続・ポケモン廃人、知らん地方に転移した。【完結】   作:タク@DMP

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第3話:強襲・レイドインパクト

 ※※※

 

 

 

「──行くわよ、バシャーモッ!! 熱く熱く舞い踊りましょうッ!!」

「キィイイイイイイイイイイイーッ!!」

 

 

 

 炎を纏い踊り狂う軍鶏の闘士。

 周囲には岩の刃を浮かばせ、ハズシのリザードンを近付けさせない。

 

「ケッ!! しみったれたバトルね、ハズシ……それがあんたがアタシに見せたかったレースかしらぁん!!」

「ッ……ママ……!!」

「サイゴクのキャプテンがテメーみてーなのに務まると思ってんのかしらァん!!」

「──ええ、務まるわッ!! だってワタシは皆のキャプテンだものッ!!」

 

 メガシンカを一瞬で果たし、太陽の化身と化したリザードンが日輪を背負い咆哮する。

 飛んでくる”ストーンエッジ”すら火炎弾で真正面から受け止め、破砕してみせる。

 

「やんじゃねーのよ……ハズシィッ!! だけどねッ!! この程度じゃあ、アタシは倒せねーのよッ!!」

「ッ……!」

「男は度胸、女は愛嬌──」

「キィイイイイイイイイイイーッ!!」

 

 バシャーモが叫ぶ。

 その全身に漆黒のオーラが満ち満ちていく。

 その姿はメガシンカを果たしたそれと同じだ。

 だが、身体は黒く染まり、目は赤く不気味に光っている。

 メガシンカポケモンの形をした──バケモノだ。

 

「オカマは最強♡」

 

【メガバシャーモ もうかポケモン タイプ:炎/格闘】

 

 黒い炎に身を包んだバシャーモは地面を蹴り、空を跳び──メガリザードンを猛追する。

 

「──オーバーヒートよ、リザードンちゃんッ!!」

「──フレアドライブで押し切れッ!! バシャァァァーモッ!!」

 

 思いっきり息を吸い込み、特大の炎をぶつけるリザードン。

 だが──その炎さえも突っ切り、バシャーモは飛び出し──リザードンの頭を掴んで壁に叩きつける。

 更に追撃と言わんばかりに周囲に岩の刃を浮かび上がらせ、リザードンを串刺しにするのだった。

 岩タイプの技は4倍弱点。リザードンに耐えられるはずがない。

 

「ッ……リ、リザードンちゃん!!」

 

 ハズシは踵を返し、落下していくリザードンに駆け寄っていくのだった──

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「もう堪忍袋の緒がキレたッ!! パッチラゴン、”でんげきくちばし”ッ!!」

「……メガシンカポケモンにも匹敵するガラルの古代ポケモンか……獲物には丁度良い」

 

 事実。

 キャプテン達の中では唯一、メガシンカしないポケモンをエースとして使うユイ。

 だが、パッチラゴンとパッチルドンの二大巨頭はキリをして「実質伝説クラスのポケモンが二匹居るようなもの」と言わしめる程の恐ろしさを誇る。

 誇るのだが──

 

「……俺は銃弾……一筋の銃弾……ライボルトッ!! お前も意思持たぬ銃弾となれッ!!」

 

 メガシンカしたライボルトが吼えれば、パッチラゴンの頭上に電気が次々に降りそそぐ。

 漆黒の稲光は本来電気とドラゴンを併せ持つパッチラゴンに効果は薄い。

 しかし、その破壊力は常軌を逸していた。パッチラゴンの体内の電気の奔流は、とてつもない威力の電気によって狂わされ、ぐらぐらとパッチラゴンは震えている。

 相性差以前の実力差というものをまざまざとユイは見せつけられていた。

 

「こ、こんなの、父さんのライボルトじゃない……!!」

 

 確かにショウブのライボルトは強かった、とユイは記憶している。

 だが、此処まで不利な相性差を覆すほどではなかった。

 全身が漆黒に染まった今のライボルトは──普通のポケモンとは明らかに違う。

 

「群狼戦術”10まんボルト”ッ!!」

「アォオオオオオオオオオオオオンッ!!」

 

 狼の咆哮が響き渡り、次々にライボルトの形をした黒い影が姿を現す。

 そして、それが次々にパッチラゴンに喰らいつくとそれぞれが放電を放つ──

 

「幾ら電気ポケモンと言えど……自分の許容量を超えた威力の電気はショートするしかねえ」

「バ、バッチラララ……!!」

「そんな──パッチラゴンッ!?」

 

 ──全身から煙を吐き出したパッチラゴンは仰向けになり、倒れてしまうのだった。

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「バ、バンギラス──ッ!! 耐えよ……ッ!!」

「バギラ……ッ!!」

 

