続・ポケモン廃人、知らん地方に転移した。【完結】   作:タク@DMP

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第4話:鉱脈

「ダメに決まってるでしょ! 怪我の治し方もイカれてるし! 鉱脈を見るだけならボクだけで十分だよ!」

「ダーメだ! 万が一変なの出てきたら、大変だろ! 嫁さん一人で死地に行かせるバカが何処に居るんだ!」

「いーや、ボク一人で行くね! 怪我人は休んでなよ!」

「いや待てアルカ殿」

「アルカ様、此方へ」

 

 アルカの脇を掴み、ヒメノとキリは無理矢理彼女を物陰に連れて行く。

 

「ちょっと二人共何をすんのさ!? ボクじゃないと鉱脈の事は分かんないでしょ!? 地質学と古生物学はボクの分野だよ!!」

「此処は大人しく()()()殿()()()()()鉱脈の調査をするでござるよ」

「メグルを連れてくの!? 今日怪我して今日治ったばかりなのに!?」

「アルカ様はもう自分一人だけの身体ではないのです。無茶は禁物なのですよ」

 

 その言葉にアルカは目を見開く。

 そして下腹部を思わず両の手で触るのだった。

 このお腹の中には、まだ小さいが──新しい命が宿っているのだ。

 

「あっ、そっか……!」

「もういっその事、今此処でメグル殿に告げるべきでは……ッ!?」

「ダ、ダメダメ!! そんな事言ったら、今度はメグルの方がボクを置いていこうとするよ!!」

「そもそもアルカ殿、何週目でござるか……ッ!?」

「今5週目くらいみたい……体調は全然元気なんだけど」

「微妙でござるな……我々とヒャッキの民では妊娠の経過も違うだろうし」

「そうなんだよね……ボクも初めてだから何にも分かんなくて」

 

 女子三人の会話は此方からではメグルには、よく聞こえない。

 メグルは首を傾げながら「何話してんだアイツら?」と疑問符。

 しばらくして戻ってきたアルカが何かを隠すように誤魔化し笑いを浮かべながら言った。

 

「えーと、メグル……一緒に行こ?」

「何だ急に変わったじゃねえか、さっきまで俺を置いていこうとしてたのに」

「……お願い」

 

 上目遣いでアルカはメグルの腕に抱き着く。

 ……此処まで懇願されるとメグルは断れるはずがなく。

 

「仕方ないなぁぁぁ~~~!! そこまで頼まれちゃなぁぁぁ~~~!!」

「むふー……!」

「大体、危ない所にお前一人だと俺も不安だし──ヒュッ」

 

 背後から殺気。

 メグルが振り返ると、そこには──キリとヒメノの姿。

 

「一番不安で危ないのは何処の誰だと思ってるのです?」

「少なくとも病室内でギガオーライズを使う大馬鹿野郎には言われたくないでござるな」

「一回死んで生き返ってるのに、まだ無茶をする癖が治らないのです? 馬鹿は死んでも治らないとはこの事なのです」

 

 苦無を首に突きつけるキリ。そして御札を首に突きつけるヒメノ。両方共目が据わっている。

 

「ねえ!! 怖い!! 何を話してたんだ!? キリちゃんとヒメノちゃんがスッゲー怖い!!」

「んー? 残念でもないし当然かな」

「助けて、俺の嫁が俺の味方をしてくれない!!」

 

 これも全てニンフィアを使った荒療治があまりにも過ぎるのがいけなかった。

 ニンフィアのオオワザ”しんぴのめぶき”は対象の生命力を活性化させて怪我を治癒させる。

 骨折くらいなら簡単に治してしまうのだった。

 しかし、ギガオーライズであるが故にメグルの身体にはしっかり負荷がかかっているのであるが。

 

「正直病室でニンフィアのオオワザ使った事については怒られても仕方ないと思うよボクは」

「ほんとバカなんだから」

「いっぺん怒られろッス」

「今まさに怒られてるわね」

「もしかして俺、味方が居ない!?」

 

 キャプテン達は皆頷いた。

 

