続・ポケモン廃人、知らん地方に転移した。【完結】   作:タク@DMP

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ポケモン廃人、知らん地方に転移した。FINAL END
第1話:サイゴクの長い一日


 ──その夏のサイゴクは、酷く暑かった。

 みーんみーん、とテッカニンが鳴く中、景色は陽炎で歪み、地面からは湯気が沸き立つ。

 そんな中、バリバリと音を立てて森林を突き進むのはショベルカーやブルドーザーといった重機たち。

 住処を追われる野生ポケモン達が、逃げていく。

 

「悪く思うなよーッ! 此処ら一帯ダムにするんだと! ベニのキャプテン様主導の治水計画だ!」

「はぁ、にしても暑いねえ……俺達蒸し焼きにされちまうよ」

「カイリキー! あっちに資材運んでくれや!」

 

 塩分タブレットを噛み砕き、スポーツドリンクを飲み干しながら、暑さに文句を言う作業員たち。

 辺りで鉄骨を始めとした建材を運ぶカイリキーやゴーリキー達の顔も心なしかへばっているのが見える。

 

「よーし、次はあそこの岩盤の破壊だ、()()()()頼む」

「けっぱるべぇー、穴掘るっぺぇー」

 

 ヘルメットを被ったおじさん・アナホリが岩盤に穴を開けるべく妙に巨大でいかついドリルを岩盤に押し当てる。

 明らかに一般的な掘削用のそれよりはるかに大きなドリル。なんかこう──良い感じに天元突破しそうな感じの大きなドリル。

 更にダメ押しと言わんばかりに、横には頭がドリルになっているモグラポケモンのドリュウズ達が並ぶ。

 作業員たちは──沈黙した。この後どうなるのか知っているからである。電源を入れた瞬間、アナホリおじさんの糸目がカッと見開かれた。

 

 

 

「ウオオオオオオオオオオッ!! 俺のドリルは天を衝くドリルゥゥゥーッッッ!! 俺のドリルが激しく唸るゥゥゥーッッッ!! 轟け叫べと激しく唸るゥゥゥーッッッ!! ギィィィガドリィィィルデストラクショォォォォォン!!」

 

 

 

 うるさい。

 正直ドリルの煩さより煩いデスボがその場に轟いた。

 何なら横のドリュウズ達も一緒に耳を塞いでいる始末である。何をしに来たんだこいつら。

 

「う、うわー、アナホリさん、テンション上がるといっつもああだよ」

「テッカニンの鳴き声よりも、掘削音よりも煩いってどういうことだよ」

「オイコラ作業員共!! ぴーちくぱーちく喋ってんじゃないよ!! お前達もアナホリの働きを見習えーッ!! 次の社長は……あいつに決定だな」

「じゃあ終わりだよこの建設会社」

 

 現場監督の言葉に、作業員たちが会社の命運を憂いていたその時であった。

 テンションMAXで岩盤に穴を開けていたアナホリは、只ならぬ違和感に気付く。

 バコン、と音を立てて岩盤ではない何かを砕いた感触に、勤続30年、ずっと穴掘りに勤しんできた男は気付く。

 

「うん? 何か今壊した気がするっぺ──ま、いっか!!」

「え!? 壊しちゃったの!? 今なんか壊しちゃったの!? 大丈夫なモノなのソレ!?」

「ウオオオオオオオオオオッ!!」

 

 が、気にしない。気にせずに穴を掘り続ける。しかし、他の作業員たちは絶叫して止めに掛かる。 

 何故ならば──アナホリの周囲から紫色の靄が間欠泉のように噴き出していたからである。

 

「ウオオオオイ!? なんかヤベーもん出てねーか!?」

「誰かこのバカを止めろーッ!!」

 

 それはうねるようにして巨大な紫色の龍の如き姿となり──咆哮。

 作業員たちは後ずさり、声も出ない。

 

