百階層攻略後に日本に帰れる(かもしれない)ゲーム転移。   作:はめるん用

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以前アルテリオス計算式のオリジナル作品に挑戦して失敗したので、同計算式の名作『ファイアーエムブレム』の力を借りて再チャレンジ。


第1階層攻略開始。

『環境には適応する』

 

『日本に帰る手段も探す』

 

『両方』やらなくちゃならない、ってのが『異世界転移』の辛いところだな? 

 

 

 不幸中の幸いなのは、この世界が手強いシミュレーションでお馴染み『ファイアーエムブレム』の同人ゲームの世界であり、その周回データを引き継いでの異世界転移であることか。

 ステータスや装備はもちろんのこと、やはり食事系のアイテムが豊富なのは文化的文明的日本人の俺にはありがたかった。どんなに肉体が強靭でも人間はストレスで死ねるからな。

 

 もうひとつ、正気を保っていられる理由は“帰るための手段に心当たりがある”ことが大きいだろう。メインの舞台となる『神竜の塔』の最上階まで到達することができれば、そこで『光の神竜ナーガ』と『闇の神竜ロプトウス』がどんな願いも叶えてくれる……という設定がある。

 ゲーム的にはプレイ内容を評価して次の周回への引き継ぎボーナスを追加してくれるというオマケ要素でしかなかったけど、可能性としては充分期待できる。というかほかに世界を渡る手段なんて思いつかねぇ。最悪、相談に乗ってくれるだけでも救いはあるほうだろう。

 

 あとは『仲間』ではなく『手駒』を集めるだけでいい。願いを独占するためには仲良しこよしなんてやってられん。友情だの絆だの、そんなもんはどうでもいいから俺は日本に帰りてぇんだ。成り上がり? ハーレム? そんなもんはクソ喰らえだよ。

 

 

 とはいえ。まずはどんなものか、一階を攻略してみることにしよう。この世界はダメージ=攻撃力−防御力という素晴らしき数式が支配しているので、周回データを引き継いでいる俺ならば簡単に死ぬようなことはないハズだ。

 

 

 で。

 

 実際にフィールドに足を踏み入れてみたワケだが。

 

 

「数が……数が多い……ッ!」

 

 人の姿をした幻『幻影兵』の数が想像より多いんですが。ゲームと異世界転移を比べたら違って当たり前と言われればそれまでなんだけど、さすがに大量の敵をひとりで相手するのは厳しいな? 

 いまはまだ、いい。だが上の階層になれば敵のレベルも上がるし武器のランクも高品質のモノになる。間違いなく何処かのタイミングで俺の守備力を貫いてくることだろう。

 

 うん、コレは無理。

 

 やっぱり数の暴力こそ最強か。仕方ない、当初の予定通り手駒を集めることにしよう。どうやらプレイヤーの拠点となる『英雄王の街』で真っ当に仲間を集めるためには、戦士斡旋所で身分証明としてステータスを表示する必要があるらしい。といっても、名前とクラス、最大HPだけの簡易的なヤツなんだが……俺のいまのクラスが『暗黒司祭』だからね、まぁ警戒されること確実だよね。

 ならばどうするか? 闇市で奴隷を買うしかないよなぁ! チート転生、じゃねぇや転移だったわ。それで奴隷を買うとかフラグ臭ぷんぷんしてイヤなんだけど……やっぱ日本に帰りてぇもんなぁ。これが転生なら諦めることもできたかもしれないが。

 

 

 

 んで。お安い奴隷を紆余曲折の末に男を3人、女を2人と5人ほど購入してみた。ゲームでは戦士斡旋所で加入させるよりも安いが弱い、それはこの世界でも同じ扱いだった。けれど俺が購入した5人はレベル1にしてはステータスがそこそこ普通。

 案内人が言うには、5人ともなにやらワケありらしく本当は仕入れたくなかったらしい。付き合いやら立場やらの面倒から引き取ったものの、大赤字でもいいからさっさと手放したかったのだとか。ものすごく厄介な香りがスゴイが、どうせ願いが叶って日本に帰ることができれば解放するだけだから迷う必要はなし! 購入! 

