続・ポケモン廃人、知らん地方に転移した。【完結】   作:タク@DMP

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第2話:ダーク・キャプテン

 ──メガシンカを果たしたアブソルは全身に青白い炎を身に纏わせ、筋肉を隆起させる。

 耐久力と頑丈さに特化させた形態。

 しかし、低下した速度は影に潜航する事で補う事が出来る。

 

「──はっきり言って、速度面では全くと言っていいほど両者に差は無いんだから」

「技の威力も、火力も差は無いわ」

 

 観客席から戦況を眺めていたユイとハズシも固唾を飲みながら見守っている。

 

「……メグル君は今や、ノオト君に匹敵するだけの力を身に着けてるわ」

「出会った頃の二人には大きな差があったわ。メグルちゃんはとてもじゃないけど、ノオトちゃんと1対1のバトルにはならなかったもの」

「だけど、今や両者の実力は互角よ」

「……ええ。二人共、サイゴクの誇りだわ♡」

 

 一方のルカリオは、全身に波動を迸らせ、身体にも溢れ出した波動が傷となって刻まれていく。

 両者は睨み合い、そして組みかかった。

 波動が爆ぜ、鬼火が舞い踊る。

 高速で両者は暴れ狂う。

 

「”ラスターカノン”ッ!!」

 

 特性:てきおうりょくで強化された技の数々がアブソルを襲う。

 だが、一方のアブソルも大量の影の剣を顕現させるとそれを地面に突き刺して受け止める。

 

「ッチィ!! やっぱり頑丈ッスね!!」

「まーな!! アブソルだって、たっぷり鍛えたんだぜ!!」

 

 笑みを浮かべてメグルは乾いた己の唇を舐め取る。

 この2年間、メグルはセイランシティに身を置いていた。

 そして、キャプテンが未だに不在の”すいしょうのおやしろ”でキャプテンの代理を務めていた。

 その間3匹も居る水タイプのポケモン達が出ずっぱりではあったものの──他のポケモンの育成がおざなりだったのかと言えばそんなわけはなく。

 むしろいつ有事が起こっても良いように、鍛え上げていたのである。

 アブソルは名実共にメグルのパーティのエースだ。

 

「アブソルッ!! ”むねんのつるぎ”!!」

 

 地面を踏み鳴らすアブソル。

 地面から次々に影の剣が生え、それらが青白い炎を纏っていく。

 そして引き抜かれたそれらが宙を舞い、次々にルカリオに襲い掛かるのだった。

 

「いッ──マジかよ!! アケノヤイバと同じ事を──ッ!!」

 

 ルカリオ目掛けて次々に突き刺さる炎の剣。

 だが、ルカリオもそれを次々に躱し、アブソルに迫っていく。

 

「だけどなァ!! オレっちだって寝てたわけじゃねえ!!」

「ああ、知ってるよ!! 今のお前は昔のお前とは違うッ!!」

「ああそうだッ!! オレっちは──最強のキャプテンだッ!!」

 

 昔の「最弱のキャプテン」と呼ばれていたノオトの姿はもうそこには無い。

 泣き虫だった少年は、今や──サイゴクを背負う青年に成長していた。

 マーニャでの戦いから4年が経とうとした今。各地で修業を重ね、重ね、重ねた今のノオトにサイゴクで敵う者など存在しない。

 今回のチャレンジGPでも真っ向からキリを試合で下して「キャプテン最強」の名前を欲しいがままにしているのだった。

 だが、そこに一切の慢心などは無い。

 相手はメグル。サイゴクの英雄。これまで幾つもの世界を脅かす災禍を下してきた存在だ。

 此処まで両者の手持ちは削りに削られ、残り一匹。

 

「──メグルさん、そろそろ決めねえッスか?」

「ああ、そうだな……ッ!!」

 

 アブソルが咆哮する。

 影の剣が幾つも浮かび上がった。

 ルカリオが咆哮する。

 その両掌には光の波動が収束していく。

 

「──ガァアアアアアッ!!」

「──フルルエリィスッ!!」

 

 目から紫電を迸らせ、アブソルとルカリオは組みかかる。

 互いにノーガードで閃光と影の剣で斬り刻み合う。

 最早そこに両者の細かい指示など必要ない。ポケモンとトレーナーの意識は限りなく合致している。

 ギガオーライズのそれとも勝るとも劣らないシンクロ状態だ。

 故に、最後に差を付けるのは──極大まで威力を高めた大技。

 ルカリオは両の掌に光を極限まで溜め込む。

 一方のアブソルもまた、尻尾に炎を纏わせる。

 

