お題イラスト   作:夢枕悪

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3回目のお題イラストは、碧山村貞(@Midoriyamamuras)様より提供頂きました。
今回は、ヘブバンからのでしたので、原作知ってる分、かなり難しかったです(;´∀`)





あの日の夢の

アラームが鳴る前に、目を覚ます。

起き上がり、アラームをオフにする。

外はまだ暗い。

秋の夜長と言うように、少しずつ、日が短くなっていく。

寝具を整え、顔を洗う。

寝間着から制服に着替え、髪を束ねる。

その日の予定を確認しつつ、お湯を沸かす。

一分も経たないうちに、カチッと沸く。

インスタントコーヒーをカップに入れ、お湯を注ぐ。

コーヒーの薫りが、部屋に漂う。

一口含むと、頭が更に覚醒していく。

一昔前なら、何気ない朝も、今では、充分な贅沢だ。

コーヒーを飲みながら、優先事項をピックアップする。

外壁の損傷状況、各拠点への補給、燃料関係、etc、etc…

いつもの朝、いつもの日常の筈が、何か少し違う。

久しぶりに、夢を見たからだろう。

内容は憶えていないが、懐かしい夢だったことだけは憶えている。

何となく思い出そうとするが、思い出せない。

どうでもいい事なのだが、妙に引っ掛かる。

時計が目に入り、いつもより数分過ぎている。

いつの間にか手も止まっている。

時間には余裕があるが、急いで書類を片付ける。

身なりを確認し、部屋を出る。

各部隊の点呼をとる。

いつも通り、月歌を軽くあしらい、朝食へ。

カフェテリアで朝食を受け取ると、焼き立てのパンが、鼻腔をくすぐる。

いつものテーブル、いつもの席に座る手塚を確認し、同じテーブルの席に着く。

朝食を摂りながら、軽い打ち合わせ。

朝食を終えると、司令官室で本日の作戦予定、今後の方針についての打ち合わせ。

出撃予定時刻より、30分早くヘリポートに行き、整備状況、装備を確認。

 

「おっはよー、ななみん♪今日も可愛いねえ」

「ありがとうございます」

「ななみんが、デレた!?」

「デレてません」

 

またも、軽くあしらい、作戦内容を確認する。

 

「…以上が、本日の作戦となります」

「よし!ちゃちゃっと終わらせてくるぜ!」

「お気を付けて」

「ななみん、いってらっしゃいのちゅーは?」

「ありません」

「えーなんでー」

「やる意味が、ありません」

「いやいや、めっちゃあるよ。あたしのやる気が、めっちゃ上がる」

「そうですか。では、気を付けていって来てください」

「やあだ!ななみんに、いってらっしゃいのちゅーして欲しい!」

「おいおい、七瀬が困ってんだろ?いい加減にしてやれ」

「本妻の登場ね」

「このまま、『あたしが、ちゅーしてやるよ』って流れね」

「自分、やるなあ」

「大!胆!」

「やるかあー!」

「え?ユッキー、あたしのこと嫌い?」

「い、いや、そうじゃねえけどよ…」

「これは、ちゅーの流れね」

「やっぱり、するの?」

「やるやないか、自分」

「キタワー!」

「やるかあーー!」

「え?ユッキー、あたしのこと嫌い?」

「い、いや、そういう訳じゃねえけどよ…」

「これは、ちゅーの流れね」

「やっぱり、するの?」

「やるやないか、自分」

「キタワー!」

「やるかーーー!何っ回やんだよ!この流れ!!」

「そろそろ出撃の時間です」

「…冷静だな、おい」

「まあまあ、ユッキーも反省してるから」

「ちょっと待て。あたしが、悪いみたいな言い方すんな」

「え?」

「え?じゃねえよ。…ったく、さっさと行こうぜ。悪いな、いつも時間取っちまって」

「いえ、これも仕事ですから」

 

そう言った瞬間、今朝の夢を思い出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ちょうど、この位の時期だ。