 

 赤字の補填も期待していますと一軒家も用立ててもらい、これで明日から本格的に攻略を始められる。だがその前に、購入して名前を与えた奴隷たちに確認しなければならないことがある。

 

「命令だ。これから私がする質問に嘘偽りなく答えろ」

 

『『…………ッ!?』』

 

「お前たち、料理はできるか?」

 

『『…………は?』』

 

 うん、ひとりずつ聞いたほうが早いか。まずは正統派ワイルド系イケメンくんから。

 

「アストラ、お前は料理の経験は?」

 

「……すまない、果物ナイフすら握ったことがない」

 

 んー、ダメだったか。

 

 次。なんかチャラっとしてる雰囲気のタレ目くんはどうかな? 

 

「リカール、お前はどうだ?」

 

「買い出しなら俺っちに任せてくれ。商家で働いた経験があるからな、目利きと値引き交渉には少しは自信あるぜ?」

 

 それはそれでストックが尽きそうなときに役に立つからヨシ。でも、できれば999の数字が並ぶ肉や野菜を使い果たすまでに日本に帰りたいけどね。

 

 次。ショタなら可能性あるだろ? 

 

「アルバは?」

 

「えっと、お掃除とか、お洗濯なら頑張ります!」

 

 そのふたつができて料理だけすっぽ抜けてるのはなんでなんだぜ? ありがたいスキルではあるんだが。

 

 見るからにやる気なさそうなツインテールちゃんは……う〜ん。

 

「グラナはどうだ?」

 

「お茶くらいなら淹れられるけど?」

 

 それ料理より難しくない? 

 

「そうか。仕方ない、食事の用意はひとまず私がどうにかするとしよう」

 

「いやいや、あるじ殿。なにゆえ私には確認しないのですかな?」

 

「なにゆえもなにも」

 

 俺だけじゃない、ほかの4人も同じことを考えたことだろう。食事は出るのか、お腹さえ満たしてくれれば戦いでも娼婦の真似事でもなんでも喜んでする、できれば最低でも5人分は食べたい、デザートも欲しいと食いしん坊キャラを初対面から出してきた女だぞ? 仲介人も呆れて苦笑いしてたわ。

 

「なら一応聞くが……アンリ、お前は」

 

「食べるのだけは大得意ですぞ! あっはっは!」

 

「なんで確認させたのよアンタ」

 

「そりゃご主人様が嘘偽りなく答えろって命令したからだろ?」

 

「そういう、ものなのか?」

 

「えーと、その、健康的でいいんじゃないでしょうか!」

 

 見た目は黒髪ロングのお姉さんキャラなのに、ショタっ子のアルバくんにフォローされてる姿はダメ人間ムーブすぎる。エムブレマーの感覚で判断するなら、こういうヤツのほうが案外ステータスの成長率も良かったりするんだが。

 まぁいいや。とにかく食って寝て装備を整えて、改めて一階を攻略するとしよう。育成をサポートするためのアクセサリーとかも腐る程揃ってるし、丁寧に戦わせればなんとかなるだろ。

 

 

 ◯□◯□ー

 

 

(いまの私の力は3、細身の槍の威力と合わせても7。レベル1の幻影兵が相手でも全力で2撃、か。フッ……ヤツらのように、壊れた武器を与えられなかっただけでも良しとするべきか)

 

「ギギ……ッ!!」

 

「先手はいただくぞッ! くらえッ!」

 

「ギャッ!?」

 

「もう一撃ッ! これで終わり──」

 

「シギャアッ!!」

 

「むッ!? ……いまの私の“速さ”ではコレを相手にしても追撃が間に合わない、か」

 

 奴隷となりレベルとステータスを奪われたときには再び鍛えて力を取り戻せばいいと考えていた。だが、実際に戦ってみて弱体化したことを実感したアストラは苦虫を噛み潰したような表情になる。

 第1階層の幻影兵のHPは高くても12程度、かつての自分であれば全力攻撃でなくとも削り切れる数値だった。それがいまでは必殺の一撃を繰り出せなければ互角の勝負に持ち込まれてしまう。

 

(いや、余計なことは考えるな。いまはなによりも戦い生き残ることが先決……ッ!)