「……敵は強い。じっくりと攻略していく必要がある。拙者たちは各おやしろの付近に戻り、先代キャプテンの足掛かりを辿る」

「その間、俺とアルカで、鉱脈の場所を調査だな」

「ワタシも同席するわ。丁度場所はベニだし、治水計画はワタシの責任だもの」

「ハズシさんはおやしろの方を見に行った方が良いっしょ」

 

 ぐりんぐりん、と肩を回しながらノオトが言った。

 

「……折角”よあけのおやしろ”はキャプテンが二人居るんス。此処はオレっちが。姉貴、町の方、頼んで良いッスか?」

「もーまんたい、なのですよー」

「……いや、ノオトちゃんにはこのセイランシティの方を見て貰った方が良いわね」

「あ、そうか!! セイランにはキャプテンが居ない……」

「サイゴク最強のキャプテンなら、リュウグウの旦那の監視も造作じゃないでしょ?」

「悪いけどオレっちでもリュウグウさん相手は荷が重たいッスよ……」

 

 こうして人員の配置は決まった。

 キャプテン五人はそれぞれの町に駐留し、ダークキャプテンとヌシポケモンの動向を監視。

 そしてメグルとアルカはベニシティのダム建設現場で鉱脈の調査。

 ハズシもそれに動向することになるのだった。

 

「おんなじベニだしね」

「でも今、おやしろは大変な事になってるんでしょ?」

「ええ。おやしろでヌシポケモンが暴れていて、駐留しているトレーナーは皆おやしろから追いやられてしまった」

「キャプテン命令で、抗戦は留めるように言ってるんスけどねー……勝てっこねーッスから」

 

 テレビやニュースサイトの中継を見ると、どのおやしろも悲惨な事になっている。

 ヌシポケモンの力は圧倒的だ。いざ人に牙を剥けば、おやしろのトレーナーくらいは容易く追い払える。

 そればかりか、彼らを指揮するのはダークキャプテン。先代キャプテンの知識と経験を持ちながら、人に敵対する何者か。

 戦力はキャプテンに匹敵するどころの話ではない。

 

「先代キャプテンの手持ちは生きていたりボックスに預けられている子が殆どだわ」

「にも拘らず、あのダークキャプテン、自前でポケモンを作り出して繰り出してたんだから」

「……戦力は見た目以上に大きいでござるな。下手をすると残機という概念がない可能性があるでござる」

「サイゴクの霊脈が蘇らせた亡霊……ッスか」

「だとすれば何のためにー? ヒメノには分からないのです」

「分かんねー事は今考えても分かんねーよ」

「そだね。ボク達は、今やれることをやるだけだ!」

「そうだな。そして俺達が今やるべき事は──」

 

 そうして2秒後。

 ノオトの頭には「五社同盟責任者・総司令官」とマジックペンで書かれたハチマキが巻かれていた。

 

「あんのーッ!? オレっちなんかまた責任と役職が上乗せされてるんスけどーッ!? 本当にこれが今やるべき事なんスかねー!?」

「サイゴク最強のキャプテンなんだから、ノオト殿が当然筆頭キャプテンでござろう」

「似合ってるぜー、ノオト。よっ!! 最強!!」

「今のノオトちゃん、5年前のリュウグウの旦那と同じ立ち位置なのよ、自覚持って頂戴」

「ノオトの良い所、見てみたい、なのですよー♪」

「うんうん似合ってるんだからー(棒)」

「クソォッ!! 反論が出来ねえッス!!」

 

 ……責任者も決まった。

 残念ながら、今のサイゴクの筆頭キャプテンはノオトなのである。

 最強の称号の代償は──あまりにも重い。

 

「へっ、様になってきたじゃねーか、そのハチマキ」

「たった今マジックペンで書かれたばっかッスけどねえ!?」

「……責任感に溢れるノオト殿、拙者は好きでござるよ」

 

 耳元でぽしょぽしょ、とキリがノオトに囁いた。

 五社同盟責任者は──あまりにもチョロかった。

 

「総司令官、不肖このノオトが務めさせていただきますッス!!」

「ねえ心配になるんだけど、この司令官」

「なぁに一番上は適度にアホなくらいがちょうどいいんだよ、その為にキリさんが居るんだろーが」

「全部聞こえてるんスけどねえ!?」

「……ノオト殿が賢くなると拙者の存在意義が……」

「そんな風に思われてたんスか!?」

「因みにアホは人の事言えないからね、メグルも」

「えッ!?」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 ──結局、夜の間に空飛ぶタクシーでメグルとアルカはベニシティへ向かう事になった。

