団とか関係なく、あの二人の力になりたいって思ってしまった」
その為ならば、ミアは自分がなりふり構わなくなっていた事に気付く。
「……私は貴方を、戦うための道具……倒すべきものを倒すための力として使ってた」
「……ばぎゅ」
「そんな私を気遣う必要なんて無いのに」
「ギュルルルルルルオオオン」
ごろごろと喉を鳴らしながら、ゼノはミアに擦り寄った。
「……そっか」
答えはすぐに分かった。
我々はひとつ。この世に残った”きょうだい”だ。
ミアが好きなものは、自分にとっても好きなもの、だから──守りたい。
だが同時に──ゼノもまた、自分と正面から向き合ってくれたミアが大好きなのだ。
「ごめんね……ゼノ。もう少しだけ……私のワガママに付き合ってくれますか?」
「バギュオオオオン」
月の下で、少女と竜は──誓う。
「君が私の痛みを背負うなら……私も、君の痛みを背負います。同じ痛みを……感じていたいんです」
今度は──復讐ではなく、大切な人達を守る為だ。
※※※
「オオワザ──”ミッシングブレスデリート”ッ!!」
【タイプ:ゼノの ミッシングブレスデリート!!】
降ってきた岩石を力づくで振り払ったガルヴァチスを待つのは、ゼノの巻き起こした巨大なブレス。
一瞬だけ、ピクシー、ゲンガーの姿がオーバーラップし、ブレスには稲光と妖気が入り混じる。
そこに龍気も足し、特大の獄炎弾をゼノは撃ち放った。
”がんせきふうじ”によって足を封じられたガルヴァチスはそれを避ける術が無い。
「メ、メガララララララッ!?」
同時にミアは喀血した。
ゼノの喉が火炎で焼き切れたのと同時に、彼女の喉もまた焼き切れたのだ。
しかし──それは、ゼノがリミッターを完全に外した事を意味していた。
大好きな人達を守るための一撃。それが──大バチにぶつけられる。
弱体化したパルスシールドは叩き壊され、ガルヴァチスは──火球を浴び、一瞬で灰になるのだった。
「や、やった……ッ!!」
メグルが声を上げた。
直撃──効果はバツグンだ。
後に残るのは灰。
そして、外骨格を焼き尽くされたガルヴァチスのみだった。
「メ・ガ・ラ・ラ・ラ……ッ!!」
ボロボロ、と羽根も脚も焼け落ち、死にかけのガルヴァチス。
だがその腹部だけがうねうねと動いており、地面にその鋭い毒針を突き刺す。
突き刺したのだが──突風が吹くと共に、ガルヴァチスの身体はボロボロと炭のように崩れ落ちてしまうのだった。
「終わった……んだよね」
「ミア──ッ」
メグルは思わずミアに目を向ける。
膝を突いてしまっており、へたり込んでいる。ゼノも限界と言わんばかりに倒れ込んだ。
これまで見た中で一番大きな”ミッシングブレスデリート”。ゼノ本人だけではなく、五感を共有するミアにも反動が入っているのだ。
「無茶しやがって……」
「う、あぅ……かは」
咳き込めば血が撒き散らされる。相当な無理をしたことは確実だった。喋る事も出来ないのか、彼女は震える手でメグルの手を握り締め、力無く笑ってみせる。
「どうしよう、ミア……すっごく苦しそうだよ!!」
「とにかく、安全な所に担いでいこう。ガルヴァチスは倒したし──」
「メ・ガ・ラ・ラ・ラ……」
ぞくり、と肌が粟立ち、二人は振り返る。ニンフィアとセグレイブが威嚇するように唸っている。
「フィッキュルルルィィィ……!!」
「コォオアアアアアアアン……!!」
「ど、どうしたの……!? そこには、何も、居ないよね……!」
「いや、でも、聞こえた……!! 今聞こえちゃいけねーもんが聞こえた気がする!!」
大バチは滅んだはずだ。もう居ないはずだ。誰もがそう思っていた。
しかし次の瞬間──ボコボコと地面が盛り上がり、そこから這い出して来たのである。
4匹だ。全部で4匹の黒いハチの怪物が、穴を掘って這いずり出てきたのである。
【ガルヴァチスの 群れ が現れた!!】
「ボ、ボク、悪い夢でも見てんのかな……!?」
「な、何で増えてんだよ──ッ!?」
災禍は終わりはしない。
むしろ──狩りは此処からである。
悪魔による追い込み猟が今、始まった。
DETA
ガルヴァチス いなずまポケモン タイプ:電気/虫
特性:いぶんのゆうせい(電気タイプと地面タイプのポケモンに”でんじは”が当たる上に、技の追加効果で麻痺させることができる。また、相手のポケモンの特性に関係なく技を出せる)
種族値
H90 A130 B90 C130 D90 S150
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ラブコメ、純愛
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戦闘シーン
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シリアス、曇らせ
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ギャグ、コメディ