 

 

「──”てっていこうせん”ッ!!」

「──”むねんのつるぎ”ッ!!」

 

 

 

 ルカリオは自身の神経系を焼き切る勢いで驚異的な威力の光線を解き放つ。

 アブソルは焼き付く炎を纏った刀を振り回し、巨大化させ──振り放つ。

 両者はぶつかり合う。

 爆炎が、そして爆風が広がり──辺りは煙に包まれた。

 

「ど、どうなったのです!?」

「……メグルッ……!!」

「ノオト殿──ッ!!」

 

 息を呑むアルカ、そしてキリ。

 会場もまた、その決着を見届けようと身を乗り出す。

 煙が晴れる。

 ルカリオもアブソルも、メガシンカが解除されていた。

 

「ッ……フ、フルール……」

「やっぱりつえーな、ノオト……オマエ、やっぱり最強のキャプテンだよ」

「……どの口が言うッスか」

「ガ、ガォン──!」

 

 ぐらり、とアブソルの身体が揺れた。

 しかし──同時にルカリオの胴を青白い炎が迸る。

 

 

 

「……最強は、あんたッスよ。メグルさん。少なくとも──今この場ではね」

 

 

 

 先にばったりと倒れたのは──ルカリオの方だった。

 

「け、け、決着ーッッッ!! 勝者ーッ!! メグル選手ーッ!!」

「ッ……っしゃー!! アブソル!!」

「ふるーる! ふるーる!」

 

 歓声が周囲を包み込む。

 アブソルが満面の笑みでメグルに飛び掛かるが、もう既に立派な成獣。

 メグルは地面に押し倒されてしまうのだった。

 

「皆も、ありがとな……!」

「ふるるー♪」

「……あーあ。全く、どうかしてるッスよ。オレっち、頑張ったんスよ? この数年間……それを軽々と超えてくるヤツがあるッスか」

「ポケモン廃人だからな」

「何スかソレ……」

「ま、良いじゃねえか。また、バトルしてくれるんだろ?」

「たりめーっしょ。次は負けねーッス」

 

 ルカリオをボールに戻し、ノオトはメグルに手を伸ばす。

 メグルもその手を掴むのだった。

 

「いーや、次も負けるつもりはねーよ!」

「言ったッスね……! 絶対勝ってやるッスよ!」

 

 ──こうして。

 今此処に、サイゴク最強が誰なのかが決した。

 この場にいる誰もが、素晴らしいバトルを繰り広げてくれたメグル、そしてノオトを称える。

 そして誕生したサイゴク最強のトレーナーを──皆が祝福しようとしたその時だった。

 

 

 

「……下らんのう」

 

 

 

 何処からともなく。 

 そんな声が聞こえた気がして、メグルとノオトは辺りを見回す。

 気が付けば、周囲には紫色の靄のようなものが広がっていた。

 まるで霧か霞。視界を鈍く覆っていく。

 

「……なんスか、コレ!?」

「──毒ガス──ッ!?」

 

 観客席にいたキリが素早く忍者隊に連絡を入れる。

 会場内の警備はどうなっているのか、と。

 しかし──返事は無い。その代わりと言わんばかりに、会場内に堂々と彼らは立ち入ってきた。

 

「……黙って見ておれば、随分とまあ生温い試合であった……」

「ッ──何だと!?」

「……おい、この声って」

 

 つかつか、と硬い靴の音が響く。

 観客席のどよめきに反し、彼らはさも当然のようにバトルフィールドに上がっていく。

 

「誰だあの人達!?」

 

 などという比較的若い人々もいたが──彼らの姿を見て、思わず悲鳴を上げる者が殆どであった。

 事態を見守っていたキャプテン達もまた、彼らの姿を見て言葉を失わざるを得ない。

 

「ウソでしょ……!?」

「悪趣味ね、一体何処の誰が……!!」

「何で……!?」

「……ど、どうなってんだ……オレっち、悪い夢でも見てんのか……?」

「ッ──」

 

 メグルも、その様を見て漸く目の前の光景を咀嚼し──受け入れる事が出来た。

 いや、受け入れるというにはあまりにも異様ではあったのだが。

 

 

 

「……リュウグウ……さん……?」

 

 

 

 今、メグルの前に立っているのは──かつてテング団との戦いで命を落とした”すいしょうのおやしろ”のキャプテン・リュウグウその人だったからである。

 いや、それだけではない。

 リュウグウに続くようにして次々に見知らぬ男達が姿を現す。

 だが、彼らは──他のキャプテン達にとってはあまりにも見知った相手だった。

 ガリガリに瘦せこけた杖を突いた老人が──ノオトの方を一瞥すると吐き捨てる。

 

