続・ポケモン廃人、知らん地方に転移した。【完結】   作:タク@DMP

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第10話:暁の護剣

 ※※※

 

 

 

 かつて、獣は群れの誰よりも強かった。

 

 かつて、獣は誰よりも賢かった。

 

 災いを呼ぶと言われが故に虐げられていた白き同胞たちを守るため──死力を尽くして戦った。

 

 

 

 届かなかった。

 

 

 

 仲間は皆死に絶え、獣だけが残った。

 背中には刀が無数に突き刺さり、後ろ脚を引きずることでしか動くことは出来なかった。

 

 

 やがて、獣は──骸転がる戦場の跡地に辿り着く。

 

 

 ああ、人は愚か。

 

 

 同族を守ることで手一杯の獣、同族同士で平気で殺し合う人間──

 

 

 

 獣は背中に刀が突き刺さったまま、転がっていた車輪を後ろ脚だった場所に括りつけた。

 

 

 

 人への恨み。復讐心。そのままに──獣は、目に付いた人を襲い喰らう悪鬼と化す。

 

 

 

 三日三晩暴れ狂った獣は──滅多打ちにされた後、力尽き、漸く死に絶えた。

 

 

 

 

 ──死の100年後、全ての記憶を失って獣は蘇る。

 

 

 

 生も死の境を漂う暁の化身──アケノヤイバとして。

 

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「驚いただろう? この力ッ!! これさえあれば、旧家二社も……御三家三社もこの手に収める事が出来たというのにッ!! アケノヤイバがこの姿をワシに見せたのは、ただの一度きりだったッ!!」

 

 

 

 ヒメノが咳き込めば血の絡んだ淡が吐き出された。

 アケノヤイバのオオワザの余波はあまりにも大きかった。

 服も肌も焼け爛れ、ヒメノは起き上がるので精一杯だった。

 しかし、それでも──最後の抵抗をするべくモンスターボールを握る。

 

(今のアケノヤイバからは……恐ろしいまでの憎悪を感じるのです……いや、これは……拒絶……ッ!?)

 

「そんな体で──何ができるッ!!」

「ヒメノは……ヒメノは……キャプテン、なのです……!」

「バカバカしい……アケノヤイバ、トドメを刺さんかッ!!」

「ギャリリリリリイイイイイイイイイスッ!!」

 

 吼えるアケノヤイバ。

 番う車輪が高速で回転し──挟み込む。

 

 

 

 ──ヒメノではなく、自らの背後にいたアサザを。

 

 

 

「なっ、アケノヤイバ──ッ!?」

 

 

 

 アサザが悲鳴を上げるまでもなかった。

 車輪からは無数の刃が生え、一瞬でキャプテンを騙る慮外者をバラバラに斬り刻む。

 

「ふ、ざけるなッ……あっ、がっ、そんな──しょ、所詮は畜生か、アケノ、ヤイバ……ッ!!」

 

 生首のみとなり、転がるアサザ。

 しかしそれを──アケノヤイバは容赦なく踏みつけ、砕く。

 間もなくアサザの身体だったものは紫色の結晶となり──消え失せるのだった。

 

「……お、おじいさま……ッ!!」

「ギャリリリリリリリリリリイィィィス!!」

 

 だが事態は何も解決していない。

 アケノヤイバの目は赤いまま──ヒメノを狙い、一歩、また一歩と進む。

 浮かび上がる車輪がヒメノ目掛けて飛んで行く。

 モンスターボールを握る手に力が入らない。

 

(ッ……)

 

 目を瞑る。

 此処までか──と。

 

 

 

「──”はどうだん”ッ!!」

 

 

 

 ──否。

 車輪は纏めて二つ叩き砕かれる。

 青白く輝く波動を以てして。

 ヒメノは目を見開き振り向く──そこに立っていたのは──

 

「もう、大丈夫ッス、姉貴──後はオレっちがやる」

「ッ……ノオト!?」

 

