続・ポケモン廃人、知らん地方に転移した。【完結】 作:タク@DMP
※※※
フォートマウンテンの頂上で横たわっていた闘神・ブリザベオの眼に、再び光が灯る。
視界が再び開け、彼は人ではなくなった自らの身体を実感する。
想像以上に重い。自分の身体なのに自分ではないようだ。
『……死んでいる、場合じゃないな』
例えるならば巨大な重機を頭の中で命令を出して操作しているような感覚に近い。
己の背中にある羽根を意識すれば、大きく広がった。
辺りには冷気が漏れ出し、凍り付いていく。
『今、行くぞッ!!』
闘神は滅びはしない。守るべきものを──守る為に。
※※※
「──メ・ラ・ヴォ・ル・ガ・ルーダ!!」
咆哮を上げ、ガルヴァチスが槍を振り上げれば火柱が上がり、ルカリオとジュペッタを弾き飛ばす。
ゼノが地面を叩き、”じしん”を発生させるが──それさえも自ら展開したパルスシールドで受け止めてしまうのだった。
だが、流石にそこは4倍弱点の地面タイプの技。パルスシールドは音を立てて砕け散る。そこに、セグレイブが”りゅうのまい”を舞いながらガルヴァチスに迫るのだった。
「”パワフルエッジ”ッ!!」
セグレイブの岩の刃と、ガルヴァチスの槍がぶつかり合う。
しかし、膂力が違いすぎる。ガルヴァチスはセグレイブの巨体をあっさりと一振りで払い除けてしまうのだった。
「此処は──ランクルスッ!! ”トリックルーム”ですッ!!」
最早なりふり構ってられない。
ミアは追加でランクルスを繰り出し、時間の流れを逆行させる空間を展開させる。
非常に素早いガルヴァチスの身体は鉛のように重くなり、その隙に雪崩れ込むようにしてルカリオとジュペッタが襲い掛かるのだった。
「メグルさんの仇ィッ!! ”はどうだん”ッ!!」
「ジュペッタ、”のろい”で更に体力を削り取るのですよッ!!」
ガルヴァチスの身体に大きな釘が現れ、大バチの化身はもがき苦しむ。
更にそこに”はどうだん”、加えてセグレイブの”パワフルエッジ”が立て続けに叩き込まれるのだった。
刃は、ガルヴァチスの胸から生えた発電器官である鉱石に突き刺さる──
「圧し折れェェェェェーッッッ!!」
アルカとセグレイブの眼から黒い稲光が迸る。
ギガオーライズの精神同調は極限にまで達していた。
シンクロ率が上がっていき、重騎士は力任せにガルヴァチスの発電器官を叩き割る。
「────ッ!?」
悲鳴の如き絶叫が辺りに鳴り響いた。
そして同時に、ガルヴァチスは怒りのままに槍を振り回す。
薙ぎ払いだけだ。ただ、空に向かって薙ぎ払っただけなのに、展開されたトリックルームは音を立てて崩壊する。
「ウソでしょう!? トリックルームを力づくで破壊した!?」
「メ・ガ・ラ・ラ・ラァァァァーッ!!」
異次元の如き速度で飛翔したガルヴァチスは辺り一帯にパルスシールドを展開。
ルカリオ、ジュペッタ、ゼノ、ランクルス、そしてセグレイブを纏めて飲み込むのだった。
発電器官を破壊しても尚、王たるガルヴァチスの力は収まる事を知らない。
【ガルヴァチスの ハンティングゾーン】
四方八方、辺りから稲妻が飛び、獲物を落雷で滅多打ちにしていく。
逃げ場など無い。一度招き入れた獲物たちが脱する手段など無い。
雷が鳴り止んだ後に、残るのは──黒焦げになった獲物たちだけだ。
ランクルス、ジュペッタ、ルカリオは──戦闘不能となる。
辛うじて耐える事が出来たのは、タイプ相性で電気技を半減することができるゼノとセグレイブだけだ。
それでも身体は痺れてしまっており、立っているのもやっとではあったが。
「そ、そんな、力の差が大きすぎる……!!」
ノオトはギガオーライズの反動による虚脱感を味わいなあがら、呆然としていた。
確かにタイプ相性は悪い。
だが本来、ギガオーライズしたポケモンの能力は飛躍的に上昇する。
此処まで一方的に叩きのめされるはずが無いのである。
幾ら強いと言っても、ギガオーライズしたポケモンやヌシポケモン、メガシンカポケモンで囲めば戦えていたマイミュとは次元が違う強さだ。
