続・ポケモン廃人、知らん地方に転移した。【完結】   作:タク@DMP

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第83話:最後のオーライズ

 再び現れた闘神を前に、狩人は心を震わせた。

 そうでなくては、狩り甲斐が無いというものだ、と。

 おまけに、極寒の闘神が現れたことで、ガルヴァチスの中に居るヴォルカニドの力が反応し、より強く炎を滾らせている。

 悪魔は──ブリザベオの力も奪う事にした。

 

「メ・ラ・ヴォ・ル・ガ・ルーダ!!」

『させっかよ。もうお前に不覚は取らねえ!! ニンフィア、掴まってろよ!!』

「ふぃーッ!!」

 

 リボンをブリザベオの身体に巻きつけ、ニンフィアは自分を固定する。

 これでもう、幾ら闘神が高速移動しても振り落とされることは無い。

 もう離れない、とニンフィアは──主人に強く強くしがみつく。

 

『発電器官はブッ壊れてる……パルスシールドの威力も下がってるはず──今なら行けるはず──ニンフィア、”めいそう”だッ!! 可能な限りッ!! ずっと!!』

「ふぃッ──」

 

 静かに目を瞑るニンフィア。

 その間に、ブリザベオは緑色の稲光を自ら纏い、ガルヴァチス目掛けて突貫する──

 

 

 

【ブリザベオの イノセントハザード!!】

 

 

 

 大きく飛翔するブリザベオ。

 その勢いで羽根が大きく開き、脚部は変形して折りたたまれ、戦闘機の如き姿へと変貌する。

 高速戦闘特化形態──ハザードフォルムだ。 

 その勢いでガルヴァチスに突っ込み、パルスシールドに罅が入る。

 すぐさま槍を振り払うガルヴァチスだったが、ハザードフォルムに変身したブリザベオは攻撃の反動を利用して宙返りし、それを躱してみせるのだった。

 

『おっと!! 重力下なら、テメェの反撃なんて受けねえよ!! そして──』

 

 ──ブリザベオの影から、ルカリオ、そしてジュペッタが飛び掛かる。

 至近距離での”はどうだん”、そして”シャドークロー”だ。

 

「──今までの分、しっかりお返しするッスよ!!」

「こじ開けるのですよッ!! 私達でッ!!」

 

 ミシ、ミシッと音を立ててさらにパルスシールドに罅が大きく入るのだった。

 現れた邪魔者を貫こうとする狩蜂の王だったが今度は背後から特大の火炎弾が襲い掛かった。

 

「──メ・ガ・ラ・ラ・ラァァァァーッ!!」

「証明します──私達の手で、この時代を、この世界を守ると──ッ!!」

「そんでもって──」

 

 迫りくるはセグレイブ。

 一瞬、ゼノの方に反応した隙を突くようにして必殺のオオワザがパルスシールドの罅に大きく突き刺さる。

 全身を剣に見立て、ただ一点を貫くための騎士の重撃。

 龍の誇りと、岩よりも重い想いを乗せた一撃が──狩りバチの王の牙城を崩す。

 

 

 

 

「──お前の、好きにはさせないッ!!」

 

 

 

【セグレイブの きょだいけん・グレイブヤード!!】

 

 

 

 

 

 パリンッ!!

 

 

 

「メ・ラ・ヴォ・ル──ッ!?」

 

 

 

【特性:パルスシールド ダメージを軽減する障壁を展開する。何度かダメージを受けると破壊される。接触技をした相手を麻痺させることがある。】

 

 

 

 砕け散る障壁。

 ガルヴァチスは、仰け反り、再度シールドを展開しようとするが──

 

『往生、しやがれ──ッ!!』

 

 

 

【ブリザベオの ストーンエッジ!!】

 

 

 

 ──直上。

 全身に岩を纏ったブリザベオが脳天からガルヴァチスを突き貫く。

 仰け反ったガルヴァチスの身体からは蒸気が噴き出し、溶岩の鎧が砕け散るのだった。

 今まで取り込んでいたヴォルカニドのオーラを身代わりにして、攻撃を受けきったのである。

 だが、それはガルヴァチスからは常夏の闘神の加護が失われたことを意味していた。

 体を走るラインは、元の黄色に戻っていく。

 

「メ・ガ・ラ・ラ・ラ──ッ!!」

 