手塚が、指揮官から司令官へ昇進した頃。

補佐官として任命され、間もなかった。

作戦部隊を見送り、ヘリで基地に戻る時。

キャンサーの襲撃で、撃墜された。

なんとか無事ではあったが、トランスポートの発動がほんの少し遅く、デフレクタを大量に消費してしまった。

制圧区域ではあるが、キャンサーは、まだ多数いる。

身を潜め、出来るだけヘリから離れる。

しかし、離れ過ぎる訳にはいかない。

救援は、ヘリの落下地点から始まるだろう。

自分は、セラフを持っていない。

デフレクタの残量も、残りわずか。

身を守る術は、無いに等しい。

唯一の救いは、背の高いススキの群生地に落ちたことだ。

お陰で身を潜めるのに、事欠かない。

時計を確認する。

13時42分。

ヘリの飛行時間から、おおよその距離を計算する。

距離はそれ程でもないが、セラフ部隊は、全ての部隊が出払っている。

近くの部隊をヘリで拾ったとしても、それなりの時間が掛かる。

 

(なかなかの状況ですね…)

 

それでも、絶望しない。

それでも、希望を持たない。

絶望が、人を殺す。

希望が、人を殺す。

現状、生きる事に必要なのは、恐怖することなく、楽観することなく、落ち着き、冷静に、自分に出来る最善を尽くす。

気配を殺し、息を整え、周囲の音を分析する。

風か。

虫か。

獣か。

キャンサーか。

…どれ程の時間が経っただろう。

日が、かなり傾いている。

焦燥が、侵食してくる。

暗くなれば、敵に見つかり難くなる反面、味方からも見つかり難くなる。

焦るな。

ゆっくりと目を瞑り、深呼吸をする。

ひとつ。

ふたつ。

みっつ。

焦るな。

焦るな。

焦るな。

自分に言い聞かせ、目を開ける。

と、

 

(キャンサー!)

 

そう思った瞬間には、吹き飛ばされていた。

どこか愛嬌さえ感じてしまう、その姿と動き。

キャンサーの中でも、最弱と言われるドール種。

しかし、それでもキャンサー。

今の一撃で、デフレクタも消えた。

一応の訓練を受けているものの、セラフのない自分では、撃退は無理だ。

ドールが、左右に跳びながら、こちらへ向かってくる。

こちらに迫った瞬間、目を瞑る。

ふわり、と身体が浮く。

痛みも、苦しみもない。

これが、死ぬ、という感覚か。

物語の中では、冷たくなると聞くが、むしろ温もりを感じる。

こういう感覚ならは、死も悪くないのかもしれない。

そう思った。

 

ぱきん

 

と、何かが破裂する音。

その音に、目を開ける。

 

「遅くなったわね」

 

 

【挿絵表示】

 

 

そこには、夕日に照らされ、黄金に輝くススキ。

その中で、自分を抱きかかえる手塚の顔があった。

 

「司令官、何をしているんですか?」

「あなたを、救助しに来たのよ」

「ご自分の立場を、分かっているのですか?」

「分かっているつもりよ?」

「でしたら!」

「隊員を守るのも、司令官の務めよ…あなたの言葉を借りるなら、『これも仕事だから』といったところかしら?」

 

手塚はそう言うと、ふっと笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん?どしたの?ななみん?」

 

ヘリに乗ろうとした月歌が、振り返る。

 

「やっぱり、ちゅーしてくれる気になった?」

「なりません」

「月歌ちゃーーん、ショック!」

「おーい、バカやってないで、さっさと行くぞ」

「あいよ。じゃあ、ななみん、行ってくるね」

「はい、お気を付けて」

 

そう見送る七瀬は、どこか笑っているように見えた。






碧山村貞(@Midoriyamamuras)様からのイラストは、いかがだったでしょうか?
前書きでも書きましたが、原作知ってる分、かなりの難しさがありました(;´∀`)
キャラ崩壊させず、イラストを活かす…
リア多忙と重なったのもあり、かなり時間が掛かりました(言い訳)
…はい…自分の実力不足です…(`;ω;´)イイワケシテ、スイマセン…

まだまだお題イラスト、募集しております。
絵師の皆様、文師の皆様、どうぞよろしくお願いします(* ̄人 ̄)✨
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