もしも此処にアケノヤイバやヨイノマガンが居たのならば──少しはまともに戦えていたのだろうか、と弱気な考えが浮かんでしまう。
「メグルを……メグルを返せよッ!!」
しかし、そんな弱気はアルカの金切り声で掻き消された。
麻痺を押してでも、セグレイブは無理矢理”りゅうのまい”を舞って素早さを上昇させ、再びガルヴァチスに立ち向かう。
同じくゼノも無理矢理舞を舞い、ガルヴァチスに立ち向かっていく。
その様を見て──ノオトは頬を叩いた。
「……そうだ。オレっちにとって、メグルさんは……」
初めて出会った頃の事を思い出す。
トレーナーとしては、遥かにノオトの方が格上だった。
だが、一緒に旅をする中で、兄貴分として可愛がってもらったこと。そして、弱くても自分より遥かに強い敵に迷わず立ち向かっていった彼の雄姿に、何度もノオトは元気づけられた。
サイゴク最弱のキャプテンであり、それに負い目を感じていたノオトは──いつの間にか、負い目も弱気も全部跳ね返せるくらい強いキャプテンになっていた。
セグレイブがガルヴァチスを引き付けている隙に、ノオトは”げんきのかたまり”を持ってルカリオに近付く。
「頼むルカリオ……もう一回戦ってくれ……オレっち、こんな所で折れたら、メグルさんに顔向け出来ねえよ!!」
メグルが居なければ、イッコンタウンを救う事も、サイゴク地方の危機を払う事も、何より──姉との諍いも解決することは無かった。
「手前勝手なのは分かってるけどよォ……少しでも報いてぇんだよ……!!」
「ガォン」
力無く鳴くルカリオの胸元で”げんきのかたまり”が消えていく。
その粒子は、彼に再び戦うための体力と気力を分け与えるのだった。
「ジュペッタ。此処で倒れては、キャプテンとして名折れ……ッ!! もうひと踏ん張りなのですよ!!」
「ケタケタケタッ!!」
ガルヴァチスは徐々にだが弱体化している。
追い込んでいる。
何故ならば、ヒメノのジュペッタが”のろい”を掛けた事で体力が削られ続けているからだ。
何故ならば、アルカのセグレイブが発電器官を破壊したことで、パルスシールドの威力は先程に比べて大きく減衰しているからだ。
先のオオワザで電力を使い切ってしまったのもあるのだろう。動きは明らかに鈍くなっている。
鈍くなってはいるのだが──それでも、遠い。
電光の如き速度でルカリオの背後に回り込み、槍を薙ぎ払う。
それだけで体格で大きく劣るルカリオは吹き飛ばされ、ノオトを巻き込んで倒れてしまうのだった。
更に、その勢いだけでジュペッタを大顎で挟みこむと全身の電気を流し込む。
後に残るのは、黒焦げの人形だけだ。
襲い掛かるゼノも、槍で受け止めて反撃。その身体に槍を突き刺すと電気を流し込んでノックアウトさせてしまう。
残るはセグレイブとアルカのみ。しかし──
【ガルヴァチスの プロミネンスフレア】
天高く舞い上がったガルヴァチスが、今度は黒い太陽を幾つも浮かびあげる。
まだそんな力があったのか、とアルカ達は嘆息した。
抵抗する獲物たちを「無様」とあざ笑うように、狩り蜂の王は始原の炎を浮かび上げるのだった。
セグレイブどころではない。
今此処にいる全員を、狩りバチの王は蹂躙しようとしている。
「”ストーンエッジ”ッ──!!」
(ダメだ、間に合わない!!)
再びパルスシールドが展開される。
空中にいるガルヴァチスに”じしん”は当たらない。
この岩の刃で攻撃するしかない。だが、届くよりも先にあの黒い太陽が放たれる。
否──仮に届いたとしても、どちらにせよ待つのは死滅の運命だけだ。
「そ、それでも、メグルは諦めなかった……ならボクだって……ッ!!」
だが、迫る火球を前にアルカは今度こそ絶望を嫌でも思い知らされてしまう。
(やっぱり──ダメなの?)
それほどまでに、大切な人を失った絶望は──彼女を蝕んでいた。
今まで無理して戦っていた彼女は、折れかかっていた。
次々に倒れていくポケモン、漂う敗色。
そして圧倒的なガルヴァチスを前に、彼女は──相反する気持ちに苛まれていた。
諦めてしまいたい──と。
(バカ!!)