 そして、流石のガルヴァチスも怒り心頭だった。

 狩る側の自分があまつさえこのような有象無象に追い詰められ、更に手にしたはずの力まで奪い取られたからである。

 王は遂に、この場に居る全てを自らの領域に閉じ込めようとする。

 

 

 

【ガルヴァチスの ハンティングゾーン】

 

 

 

 邪魔されない高度まで飛び上がり、ガルヴァチスは再びパルスシールドを展開し広げ始めた。

 

『マズい!! アレに閉じ込められたら、全員纏めて黒焦げだ──ッ!!』

「オオワザが来る──ッ!!」

『なら、我の力を使え!!』

 

 何処からともなく声がした。

 アルカの所持していた無記名のオーカードの一枚が強く熱を持つ。

 彼女はそれを取り出し、目を丸くした。雄々しいクワガタムシの刻印が刻まれていた。

 

「メグルッ!! 受け取って──オーライズ、ヴォルカニド!!」

『──ッ!』

 

 ブリザベオの身体に──溶岩のオーラが重なり、纏わりついていく。

 オオワザに対抗する手段は唯一つ。闘神二匹の力を重ねたオオワザで、パルスシールドを貫いてガルヴァチスを攻撃する事だ。

 起源の溶岩、そして終焉の氷河。

 二つの力が今、合わさったのである。

 

 

 

 

『──あんがとよ、ヴォルカニド。そしてアルカッ!! このチャンス、無駄にはしねえ!!』

 

 

 

【ブリザベオ<AR:ヴォルカニド> タイプ:[炎/虫]】

 

 

 

 ヴォルカニドの声はもう聞こえなかった。代わりに、ブリザベオの背中を押すように、強い追い風が吹く。

 全てを悟ったブリザベオは──スラスターを全開にし、空にまで逃げたガルヴァチスを猛追する。

 そして、敢えてパルスシールドの中を突っ切り、ガルヴァチスにまで肉薄した。

 

 

 

「貫けッ!! メグルッ!!」

『っらああああああああ!!』

 

 

 

【ブリザベオの プライマルインパクト!!】

 

 

 

 始原の炎と終焉の氷。

 その二つが合わさった混沌の一撃。

 巨大なヴォルカニドの影とブリザベオの影が現れ、それらが交互に飛び交ったかと思えば、双方からガルヴァチスにぶつかり、動きを止める。

 そして、浴びせられる電気になど構う事なく、ブリザベオは突っ込んでいく──

 

『ガルヴァチスッ!! テメェに恨みはねぇよ──お前は”そういう生き物”なんだ、目の前にあった餌を喰いに来た、ただそれだけだ──ッ!!』

「メ・ガ・ラ・ラ──ッ!!」

 

 二本の槍でブリザベオの身体を受け止めるガルヴァチス。

 だが、次第に槍は衝突の勢いに耐え兼ね、罅が入っていく。

 

『だけどなッ!! 俺達だって食われるために生きてるんじゃねえ!! お前達が俺達を喰いに来るなら……これから先も、抗い続けるッ!! 何度だってかかって来い!!』

 

 電気など、最早メグルにとっては苦ではなかった。

 きっとオーラとなったヴォルカニドが守ってくれたのかもしれない。

 しかし、それでもガルヴァチスの猛攻は止まりはしなかった。

 本気を出すとでも言わんばかりに羽根を大きく広げ、電気の勢いを更に強めていく。

 次第にオオワザの勢いは弱まっていき、ヴォルカニドの影もブリザベオの影も消えていく。

 

「ウソでしょ──!? これでも倒しきれないんですか!?」

「……マズいッスね……あれ、メグルさんも流石にバテてるっしょ!?」

 

 力は全て出し尽くした。

 メグルの身体からは──いつの間にか溶岩の鎧は消え失せていた。

 しかし、一方のガルヴァチスもオオワザをキャンセルされ、動けない。

 

 

 だが。

 

 

 

「メ・ガ・ラ・ラ・ラ──」

 

 

 

 二本の槍はガルヴァチスの身体の鉱石から生成される。

 幾らでも再生はできるのだ。このオオワザを耐えきってしまえば、最初の時のように目の前のブリザベオを貫く。

 ただ、それだけの話なのである。

 

 

 