「お、オイオイオイ、何だアレェェェ!?」

「作業中止作業中止!! 逃げろ!!」

「逃げろアナホリさん!! ヤベーのが出てきた!!」

「俺はァァァーッ!! 俺の職務を全うするゥゥゥーッッッ!! ドリルを燃やせェェェーッッッ!!」

「言っとる場合かァァァーッ!!」

 

 間もなく、紫色の靄がアナホリの口を通し、肺の中へと吸い込まれていく──今まであれだけ騒がしかったアナホリだったが「うっ」と声を上げたかと思えば、そのまま首を抑えて地面に横たわるのだった。

 どう見ても人体及びポケモンに対して有害としか思えない靄は、次第に見上げる程に膨れ上がっていく。そして、龍の姿は次第に収縮していき、杖を突いた老人のような影を作り出した。

 作業員たちは息を呑む。その立ち姿、そして顔。いずれも、彼らがよく知るものへと変わっていく。

 かつて、このサイゴク地方で頂点ともいわれる強さを誇り、癖の強い他のキャプテン達を纏め上げていた筆頭キャプテン。

 誰もが畏怖し、尊敬していた彼の名を──恐る恐る口にするのだった。

 

 

 

「リュ、リュウグウ……さん……怒ってるのか……?」

「……」

 

 

 

 老人の手には──またも靄が収束し、モンスターボールの形を成す。

 そこから飛び出したのは、空を覆うほどの魚群の塊。かつて、リュウグウが生前に切札としていたヨワシにそっくりだ。

 作業員たちは、慌ててその場から逃げ出す。だがもう遅かった。魚群がうねり、咆哮し、辺りの木々を、重機を喰らい尽くしていていく。

 魚群が通り過ぎた場所は音を立てて腐り落ち、そして朽ち果てていくのだった──

 

 

 

「他愛もないのう……他愛もないのう……」

 

 

 

 悲鳴が、絶叫が辺りを埋め尽くす中、何処か失望したような顔で、リュウグウによく似た影は呟く。

 

 

 

「禁忌に触れる愚か者共……命を以て思い知らせてやろうぞ。()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 リュウグウの背後には──幾つもの黒い靄が揺らめき立っていた。

 

 

 

 ──ポケモン廃人、知らん地方に転移した。”FINAL END”

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「──サイゴクチャレンジGP!! 決勝、盛り上がりを見せております!!」

「メグル選手とキャプテン・ノオト選手、最後の一匹によるぶつかり合いだーッ!!」

 

 

 

 ぶつかり合う二匹の影。

 最近設営されたサイゴク国立体育館にて火花を散らすは──サイゴクの英雄・メグルと、今やサイゴク最強のキャプテン・ノオト。

 戦場を駆け回り、鬼火を揺らめかせながら刃の如き尾が舞い踊る。

 それを猛追するのは、掌に波動を迸らせた獣人だ。

 ざんれつポケモン・アブソル。そして、はどうポケモンのルカリオがぶつかり合う──

 

「ルカリオ!! ”ラスターカノン”ッス!!」

「アブソル!! ”シャドークロー”で遮れ!!」

 

 飛んでくる光の弾道を遮るは地面から次々に生える影の巨大な爪。

 そして着弾した場所に既にアブソルの姿は無い。

 

「ッ──何処いったッスか!?」

「テメェの後ろだッ!!」

 

 ルカリオの影からヌウと這い出るのは、アブソルだ。

 ゴーストタイプであるアブソルにとって、相手の影を利用して背後を取るのはあまりにも容易い。

 だが、それはルカリオも察知している。振り向き様に”ラスターカノン”を打ち込んだが──すんでの所で首を捻って躱され、地面に大穴を穿つのみに終わる。

 両者は間合いを取り、身構えた。

 互いの実力は拮抗しており、このままではラチが明かない。

 

「こうなりゃ、本気でやり合うっきゃないみたいッスね」

「……ああ!! お前相手なら、これでも足りないくらいだ!!」

 