 ノオトはヒメノの身体を抱き寄せ肩を貸す。

 アケノヤイバに向かい合うのは──ルカリオだ。

 

「……ルカリオ!! アケノヤイバの様子がおかしい……最初から本気で行くぞッ!!」

「ガォンッ!!」

 

 ノオトはすかさずオージュエルにカードを翳す。

 ルカリオの身体は冷気に包まれ──全身からは猛毒の棘が突き出すのだった。

 

「ギガオーライズッ!! ”ウガツキジン”ッ!!」

 

 それを見てか、よりアケノヤイバは憎悪を猛らせた。

 本来ならばサイゴクの地を踏んではならぬ存在の力。

 虫唾が走る──

 

「ギャリリリリリリリリリリイィィィスッ!!」

 

 ──再びアケノヤイバの周囲に出現した番う車輪。

 それがルカリオ目掛けて飛んで行く。

 

「”ボーンラッシュ”で受け流し──たらこっちが危ねえッ!! Oワザ──”こごえるはどう”で凍り付かせろッ!!」

「ガオンッ!!」

 

 憎悪滾る炎を掻き消すかのようにルカリオが掌から冷気を射出し、車輪を凍り付かせ、そして砕く。

 しかし、幾ら砕いても車輪が消える事は無い。

 次々にアケノヤイバの身体の炎から生成されて現れてしまう。

 あの車輪で捉えられれば二度と抜け出す事が出来ない。それを察しているルカリオは、なかなかアケノヤイバに近付くことができない。

 一方のアケノヤイバは尾を日本刀のように変化させ、それで地面を抉り、エネルギー波を次々に飛ばす──

 

「ルカリオ、相殺だッ!! 連続”はどうだん”ッ!!」

 

 ──それを防ぐべくルカリオは”はどうだん”を次々に撃ち放つ。

 だが、このままでは本体に攻撃を与えることが出来ないまま、ギガオーライズのタイムリミットを迎えてしまう。

 瀕死の重体のヒメノを庇うノオトにとっては──今や一分一秒が惜しい。

 

(クソッ、勇んで来たくせに……なんつー醜態だッ!! 何が最強のキャプテンだッ!! すいしょうのおやしろががら空きだったから急いで姉貴を追いかけたってーのにッ!!)

 

 そうして冷静さを欠いたこの状況は、少なからずシンクロ率に影響を及ぼしていた。

 ルカリオの身体を覆う氷の鎧にはヒビが入っており、その瞳の稲光は消えつつあった。

 

(影に潜らねえ!! ただでさえ攻撃が当たってねえってのに!! まさか、まだ余力が残ってんのか!?)

 

「ノオト……ッ」

「大丈夫だ姉貴、ぜってーに──」

「ノオト……ッ!!」

 

 びくり、とノオトは肩を震わせ、姉の顔を見遣る。

 瀕死の重体のはずなのに。ヒメノは──震える口で必死で言葉を紡ぐ。

 

「ノオト……アケノヤイバは生身の身体を手に入れているのです……! 影に潜れないはずなのですッ!!」

「ってことは──」

「……()()()()()()()()のです。アケノヤイバを助ける方法が一つだけ、あるのですッ……! 私達の手で、助けるのです……!」

「……!」

 

 ノオトは唇を噛む。

 浮かれていたのだ、と己を見つめ直す。

 二人でおやしろを守り通す。それが──自分達双子に課せられた使命なのだ。

 

「オレっちもまだまだだな。大怪我してる姉貴に諭されるなんて……」

「……うるせーのですよ……黙って言う事聞くのです」

「はいはい、分かってるよ姉貴ッ!! オレっち達は……キャプテンだからな!!」

 

 覚悟は決まった。

 ノオトの目から黒い稲光が迸る。

 ルカリオにもその覚悟は伝わり──より一層大きな冷気を右拳に収束させるのだった。

 チャンスは一回、一度きりだ。

 