 

 

 バンギラスを襲うのは、プテラの超音波。

 キリはそれに耐える事が出来るが、バンギラスは超音波を前にしてずっと耳を塞ぎっぱなしだ。

 それでも尚、手の指を貫通して超音波はバンギラスに襲い掛かる。

 

「プテラ、”アイアンヘッド”ッ!!」

 

 亜音速を超える勢いで、弾丸の如くプテラがバンギラスに頭突きを叩き込む。

 怯んでしまい、バンギラスは動くことができない。

 そんなバンギラスに対して次々にプテラは頭を金槌の如く打ち据えるのだった。

 

「……ち、父上……ッ!!」

「……見ない間に覚悟が鈍ったか? 弱くなったな、我が娘よ」

「ッ……拙者は弱くなってなど、ござらん……!!」

「どうだか」

 

 反撃をしようと動き出すバンギラス。

 しかし、その足元にばら撒かれていた”ステルスロック”が炸裂し、バンギラスの足を激しく傷つける。

 

「バンギラスッ!!」

「……搦め手もまた忍術ッ!! 教えたはずだ」

「ッ……!」

 

 一手先、二手先を常に読み続けるキリ。

 しかし実の父・ウルイの前ではその戦術全てが通用しない。

 

「──忍法・砂分身の術ッ!!」

「!?」

 

 プテラの身体が一気に3匹へと増える。

 バンギラスの起こした砂嵐を利用し、プテラは自らの分身を作り上げたのだ。

 そして、3匹掛かりでバンギラスに襲い掛かり──たちまち倒してしまうのだった。

 

 

 

「強すぎる……あまりにも……ッ!!」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「甘い甘いッ!! 貴様の力はその程度かァ!!」

 

 

 

 何もかもが規格外すぎる。

 ルカリオは一瞬で捕らえられ、宙づりにされてしまうのだった。

 メガシンカしたゲンガーの腕だけが切り離され、独りでに動いている。

 どんなに速く動こうとも、影そのものと言えるゲンガーには追いつけない。

 しかも今のルカリオは復活したてでメガシンカもギガオーライズも使えない──

 

「この程度でサイゴク最強のキャプテン? 笑わせるなァァァーッ!!」

 

 大量の霊魂が浮かび上がる。

 ヒメノの使うゲンガーとは比べ物にならない量だ。

 圧倒的物量の”シャドーボール”が動けないルカリオに、そしてノオトにぶつけられるのだった──

 

「ごっがぁあ!?」

 

 炸裂音が響き渡り、ルカリオもノオトも倒れ伏せる。

 

「ッ──ノオト!?」

「よそ見をしておる場合か? メグル……ッ!!」

 

 ラグラージが咆哮し、アブソルに襲い掛かる。

 とはいえ、アブソルも試合の直後で疲労困憊だ。

 全力で戦うことなど出来はしない。一方、ラグラージはメガシンカした状態で雨を降らせ、その巨腕を存分に振るってフィールドを地均ししていく。

 

「がっぐ、くそ……地面が揺れる──!!」

「ふるーる……!!」

「リュウグウさん答えろッ!! 何でこんな事をするんだ……!!」

「我らはサイゴクを平定すると言った筈ッ!! その為に、キャプテンに相応しくない者は今此処で間引かねばならん……ッ!!」

「ヌシポケモンが、こんな事を許すと思ってんのか……!!」

「ヌシポケモンじゃとォ……?」

 

 

 

「──ぷるるるるるるーッ!!」

 

 

 

 何処からともなく、甲高い声が聞こえてくる。

 スタジアムの観客席の方から乱入してきたのは──冷気を身に纏った琉麗なるヌシ。 

 リュウグウの姿をした何者かの前に、それは毅然とした態度で降り立つのだった。

 

「ぷるるるるるるー」

「ッ……シャワーズ!! 来てくれたのか!!」

 

 ──セイランシティ”すいしょうのおやしろ”のヌシ・シャワーズ。

 サイゴクの異変を前に、ヌシが自ら介入を図る。

 

「ぷるるるるるるー……ッ!!」

「……シャワーズか。久しいのう……!!」

 

 全身の毛を逆立て、シャワーズはリュウグウに対して威嚇してみせる。

 かつての彼女はリュウグウにとても懐いていた。もし目の前の老人が本当に亡くなったキャプテンならば決して見せない行為だ。

 シャワーズは目の前の相手を敵として認識している──

 

「やっぱりこいつはリュウグウさんなんかじゃないって事だな!!」

「ぷるるるるるー!!」

「ふるーる!!」

「……そうかな? シャワーズよ。誰に付いていくのが相応しいか、今此処で教えてやろうぞ」

 