「ううん。勝つよ。だって──メグルの傍にはニンフィアが居るもん」

 

 

 

 ──ただし、今の今まで、限界まで”めいそう”を積んでいた凶悪リボンに目を瞑れば、の話であるが。

 

 

 

『ニンフィア……良かったじゃねえか。嫌な奴が目の前に居てよ──威力はMAXだよな!!』

「ふぃるふぃー」

 

 

 

 ──特別意訳:くたばれボケカス

 

 

 

 瞑想、合計6回。

 特攻、特防、6段階アップ。

 限界までフルチャージ。

 目の前には主人の仇。

 そして──傍には形は変われど魂は変わらぬ永遠の主人。

 更に、闘神の加護までもが乗っている。

 ニンフィアは、過去にないほどに最高のコンディションであった。

 小さな口に妖精の加護が灯り、仇に滅浄の裁きが下る──

 

 

 

 

【ニンフィアの はかいこうせん!!】

 

 

 

 ──ガルヴァチスの不幸は、今のオオワザのぶつけ合いで逃亡するためのエネルギーすら使い切ってしまった事であった。

 

 ──ガルヴァチスのミスは、闘神に目が行き過ぎて、その背中に乗ったちっぽけな生き物の大きな反抗心を見過ごした事であった。

 

 

 

 ──ガルヴァチスの幸運は、痛みもなく一瞬で塵ひとつ無く消し飛ばされたことであった。

 

 

 

「メ・ガ・ラ・ラ・ラ──!?」

 

 

 

 光の柱が、その日マーニャの空に軌跡を描く。

 宇宙から来訪し、星を狩場にしていた蜂の悪魔は──跡形もなく、この星の上から消し飛ばされることになる。

 

「綺麗な花火なのですよー」

「み、見事なモンすよ……!」

「はいっ……! 熱源消失……ガルヴァチス──消えました……!!」

「……メグル。ニンフィア──」

 

 今此処に──マーニャに平和が訪れたのである。

 

 

 

『……へへ……やったな、相棒』

「ふぃるふぃーあ……」

 

 

 

 へろへろになりながらも彼女は愛おしそうにブリザベオの角にリボンを巻きつける。

 

 

 

 戦いは終わったのである。……闘神たち、そして──英雄の犠牲によって。

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 ──全てが終わり、メグル達はフォートマウンテンの頂上に集まっていた。

 そして──パプリカがブリザベオを見上げて、何処か残念そうに「そうか──そうなった、でちか」と呟く。

 

「……ポケモン使いは……闘神の中身が何らかの要因で失われた時のスペアだったのでちね……」

「って事は、メグルさんは今後もずっとブリザベオの中って事ッスか……?」

『そうなるな。二度と、人間の姿に戻れねえってブリザベオも言ってたし』

 

 仕方がない、とメグルは半ばあきらめていた。

 一度確かに自分は死んだのだ。それが今こうして、ポケモンとして皆と意思の疎通が出来ているだけでも奇跡のようなものなのである、と自分を納得させる。

 

「……やり遂げたのでちね。ちょっとビターな結果になっちまったでちが……」

『いや、むしろこれで済んで良かったのかもしれねえな』

「……そうだね。ボクも、そう思う。でも、本当は──ボクが代わってあげられたらって思うよ」

『馬鹿野郎。あれだけ強い敵だったのに、これ以上を望んだらバチが当たらぁ』

「でも、どーするんスかね……他の手持ち達もビックリするだろうし」

『ま、悪い事ばっかりじゃねーよ。ポケモン達の言葉は分かるし、ほら後トレーナーなら一回ポケモンになってみたかったって思うじゃん?』

「バカ言ってんじゃねーッスよ。……オレっちは……」

『……ま、出来なくなる事も多いわな。なんつーか、この姿だと腹も減らねえし……それに、ニンフィアを撫でてやる事も出来ねえ』

「なんつーか、ちょっと寂しい気分ッスね」

『……俺さ』

 

 メグルは──ぽつり、と言った。

 

(本当は──もっとやりたい事、いっぱいあったんだけどな)

 

 しかし、口にはしなかった。

 それ以上を望むことは、悪い事のような気がしたのだ。

 力は強い。身体も大きい。いざという時に皆を守る事は出来るだろう。

 だが、それでも──慣れた人の身体が今は恋しい。

 愛する人を抱きしめる事も、相棒を撫でる事も出来ない今の身体が恨めしい。 

 

