「じゃあ、あの子の事、お願いね」
「それに関しては既に承知している。しかし……」
ロドス本館のある部屋で、ケルシーはある女性と会話していた。その女性は紫の髪をしたサンクタで、一本の刀と二丁の銃を身に付けている。
「
「あら、今更説得のつもり?」
「君はここで逃すには余りにも惜しい人材だ。君や君の仲間が望むのならロドスは君たちを受け入れるし、君達の目的達成の為に出来る限り協力すると言った。それに何より…彼女の側には、君が居た方がいい」
「…ありがとう、ケルシー。でもダメよ、少なくとも今は、ね……」
「………」
「私も、サムも、そして刃ちゃんにも。それぞれやるべき事がある…それはあの子にもね。私達は、お互いの運命が決定的に交わるその瞬間まで、隣に立って歩く事は出来ないわ」
「……」
「…そんな顔しなくても。今は無理、というだけよ。私達の道はいつかまた交わる筈。その後どうするのかは…その時に話しましょう」
「…そうだな、そうするとしよう」
「話は終わりね。それじゃ、バ〜イ」
カフカはそう言って手のひらをヒラヒラと振りながら去って行き、ケルシーはその後ろ姿が見えなくなるまでジッと見つめていた。
〜数日後〜
ケルシーはロドスの廊下を歩いてある場所に向かっていた。
(確か、彼女がいる部屋の番号は…あそこか)
するとケルシーが入ろうとしていた部屋の扉が開き、中からロドスの医療オペレーターであるワルファリンが出て来る。
「む、ケルシー?」
「ワルファリン。彼女の様子はどうだ?」
「まだ目覚めたばかりじゃからの、少し混乱しておる。それに…」
「…記憶障害か」
「そうじゃ、自分の事がほぼ分かっておらん。憶えておるのは名前と…だいぶ朧げじゃが、カフカの事だけじゃ」
「そうか」
「…ケルシー、カフカはなぜあの娘をロドスに預けたのじゃ?」
「それは分からない。カフカは詳しい事は何も言わなかった。だが、彼女がロドスに所属する事は必ずお互いの為になると彼女は言っていた。報酬も支払われている、断る理由は無い」
「…そうか、とにかく妾はもう行くぞ。あやつをどうするかはお前が話し合って決めろ」
ワルファリンはそう言ってケルシーの横を通り過ぎていく。ケルシーは扉の前に立ち、ノックをしてから部屋に入る。そして中のベッドに横になっているサンクタの少女と目が合う。
「……誰?」
「初めまして、私の名前はケルシーと言う。このロドスの医療事業の最高責任者を務めている者だ」
「………」
「…君は自分が置かれている状況が良く分かっていない筈だ。私も、君のこれからの道行に関してあまり口出しする事は出来ないが…カフカという名前に、聞き覚えはあるな?」
「!」
「彼女から伝言を預かっている『きっと君は数え切れないほど危険な目に遭って、恐ろしい状況に身を置く事になる。でも、美しい出来事にも沢山出会う。家族のような仲間を持ち、夢の中でも体験出来ないような冒険をする…いつかまた会いましょう。それまで元気でね』との事だ」
「…カフカ…」
「君は彼女の事をどれほど憶えている?」
「…名前やぼんやりした姿だけだよ。それ以外は何も憶えてない。けれど…その名前を聞くと、少し安心する」
「…そうか。私は君とカフカの関係を詳しくは知らない。カフカとある程度の面識はあるが、彼女が何を考えているのかは分からない。だが、カフカが我々を信じて君をここに預けた事だけは理解出来る。そこで、君にある提案がある」
「ステラさん?どうかしましたか?」
「……アーミヤ…いや、何でもないよ。チェルノボーグまで後どれくらい?」
「後少しで着くと思いますよ。その…緊張されてますか?」
「…いや、ドクターってどんな人かなって考えてただけ」
ロドスで目覚めたあの日から時が経ち、少女はロドスの戦闘オペレーターの一人になっていた。現在はロドス救出作戦の一員として、アーミヤ達と共にヘリでチェルノボーグに向かっている。