 リュウグウの目が怪しく光る。

 次の瞬間──シャワーズの目もまた、赤く光り輝くのだった。

 

「ッシャワーズ!?」

「ぷ、ぷるるるるるる……!!」

「……思い出せい、シャワーズ。お前達ヌシポケモンは、何に対して従属しておるのかを……ッ!!」

 

 びく、びくり、とシャワーズの身体が細かく痙攣を始めた。

 目は赤く輝き──

 

「……サイゴクのヌシポケモンが本来仕えるべきは、このサイゴクの地そのものだということを……ッ!!」

「ぷ、ぷるるるるるるるる……!!」

 

 ダンッ!!

 

 シャワーズが思いっきり前脚を地面に叩きつけた。

 次の瞬間──無数の泡が周囲に漂う。

 一瞬メグルは、シャワーズが怪しい技を受けたものの、それを即座に振り払ったのだ──と思った。

 しかし、それが間違いであることを察する。

 泡はメグル、そしてアブソルの身体に向かっていき、纏わりついていく──

 

 

 

 

「シャワーズッ!! しっかりしろ!! そいつはリュウグウさんじゃねえ──ッ!!」

「──オオワザ”むげんほうよう”」

 

 

 

【シャワーズの むげんほうよう!!】

 

 

 

 相手を泡で包み込み、動けなくなったところを特大の水ブレスで薙ぎ払う。

 高圧縮された水の刃がアブソルを叩きつけ、そして──メグルも吹き飛ばすのだった。

 

「ッ……ウソ──メグル……!!」

「アルカ様ッ!?」

 

 その光景を目にしたアルカは、居ても立っても居られなくなり、観客席から思いっきり飛び降り、メグルが倒れる場所へと向かう。

 だが、アブソルは戦闘不能。メグルもとてもではないが動ける状態ではない。

 

「がぁっ、クソ……!!」

「メグル……メグル、しっかりして……!!」

「何で来たんだ、アルカ……早く逃げろッ──!!」

「安心せい、命までは取らぬ。お前達に最早要は無いからのう」

 

 先代キャプテン達はふよふよと空中に浮かび上がる。

 リュウグウの腕の中には──赤く目を光らせたシャワーズの姿があった。

 

 

 

「……宣言する。このサイゴクは我らのモノ。お前達のキャプテンとしての立場、我らが簒奪してくれようッ!!」

 

 

 

 リュウグウは高らかに宣言すると、大きく開いたスタジアムの天井から飛び去って行くのだった。

 メグルはその様を──呻きながら見ていることしか出来なかった。

 

 

 

「リュウグウさん、なんで……!!」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 ──そして宣言通り、先代キャプテン達の姿を模した何者か達──通称”ダークキャプテン”は、おやしろを強襲。

 おやしろに駐留していたポケモントレーナー達では相手にならなかったばかりか、他のヌシポケモン達もまた、目を赤くして意識を乗っ取られてしまったのである。

 御三家のおやしろは勿論の事、人類に敵対する事自体が災禍になりかねないアケノヤイバとヨイノマガンもまた、そのコントロールを奪われてしまったのだ。

 これが一晩で行われたというのだから恐ろしいというほかない。

 

「──由々しき事態よッ!! 緊急の大合議を執り行いますッ!! 議題は当然、あのダークキャプテン達ッ!!」

「と言っても、幸いキャプテン全員、スタジアムに集まっていたから集まる手間は省けたんだから」

「……恐ろしい強さだったッス……じいちゃん……!!」

「三流映画に出て来そうな名前ですが、ダークなキャプテンということにしておく他無いのですよ」

「でも、声も振る舞いも、父さんそのものだった……」

 

 当然、サイゴク中は大混乱。

 おやしろは全て乗っ取られて立ち入り禁止。

 恐らくダークキャプテンの配下であるポケモン達、そして何より意識を乗っ取られたヌシポケモンが徘徊しており、とてもではないが近付ける状態ではない。

 死人が生き返ったばかりか、虚空からポケモンを生み出し、そして現代のキャプテン達に牙をむいたという事態に誰もが混乱している。

 

「だけど、このままで終わらせられるかッスよ!! メグルさんがやられちまった今、先代とやり合えるのはオレっち達だけなんスから!!」

「……メグルちゃんの容体は?」

「アバラ何本か折れてるみたいなのですよ。むしろ、操られたシャワーズがすんでのところで手加減をしたとしか……」

「”むげんほうよう”の直撃か……あまりにも痛すぎるでござるな」

 