そう考えてしまい、アルカはガリッと自分の唇を噛む。
今もこうしてセグレイブは戦っているのに、どうして諦める事が出来るだろうか。
「そうだ、諦めるか……最後まで──ッ!!」
『──させるか──ッ!!』
地獄のような暑さの戦場に、乾いた冷たい風が吹き抜けた気がした。
ガルヴァチスの身体が突如、大きく吹き飛ばされる。
黒い太陽は消え失せ、ガルヴァチスはパルスシールドの範囲を絞り、迎撃態勢に移るのだった。
アルカは呆気に取られていた。
先程、頭を貫かれていたはずの闘神が──ブリザベオが、戦場に戻ってきたのである。
「ブリザベオ……ッ!?」
『良かった、誰も死んでねえな……!!』
「えっ──」
ブリザベオは岩の刃を生成すると、それをガルヴァチス目掛けて突き刺す。
パルスシールドは叩き割られ、更にそこへ緑色の光を纏って猛追するブリザベオがガルヴァチスを地面に叩き落とす。
「この、声は……」
頭に響いてきた声に、全員はブリザベオを見上げて言葉を失う。
そして、最も彼の近くに居たアルカが──ぽつり、とその名を呼ぶのだった。
「メグル……なの……ッ!?」
※※※
「起きろ」
「──起きるんだ、メグル」
「……ンだ、此処は」
”はかいこうせん”はニンフィアが力尽きたことで掻き消え、火球が迫る中──メグルは思わずニンフィアを庇った。
そこから記憶が無い。
辺りは暗く、氷柱が立ち並んでいる。
目の前には──ブリザベオが立っていた。
「……俺はガルヴァチスと戦ってたはず」
「結論から言おう。お前は死んだ」
「え”。……あー、やっぱり」
当たり前のように人語を発するブリザベオ。
だが、こうも”死んだ”と直接告げられると、メグルも堪えるものがある。
常識を超えた熱さ、そして息苦しさ。
その果てに──自分が死んだことをメグルは思い出した。
「幸い、お前の相棒は生きてはいるが……焼け焦げたお前の死体をアルカが発見した」
「……マジか……流石にダメだったか。だけど意外だぜ。死後の世界ってのは、はっきりと分かるモンなんだな」
「それは、此処が死後の世界ではないからだ」
「……あん? どういう事だよ」
「お前の魂は今、闘神の中に閉じ込められている状態だ」
「! ……それって」
メグルは思い返す。
確かにヴォルカニドは、灰化して崩れ落ちた。
だが、ブリザベオは頭部を貫かれたものの、辛うじて形状を保っていたことを。
「あの大バチは兄弟を食い散らかし、それで満足して飛んでいった。だが、闘神としての我──ブリザベオの身体はまだ滅んでいない」
「……えーと、話が見えて来ねえんだけど」
「そして、この身体を修復するのに、我は自らの力を使い果たした」
ブリザベオは頷く。
「我の魂は……もうじき、燃え尽きる」
「……!」
損傷した身体の再生には代償が伴う。
そして、彼はその代償を払いきった。
だが、中身の魂が居なくなれば、闘神は再び理性を失って暴れる災禍に成り果てる。
「お前には二つの選択肢がある。このまま安らかに死後の安寧を得るか、それとも──闘神として永遠に戦う運命を辿るか」
「……へ、へへへっ。マジかよ」
メグルは思わず笑みがこぼれた。
「死んだら終わりと思ってたけど……案外そうでもねェみてーだな。ま、ゴーストタイプとか普通に居る世界だしよ。こういう事もあるのかもしれねー」
「……選択とは言ったが、これは頼みなのだ。我は……長らく苦楽を共にした兄弟を、あのように好きにされて黙っていられるほど大人ではない」
しかし、もうブリザベオにはヴォルカニドを解放するための時間も力も残ってはいなかった。
最後に彼に残っているのは、自分の後継者にメグルを指名する事だった。
「……兄弟を、頼む」
「たりめーだ。俺だって、苦楽を共にした相棒を……このままにしておけない」
「二度と人の姿では生きられんぞ」
「構わねえよ。一度死んでんだ。もう1回チャンスがあるだけ、万々歳じゃねーか」
「……済まない」
それに、アルカはきっと自分が目を離したらすぐに死んでしまいそうな気がした。
今も昔も同じだ。放っておくことなど出来はしない。
「──やってやろうじゃねえか闘神……ッ!! コンティニューだ!!」
※※※
『代理を頼まれたんだよ、ブリザベオにな。こっからは選手交代だ』
「何で……死んだんじゃ……」
『へへ、悪いアルカ。確かに死んだよ俺ァ。でもな……あのまま終われるわけがねえから、化けて出てきたんだよ』
「バカ!! ……冗談キツいよ!!」
ブリザベオは羽根を羽ばたかせ、アルカの傍に降り立つ。
ポン、と音を立てて──アルカが腰にぶら下げていたボールからニンフィアが勝手に飛び出した。
姿は変わっていても、魂は同じ。ニンフィアは──相棒を前にぐっしゃぐしゃの顔で飛びつくのだった。
「に”ーッッッ!!」
『へへへ、悪いな……こんな格好で……』
「バカッ!! 何やってんだよ、本当に……二度と会えないって思ったんだよ!? 別れの言葉も言えないって思ったんだよ!?」
『ほんっと……ごめんな。だけど先ずは──あいつをブッ倒してからだ』
ガルヴァチスは怨嗟にも似た鳴き声を上げながら起き上がる。
思わぬ形でのメグルの帰還に、ノオトも、ヒメノも、そして──ミアも立ち上がる。
「……ったく、マジであんたって人は常識外れッスね!!」
「それでこそサイゴクの英雄なのですよー♪」
「……メグルさん」
『皆──待たせて悪かったな』
ニンフィアを背中に乗せ、ブリザベオは──否、メグルは再びガルヴァチスに相対する。
『好き勝手やってくれたな──反撃開始だッ!!』
「うんッ!! 行くよメグルッ!! 皆ッ!!」
作者の作風に期待するものは?(良ければ感想欄でも教えて下さい)
-
ラブコメ、純愛
-
戦闘シーン
-
シリアス、曇らせ
-
ギャグ、コメディ