続・ポケモン廃人、知らん地方に転移した。【完結】 作:タク@DMP
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「──ってのが、スリング島で起きた一連の出来事なんですけど……」
「あー、うん……ハイ、うん」
──それから数日後のパルデア地方・オレンジアカデミー。
大量のレポートと共に、アルカはハイビに一連のガルヴァチス事件の報告をしていた。
していたのだが──あまりにも超自然的な現象の連続に、流石のハイビも困っているようだった。その反応もアルカからすれば予想の範疇ではあったのだが。
「……ただ、流石に誰も信じちゃくれないでしょ。一回死んだメグル君が、紆余曲折あって生き返ったくだりは」
「デスヨネー……ボクも、正直まだ信じられてなく」
「結果的にポケモンの暴走が闘神の復活によるものだった、って事で良いのかもしれない。とりま、その方向性で論文は纏めるカンジで」
「分かりました」
尤も、闘神は跡形もなく消えており、またマーニャの自然に還ったのだろう、とハイビは言った。
それで良いのかもしれない。下手に彼らが残って、再び狙われるよりは遥かにマシだ。人知を遥かに超えたポケモン達であったことは確かなのだから。
「とはいえ、結果的にマーニャは救われた。なんというか、私が思っていた以上に過酷な旅だったらしいけど……」
「あははは……」
──途中でワームホール公団が挟まったしね……。
結果的にアルカ達は二度マーニャを救う事になった。
ワームホール公団の研究を暴いて阻止し、マーニャに飛来したガルヴァチスを討滅した。
サイゴクの英雄だけではなく、マーニャの英雄にまでなってしまったんだなあ、とアルカはしみじみする。
「故郷を救ってくれて……本当にありがとうございました。マーニャの全ての命に代わって、お礼をするよ」
「えへへ……なんだか、気恥ずかしいですね」
「やった事を考えれば勲章でも何でも与えられるべきさ。君達がそれを望むかどうかは別としてね」
実際メグル達は、スリング島ではまたしても英雄扱いとなった。永遠に今回の戦いは語り継がれるらしい。
とはいえ、これ以上変な意味で有名になりたくないというメグルの希望で、名前は伏せられる事になったのであるが。
「それにしてもガルヴァチスか……ちょっと惜しかったな。虫タイプの専門としては、研究したかった」
「……悪用されたり被害を出すのを考えると、アレで良かったと思いますけどね」
「それはそうさ。でもね、研究者としてはやっぱり惜しいモノなのさ。……ミッシング・リンクって話を授業でしたのを覚えてるかい?」
「は、はい。生物学に於ける進化の失われた空白……ですよね」
「虫ポケモンってね、宇宙から来たんじゃないかって言われる事があるんだよ」
「え”ッ」
アルカが驚いた顔をしたので、ハイビは少し面白そうに笑うのだった。
「ふふっ、あくまでも説だよ。虫ポケモンの不思議な生態や体のつくりを揶揄した一種のジョークで言われることもある。でもね──私はこっそり信じてるのさ。今回の件で、少しまた確信に近付いたね」
「……ガルヴァチスもまた、地球に根付けば新しい虫ポケモンの仲間入りするところだったって事ですか」
「ああ。だが、彼は負けた。君達との生存圏の争いにね。だけど、それだけ強いポケモンなら、案外何処かにタマゴを残してたりして」
「あはは……冗談キツいなあ」
アルカはげんなりしながら言った。
しかし──あり得なくはない、と思えてしまうのだった。あれだけ用意周到な生態を持つポケモンだったのだ。
だが、いずれにせよ──もう二度とアレと戦うのはゴメンである。
「あ、ところで──マーニャのセグレイブをまとめたレポートだけで研究クラスの卒業論文書けると思うよ、だってこれ新発見じゃないか」
「良いんですか!?」
※※※
「で、何だコレは」
「……今日から始める、探偵事務所、デスッ!!」
──マーニャを出て何週間か経っただろうか。
クローバー改め、バジルは──とある地方のビルの空きテナントに「バジル探偵事務所」の看板を立てかけていた。
「私の生きる意味は何処にあるのか……それを探そうと思った時、怪盗は一度廃業しようと思ったのデスよ」
「……良かったのか?」
「言ったデショ? 怪盗クローバーは死んだのデス。そして、狙撃手ゼラも」
「……そうだな」
「なら、いっそここで新しく──怪盗の反対の事をやってみるってのもアリかもしれないって思ったんデスよ」
