姉のブラコンが治らないのはどう考えても先輩達が悪い 作:わたモテ好き
「ハル君、先にお風呂入ってもいいよ」
「分かった」
智子に相談したその日の夜、明日香は早速行動に移すことにした。
夕食を終えた後、いつものようにリビングのソファに座っている晴人に明日香が言う。
一緒に入る入らないで揉めた翌日だったので、少しばかり警戒していた晴人だったが、特に変わった様子のない明日香の様子を見て、ほっと胸を撫で下ろす。
「じゃあ、お風呂入ってくるよ」
「うん!行ってらっしゃい!」
笑顔で明日香に見送れ、晴人は浴室へと向かう。
「行ったみたいね……よしっ!準備開始よ!」
明日香は小さくガッツポーズをし、作戦を開始する。
すぐ突入したのでは、入浴中の晴人に気づかれる恐れがあったので、少し時間をおいてから用意していた着替えを手に、明日香は脱衣所へと入った。
(ハル君は気づいてなさそうね……)
曇りガラスの向こうにいる晴人は、脱衣所にいる明日香に気づいた様子がなかった。
明日香は、晴人に気づかれぬように静かに服を脱ぎ始める。
現れたのはレースとサテンがあしらわれた、高級感溢れるブラジャー。花を模した刺繍が施され、上品かつ可愛らしいデザインになっている。カップの縁は繊細なレースで縁取られ、胸元はリボンによって華やかに飾られている。ブラジャーとセットになったショーツもまた、同じデザインのものだ。清楚な雰囲気の中に、どこか色香を感じさせる一着である。
ブラのホックを外すと、大きくも形の良い乳房が解放される。
ショーツも同じように、ゆっくりと下ろしていくと、露になる白い肌と、きれいに整えられた陰毛。
明日香は、それらを一切隠すことなく、堂々と風呂場への扉を開いた。
「ハル君、入るね」
「えっ!?あ、姉さん!?」
突然の来訪者に驚く晴人。
「えっ?どうして入って来たの?」
「だって、これくらしないと、一緒にお風呂入ってくれないでしょ?あ、せっかくだから体洗ってあげるね」
明日香はそう言うと、ボディーソープの入ったボトルに手を伸ばす。
「い、いや自分でやるから……」
「遠慮しなくていいから、ね?」
有無を言わせない迫力に気圧され、晴人は渋々了承する。
「はぁ……じゃあ、背中だけ……」
「はーい」
明日香はにこにこと微笑みながら、ボディスポンジにたっぷりとボディーソープをつけ泡立てる。
そして、晴人の背後へ回り、優しくゆっくりと洗い始めた。
「痒いとこはない?」
「うん……大丈夫……」
「良かった。じゃあ、前の方も洗うから、こっち向いてくれる?」
「えっ……いや、前はいいよ……」
顔を赤くしながら、晴人が拒否する。
「どうしたのハル君、前まで一緒に入っていた時も洗ってたじゃない。ほら、早くこっち向いて?」
明日香の有無を言わせぬ口調に、晴人は諦めて後ろを向く。
明日香はそんな晴人を、愛おしそうな目で見つめながら、丁寧に体を洗っていく。
晴人の視界では、明日香の大きくも形の良いバストがプルンプルンと上下左右に揺れ動き、目のやり場に困ってしまう。
「はい!おしまい!」
「ありがとう。じゃあ、僕は出るから……」
「ダメだよ。ハル君、浴槽に入ってないでしょ。ちゃんとお湯に浸からないと」
「いいから、私も体洗ってから入るから、待っててね」
「う、うん……わかった」(今日の姉さんかなり強引だな……)
またも明日香に押し切られた晴人。
仕方なく、浴槽に入る。
「ふふ~ん♪」
上機嫌な様子で鼻歌を歌いながら、自分の体にボディスポンジを滑らせている明日香。
その姿を見ていると、晴人も何だか恥ずかしくなってきてしまう。
体を洗い終えた明日香が、お湯に髪が浸からないようにタオルで纏め上げ、晴人の隣に入って来る。
「やっぱり2人一緒に入ると少し狭いかな?」
「じゃあ、一緒に入らなければいいんじゃ……」
「まあまあ、いいからいいから」
明日香は楽しそうに笑うと、晴人の肩にもたれかかってきた。
「姉さん?」
「ハル君、今日はごめんね……急にこんな事してびっくりしたよね」
明日香の優しい声音に、晴人は黙って耳を傾ける。
「私ね、ハル君が一人でお風呂入るようになってから、寂しかったんだ。ずっと、ハル君と一緒にお風呂入ってたから」
「……」
「だから、久しぶりにハル君と入りたかったの」
「そっか……でも、いきなりこういう事はもうしないでよ。僕だって、もう高校生なんだし……」
「それは分かってるんだけどね。ハル君とどうしてもお風呂に入りたくて、我慢できなくなっちゃった」
「まったく、姉さんは……」
晴人は苦笑すると、明日香の頭を撫でた。
明日香は嬉しそうに目を細めながら、晴人に寄りかかる。
それからしばらく、姉弟はお互い何も言わず、ただ温もりを分かち合っていた。
「ねえハル君、毎日とは言わないから、たまにはこうやってお風呂入ってもいい?」
沈黙を破ったのは明日香だった。
「まあ、たまにだったらね……」
「やった!約束だからね!」
晴人が渋々といった様子で答えると、明日香は満面の笑顔で喜んだ。
(本当にこの人は……)
昔から変わらない姉の笑顔に、晴人は自然と口元が緩むのを感じた。
(やった!黒木さんの言う通り、うまくいったわ!)