 アーマーガアは夜目は効く。夜間飛行もお手の物だ。

 残るキャプテン達も、各々の移動手段でそれぞれの町へ戻る。

 ダークキャプテンは今の所おやしろの占拠とヌシポケモンの洗脳に留まってはいるが、いつ町に危害を加えるか分からないためだ。

 そして、空飛ぶタクシーの中──若い夫婦は手を繋ぎ、互いに身を寄せ合い、眠っていた。

 

「ん……」

 

 そんな最中、アルカは目を覚ます。

 すやすやと眠るメグル。

 彼が隣にいるのは──信じられない奇跡の積み重ねの先だ。

 本来なら彼の命は、マーニャで終わっていた。

 それが今、何の間違いか彼女の隣にいる。

 

「大丈夫、だよね。傍に……居るよね」

 

 確かめるように彼の手をもう一度、硬く握り締める。

 マーニャに着いた頃、ずっと不安そうな顔をしていたメグル。

 今ならば彼の気持ちがアルカはよく分かる。

 アルカは──もう、メグルに二度と死ぬ目に遭って欲しくないのだ。

 正直な所、怪我をしているならば少しでも寝ていてほしいのが本音である。

 だがそれはきっとメグルが望まない。

 

(……きっと、大丈夫)

 

 お腹を摩る。

 いつ、この子の事をメグルに話そうか、とアルカはいまいち決心がつかないでいた。

 待ちに待って望んだメグルとの子。

 だが、本当に大変な時期に重なってしまった──とアルカは頭を痛める。

 なんせ、このダークキャプテン問題が解決しない事には出産だのどうのとか言っていられる場合ではないからだ。

 

(ハ、ハハ……そう言う意味ではこれが十月十日後じゃなくて良かったかも……)

 

 もっと大変な時期に重ならなくて良かった、と不幸中の幸いすら感じるのであった。

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「──報告ッ!! 各おやしろの状況ですが、悪化の一途をたどっていますッ!!」

「あいつらやっぱり人間じゃないんだから……! セイランから、サイゴクの各地に辿り着くまでがあまりにも速すぎる──ッ!!」

 

 そして、キャプテン不在のおやしろが攻め落とされるのも時間の問題であった。

 更に本来ならばキャプテンが居ない間の抑止力足り得るヌシポケモンが誰一人としてまともに戦うことなくダークキャプテン達に着いてしまったのは最大の不幸と言えるだろう。

 彼らは凡そ理性というものを失っており、周辺の野生ポケモンを呼び寄せておやしろを守っている。

 そんな中、更なる報告がユイに届くのだった。

 

「ユ、ユイ様!! おやしろの様子が──ッ!!」

「何!? どうしたの!?」

 

 シャクドウシティにいち早く駆け付けたユイは、おやしろのある方角を見て絶句する。

 夥しい量の紫色の靄がおやしろから立ち上っているのだ。

 急いでおやしろの前にやってくると彼女はそこで足を止めた。

 おやしろの周辺は、紫色の結晶のようなものが大量に生えており、とてもではないが近付ける状況ではない。

 結晶はアスファルトを突き破って地面から湧き出している。

 

「なにこれ……何なの!?」

「どうやら現時点で他のおやしろでも同様の事態が起こっているらしく……!!」

「近付いてはいけませんッ!! 退避しましょうッ!!」

「う、うんッ……!!」

 

 結晶は徐々に広がっており、おやしろそのものが巨大な水晶の要塞と化す。

 そればかりか町に向かって結晶は広がっており、住民たちの生活を脅かすのは最早時間の問題であった。

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「──やいやいやいやいッ!! 出てくるなら出てきやがれ、リュウグウさんのパチモンッ!!」

 

 

 

 「五社同盟・総司令官」の鉢巻を巻いたノオトは、完全に結晶化したおやしろに向かって拡声器で叫びかけるが返事は無い。

 

「クッソ、絵面からして完全にこれじゃあ負け犬の遠吠えッスね……!!」

「ノオト様、この辺りも結晶が浸食してます、逃げましょうッ!!」

「何のためにこんな事を──」

 