 そしてキャプテン達の面持ちは悲痛そのもの。

 記憶にある彼らよりも圧倒的に上回る実力の影のポケモン達。

 それを前に1対1では全く歯が立たなかった事に、彼らは今回の敵の強大さを思い知らされるのだった。

 

「そもそも、あれは死んだキャプテンが生き返ったものなのでござるか?」

「死人が生き返るなど有り得ないんだから」

「それ、メグルさんの前では一番言っちゃいけねえッスよ」

「そうだった!! あいつ一回死んで生き返ったんだから!!」

「あの人の場合はケースが特殊なのです。死体が綺麗だったこと、そして魂が現世に残っていたのです。普通、成仏した魂が戻ってくることなど……」

「有り得ねえってワケッスね……」

「皆聞いて頂戴!」

 

 言ったのは──スマホを片手にしたハズシだ。

 

「どうしたでござるか!?」

「……今朝、どうやら私が主導してたダム工事の現場で事故があったそうなのよ!」

「事故ォ!?」

「どうやら、ドリルで岩盤を開けた時に、紫色の鉱脈を傷つけてしまったようで……そこから靄が噴き出てリュウグウの旦那が出てきたとかなんとか」

「靄……そういえば父さんたちも、身体の周りに靄みたいなのが出てたかも」

「……原因は恐らくソレね!」

「ハズシ殿。傷つけた鉱脈の正体、探る必要があるでござるな」

「ええ。もしかしたら、サイゴクの霊脈と関係のある場所だったのかもしれないわ」

 

 ──サイゴクの霊脈。

 それは、このサイゴクの地を槍の如く貫くサイゴク山脈から枝分かれしたエネルギーの流れである。

 このエネルギーの流れは、サイゴク地方に住まう多くのリージョンフォームポケモン達に関係があるとされており、また触れれば祟りや禍を起こすと言われているのだ。

 故に、サイゴク地方では工事をしてはいけない場所などが細かく取り決められているのである。

 しかし──今回のダム計画は、事前に確認された霊脈の流れとは外れた場所で行われていた。

 ハズシはこの中では最も長くキャプテンを経験しているベテランであるが故に今更初歩的なミスは犯さない。

 

(つまり、もしも有り得るとするならば……霊脈の流れが変わったか……広がっている……?)

 

 キャプテン達でさえ未だに分からない事がある。

 それは、サイゴクの霊脈が何の為に存在するのか。

 あるいは何を由来としたエネルギーなのか。

 あまりにも不可解な代物であるため、サイゴク地方で変な事件や事故が起これば取り合えず霊脈の所為にしてきた過去は確かにあるが──そもそも霊脈が何なのかすらよく分からないというのが感想なのである。

 

「やぁん……?(※一般通過ヤドン)」

 

 このように、学者やキャプテンが云100年単位で考えても分からなかった問題だ。

 何より調査すれば、禍や祟りが起こるのでますます始末に負えないのであった。

 だが、死んだはずの先代キャプテン達が蘇った事、そして正体不明の鉱脈が破壊されたことは決して無関係ではないとハズシは考える。

 

「──その調査……俺とアルカに行かせてくれないか……ッ!?」

「──ッ!!」

 

 苦しそうな声が聞こえてきて、キャプテン達は振り返った。

 上半身に包帯を巻いたメグルがふらふらと壁に手を伝わせながらやってくる。

 

「メ、メグルさんッ!?」

「──このままやられっぱなしで……黙ってられっかよ……!!」

「ダメだよメグルッ!! 病院抜け出したらッ!!」

 

 尚、当然のように後ろから走ってくるのは──アルカだ。

 

「も、もうっ!! 安静にしてなきゃダメなんだからね!?」

「ニンフィアのオオワザ使って骨折は治したよ……ッ」

「ウソでしょ、病室でギガオーライズ使ったの!?」

「……こ、こいつは……」

 

 ユイは頭を抑える。

 骨が折れる程の大怪我を負ったはずのメグルだが──どうもまたしても無茶をしたらしかった。

 相棒・ニンフィアが誇らしげに胸を張っている。

 

 

 

「ふぃるふぃるきゅー」

「あんたね……? ホントに悪い事考えるのは早いんだから……」

 

 

 

 ──ノオトとの試合ではルカリオに惜しくも敗れてしまったが──この凶暴リボンは、これまで何度もサイゴクの危機を救っているのを皆が知っている。

 そして、とんでもなく悪知恵が働く上に、主人譲りの無茶で向こう見ずな性格まで受け継いでいるのであった。

作者の作風に期待するものは?(良ければ感想欄でも教えて下さい)

  • ラブコメ、純愛
  • 戦闘シーン
  • シリアス、曇らせ
  • ギャグ、コメディ
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