「ふふ、ドクターはとても優しくて頼りになる良い人ですよ。ステラさんもきっと仲良くなれます」
「本当?アーミヤがそう言うなら、会うのが少し楽しみ」
「ステラ」
二人が話していると、ドーベルマンがステラに声を掛ける。
「お前は今回、アーミヤの指示で動く。当たり前だが、彼女の言う事はしっかり聞くんだぞ。頼むから変なことはするなよ」
「ドーベルマン教官は私を何だと思っているの?私が命令通りに動かなかった事ある?というかその話もう聞き飽きたよ」
「いや、確かにお前は優秀なんだがな…何故かいつも予想外の結果を持って来るというか…」
「ど、ドーベルマン教官、ステラさんなら大丈夫です!確かに普段の奇行は目立ちますが…ステラさんはいつも真面目に任務をこなしていますから」
「そうだよ。私はとっても優秀。いつかはロドスのエリートオペレーターになって皆からチヤホヤされるんだ」
「…本当に大丈夫なんだよな?」
「あ、あはは…」
「はっはっは、エリートオペレーターとは大きく出たな」
「!Aceさん…!」
すると今度はロドスのエリートオペレーターであるAceが会話に混ざってくる。
「エリートオペレーターになるのはかなり難しいぞ、ステラ?」
「大丈夫、ブレイズも私ならなれるって言ってたし」
「そうか、なら先ずは、今回の任務を無事に終えないとな」
「うん、どーんと任せて」
「その自信は一体何処から来るんだ…?」
「はは、まぁ実際ステラは優秀なオペレーターだ。アーミヤの言う事を聞いていれば問題は無いだろう」
「だと良いが…」
『皆さん、まもなくチェルノボーグ郊外に到着します。装備の最終確認などお願いします!』
ヘリを操縦するオペレーターからの声に、オペレーター達は装備の最終チェックなど、降りる準備を始める。やがてヘリが着陸し、ハッチが開き、アーミヤ達は降りていく。
「ここが、チェルノボーグ…」
空は雲に覆われており、郊外の建物には人気が全く感じられず、活気は無い。中枢区画の方面から時折り爆発音が響いて来るのをステラは感じた。
「ステラさん、行きましょう」
「うん」
そしてアーミヤに連れられるように、ステラはチェルノボーグの中枢区画に向けて歩き始めたのだった…
「酷い有様ね〜」
そしてロドスがチェルノボーグに到着したのと同時刻。カフカは悲惨な状況のチェルノボーグを高い塔の上から眺めていた。側には黒い髪の男が立っている。
「レユニオン・ムーブメント…いつからこんな過激な集団になったのかしら?それにウルサス政府の動きも妙ね…」
『ウルサスのニュース番組はチェルノボーグの暴動は直ぐに鎮圧されるって放送してる。全くそんな風には見えないけれどね』
「まあいいわ、ロドスはもう到着したんでしょう銀狼?」
『うん、今中枢区画に向かって来てるよ』
「じゃあ私達も、自分の仕事をするとしましょう。ね、刃ちゃん?」
「………」
「ロドスがドクターを無事に回収出来るように、少しはレユニオンの注意を逸らさないとね?」
「どうでもいいが…つまりはアイツらを斬って回ればいいのだろう?」
「ええ。あんまり目をつけられると面倒なのが出て来るから、ほどほどにしてちょうだい。それじゃ、行きましょう」
そう言ってカフカと刃は塔の上から地面へと飛び降りていった。
「はぁ?さっきから通信が取れない部隊が増えて来てる?」
「あ、あぁ。最初はウルサスの治安部隊の仕業かと思ったんだが、明らかにおかしい」
レユニオンの幹部の一人、Wは部下の一人から異常を報告され面倒そうにしながら通信機を手に取る。すると…
『や、やめろ!俺は味方だ!』
『ち、違う、身体が勝手に…!』
「……?」
丁度、通信を繋げた部隊が襲われている様子がWの耳に入る。混乱しているようで、Wは黙って聞いていると…
バババババッ!
と音が響き、Wは少し目を見開く。
(ラテラーノの守護銃?一体どういう事?)