 勿論、この場で直接拳を交える二匹の格闘タイプのポケモンだけではない。

 それに指示を出し続ける、サイゴク地方トップクラスのポケモントレーナー達も拮抗している。

 両者の戦闘を支えるのはこれまで積み重ねて来た強敵相手の激闘の記憶と経験。

 そして何より、鍛え上げた身体と技の数々。

 ポケモンだけではない。トレーナーもまた同じだ。

 

「メガシンカ!!」

 

 両者の腕に嵌められたキーストーンが光り輝く。

 そして、アブソルとルカリオの首元に輝くメガストーンが共鳴した。

 更なる進化が促され、両者の姿は大きく変わるッ!!

 

「──おーっと!! 此処に来て、両者メガシンカを切った!!」

「メガルカリオとメガアブソルですか……これは見ものですね……」

 

 その試合を見守る観客席に──当然のようにアルカは居た。

 メグルの優勝を願うように指を絡めて祈っている。

 

「頑張れメグルー……!!」

「ノオト殿は本当に強くなられた……拙者は感服でござるよ」

「保護者かな!?」

 

 ──尚、その隣には当然のように仮面をつけてパワードスーツを着込んだ忍者の姿があった。

 サイゴク屈指の忍者隊の頭領にしてキャプテン・キリだ。

 此方も此方で応援するのはノオトである。

 

「ノオト殿の実力は今や拙者に伯仲、いや超える程……メグル殿を圧倒し、名実ともにサイゴク最強になられた……!」

「終わってない終わってない!! まだ試合終わってないから!! え? ウソでしょキリちゃん泣いてる? もう泣いてるの!?」

「勝つのはノオト殿でござるッ!!」

「いーやメグルだね!! 間違いない!!」

「はは……どっちが勝とうがヒメノの粉砕されたハートは元に戻らないのですよ……」

 

 ──アルカとキリの真ん中に挟まれ、死んだ顔をしているのは──決勝トーナメント1回戦でよりによってメグルに敗退させられたヒメノであった。

 

「この鬱憤は後でバトルで晴らすのですよ! アルカ様、お覚悟!」

「えー、何でボクなのさ」

「今日、この面子で唯一参加してないからなのですっ!」

「チャレンジGPは事前参加の大会故仕方ないが……アルカ殿が出場しなかった理由は気になるでござるな」

「そりゃそーだよ」

 

 アルカはクスクス笑いながらお腹──それも下腹部を愛おしそうに摩った。

 

()()()()()に無理させられないもん……♪」

「え?」

「あえ?」

 

 硬直するキリとヒメノ。

 

「アレ? 言ってなかったっけ──メグルにはまだ内緒にしてんだけど」

「聞いてないのです、聞いてないのですよ!!」

「何にも聞いてないでござる!!」

「あッ──それじゃあ、今のナシ!! メグルには内緒にしてて!! 驚かせてあげたいんだよー……」

 

 二人は顔を見合わせた。

 サイゴクに帰るなり神前式を盛大に挙げたメグルとアルカ。

 バカップル共が名実ともに「夫婦」になるのに時間はかからなかった。

 しかし、そんな二人の間に子供が出来たというのは、やはり身近なキリやヒメノにとっても大ニュースで。

 

「ほら、ボク達そもそも色々種族が違うし……出来にくいって聞いてたからさ……ボクが今一番ビックリしてる。でもメグル、この大会頑張ってたからさ……せめて終わってから、って思って」

「な、なななな、子供……」

「確かにビックリでござるが……」

「お願いっ! メグルには内緒にしといてっ! てかそれよりも試合──!」

 

 アルカがステージの方を指差す。

 そこには──相も変わらず激しいぶつかり合いを演じるアブソルとルカリオの姿があった──

作者の作風に期待するものは?(良ければ感想欄でも教えて下さい)

  • ラブコメ、純愛
  • 戦闘シーン
  • シリアス、曇らせ
  • ギャグ、コメディ
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