「こきゅきゅきゅーん」
「ゲロゲロ」
ゾロアーク、そしてカクレオンが嬉しそうに手を叩く。
「……怪盗の対義語は探偵なのか……」
「Yes! ……責任、取ってくれるんデショ? 先パイは今日から私のBadyデス!」
「……ああ。何処までもお供しよう」
※※※
「……シャインのヤツよォ。最近元気ねーんだよ。あんまり脱がねえし」
「エナドリが足りなかったのでしょうか?」
「オメーだけだよエナドリ足りてねーのは」
「ハァー……」
「おいシャイン、どーしたんだよ。悩みがあるなら、俺らにも言えよな」
「私達、親友でしょう?」
ラズ、そしてレモンは──部屋の片隅で物憂げに窓に向かって溜息を吐くシャインを心配する。
「……そうだね。私達は──親友だったね」
「水くせーんだよ」
「聞いてくれないかい、二人共」
シャインは首を横に振る。
「──アンニュイな私も世界一美しいと思わないかい?」
「帰ろうぜ」
「世界一無駄な時間でしたわ」
「あっ、ちょっと待ちたまえ!! 置いていくんじゃない!!」
※※※
──その日の”よあけのおやしろ”は案の定キャプテン達の溜まり場になっていた。
「……穏やかな時間でござるなー」
「ほんとッスねー」
「何で当たり前のようにキリ様がおやしろに居るのですよ」
「特別休暇なのでござるよ。腕の調子がまだ悪いのでござる」
「マーニャでのゴタゴタがウソみてーッスねぇ」
縁側で日に当たりほのぼのとする二人に呆れて肩をすくめるヒメノ。キリはともかくノオトはキャプテンとしての仕事があるはずなのだが。
「ハズシさん、もうニッコニコだったッスねえ。”流石サイゴクの英雄ねッ!!”って」
「ハズシ殿だけではない。まるで自分が育てたかのような口ぶりだったでござるな、ユイ殿も」
「メグルさんはオレっちが育てたようなモンなんスけどねえ」
お前もか。
「あれからマーニャは、公団に代わる新しい統治体系を作ろうとしているみたいでござるが、なかなか上手くいかないみたいでござるな」
「あ、真面目な話もするのです?」
「……でもまー、そう簡単には決まらねーっしょ。そのうち、ポケモンリーグでも誘致してジムリーダーなり四天王なりチャンピオンなり置くんじゃねーッスか」
「それが一番丸く収まりそうでござるな」
「貴方達は丸く収まってないで仕事するのですよ」
ぷんすこ、と今回最大の功労者は頬を膨らませる。
名前こそふざけてはいたものの、先祖代々伝わるイッコン式霊媒術が無ければメグルの完全蘇生は果たせなかったのは言うまでもない。
故に──ノオトとキリは、ヒメノの手を引っ張って縁側に座らせると、そのまま頭を撫でくりまわし始めるのだった。
「……って、何でヒメノが可愛がられる流れになるのですっ!!」
「姉貴ってやっぱスゲーんだなーって」
「ヒメノ殿、様々でござるな。一生頭が上がらないでござる」
「都合のいい時だけ、褒めるのはやめるのですっ! もーう、本当に仕方のないキャプテン達なのですよ!」
※※※
「やっほ、博士。元気してる?」
「相変わらずだよ、ユイちゃん」
──クワゾメタウンの特殊監獄の面会室。
そこで、ガラスの窓越しに二人は顔を合わせていた。
あれから国際警察に護送され、無事に、かつ大人しく戻ってきたイデア博士。
そして──それを出迎えたのはユイだった。
「聞いてた通り、髪色と肌がツヤッツヤ。ちょっと安心した」
「おおう、優しいねユイちゃん、何か悪いモンでも食ったのかな?」
「あたしは元から、博士の事ずっと心配してたけどね」
意外な返答に──イデアは押し黙る。
「……そうかい」
「後、メグル君達を助けたって話もキリちゃんから聞いた。あんたが居ないと、突破出来なかった場面があるって」
「……僕はね、センセイをバカにした奴らが許せなかっただけだよ」
「だと思った。でも──ありがと」
「……それで? 用事はそれだけ?」
「うん。それだけ。……また来るから、風邪引かないようにすること。あと! 模範囚でいること!」
「心配性だなあ」
手を振り──ユイは去っていく。
その姿をイデアはずぅっと見送っているのだった。
(センセイ。見てるかい? 案外悪くないって思えてきたよ、君が居なくなった後の世界も──)
※※※
──その日のパルデアは、少し暗くなるのが早かった。
テーブルシティの広場に急いで駆けていき、アルカは──恋人の名前を呼ぶ。
「メグルッ!! お待たせッ!!」
「……アルカ!」
スマホロトムをいじっていたメグルだったが、彼女の声がするなりパッと顔が明るくなって振り向いた。