(でも、ワガママだよな。受け入れるっきゃ、ねえよな)

 

『ごめん、何でもねェ! ま、何とかなるだろ──多分』

「ね、メグル。ひとつだけ、覚えててほしいんだ」

 

 アルカは──ブリザベオの角に触れる。 

 きっと彼の姿が代わっても、この気持ちだけは変わらない。変わるはずもない。

 どんな姿になっても、アルカがメグルを想う気持ちは同じなのだ。

 

「愛してる。君が、どんな姿になっても……ボクは──君を、ずっと愛してる」

 

 面食らったように、メグルは表を上げた。

 アルカが穏やかな顔で微笑んでいた。

 

『……へへ、俺もだ。姿は変わっても……お前が大好きだ』

「ふぃるきゅー……」

 

 ニンフィアは頬を膨らませてブリザベオの脚にリボンを巻きつけた。

 

『ああ、分かってる。お前も大好きだぜ、お姫様』

 

 そんなメグル達を見て、ノオトは「これで、良かったんスよ」と呟く。

 彼が死んで二度と会えなくなるよりは遥かにマシだからだ。

 ミアも──頷く。何処かぽっかりと開いた喪失感を抱えながら、ブリザベオになったメグルを見つめていた。

 

 

 

「あのー、ところで、良い空気の所悪いのですけれども……」

 

 

 

 おずおずとヒメノが手を上げた。

 

「……どうしたんスか、姉貴」

『ヒメノちゃん?』

「……メグル様の遺体は今、どうなってるのです?」

「屋内に運んだよ。丁重に保管してもらってる」

「……遺体の損壊具合は?」

「ニンフィアが、オオワザで再生させたから、まるで寝てるみたいにキレイだけど」

「……それ、多分行けるのですよ」

「え?」

 

 全員は──再びヒメノに視線を向けた。

 

「姉貴、何言ってるんスか! 死んだ人間を生き返らせるなんて出来るわけが」

「死者の魂は通常、すぐに成仏しちゃうからなのですよ。でも今、メグル様の魂はブリザベオの中にあるのですよ」

「……何が言いたいの?」

「……まさか姉貴──例の邪封波ッスか!?」

『おいなんだその色んな意味で危なさしかねぇ技は』

「モノに憑りついたオバケさんを別のモノに移し替えて封じる技なのですよ」

 

 全員は──沈黙した。

 

「……メグル様の遺体とブリザベオの身体を器とするのですよ。そして、魂を器から器へと移し返す。ただそれだけの作業なのです」

『え? じゃあ何? 俺、もしかして──人間に戻れるの?』

「多分なのです。後はミア様に色々手伝って貰えれば」

「お、お任せください! 全力でサポートします!」

『……マジで、戻れるの?』

「成功すればなのです」

 

 

 

 

 

「よーし、野郎共ァッ!! 我らを救ってくれた、サイゴクの英雄の遺体を盛大に火葬フィーバーするでちよーッッッ!!」

「ちょっと待ったァァァァーッッッ!?」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 ──良かったのか? 兄弟。

 

 ──これで良かったのさ、兄弟。あのままだと色々障害も残ったかもしれねーが……こっそり最後の力を使わせて貰った。魂さえ入れば、あいつの身体は問題なく動く。

 

 ──兄弟にしては小粋な計らいだな。

 

 ──……報われなきゃいけねーだろ。あいつらには我らの分まで、この世を楽しんでもらうさ。闘神の中身は……また、いつかのその時に決めればいいだろ!

 

 ──そもそも闘神の出番が金輪際無ければそれで良いのだがな兄弟。

 

 ──違いねえな、兄弟!!

 

 ──これから我らはどうする。

 

 ──あの世で女漁りでもするさぁ、兄弟!!

 

 ──……何処までもお供しよう、兄弟

 

 

 

 

 

 

 

 ──ところでメグルの身体、火葬場に運ばれているが、あれは大丈夫なのか兄弟

 

 ──あ”ッ

作者の作風に期待するものは?(良ければ感想欄でも教えて下さい)

  • ラブコメ、純愛
  • 戦闘シーン
  • シリアス、曇らせ
  • ギャグ、コメディ
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