「──ルカリオッ!! オオワザ……”ウガツイチゲキ”ッ!!」

 

 ルカリオの拳が開かれ、掌に大きな氷柱が現れる。

 そして、それをアケノヤイバ目掛けて突きつけた──しかし。

 

「ギャリリリリリリリリリリイィィィス!!」

 

 アケノヤイバもまた、巨大な車輪をルカリオへ飛ばし、挟み込む。

 それでも構わず肉薄するルカリオ。

 対するアケノヤイバも、尻尾を思いっきり地面に擦りつけ、5つの影の剣を作り上げる。

 そして影の剣は回転して並び、盾のようにしてアケノヤイバを守る──

 

 

 

【──ルカリオの ウガツイチゲキ!!】

 

【──アケノヤイバの ごうそくけい・あかつきのごけん】

 

 

 

 ルカリオの渾身の拳は、影の剣によって阻まれる。

 せめぎ合う両者。

 しかし、ルカリオの身体を車輪が挟み込んで回転し、抉り削る──ッ!!

 

「ッ……が、ルカリオ、持ちこたえろーッ!!」

「ガォオオオオオン!!」

「ギャリィ!?」

 

 全てを貫き通す凍てつく手刀。

 それが遂に影の剣を纏めて叩き割った。

 だが──同時に車輪も爆ぜ、ルカリオの氷の鎧を打ち砕く。

 ノオトの目から黒い稲光が消え失せた。ギガオーライズが解除されたのだ。

 勝利を確信したアケノヤイバは、トドメを刺すべく尻尾を振るおうとした。しかし──

 

 

 

「ミミッキュ!! ”じゃれつく”……なのですっ……!!」

 

 

 

 ──ルカリオの背中を踏み越え、何かがアケノヤイバに飛びつく。

 避けようとしたアケノヤイバ。しかし、逃げられない事に気付いた。

 足は既に、ルカリオの放った冷気によって凍えており、動けない──

 

 

 

「みみっきゅ!! みみーっきゅ!!」

 

 

 

 ──ズタ袋を被ったようなポケモン・ミミッキュ。

 ヒメノ最大の相棒の急襲により、勝負は決した。

 確かに肉体を得たアケノヤイバであったが、その代償は大きかった。

 悪・格闘タイプにフェアリータイプは二重で弱点を突かれる。

 妖精の加護を得た拳がアケノヤイバを殴り飛ばす──

 

「ギャ、ギャリィィィッ……!?」

「わりーな、ヌシ様……これしか無かったんだ。騙し討ちみてーだったけどよ……!!」

 

 ──紫色の靄を噴き出し、汚泥で出来た仮初の肉体を崩壊させていくアケノヤイバを前にノオトは呟いた。

 ノオトの手には、ミミッキュが入っていたモンスターボールが握られていた。

 

「……ノオト。助かったのです」

「いんにゃ、姉貴がいねーと、今回もヤバかったよ」

「……ふふ、こんな風に共闘するのは何年ぶりなのです?」

「……さぁな。少なくともヌシ様相手にすんのは二度とゴメンだぜ」

 

 どさり、とノオトは尻もちを搗く。

 おやしろを覆っていた紫色の結晶は──徐々に消えていくのだった。

 

「……エリィィィス」

 

 憔悴しきったアケノヤイバであったが、残る力を以て首を上げ、異常が消え失せていくおやしろを見届けていく。

 全ては終わったことなのだ。

 アケノヤイバにとっては、肉体があった頃の過去も、そしてかつて苦楽を共にしたアサザとの日々も──もう既に過ぎ去ったことなのだ。

 彼にとって大事なのは、目の前の双子と共にあり、その行く末を見守ることなのだから。

作者の作風に期待するものは?(良ければ感想欄でも教えて下さい)

  • ラブコメ、純愛
  • 戦闘シーン
  • シリアス、曇らせ
  • ギャグ、コメディ
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