 

「ギ……シャア──ッ!!」

 

「甘いッ!」

 

 幻影兵が壊れた斧を振り下ろそうとするタイミングに合わせて、アストラが細身の槍を盾にして前へと踏み込む。相手の攻撃力は武器の威力を含めて4しかなく、よほど油断しているところを首でも狙われない限りアストラのHP18を削り切ることは不可能。

 もちろん、だからといってただ肉斬骨断を覚悟でガムシャラに突撃したワケではない。相手が全力で攻撃できないよう間合いと呼吸をコントロールすることで攻撃力を削ぐために踏み込んでいた。加速も重さも不十分の攻撃であれば、アストラの守備力が2しかなくてもダメージをゼロに抑えることができる。

 

 そして体勢を崩された幻影兵は────。

 

「そこだッ!!」

 

「ゴォ……ッ!?」

 

「よし。……む、レベルが上がったか。この感覚、ステータスもしっかりと成長して」

 

 

 

 

「シギャア────ッ!!」

 

 

 

 

「なッ!? ぐぅ……ッ!!」

 

 言い訳の余地などない、レベルアップに浮かれ気を取られたが故の油断。必殺の一撃こそ回避したがHPはしっかり削られて残り14。咄嗟に利き腕とは逆の腕で防いだものの、しっかりと刻まれた傷からは赤い血が流れ出した。

 

「落ち着け、この程度の怪我など狼狽えるほどのことではない。まずは冷静に相手の動きを見定めて……」

 

 

 

 

「そぉら、よッ!!」

 

 

 

 

「ピギ……ッ!?」

 

「木の矢……リカールか、助かった」

 

「戦場で油断するのは感心しないねぇ。ま、気持ちはわかるけどな〜。この“星屑のチョーカー”ってアクセサリーの効果、俺っちも確認したときは半信半疑だったが……まだ確認してないけどさ、たぶん1レベル上がっただけでかなりステータス伸びたぜ?」

 

「そう、だな……私も驚いている」

 

「ステータス成長率を高めるアクセサリーなんて聞いたことがない。俺っちの親父もウチの商会に用意できないモノはない、皇帝や教皇よりも世界を知っている〜なんて大口叩いていたが……さすがにコイツのことは知らないだろうねぇ」

 

「それは……リカール、お前」

 

 アストラは知っている。リカールが口にした台詞は大陸でも屈指の豪商人のモノであると。まだ知り合ったばかりということでお互いの素性を探るような真似はしなかったが、聞く者が聞けばそれは身分を明かしているのも同然の言葉である。

 

 ならば。

 

「……あぁ。だろうな。私もこういったアイテムの存在は王城でも見かけたこともなければ耳にしたこともない。世界は我が手にあるべきと豪語していた父上とて知らぬだろうな」

 

「へ? あ、いや……そういうつもりで言ったワケじゃなかったんだがなぁ。あー、うん。アストラ、お前さん真面目すぎるっつーかなんつーか。こうさ、どうせお互いに気楽な奴隷の身分なんだからさ、ちぃっとばかし肩の力を抜いてもいいんじゃないの?」

 

「そう、なのか? いや、お前の言う通りなのだろうな。婚約者の女性も私がいない茶会の席で堅物過ぎて退屈な男だと呆れていたらしいからな」

 

「……あのなぁ、そういうトコなんだっての! 雑談のチョイスがアーマーナイト並みに重すぎて反応に困るんだって」

 

「そ、そうか……その、すまん」




百階層攻略までサクサク進めたいところさん。
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