Wは徐々に真剣な表情になっていき、通信機越しの戦闘音に意識を集中させていく。するとやがて音が止み…
『た、頼む、命だけは…!』
『───ダメよ、そう言って命乞いをする人間を何人も殺してきたのに、自分は見逃してくれなんて…都合が良すぎるでしょ?』
「──ははっ」
ゾワッとWの背筋が凍るような感覚を覚え、冷や汗を掻きながら乾いた笑いが飛び出る。通信はザシュと突き刺すような音を最後に風や炎の音しか聞こえなくなった。
「何で、あの女がここにいるのよ…!」
「だ、W…?」
「通信が繋がる全部隊に伝えておきなさい。紫の髪をした女のサンクタを見かけたら、真っ先に逃げなさいって」
Wはそう指示を出すと立ち上がり、歩き出す。
「ま、待ってくれ!一体何が起きているんだ、俺たちを襲っている存在が何なのか知っているのか!?」
Wは部下からのその問いに足を止め、振り返って顔を見つめる。
「アンタ『大陸ハンター』は知ってる?」
「た、大陸ハンター?そ、それってあれだろ、テラのあらゆる場所に現れては事件を引き起こしているっていうテロ集団…まさか…」
「話が早いわね。私達を襲っているのはその大陸ハンターよ。もしかしたら他の奴が担当している区域も何か起きてるかもね?私は状況確認ついでに大陸ハンターの奴に挨拶してくるわ。アンタらは下手に動かずに次の指示を待ちなさい」
「わ、分かった」
Wはそうしてその場を去って行った。
その頃同じくレユニオンの幹部であるメフィストが担当している区域では…
「な、何なんだよ…」
メフィストは目の前に広がる光景に言葉を奪われていた。彼が見つめるその先には、レユニオンの兵達を次々と斬り裂いていく刃の姿があった。
「何なんだよ、お前ぇ!!」
刃は淡々とした様子で剣を振い、周囲を血で染め上げていく。しかし…
「─っ!」
突如紫の光を纏った矢が高速で飛来し、刃はそれをサッと避けた。ドゴォン!と音が響き、矢が命中した地面が抉れているのを確認すると、別方向からも矢が次々と飛来し、刃はそれを剣で弾く。
「狙撃か、姿は見えんが…そこにいるな?」
「こ、コイツ、ファウストの狙撃を…!」
『メフィスト、引け!』
「!ファ、ファウスト、でも…」
『そいつは普通じゃない!俺達が足止めしている間に、一旦引いて立て直すんだ!』
「…わ、分かったよ…」
ファウストの言葉にメフィストは生き残った兵達に指示を出し、撤退していく。刃も矢を適当にいなしながらメフィスト達を見逃した。
(追う事も出来たが……これ以上の追撃は不要か。下手に刺激してあのウェンディゴやドラコに来られても面倒だ)
「一先ず、場所を変えるか…」
刃はそう言って、その場を去って行った…
「ぐはっ…」
カフカは目の前にいるレユニオン兵を切り捨て、刀に付いた血を振り払うと時間を確認する。
「大分暴れたわね。そろそろ頃合いかしら…」
『ロドスは既に例のポイントに侵入してる。ドクターが回収されるのも時間の問題だね』
「そう。レユニオンは?」
『二人が暴れ回ったおかげで少なからず混乱は生じてるみたい。他の区域のレユニオン兵が動き出しているし、上手くいってるんじゃない?』
「ふーん……分かったわ、一旦引きま」
カラン…
とカフカの近くに何かが落下した音が響いた瞬間、カフカが立っていた場所が爆発する。
「……」
Wは物陰から爆煙を見つめ、ナイフを握りしめる。煙が晴れ、Wが爆発した場所を確認すると、そこには
「──ちっ!!」
「あらあら、誰かと思ったらWじゃない」
カフカの声が響き、Wは声がした方を向くと、カフカは建物の上に立ってWを見下ろしながら微笑んでいた。
「…カフカ」
「久しぶりね、W。貴女がいるって事は…ヘドリーやイネスも何処かにいるのかしら?」
「カフカ、何でアンタがチェルノボーグにいる訳?まさか、ロドスに協力してるのかしら?」
「ふふ、さて、どうかしらね」
「相変わらず余裕そうなその態度…ムカつくわね…」
「あら、気に障ったのならごめんなさい。けれどW、私これでも驚いているのよ?貴女がレユニオンに居るなんて…ウェンディゴやタルラの事は知っていたけれど、これは想定外よ」
「あっそ、別にどうでもいいけれど。確かなのはアンタは今、私の敵って事よ」
Wはナイフと爆弾を握りしめ、カフカを睨みつける。対してカフカは変わらずWに笑顔を向ける。
「ええ、そうね。別にここで貴女と戦うのも面白そうだけれど…さっきまで連戦で少し疲れているの。悪いけど休ませてもらうわ」
「───は?」
「それじゃあ、またね。銀狼、飛ばしてちょうだい」
『はーい』
「っ、待ちなさいっ!!」
するとカフカの身体が光に包まれ、次の瞬間にはその場からいなくなっていた。
「…ああ、もうっ!!」
Wはイライラしながらも通信機を取り出し、部隊に指示を出すのであった…
因みに皆アークナイツ に出て来る種族にしてます。
星(ステラ)→サンクタ
理由 あの奇行と性格は間違いなくサンクタ。異論は認める。
カフカ→サンクタ
理由 銃とか使うし、ねぇ?
刃→リーベリ
理由 なんかしっくりくるし…トター君見てたらリーベリで良いかなって…
銀狼→ループス
理由 銀"狼"だし…
誰か続き書いてください。