「ノオトよ……なんとまあ手緩い死合だったかッ!! 見ていて反吐が出たわい……それでも我が孫か?」

「ッ……じ、じいちゃん……!?」

「ウソでしょう……何故、お祖父様が──ッ!!」

 

 

 

【──先代”よあけのおやしろ”キャプテン・アサザ】

 

 

 

 その傍には、全身を忍び装束に身を包んだ大男の姿があった。

 それを観客席から見たキリは戦慄のあまり震えが止まらなかった。

 あの立ち振る舞い、装束の上からでも分かる。間違いなく──死んだはずの自らの父のものだ。

 

「ち、父上……? その姿は父上なのか──ッ!?」

「……」

 

 

 

【──先代”ひぐれのおやしろ”キャプテン・ウルイ】

 

 

 

 そしてその傍に立つのは濃い化粧で顔を塗り固めたオネエ。

 派手なドレスに身を固めた彼は恭しく礼をすると──言い放つ。

 

「あらあらァ。なぁに? アタシたちが黄泉還ったのがそんなに不思議かしらァん?」

「ッ──ママ……!? どうして……!?」

 

 

 

【──先代”ようがんのおやしろ”キャプテン・ホオズキ】

 

 

 

 後に続くのは──巨大な猟銃を構えた若い男。

 その顔を見て、顔を青くするのは──ユイ。

 現れたのは、とうの昔に野生ポケモンに襲われて亡くなったはずの父の顔そのものだった。

 

「……何で、父さんが此処に……?」

「──撃ち抜き甲斐がある獲物が揃っているじゃねえか」

 

 

 

【──先代”なるかみのおやしろ”キャプテン・ショウブ】

 

 

 

 この場に現れたのはいずれも、先代のキャプテン達。

 既に命を落とし、この世にはいないはずの亡者達。

 あまりにも衝撃的な光景を前にして──観客も、キャプテン達も、メグルも──言葉を失う。

 

「おい、どうなってやがんだ……! 何処の誰の悪趣味な真似だコラ……!」

「……このサイゴクの地が誰のものであるかを思い知るが良い──痴れ者達よ」

 

 

 

【──先代”すいしょうのおやしろ”キャプテン・リュウグウ】

 

 

 

「……只の狼藉者なら見過ごしてやったんスけどね……ッ!!」

 

 ノオトは”げんきのかたまり”をルカリオに押し当てる。

 そして忌々しそうに先代キャプテンの姿をした亡者たちに言い放つ。

 

「何処の誰の差し金ッスか!! 死人の姿を、ましてやキャプテンの姿を猿真似して出てくるなどッ!! いい度胸じゃねえッスかねえ!!」

「ほう……では試してみるか? 猿真似かどうかを」

 

 リュウグウが言い放つなり、先代キャプテン達の手には黒いモンスターボールのようなものが浮かび上がる。

 

 

 

「──貫けッ、ライボルト!!」

「──バシャーモッ!! 出てきなさいッ!!」

「──出ませい、ゲンガーッ!!」

「──任務開始。プテラ」

「──行けい、ラグラージッ!!」

 

 

 

 並び立つは──キャプテンの手持ち達。

 それを見て、メグルはゾッとした。

 このポケモン達は皆、目に生気というものが感じられない。

 そればかりか、先程彼らの手に現れたのは虚空から現れたモンスターボール。

 まともなポケモンではない事だけは確かだった。

 

「我々はキャプテン。サイゴクの地を平定し、均す者。このような自然の調和を乱すモノには──鉄槌を与えねばならん」

 

 リュウグウの号令と共に──現れたポケモン達の目が赤く光る。

 次の瞬間──5匹のポケモン達はそれぞれ、観客席に向かって技を撃ち放ち始めたのである。

 

「いけねッ──テメ、何考えてやがんだッ!!」

「アブソルッ!! あいつらを止めろッ!!」

 

 ルカリオが飛び出し、ゲンガーを組み伏せる。

 アブソルもまた、影の剣を幾つも飛ばし、キャプテンのポケモン達に突き刺した。

 だが、遅かった。

 間もなく会場からは炸裂音、そして悲鳴が響き渡る──しかし。

 

「──キャプテン総出であいつらを止めるわよッ!!」

「父上の顔でなんて事を──ッ!!」

「父さんやめてッ!! 何でこんな事するのッ!!」

 