明日香は内心ガッツポーズをしていた。
(また何かあれば、黒木さんに相談しようっと)
智子のアドバイスが的確だったことに感謝しつつ、晴人との入浴を堪能する明日香であった。
◆◆◆◆◆
晴人が風呂を上がった後、明日香は髪を丁寧に洗っていた。
その間に晴人はリビングに戻り、ソファに座ってテレビを見ていた。
(さすがに、まだ寝るのは早いよな……)
明日香とのゴダゴダで入浴に時間が掛かったものの、時刻はまだ夜の9時過ぎである。
晴人はテレビを見ながら、物思いに耽っていた。
(冷静に考えると、姉さんがなんであんな事したのかよく分からないな……)
普段の姉からは想像できない行動に、晴人は誰かに入れ知恵されたのではないかと疑っている。
(夏帆さんや茜さんは違うよな……あるとしたら美保さんか風夏さんかな……)
姉の友人を一人一人思い出していき、今回のような入れ知恵をしそうな人物をピックアップしていく。
「ハル君、髪乾かさないと風邪ひくよ」
晴人の施行を遮るように、風呂上りの明日香が声を掛けてきた。
「あ、うん。ちゃんと乾かすつもりだったよ」
「ふふ。せっかくだから私にやらせて?」
明日香は嬉しそうに言うと、持ってきたドライヤーを片手に晴人の隣に座り、慣れた手つきで晴人の黒髪を優しくブラシでとかし、ドライヤーを当てていく。
「どう?気持ちいい?」
「うん……」
「良かった。じゃあ、もっと綺麗にしてあげるね」
明日香はさらに上機嫌になり、鼻歌を歌いながら晴人の髪に櫛を通し始める。
そんな明日香の様子を眺めていると、晴人の頬も自然と綻ぶ。
「はい!おしまい!」
「ありがとう」
「どういたしまして」
明日香は微笑みながら言うと、今度は自分の髪を乾かし始める。
「そうだ。ハル君、今日もスマホ見せてくれる?」
髪を乾かし終えた明日香が、晴人に尋ねる。
「別にいいけど……そんなに毎日見て意味ある?」
「もちろんだよ!だって、ハル君の事は知っておきたいの」
「まあ、いいけど……」
晴人はそう言うと、明日香へ自身のスマホを手渡す。
明日香は、晴人から受け取ったスマートフォンを操作し、LINEの連絡先が増えていないかをチェックする。
「あれ、この田村っていう人は誰?」
明日香が見つけたのは、プロフィール画像が設定されておらず、名前が「田村」としか記載されていない謎のアカウントだった。
「ああ、それはネットで知り合った、映画好きの人だよ」
「ふーん……この人って、男の人?それとも女の人?」
「どっちだろう……聞いたことないから知らないな」
「ふーん。そっか……」(トークの履歴見る限り、本当に映画の話しかしていないし、文章も女の子っぽくないから、やっぱり男の子なのかしら?じゃあ大丈夫そうね)
トークの履歴、文体、プロフィール画像が設定されていない等の点から、明日香は晴人に女性の影はないと判断していた。
その後は二人でいつも通りの時間を過ごし、就寝となった。
◆◆◆◆◆
「黒木さん。昨日のアドバイス通りにやってみたら、上手くいったわ!」
「か、加藤さん!?」
明日香は智子が登校してくるなり、すぐに話を切り出した。
「ありがとう。黒木さんに相談して正解だったわ」
「え、えっと、相談って弟さんとのお風呂の事ですか?」
「そうよ。おかげさまで、弟と久しぶりにお風呂に入る事が出来たわ」
「そ、そうですか……」(まじか!すぐに実行する加藤さんもすごいが、流される弟の方も結構なシスコンだな……)
昨日のアドバイスについての明日香からのお礼に、智子は内心驚いていた。
「ふひ、ふひひ……お、お役に立てたなら良かったです」
智子は顔を赤くしながら、明日香に返事をする。
「ふふ。また何か困ったことがあったら、相談させてもらうわね」
「は、はい。わ、私でよければいつでも……」
こうして、智子と明日香はお互いに友情を深めていくのであった。
◆◆◆◆◆
「黒木さん、今日の朝、加藤さんと何を話してたの?なんか、妙に仲良さそうだったけど……」
放課後、智子は田中真子、田村ゆりと一緒に下校していた。
黒髪を二つ結びにしている田村ゆりが、今朝の明日香と智子の会話について質問してきた。
「え、あ、あ~、その……なんていうか……加藤さんの弟について相談を受けてた」
「加藤さんの弟って、晴人くんの事?」
智子の答えに、ショートヘアでソバカスが特徴的な田中真子が反応する。
「あ、うん。名前までは聞いてないけど、ま、真子さんは知ってるんだ」
「うん。加藤さんの友達の間では、結構有名だから」
「そ、そうなんだ……」
(まあ、あのブラコンぶりだと有名にもなるか……)
智子はそう納得し、それ以上は深く掘り下げなかった。
「それで黒木さん、なんで弟さんについての相談を黒木さんにしていたの?」
真子との会話が終わったタイミングで、ゆりが智子へ質問する。
「あ、私にも弟がいるから、そこから相談してくれたみたい……」
「黒木さん、弟いるんだ……」
「弟さんはいくつなの?」
ゆりは驚いた様子で、真子は純粋に興味を示した様子でそれぞれ反応を示す。
駅までの道中、3人は智貴の話題で盛り上がった。
◆◆◆◆◆
黒木兄妹の現実
「おい、ちょっといいか?」
「なんだよ…?」
夕食後、自室で寛いでいた智貴に、姉の智子は絡んでいた。
「お前さ、私と一緒にお風呂入りたいと思う事ある?」
ニヤニヤとムカつく顔をしながら、智貴に尋ねる智子。
「死ね」
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