 ノオトはおやしろのトレーナーに連れられ、その場を離れる。

 既にセイランの海水浴場もおやしろへ続く道も紫色の水晶に覆われてしまっているのだった。

 

 

 

「──聞こえるかねッ!! サイゴクの民たちよッ!!」

 

 

 

 息も絶え絶えに水晶化するおやしろから離れたノオトの耳に、何処からともなく声が響いてくる。

 耳からではない。脳に直接だ。

 

「──問おうッ!! サイゴクという地が一体誰のモノなのか──ッ!!」

「……な、なんだぁ……!? う、うるせぇ、リュウグウさんの声が──」

「誰も答えられはしないだろうッ!! おやしろ信仰にとって代わられた、サイゴクに住まう本来の神の名をッ!!」

「ッ……!!」

「キャプテンとは元来、代行者でありッ!! 自然と人間の境界を定める者であるッ!! 故に──我らはその本来の役目を果たさねばなるまいッ!!」

 

 この声が聴こえているのは今この場にいるノオトだけではない。

 周囲にいる住民たちやトレーナー。

 ひいては──サイゴクに居る全ての人間やポケモンの耳に届いている。

 

 

 

「我々は()()()()──ッ!! 人と自然の境界を再定義する者の名前であるッ!!」

「霊脈の民……ッ!?」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「今の声、メグルにも聞こえた……!?」

「ああ、ハッキリ聞こえたぜ……!」

「人と自然の境界を再定義ですって……ッ!? やはり霊脈絡みなのかしら……ッ!!」

 

 突如脳に響いてきたリュウグウの声を聴くメグル達。

 その前には、既に放棄された工事現場が広がっている。

 だが、肝心の工事現場は──散々な有様だ。重機も、工具も、全てが──紫色の結晶に飲み込まれている。

 そればかりか、周囲の湖にも結晶は浸食してしまっているのだった。

 

「……キャプテンの役割は人と自然の境界を見定める事……だけど、あいつらのやってることは──人間どころか自然をも蝕む行為ね!!」

 

 ハズシが苦々しく言った。

 

「止めねえと……ッ!! だけどこれ、どうなってるんだ? 湧き出してるところはとっくに結晶で埋まっちまってるだろ。触ったらどうなるんだコレ……?」

「本当は触って確かめたいけど、とてもじゃないけど近付けない……生き物みたいに広がってるよ!!」

 

 アルカとメグルは徐々に引き下がりながら結晶を前にして息を呑む。

 

「あの靄と言い、この結晶……サイゴク山脈地下の霊脈が流れている辺りで確認されているものと同一よ」

「でも霊脈って、この辺りには……」

「ええ本来なら貫いていないはず」

「じゃあもしかして、霊脈が年々サイゴク山脈を起点として広がっていたってことですか──!?」

「ワタシたちも知らない間に──霊脈の脅威はこんな所にまで来ていたってわけね。あのキャプテン達も……恐らくは霊脈の力で出てきたんだと思うわ」

「霊脈の民って自分たちで言ってたもんな……!」

 

 メグルが言ったその時。

 

 

 

「あらあらあらァ? そこは外れ。もう何にもねーのよッ!!」

 

 

 

 

 炎の渦が──アルカ目掛けて飛ぶ。

 すかさずメグルは彼女を突き飛ばし、庇うのだった。

 すんでのところで二人共丸焼きは免れたが──脅威は去っていない。

 

「ありがとメグル……!!」

「……あっぶね──何しやがるッ!!」

「ママ……ッ!!」

 

 3人の前に現れたのは──ホオズキ。

 ハズシの恩師にして、先代”ようがんのおやしろ”キャプテンであった。

 その傍らには爆炎を燃え盛らせるバシャーモの姿が。

 

 

 

「──あれだけ手痛くやられたってのに、まだやろうってのかしらん? ハズシちゃん」

「悪いけど……ママの顔で、これ以上悪さはさせないわよ」

作者の作風に期待するものは?(良ければ感想欄でも教えて下さい)

  • ラブコメ、純愛
  • 戦闘シーン
  • シリアス、曇らせ
  • ギャグ、コメディ
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