 間もなく、当代のキャプテン達が取り囲むようにして現れる。

 これで5対5。 

 ヒメノの姿が無い事が気になったノオトだったが──彼女の居る観客席の辺りを確認する。

 

「皆さまーっ!! 落ち着くのですよ!! ヒメノのオバケさんの誘導に従うのですよ!!」

「慌てず騒がず避難してーッ!!」

「……姉貴とアルカさんがポケモンを使って避難誘導を──ッ!!」

 

 ノオトとメグルは顔を見合わせた。

 恐らくヒメノもアルカも内心冷静ではいられないだろうが、下に降りたキャプテン達に戦闘を任せる事にしたのだろう。

 それよりも、会場中に居る2000人近くの観客の安全を確保する方が先決だ。

 

「参ったわね……何処からどう見ても()()だわ」

「ハズシちゃん、お久しぶりね。随分と老けたんじゃない?」

「ッ……ママからそんな風に言われるなんてね。かれこれアレから10年以上経ってるの。ワタシだって老けるわよ」

 

 恩師である相手・ホオズキとの対面にハズシは穏やかで居られない。

 だが、ホオズキはとっくに亡くなり、ハズシにキャプテンとしての後任を預けた後だ。

 こうして生きているはずがない。

 

「……父さん……あたしの事、覚えてる……?」

「娘の顔を覚えてねえ父親が居る訳ねえだろ」

「じゃあ……こんな事、やめてッ!! なんでポケモンを使って人を傷つけようとするの!?」

「……お前の頼みでも聞けねえなソレは」

 

 ユイに相対するのは実の父親たるショウブ。

 しかしショウブは、ユイがメグルに出会う少し前に亡くなっている。

 その悲惨な最期はユイが一番よく知るところだ。

 

「……キリ。すながくれ忍軍の長としてオマエが相応しいかどうか、見定めに来た」

「父上──いや、父上の姿をした化生ッ!! 父上が斯様な行為に手を染める訳が無いだろうッ!! 貴様は何者だッ!!」

 

 そして、キリの前に立ちはだかるのは父にして師匠のウルイ。

 生きていた頃はサイゴク最強の忍者として名を馳せていた。その実力は──当然のようにキリを上回る。

 

「忍の技は人とポケモンを守るためのもの!! 傷つけるためのものではないッ!!」

 

 そして、忍の心構えを教えたのも他でもないウルイだ。

 今の彼の行いは、他でもないキリの心を踏みにじるものであった。

 

「……ノオト……ノオトォ!! 何ともまあ、無様なヤツ……ワシの前でぬけぬけと敗北してみせるとは……だから貴様は役立たずのアホうなのだ……ッ!!」

「じいちゃん……ッ」

「ヒメノはどうした? 今頃、ワシに次ぐ優秀な霊能力者になっているはずだが……あいつは居らんのかァ?」

 

 ノオトは拳を握り締める。

 

「……じいちゃんはな、皆から嫌われてたよ」

 

 手から──血が流れ出る程に。

 

「──だけどなァ!! じいちゃんは俺達双子を分け隔てなく可愛がってくれたんだッ!! テメェは誰だ、このすっとこどっこいッ!!」

「──我らはこの地の真のキャプテンじゃよ」

 

 カツーン。

 杖の音が響き渡った。

 しかし、その言葉に納得できる者など居はしない。

 リュウグウの口から紡がれたそれを──メグルは否定する。

 

「真のキャプテンだ? 姿だけ借りたパチモン軍団がよ!! テメーらは”ダークキャプテン”がお似合いだッ!!」

「ダークキャプテン……? ふん。呼び名など好きにすればよかろうて。我らの為すべき事は変わらん」

「なら、ワタシたちも為すべき事は変わらないわね」

「父さんの顔で悪事カマすなら……力づくで止めるよッ!!」

 

 ユイの髪が静電気でバチバチと音を鳴らしながら逆立つ。怒り心頭の証だ。

 キャプテン達もまた、一斉にポケモンを繰り出す。

 

「──リザードンちゃん、頼むわよッ!!」

「──パッチラゴンッ!! お願いッ!!」

「──バンギラスッ!! 出番だッ!!」

 

 そして──メグルとノオトも互いに肩を並べ、リュウグウとアサザのコンビに立ち向かう。

 

 

 

「──行くぞノオトッ!!」

「応ッス、メグルさんッ!!」

作者の作風に期待するものは?(良ければ感想欄でも教えて下さい)

  • ラブコメ、純愛
  • 戦闘シーン
  • シリアス、曇らせ
  • ギャグ、コメディ
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