足元では退屈そうにニンフィアが丸まっている。
「レポート、大丈夫だったか?」
「うんっ。マーニャの異変は収まったし、セグレイブのおかげで卒業研究の題材も決まった。これで、全部解決だよっ」
「良かったぜ。苦労した甲斐があるってもんだ」
「あはは……なんか、ごめんね。元はと言えばボクの課題の為だったのに、すっごく大変な事になっちゃって」
「別に良いだろ? 最終的に、全部元に戻ったんだからさ」
掌を開けて閉じてみせる。
体に違和感はない。一度死んだとは思えない程に、メグルは元気だった。
これも──ニンフィアのオオワザのおかげだ。
とはいえ、元々受けていた傷までは元に戻せなかったのか、メグルの右目は相変わらず見えないままなのであるが。
「あ、でも、ミアの奴だけ……また何処かに行っちまったんだよな」
「そうだよ! しばらく一緒に住んでもいいかなって思ってたのに……」
「……まあでも、あいつなら心配は要らねえか。今度こそ、セレクト団の事から解放されたんだからな」
だから──またきっと、何処かで会えるかもしれない。そんな期待を抱き、メグルはミアを送り出すことにしたのだった。
「吹っ切れたね」
「なんつーか、今回の冒険で……ひと通りの事は経験したからな。一回死んで生き返ったんだ。もう怖いモンなんてねーよ」
「……ボクはヒヤヒヤしたけどね! 怖がってた君の気持ちが痛いくらい分かったよ」
「……アルカ」
「なにさ」
「色々あったけどよー……やっぱ俺、お前が居ねえとダメだわ」
「今更じゃん」
「だから──」
街灯が照らす中──メグルはポケットに入れていた小箱をアルカに差し出す。
きょとん、と首を傾げていた彼女だったが、メグルが中を開くと──「わっ」と声を上げるのだった。
「これ、指輪……っ!?」
金属製の指輪だ。そして、嵌めこまれているのは──橙色の光を放つ小さなジュエル。
それが何なのか、アルカにはすぐ分かった。割れたオージュエルの破片を、指輪用に加工してもらったのである。
「ダイヤにしようか、迷ったんだけどよ……俺達には、やっぱこれが一番合うかなって思ったんだ。結果的に、オージュエルには助けられちまったし……割れたままにしとくのも忍びないって思ってな」
ぽりぽり、とメグルは気恥ずかしそうに頭を掻く。
「俺達、これからの人生で他の誰かと一緒になるなんて……考えられねーだろ? ちゃんとした式は、もう少し待ってほしいんだけど……誓いって事でさ」
「ッ……」
指輪を手に取り、薬指に通す。言葉が出て来ない。出て来なかったので──アルカは思わず、メグルに飛びついた。
そして、ありったけを叫ぶのだった。
「……え、えへへへっ、嬉しい。嬉しいよ、メグルっ。ボク達は……ずっと一緒だよ!」
「ああ。ずっと、な」
アルカを抱き留め──メグルは微笑み返す。いつもなら嫉妬して頬を膨らませるニンフィアだったが──今日は何処か晴れやかな顔でリボンを二人の手に伸ばし、絡みつける。
「ふぃるふぃーあ!」
ニンフィア──その分類は、むすびつきポケモン。
ふたりが二度と離れないように、祝福を贈るのだった。
※※※
これは、何処かの地方の何処かの空。
マーニャで起きた在りし日の冒険を胸に──少女は今日も、黒い火竜に乗って空を飛ぶ。
首からぶら下げたロケットペンダントの中には、マーニャを発つ日に三人で撮った写真。彼女の──永遠の宝物だ。
「ゼノ、次は何処に行きましょうか?」
「ばぎゅあ!」
──続・ポケモン廃人、知らん地方に転移した。(完)
半年間応援ありがとうございました!これにて「続・ポケモン廃人、知らん地方に転移した。」は完結です!
正直作者としても書いててキツく、辛い展開が多かった今作でしたが(正直、空元気で愉悦部にならないとやってられなかったところはある)、最後まで読んで頂きありがとうございます。オリポケであるヴォルカニドとブリザベオ、そしてガルヴァチス。これらを巡る一連の戦いを書ききった事で、一先ず廃知らシリーズで書きたかった事は消化できたと思います。また、番外編を書く事はあるかもしれませんが、一先ずはこの辺りで。
次の作品で会いましょう──ではでは。
後、最後にアンケートを置いておきます。次回作以降の作風の参考にするので、是非答えていってください。
作者の作風に期待するものは?(良ければ感想欄でも教えて下さい)
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